日本評価研究
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19 巻, 3 号
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研究論文
  • -科学技術政策をめぐるアカウンタビリティの混迷-
    山谷 清秀
    2019 年 19 巻 3 号 p. 1-13
    発行日: 2019/06/28
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     国の科学技術政策をどのように評価すべきかという問題は、多くの研究者を悩ませてきた。大規模な科学技術政策の成果測定が困難なこともあり、評価は容易ではない。そこで個々の研究開発事業に注目した評価のあり方がこれまで取り組まれてきた。すなわち、「国の研究開発に関する大綱的指針」(平成28年12月21日内閣総理大臣決定)をはじめとする取り組みが積み上げられてきたのである。ただし、こうした研究開発評価は、もっぱら技術的側面に焦点を当てており、その他の重要な要素が取り上げられていないという点が問題である。

     本稿では、この問題を議論するため、ITER計画を事例として取り上げる。そこで、研究開発の側面以外にも、国家的エネルギー政策、外交、地域政策の側面が重要であると指摘する。さらに本稿でとくに注目するのが、地域政策と科学技術政策の関係である。ITER計画は国策である一方で、地元の青森県にとってはむつ小川原地域開発の一手段となっている。こうした国策と地域政策との間における諸問題については、国策としての科学技術政策を評価する際にはこれまで十分に考慮されていない。さらに、結論において科学技術政策の評価に関する今後の課題を整理し提示する。

研究ノート
  • -兵庫県宝塚市におけるアンケート調査から-
    池田 葉月
    2019 年 19 巻 3 号 p. 15-25
    発行日: 2019/06/28
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     自治体評価の課題の1つであるとされている負担感に影響を及ぼしている要素としては、業務量の多さや類似の業務が複数存在すること、評価結果が利用されないことなどが指摘されている。本稿は社会心理学における態度研究に着目し、負担感に影響する新たな要素の1つとして自治体評価に対するイメージが関係していると仮定した。その上で、自治体評価に対するプラス・マイナスのイメージと、そのイメージを表す漢字1文字、その漢字を選択した理由を尋ねるというアンケート調査を実施した。その結果、政策評価に対するマイナスのイメージと負担感は関係していることが明らかになった。また、イメージがプラスであるかマイナスであるかに関わらず、挙げられた漢字は「改」や「難」が最も多く、自治体評価は改善のために実施するもの、難しいものと認識している職員が多いことが明らかになった。

実践・調査報告
  • -財務の「見える化」と組織評価の可能性-
    高杉 真奈, 大津 璃紗
    2019 年 19 巻 3 号 p. 27-40
    発行日: 2019/06/28
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     日本ではこれまで、非営利組織(NPO)の財務分析は、いくつかの調査研究を除き、NPOの組織評価においてもそれ以外の形態でも、ほとんど行われてこなかった。一般財団法人国際開発センターは、国際協力活動を行う認定NPO法人を対象に、個別のNPOの財務分析結果をわかりやすく「見える化」して提供するウェブサイト「NPO見える化ナビ」を立ち上げた。財務健全性(財務安定性・財務効率性)、成長率、持続性の観点から、6つの分析指標を設定した。分析結果には、団体の収入規模別に異なる傾向が見られ、財務分析は、寄付者が自身の価値観に基づきNPOを選ぶ際の有益な情報たり得ることが示されている。認定NPO法人のみを対象としたことやNPO法人会計基準の普及によって、対象団体の財務状況は、先行研究と比べ、より高水準であった。今後、こうした財務指標や分析結果を、NPOの組織評価においても有効に活用することが期待される。

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