日本評価研究
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14 巻, 2 号
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ミニ特集:プログラム評価の現状と可能性
  • -米国GPRAMAの事例をもとに-
    田辺 智子
    2014 年 14 巻 2 号 p. 1-16
    発行日: 2014/12/26
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     日本の政策評価では、業績測定(評価方式としては実績評価)が中心的な手法となっており、プログラム評価(総合評価)の実施は少ない。本稿では米国の事例をもとに、業績測定を改善するためにプログラム評価をどのように併用できるか検討を行った。米国では、政府業績結果法近代化法(GPRAMA)に基づき、業績測定だけでは業績を正しく把握できないという認識のもと、プログラム評価が積極的に併用されている。具体的には、妥当性の高い指標設定、業績の分析、施策改善のための意思決定などにプログラム評価が利用されている。

     日本の政策評価では、指標設定の困難性や評価結果が利用されていない等の問題が指摘されるが、プログラム評価によってそうした点の改善が期待できる。

  • ~改善への示唆~
    大島 巌
    2014 年 14 巻 2 号 p. 17-28
    発行日: 2014/12/26
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     保健・福祉領域など対人サービス領域において効果的プログラムモデル形成と評価の経験に基づいて、科学的根拠に基づく実践(EBP)および効果的プログラムモデル形成評価アプローチに対して社会的な関心が乏しい日本の現状とその要因を国際的な視点と対比させて明らかにする。その上で、そのアプローチを社会に定着させるための社会的条件と課題を検討した。

     日本社会においては、まず社会プログラムが使命として達成すべきプログラムゴールの実現を、利害関係者、特にプログラムに深く関わる施策立案者や実践家・管理者が強く共通認識することがその立脚点になる。その上で、成果中心の科学的プログラム評価の実施、EBP等効果的プログラムモデル(EBP等効果モデル)の重視・尊重、EBP等効果モデルの情報集積とデータベース構築、関係者間での共有化、実践家参画型アプローチの尊重、その実現のための体制整備が図られる必要がある。

研究論文
  • -職業倫理の比較研究-
    小林 信行
    2014 年 14 巻 2 号 p. 29-41
    発行日: 2014/12/26
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     プロフェッションとは自らを律するものであり、評価倫理ガイドラインの策定は、評価者がプロフェッションとして一層の成長を遂げたことを意味する。職業倫理の向上を図る上で、その目標に長年取り組んできた他プロフェッションの動向は参考となるだろう。本稿は、職業倫理における「理論」、「制度」、「実践」の観点から証券アナリストと評価者の比較分析を行った。比較の結果、評価倫理ガイドラインの利用価値を高めるには、倫理上の問題がおきやすい局面の記述拡充が一案と考えられ、事例を継続的に汲み上げるプラットフォーム作りが課題として浮かび上がった。また、倫理規程の解釈と適用にコンセンサスが見出し難いという特質から、評価分野では個々人に判断を委ねる部分が大きい。そのため、ケース・ディスカッションによる訓練は有意義であり、ディスカッション用の教材作成や演習も価値のある取組みとなる。

研究ノート
  • その実践概要と使用される情報及び手法
    荒川 潤
    2014 年 14 巻 2 号 p. 43-59
    発行日: 2014/12/26
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     本稿では、政策評価の結果が政府の資源配分の決定にどのように活用されるのかを、「業績予算」(Performance Budgeting)を例にして議論する。具体的には、「業績情報提供型」業績予算(Performance-informed Budgeting : PIB)の実践概要を整理するとともに、どのような情報がどのような手法により活用されているのかを、国内外の事例により分析して議論する。

     PIBの実務を見ると、個別案件の業績情報は成果重視の経営の下で最も重要かつ有益な情報であるものの、それだけでは予算の増減を含めた今後の方向性を議論できず、政府や省における優先事項についての情報や、個別案件についての(業績以外の)情報、他案件についての情報なども提供されて初めてそのような議論が可能となる。言い換えれば、PIBでは省や政府全体の成果がまず重視され、その予算配分の効率性を高めるための個別案件の在り方が、業績情報や他の多様な情報を活用しながら判断されている。

     このような多様な視点からの情報を効果的に分析するツールとして、レーティング手法が用いられている。レーティングには手法に内在する多くの制約があるものの、実務的に有用なツールであるため、多くの政府によって使用されている。業績に加えてそれ以外の情報も含めて構築されたレーティングの結果は、予算配分の決定にやや直接的に反映されている。

実践・調査報告
  • -バングラデシュNGOでの実践から4つの特色を考察する-
    田中 博
    2014 年 14 巻 2 号 p. 61-77
    発行日: 2014/12/26
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     MSC(Most Significant Change)は、欧米の国際NGOが活用する参加型モニタリング・評価手法である。筆者は、MSCが日本のNGOにおいて学習目的のプロジェクト評価に効果的と考え、その特色を文献及びバングラデシュNGOでの実践において4つの視点から考察した。4視点とは、①モニタリング及び評価手法である、②参加型評価手法である、③質的分析手法である、④組織学習の手段である、の4つである。実践の結果、参加型評価の長所である利害関係者の意識啓発、能力開発、相互理解につながる学習効果が確認された。また参加型評価の課題である「妥当性」や「代表性」の問題を緩和する機能が一定程度観察された。効果的なMSC実施にあたっては、プロジェクト開始時からの継続的実施や、スタッフのインタビュー技術等の能力開発が求められる。日本のNGOが今後MSCを活用していくためには、MSCによる評価の意義のさらなる考察や、日本のNGOの評価の現状を把握し、導入の意義と可能性を検討していく必要がある。

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