日本評価研究
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4 巻, 2 号
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  • 多元的視点による政策評価の一考察
    田中 由美子
    2004 年 4 巻 2 号 p. 1-12
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    本論文の主目的は、国際協力におけるジェンダー主流化の概念を明確にし、総合的なジェンダー政策分析および評価の手法を探ることである。この分析評価手法は、我が国の国際協力および他の国際援助機関においても十分に検証されておらず、先行事例研究に基づく試みが始まったばかりである。ジェンダー主流化とは、ジェンダーと開発 (GAD) を開発の重点課題とし、ジェンダー平等を進めるための包括的取組みであり、ジェンダー平等の視点を全ての政策・施策・事業の企画立案段階から組み込んでいくことをいう。ジェンダー平等視点に立って計画・実施・モニタリング・評価を行う過程であり、政策等のジェンダー分析や男女影響評価の実施が前提となる。
  • 菊田 怜子, 牟田 博光
    2004 年 4 巻 2 号 p. 13-26
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    アジア生産性機構 (APO) は地域社会総合開発に関する研修プログラムを実施しているが、本研究は研修がいかなる効果を与えているか、その効果は費用に見合うものであるか、効果的な研修を実施するための改善方策は何か、を明らかにする。研修生は平均して研修内容の70.3%を習得し、習得した知識・技術のうちの62.2%が仕事で使用されている。研修後、多くの参加者は、講演、セミナー、論文執筆などのさまざまな活動を通して研修成果を伝達している。研修成果を伝達した相手が研修生と同程度の知識・技術を習得した場合に研修生と同じ研修効果が生じるものと仮定すると、講演・セミナー等を通して知識・技術を伝達したと換算された人数は1年に1.88人である。さらに、論文等も含め、全ての伝達手段の場合で換算した人数は、1年間に2.47人である。研修の効果を支払意思額により推定すると、費用に十分見合う効果を挙げている。インプットからアウトカムに至るプロセスの構造的な分析結果からは、研修の成果を高めるには、適切な人選、効果的・効率的な研修、研修成果の活用・普及、にそって具体的改善を行うことが重要であることが明らかになった。
  • 有効な外部評価制度の条件を求めて
    平松 英哉
    2004 年 4 巻 2 号 p. 27-38
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    これまで、わが国の評価制度は内部評価制度に重点を置くかたちで発展してきたが、近年外部評価制度に求められる役割も高まりつつある。しかし、わが国における外部評価制度は未発達であり、現在でも試行錯誤の段階にあるように見える。
    本稿ではイギリスの会計検査院 (NAO) による最近の評価事例 (大気汚染度改善政策、NHS救急指定病院における病床管理、およびNHS救急指定病院における退院遅延問題) を取り上げ、これらがいかに政府の意思決定改善ならびにアカウンタビリティの確保に寄与しているかを示した。またNAOがこのような評価活動を可能にしている要因を明らかにし、それをもとにわが国の中央・地方政府における外部評価制度への提言を試みている。
  • インドネシアとタイに対する日本の留学生政策評価
    佐藤 由利子
    2004 年 4 巻 2 号 p. 39-56
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    本稿ではインドネシアとタイの元国費、元私費の日本留学生、元米国留学生、非留学者のアンケート回答の比較分析により、両国に対する日本の国費、私費の留学生政策が、人材養成 (開発) と日本との友好関係の促進 (国益) という2つの政策目標をどのように達成し、投入予算と比較してどれだけのインパクトを与えてきたか可能な限り定量的に評価する。
    評価手法としては、Project Design Matrixを上位の政策レベルにシフトして作成した政策評価マトリックスという枠組みを用いる。PEMによる政策評価の利点は、施策、投入、施策担当機関、政策アウトプット、政策成果、外部条件を考慮した上で、目標の達成度、インパクト、効率について総合的な評価を行えること、指標や指標入手手段を記載することにより評価調査の設計が容易になることが挙げられる。
    評価の結果、1) 人材養成の視点からも友好関係促進の視点からも両国への国費、私費の留学生政策は政策目標をほぼ達成していること、2) タイのように私費留学する人口層が比較的厚い中進国においては、少ない予算で政策効率のよい私費政策を拡充すべきこと等が明らかとなった。PEMを活用した定量的本評価手法は他の政策評価にも応用可能である。
  • ネパール国における結核対策プロジェクトを中心として
    泉田 晃彦
    2004 年 4 巻 2 号 p. 57-70
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    当該プロジェクトが成功するのか、失敗するのか、もしくは、より良い効果を成し得るのかどうか、どのような諸要因が当該プロジェクトに影響を与え、どのような因果関係そして、どのような相互作用が妥当性、有効性、効率性、インパクト、自立発展性に影響するのか、しかし三好も指摘しているように、これまでの評価の議論においては、その大半が評価の枠組みや方法に関する論議であり、評価をいかに個々の事業活動や組織活動の改善等に役立てるかといった観点からの議論はほとんど行なわれてこなかった。また事前に設定されたプロジェクトの目標が達成されたかどうかを考察するだけでは各段階におけるプロセス評価が等閑となり、事業改善にとって重要となる評価のフィードバック効果も期待できない。本研究においては感染症対策、特に結核対策プロジェクトに焦点を当て検証することとなるが、その際、どのような因果関係及び相互作用が当該プロジェクトの主要因となっているのかを抽出することによって、同分野における事業改善にも寄与するものと考える。事業評価が成熟することを通して、より効果的なそして効率的で、国民にも透明性の高い事業の実現へとつながる。本研究においては、上記の概念をもとに、開発途上国で実施されてきた結核対策プロジェクトをプロジェクト評価するものである。
  • 中南米シャーガス病対策の事例より
    中川 淳
    2004 年 4 巻 2 号 p. 71-81
    発行日: 2004/09/29
    公開日: 2010/06/15
    ジャーナル フリー
    シャーガス病は中南米に広く分布する深刻な感染症であるが、域内対策イニシアチブが成果を挙げ、5カ国で感染の中断が「認定」されている。米州保健機構 (PAHO) が支援する対策イニシアチブのモニタリング・評価は「域内年次会議」と「PAHO評価団」を中心に実施される。このモニタリング・評価の目的には目標達成度の評価のみならず技術交換やキャパシティ・ビルディングも含まれ、各国やドナー機関の関係者が広く参加して実施される。
    国際協力機構 (JICA) が協力するグアテマラ国シャーガス病対策は域内イニシアチブのモニタリング・評価に参加することで (ア) PAHO・グアテマラ・JICA間の相互強化、(イ) 関係者の能力向上、(ウ) 域内協力の活性化、等の利益があった。シャーガス病対策のモニタリング・評価は技術面に限られており、今後はJICAとPAHOが相互補完して包括的な評価をすることが望まれる。
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