日本評価研究
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22 巻, 2 号
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特集:「イノベーション」の形成的評価
  • 大島 巌
    2022 年 22 巻 2 号 p. 1-2
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー
  • -CD-TEP法を用いた実践家・当事者参画型エンパワメント評価の可能性-
    大島 巌, 新藤 健太, 源 由理子
    2022 年 22 巻 2 号 p. 3-14
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     こんにち対人サービスの領域では、既存サービスでは対応ができない多様な社会課題が拡大し解決方策が模索されている。これに対して課題解決のために新たな発想で生み出された社会的イノベーションの「効果モデル」を適切に形成・発展させて、エビデンスに基づく実践プログラム(EBP)へと成長させる形成的評価法が求められている。

     これに対して著者らは、実践現場を基盤に協働型評価、ボトムアップ評価を用いて、実践家と当事者が評価活動に積極的・主体的に参画し、協働して「EBP効果モデル」を形成・発展させる形成的評価法「CD-TEP法を用いた実践家・当事者参画型エンパワメント評価」を開発した。

     本稿では、この評価法の開発理念と開発プロセスを示し、その結果開発された評価法の概要と基本枠組みを提示した。その上で他の評価法との比較からその意義と特色、有用性、適用範囲と課題を明らかにし、今後の発展可能性を考察した。

  • 米原 あき
    2022 年 22 巻 2 号 p. 15-26
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     教育分野の評価は、歴史的には、学力測定に代表される総括評価としての「測定」から発展し、20世紀前半の「教育測定運動」を経て、より形成的な側面を重視した「評価」へと重点が移行してきた。さらに近年の国際的・国内的な動向に照らしてみると、SDGsの教育目標においても、OECDが提唱する社会情動的スキルの定義やフレームワークにおいても、日本の学習指導要領においても、各種の教育目標がより質的な方向へシフトしているという傾向や、より広い社会的な文脈の中で教育を捉えようとする傾向、そしてより多様な関係者が評価プロセスに参加し協働することが求められているという傾向が共通してみられ、参加型形成的評価に対するニーズが高まっていることが分かる。このような傾向をふまえると、参加型形成的評価の観点から、評価指標やエビデンスについての考え方、そして評価活動がもちうる機能について、再考する必要があると言えよう。

  • ーマネジメント支援のための評価への進化ー
    今田 克司
    2022 年 22 巻 2 号 p. 27-37
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     近年、「社会的インパクト評価」について論じられることが増えてきた。一方で、評価研究の中で、この概念が定着しているとは言い難い。本論では、社会的インパクト評価の概念整理を試み、国内外における理論や実践の議論が、概念を成長・進化させていると論じる。具体的に取り上げるのが、2010年代中盤以降の北米(特に米国)におけるインパクト投資とインパクト測定・マネジメント(IMM)の動きと、日本国内における内閣府社会的インパクト評価ワーキンググループによる概念整理である。これらを概観し、新たに見出された社会的インパクト評価の特質として、学び・改善、マネジメント支援や意思決定のための評価の側面が強調されていることを述べる。

  • -児童福祉分野のWhat Works Centreを中心に-
    家子 直幸
    2022 年 22 巻 2 号 p. 39-51
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     英国では中央政府が2000年前後から社会政策でエビデンスを重視する方針を推進し、対人サービスについてもエビデンスに基づく実践が要請されてきた。児童福祉分野でのエビデンスに基づく取組みは対人援助職の専門性向上を図る改革と相まって進められ、中でも早期支援・早期介入といった予防的政策への期待は強い。緊縮財政により政策の焦点が大規模実証からエビデンスの活用へと移る中、主として有効性に関するエビデンスを政策や実践の意思決定で用いるよう支援する知識仲介機関、What Works Centreが中央政府主導で設置されてきた。What Works Centreの基本的機能はエビデンスの創出・翻訳・適用であり、児童福祉分野では対人サービスでのイノベーションをエビデンスが検証された実践プログラムへと発展させられるよう、形成的評価の各段階と資金提供とを関連付けたアプローチが取られている。

  • -CD-TEP法を活用した事例の考察-
    清水 潤子, 新藤 健太
    2022 年 22 巻 2 号 p. 53-67
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     本稿は、「プログラム理論(Theory:T)」と「エビデンス(Evidence:E)」と「実践(Practice:P)」との「円環的対話(Circular Dialogue:CD)」(CD-TEP法)を活用し作成した障害者芸術文化活動普及支援ガイドの事例について振り返り、CD-TEP法の現場における形成的評価の促進・定着と、実装可能性について分析・考察を行ったものである。その結果、評価ガイドの開発や活用支援により、普及支援事業の支援センターが評価を事業改善に活かす等、形成的評価の現場における普及がうかがえたが、一方で評価ガイドにおける効果モデルやフィデリティ尺度の役割が薄まるという現象が見られた。また実装科学のフレームワーク(CFIR)を部分的に用いてCD-TEP法の実装性について考察した結果、評価アプローチとしての理念を実践に浸透させるためには、様々な実装上の課題を解決するための体制や仕組みが必要であり、実装を支える技術的支援の重要性が明らかとなった。

