廃棄物資源循環学会論文誌
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26 巻
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論文
  • 石川 晴菜, 中谷 隼, 菊池 康紀, 平尾 雅彦
    2015 年 26 巻 p. 1-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/13
    ジャーナル フリー
    リサイクルシステムは廃棄物処理としての機能と再生原料生産としての機能の両面をもち,廃棄物の排出量や再生原料の需要等,さまざまな条件に規定される。これらの条件の中には変動性をもつものがあり,リサイクル施設の処理能力の不足等,さまざまな変動リスクの要因となる。本稿では,プロセス制御やサプライチェーン管理に用いられてきた頑健性および柔軟性の考え方を応用することで,変動リスクに対する頑健性・柔軟性を考慮したリサイクルシステム設計のフレームワークを構築した。まず,リサイクルシステムの評価指標に求められる要件を検討した上で,頑健性と柔軟性の評価指標を定義した。また,頑健性・柔軟性の評価に基づく代替案の生成手法を提示した。構築したフレームワークを国内のペットボトルリサイクルのケーススタディに適用し,リサイクル技術ごとの施設能力といった要素の設計変更による代替システムの評価・生成を実践した。
  • 飯島 伸介, 内田 遼, 久保 隆之, 窪田 光宏, 松田 仁樹, 後夷 光一, 黄 立維
    2015 年 26 巻 p. 16-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/13
    ジャーナル フリー
    ジクロロメタンの常温,空気流通下での非平衡プラズマ反応器内での分解および無機化特性に対するα-Al2O3, BaTiO3, γ-Al2O3, Pt/γ-Al2O3の4種類の誘電体粒子の影響を調べた。
     その結果,すべての粒子で印加電力40W以上においてジクロロメタン分解率は90%以上,無機化率は80%以上が得られた。このとき,γ-Al2O3およびPt/γ-Al2O3では触媒効果によってα-Al2O3やBaTiO3よりもCO2選択率が増加し,ジクロロメタンの分解で生成したClはγ-Al2O3およびPt/γ-Al2O3表面に吸着されることがわかった。また,γ-Al2O3におけるジクロロメタンの分解ではCO2選択率は94%から30%へ減少した後,一定となった。一方,α-Al2O3では印加電力50W以上において,ほぼすべてのClはHClおよびCl2となって系外に排気されることがわかった。
  • 岡野 多門, 加藤 郁美
    2015 年 26 巻 p. 25-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    海に流出した浮遊ごみの一部は海岸に漂着するため,漂着量は各国での固形廃棄物の管理体制の指標となる。ここでは日本からのごみの流出抑制を目的として,鳥取県の8海岸の延べ4 km区間で,8年間半の毎月の漂着ごみ量を測定した。その結果,漁業ごみが最も多く,ロープ,フロート,20 Lプラスチック容器の3種の年間平均漂着重量は約65 kg/(hm・y) であった。日本製漁具は少なかったが,飲料や洗剤,調味料容器,耐圧缶,およびライターの民生ごみの年間平均漂着重量は約28 kg/(hm・y) で,その約半分が日本のごみであった。最も深刻な日本ごみは小型のペットボトルで,近くの河川流域と海浜周辺で投棄されていた。この2つの投棄地からの漂着数の比は大型ペットボトルとタブ型飲料缶を説明変数とする重回帰分析で推定できる。これは漂着数と海浜での投棄数を推定するための初めての方法で,実効性のある排出防止対策の実施に利用できる。
  • 髙橋 滋敏, 黄 仁姫, 松尾 孝之, 松藤 敏彦, 角田 芳忠
    2015 年 26 巻 p. 38-48
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/29
    ジャーナル フリー
    ある産業廃棄物焼却処理施設で炉内へのリン酸廃液噴霧時にバグフィルターの圧力損失 (BF差圧) が低下したとの事例が報告された。リン酸廃液噴霧によるBF差圧低下メカニズムを知るために,当該焼却施設でのリン酸廃液噴霧実績データを分析するとともに,BF差圧低下に関する仮説をもとにリン酸廃液の炉内噴霧実験を2回行った。実績データ分析の結果,リン酸廃液噴霧時のBF差圧低下現象には再現性があり,廃液中のリン酸がその効果の原因物質であることが示唆された。また,炉内噴霧実験結果から,BF差圧低下はリン化合物によるダストの凝集・大粒径化に起因したろ布付着灰層の通気性の向上と,払落量の増加により得られる効果であることがわかった。なお,リン酸廃液噴霧時に誘引通風機での消費電力量が低下することも確認された。このことから,リン酸廃液噴霧によるBF差圧低減効果で廃棄物焼却施設の運転コストの削減可能性が示された。
  • 釜田 陽介, 佐藤 淳, 上林 史朗, 阿部 清一
    2015 年 26 巻 p. 49-60
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/10
