国の科学技術政策をどのように評価すべきかという問題は、多くの研究者を悩ませてきた。大規模な科学技術政策の成果測定が困難なこともあり、評価は容易ではない。そこで個々の研究開発事業に注目した評価のあり方がこれまで取り組まれてきた。すなわち、「国の研究開発に関する大綱的指針」(平成28年12月21日内閣総理大臣決定)をはじめとする取り組みが積み上げられてきたのである。ただし、こうした研究開発評価は、もっぱら技術的側面に焦点を当てており、その他の重要な要素が取り上げられていないという点が問題である。
本稿では、この問題を議論するため、ITER計画を事例として取り上げる。そこで、研究開発の側面以外にも、国家的エネルギー政策、外交、地域政策の側面が重要であると指摘する。さらに本稿でとくに注目するのが、地域政策と科学技術政策の関係である。ITER計画は国策である一方で、地元の青森県にとってはむつ小川原地域開発の一手段となっている。こうした国策と地域政策との間における諸問題については、国策としての科学技術政策を評価する際にはこれまで十分に考慮されていない。さらに、結論において科学技術政策の評価に関する今後の課題を整理し提示する。
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