  • -評価キャパシティ形成に向けた役割を中心に-
    新藤 健太, 大島 巌
    2022 年 22 巻 2 号 p. 69-82
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     効果的・普遍的なプログラムモデルの構築とその実施・普及に有効なプログラム評価・開発のアプローチ法として実践家参画型エンパワメント評価がある。この取組みの推進には実践家及び組織の評価キャパシティ形成が欠かせない。そこで本稿では2つの事例をもとに、評価キャパシティ形成を支える「EBP効果モデル」技術支援センターの意義と役割を検討した。

     その結果、評価キャパシティ形成のアウトカムには実践家及び組織レベルの変化があること、その先には、サービス・アウトカムや利用者アウトカムの向上もあること、そのために「EBP効果モデル」技術支援センターは、①協働による効果モデル開発の取組み、②アセスメントと評価キャパシティ形成のための計画策定、③具体的な支援メニュー(トレーニング・コンサルテーション・見学等の機会)提供、④ネットワーキングを行うことが有効であると考察された。

研究論文
  • -国際基準COFOGによる費目分類に着目して-
    生方 裕一, 佐藤 亨, 川島 宏一
    2022 年 22 巻 2 号 p. 83-95
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     本稿は、日本の地方自治体が会計情報や財務書類を用いて説明責任を果たす際、会計情報の整備に注力するあまり、情報利用者、特に住民に対する視点が不足している点を指摘するものである。欧米では、住民視点で地方自治体の予算を、COFOGと呼ばれる分類基準を用いて分かりやすく可視化する取り組みが行われている。本稿では、このCOFOGを用いることで住民目線に立つ会計情報が作成され、各自治体の会計情報の説明責任、および透明性の向上に寄与する可能性があることを考察する。その上で、今後の公会計改革への示唆を得ることを目的とする。今後、日本の地方自治体において、説明責任を果たすための公会計情報の整備が求められることを踏まえるとCOFOGに基づいて、住民視点に立つ細かな会計情報を用意することが必要となろう。このような会計情報が用意されることで、住民は、自治体運営の全体像を容易に理解できるようになる。さらには、住民の行政への参画を促進させることも期待される。

  • 村上 裕一
    2022 年 22 巻 2 号 p. 97-109
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     本稿では、「規制の虜」問題の発生を防ぎ、規制を「より良い」ものにしていくための評価システムの条件について検討する。そのために、まず規制監視機関(ROB)に注目し米欧日比較をするのに続き、規制実験評価の方法と留意点を整理する。ROBにありがちな応答性と専門性のジレンマへは、政治的リーダーシップと情報公開で対処する。ROBは、関連する政策共同体の外かつ上に配置し、しかるべき権限と機能の付与、規制監視に係る適正手続の整備、独立性確保による信頼構築に留意する必要がある。本稿では、日本の特区制度も踏まえて望ましい規制評価システムを検討し、「刺激-反応」型モデルを前提とした規制評価が、まずは明確な問いの下、十分に設計された規制実験において、より効果的に実施され得ると論じる。その上で導き出すのは、因果推論と選択バイアスの問題克服、実施・評価活動の客観性確保、実験・評価後の最終決定権者の裁量縮減という条件である。

研究ノート
  • 池田 葉月
    2022 年 22 巻 2 号 p. 111-122
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     業績測定は比較的簡易な評価手法であり、業績測定を中心的な手法とする評価制度は、公共部門において普及している。業績測定は事前に設定した指標を用いて測定した実績値と目標値を比較して評価する手法であることから、指標の質が重要である。そのため、適切な指標を設定するとともに、不適切な指標は見直す必要がある。指標の質を改善する方法には様々なものがあるが、その1つとして、見直す前の指標と見直しの理由、見直した後の指標などの情報を整理し、そこから学習することが挙げられる。しかし、指標の見直しの実施状況や見直しの理由に関する情報は少ないことを本稿では明らかにする。また、指標の見直しに関する情報などの帰納的な情報が不足していることを明らかにし、それらが指標の改善に役立つことを述べる。

  • -ロジックモデルの観点から-
    オンドラハ バトホヤグ
    2022 年 22 巻 2 号 p. 123-135
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     2007年以来、モンゴルの首都ウランバートル市において大気汚染が社会問題となった。その原因の8割はゲル地区の暖房兼キッチン用燃料(石炭)である。2018年、モンゴル政府は、決議第62号「原炭の使用禁止」で、石炭使用を禁止し、改良燃料を提供した。

     本研究の目的は、ロジックモデルをウランバートル市の大気汚染対策に適用し、実態を検討して課題を明らかにすることである。決議第62号のニーズ評価とプロセス評価を行った。プロセス評価で、各政策の因果関係を明らかにし、各政策のアウトカムのKPI指標を設定し、効果を検証した。最後にアウトカムの指標を比較した上で、決議第62号について実施前と実施後の大気質と呼吸器疾病率を比較し、本決議の利点と改善点を明確にした。

  • 岸本 由梨枝
    2022 年 22 巻 2 号 p. 137-147
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     近年、大学の地域貢献は、文部科学省による様々な支援策が講じられ全国的に広がっている。本稿は、大学の教育と地域貢献を結びつけ、授業の一環として行われる地域貢献プログラムに焦点を当てている。このような地域貢献プログラムの特徴として、教育と公共政策の側面を持っていることを確認し、評価の現状では、公共政策の視点からプログラムの質を高めるための質改善を目的とした評価は、学生の学習成果に関する研究に比べて数少なく、検証が不十分であることを課題として提示する。また、質改善を図る評価を行うことで、具体的にどのような効果が生じるのか、質改善を目的とした評価を行うことの意義について述べたい。

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