    ジャーナル フリー
    廃棄物溶融スラグの組成と公定法でのPb溶出挙動との関係解明を目的として,光学的塩基度を組成の指標に用いて,各種元素の試薬をスラグに添加,再溶融して評価した試薬添加試験と,実施設スラグの溶出挙動を調査した実スラグ試験を行った。試薬添加試験においては,酸溶出条件では,Pb溶出率が光学的塩基度と正の相関を示した。水溶出条件では,光学的塩基度が高いスラグほど溶出液pHが高く,溶出液pHが高いと,PbはpH9~11において水酸化物等として不溶化するため溶出濃度は低かった。実スラグ試験においては,全体的な傾向は試薬添加試験と同様であったが,データの相関性が低下した。Pbの溶出要因を十分に考察するためには,スラグの粒径の違い,Pb形態の違いも考慮した評価が必要であると考えられた。水溶出条件では,Pbについては含有濃度が低かったため明確な検証はできなかった。
  • 中村 章, 木ノ下 誠二, 傳田 知広, 岩﨑 敏彦, 石井 一洋
    2015 年 26 巻 p. 61-70
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/14
    ジャーナル フリー
    流動層式汚泥焼却炉において,排ガス測定を行い,特に温度とHCN濃度に着目し,N2Oの生成分解挙動について考察した。また測定結果を,素反応機構を用いた数値シミュレーション結果と比較し,燃焼状況を改善させるための検討ツールとして数値シミュレーションを用いる場合の有効性と,N2Oの低減方法について考察を行った。これにより,炉出口N2O濃度を50ppm以下とするためには,850℃以上となる燃焼ガスのフリーボード滞留時間を4秒以上確保することが肝要であること,フリーボード下部HCN濃度と炉出口N2O濃度には正の相関があることが,測定結果と数値シミュレーション結果の両方から明らかとなった。数値シミュレーションの結果は,各素反応機構に対して適正な温度範囲において有効であり,燃焼状況を改善させるための検討ツールとして用いる場合,初期温度条件に応じた最適な素反応機構の選択が重要であることがわかった。
  • 小島 英子, 大迫 政浩, 原 誠宏, 秋山 貴
    2015 年 26 巻 p. 71-83
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    「市町村における循環型社会づくりに向けた一般廃棄物処理システムの指針 (環境省) 」 のもつコミュニケーション・ツールとしての側面に着目し,情報提供が住民評価に与える影響を検討した。対象4市のごみ発生・処理状況を説明する図 (状況図) を指針に基づいて作成し,状況図を提示する回答群と提示しない回答群の2群に分けて,アンケート調査を行った。
    状況図による情報提供は,廃棄物施策に対する評価を厳しくする,または評価の判断材料にならない場合があることが示唆された。情報提供の際はデータの客観性を担保しつつ,解釈や関連情報を適切に付記する重要性を指摘した。また,住民は廃棄物行政に対する認識や信頼,支持の度合いが高ければ,ネガティブな情報に対しても過度に反応しないことが推察された。指針に基づく情報提供を,行政と住民の共通のコミュニケーション・ツールとして活用しつつ,信頼関係を築くことの重要性を指摘した。
  • 佐野 彰, 稲葉 陸太, 田崎 智宏
    2015 年 26 巻 p. 89-103
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,メタン発酵に関するバイオマス利用シナリオを設定し,市町村ごとの液肥需給比を算出した。さらに,隣接市町村間の広域連携による需給比の改善を図った。これらの結果は,需給が完全に一致する需給比1を基準にした4つの区分で地図表示した。市町村ごとに液肥利用する場合,生活系バイオマスの利用シナリオで需給比が均衡する市町村は多く,都道府県単位での差異も大きかった。また,この分析で市町村内での液肥利用が効果的な地域が示された。広域連携で液肥利用する場合,畜産系バイオマスの利用シナリオで需給比改善の効果が大きくなった。また,この分析で広域連携によって液肥利用の進展が期待できる地域が把握された。地方単位では,九州地方,東北地方と北海道地方で広域連携による需給比の改善効果が顕著にみられた。また,佐賀県を事例にした分析では,バイオマス投入量の調整や液肥利用の計画的実施等,市町村の状況に応じた対策を提示できた。
  • 泉 優佳理, 白井 義人
    2015 年 26 巻 p. 104-116
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/05
    ジャーナル フリー
    環境技術を一般の人にわかりやすく伝えることは,有効なリサイクルの実現や廃棄物問題に関するリスクコミュニケーションにおいて重要である。そこで,ある金属回収技術を題材にして,その技術と社会的意義をスノーボールサンプリングで集めた101人の一般の人に,短時間で伝える試みをした。参加者の理解度を複数の質問票とインタビューで確認した結果,要点はおおむね良好に伝わったが,日頃使わない理科用語や元素記号は理解を阻害すること,知識の獲得としての理解と「わかった」という感覚の両面を得るためにはプロセスと社会的意義の両方の理解が必要であることなどがわかった。また,理科学習歴の長い人は理解度が高く,理科教育終了から長い時間を経過しても理解度は大きく落ちなかった。理系か否かの意識の違いは理解度に影響はなかったが,60代以上の年齢層では違いもみられた。住民説明会参加者にも多いこの年齢層にいかに伝達するかも重要とわかった。
