本稿ではインドネシアとタイの元国費、元私費の日本留学生、元米国留学生、非留学者のアンケート回答の比較分析により、両国に対する日本の国費、私費の留学生政策が、人材養成 (開発) と日本との友好関係の促進 (国益) という2つの政策目標をどのように達成し、投入予算と比較してどれだけのインパクトを与えてきたか可能な限り定量的に評価する。
評価手法としては、Project Design Matrixを上位の政策レベルにシフトして作成した政策評価マトリックスという枠組みを用いる。PEMによる政策評価の利点は、施策、投入、施策担当機関、政策アウトプット、政策成果、外部条件を考慮した上で、目標の達成度、インパクト、効率について総合的な評価を行えること、指標や指標入手手段を記載することにより評価調査の設計が容易になることが挙げられる。
評価の結果、1) 人材養成の視点からも友好関係促進の視点からも両国への国費、私費の留学生政策は政策目標をほぼ達成していること、2) タイのように私費留学する人口層が比較的厚い中進国においては、少ない予算で政策効率のよい私費政策を拡充すべきこと等が明らかとなった。PEMを活用した定量的本評価手法は他の政策評価にも応用可能である。
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