  • ――利用意向に影響する心理的要因――
    小島 英子, 多島 良, 朱 文率, 佐藤 昌宏, 松神 秀徳, 神保 有亮
    2015 年 26 巻 p. 117-127
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,高齢化に伴う廃棄物管理上の課題である高齢者へのごみ出し支援を取りあげ,支援制度の利用意向に影響する心理的要因の解明を目的とした。茨城県つくば市の森の里団地を対象にアンケート調査を行い,自治会による共助の制度と行政による公助の制度とで,心理的要因に違いがあるか解析した。
    支援制度の利用意向には,「身体的負担感」と「精神的負担感」から形成される「ごみ出しの負担感」に加え,「社会との繋がり・安心」や「プライバシー・遠慮」等の心理的要因が影響していた。公助に対しては安否確認等で「社会との繋がり・安心」が得られることを期待する人の利用意向が高いのに対し,共助では近隣住民にごみを見られたくないという「プライバシーや遠慮」が働き,制度の利用をためらう傾向がみられた。自治体には,こうした高齢者のニーズを踏まえ,公助と共助の最適な組み合わせによる支援の仕組みを構築することが望まれることを指摘した。
  • 久保 隆之, 窪田 光宏, 松田 仁樹, 飯島 伸介
    2015 年 26 巻 p. 128-136
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/18
    ジャーナル フリー
    非平衡プラズマによる低濃度VOCの効率的な処理を目的として,BaTiO3, α-Al2O3の2種類の誘電体粒子 (平均粒径1mm) を充填したプラズマ反応器を用いたアセトアルデヒドの分解実験を行った。その結果,BaTiO3充填,印加電圧10kV以上の条件で,アセトアルデヒドの分解率は95%以上に達し,主な生成物としてCOおよびCO2が検出された。アセトアルデヒドの分解は電子あるいはラジカルとの反応により起こり,大部分はCO2へと転化されるが,印加電圧を増加するとCO2の一部はCOに分解した。また,加湿・低印加電圧条件ではアセトアルデヒドの分解は阻害されるが,無機化率およびCO2選択率は増大した。これはH2Oと電子の反応によりアセトアルデヒド分解のためのエネルギーが減少するとともに,生成したOHラジカルによりCO酸化が促進され,かつCO2からCOへの還元が阻害されたためと考えられる。
  • 姉崎 正治, 山本 高郁, 三好 恵真子
    2015 年 26 巻 p. 137-147
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/05
    ジャーナル フリー
    本論文では,10 mm 以下に1次破砕した使用済み携帯電話砕片の水平ブレード付きの回分式高速回転ミルによる粉砕過程に注目した。その動力学的特性の比較検討から,2 mm 以下の砕製物に貴金属元素が濃集する優位な回収条件を明らかにした。実験では50~400 g の携帯電話砕片を砕料として,粉砕中の粒度変化および破砕室の温度変化等を追跡した。その結果,砕片の粉砕過程を1次式の速度過程として解析できた。さらに,このカッティングミルと翼型撹拌装置の相似性に着目し,2 mm 以下の粉砕重量比とブレード先端周速度の3乗値との間に一定の関係性を見出した。またスクリーンミルで,粉砕中に微粉部分を除去した場合,2 mm 以下の粉体中への金の濃集率が低下したことから,携帯電話砕片の粉砕中に貴金属を分離回収する方法として,スクリーンミルは得策ではないこと,および破砕室内の砕製物の絶対量とその循環流が重要であることが示唆された。
  • 姉崎 正治, 山本 高郁, 三好 恵真子
    2015 年 26 巻 p. 148-159
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/05
    ジャーナル フリー
    使用済み携帯電話を対象とし,1次破砕で10 mm 以下の砕片にした後,回分式の水平ブレード式高速カッティングミルによる2次破砕中の粒度分布の変化,ならびに貴金属4元素(金,銀,白金,パラジウム)の濃集挙動を追跡した。ブレード先端の周速度が200 m/s 前後で,10秒程度の粉砕により金,銀,パラジウムの90 %以上が2 mm 以下の細粉側に濃集し,白金の80 % 以上が2 mm 以上の粗粉側に残留する遅延現象が確認された。この結果により,本プロセスにおいては,2 mm 近傍での分級・分離が一つの指標になりうることが導かれた。また,白金の遅延現象が鉄の挙動と密接な関係があることがわかった。この粉砕過程を一次反応と仮定して解析した結果,速度定数は軸回転速度の3乗に依存することが判明した。孔径を2 mm にしたスクリーンミルの場合には,2 mm 以下の回収率が同一でも,0.5 mm 以下の微粉の減少により,金の回収率は低下した。
研究ノート
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