スポーツ社会学研究
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22 巻 , 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
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特集のねらい
原著論文
  • 松村 和則
    22 巻 (2014) 2 号 p. 9-21
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
     本稿は、スポーツ社会学における質的アプローチ研究の到達点ともいえるL.ヴァカンの『ボディ&ソウル』と石岡丈昇の『ローカルボクサーと貧困世界』のエスノグラフィーを「事例」として取り上げ、P.ブルデューがめざした「理論研究と経験的研究」の「融合」、すなわち反省と観察とを混ぜ合わせる手法の実際を検討することが目的である。この2 つの「事例」の展開を跡付けるとともに、研究者がフィールドで何を考え、何をなそうとしているのかという地点では留まれない。その作業は、彼らの「視点」を探るのみならず、彼らのフィールドにおける「経験」に降りて(時間の蓄積)、対象との距離感を測ること、さらに理論を実践しようとする自ら(研究者)がその場に位置づけられていることを知り、それを記述する実践に(研究者を)向かわせる。
     こうした作業を経て、「二重の負い目」という経験的事実を再確認する。それは、研究対象者同士のそれとその場に参与する研究者の負い目が重なり合っていることを検証する「客観化の客観化」実践である。さらに、民俗学者の菅豊は「大文字の学知」への「負い目」を眼前化させ、被災した地域に自らを縛ることで研究実践と社会実践の「融合」をめざす提案をした。
     この「反省的社会学」の実践は、スポーツ社会学という研究フィールドに生成する「制度化」の罠を眼前化させ、その研究者集団の企てを客観化することに留まらず、研究者自己の「経験」を披歴することを要請する。
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  • 夏苅 郁子
    22 巻 (2014) 2 号 p. 23-38
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
     私は児童精神科医であるが、同時に統合失調症の母親を持つ「ヤングケアラー」であった。生い立ちが人格に与えた影響は深刻で、青年期に逸脱行為を繰り返して精神科を受診し精神科薬を服用した患者でもあった。
     数年前に母親のことを公表し、家族・患者・精神科医の「三身一体」が現在の自分だと考えるようになってから、この三つの間の境界線は私には非常に低くなった。
     しかし公表前は「内なるスティグマ」を抱え、それは診療にも影響した。患者を「守る」と称して、実は患者の回復力を信じず「遠巻きにして」踏み込まない姿勢をとってきた。
     精神疾患に対するスティグマは、いつの時代にも患者・家族の回復を阻む要因となってきたが、スティグマは精神の世界に限らない。
     本誌には、民族・貧富・学歴・文化などによる社会格差・スティグマに言及した論文が掲載されている。そうした社会構造上の境界線をスポーツの関与により人が越境していく過程や、スポーツを通して獲得する「向上心」の及ぼす力は、精神疾患の人が目指す「リカバリー」への大きなヒントになり得ると思う。
     「当事者を守る」ことは、支援者側の健常観がまず先にあることが多い。「健常と病」の間に境界線を引き、当事者が当事者の領域に存在することを期待し、その行動や希望に限界を設定する行為にもなりかねない。
     本当の意味で「守る」とは、疾患や障害の否定と言う意味ではなく「境界線に固執せず」に当事者自身の意志や希望を尊重すること、たとえ支援者の価値観とは異なっていても当事者の行動を支えることではないか。重度の疾患であっても、対象者の中に内在しているレジリエンスを見つけだしリカバリーへ繋げることが「守る」ことだと考える。
     以上について、精神医学が意味するリカバリーの概念にも言及し、事例をあげて検討した。
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  • 松澤 和正
    22 巻 (2014) 2 号 p. 39-52
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
     エスノグラフィーは、自分の世界とは異なる世界に出かけていき、その世界や人々の生活や社会、文化などを知ろうとする方法である。ただし、そうしたあり方のなにがしかは、すでに私たちが生きているということのなかにも内在している。なぜなら、私たちが生きるということは、多かれ少なかれ、常に新たな世界や経験に出会い、それをわかろうとすることの繰り返しだからだ。従って、そのような広い意味でのエスノグラフィーを「生きていることに伴うエスノグラフィー」と呼び、他方、研究対象を限定して研究者が実施するものを「研究に伴うエスノグラフィー」と呼ぶことができる。
     「研究的臨床実践」とは、臨床の専門職などが、毎日の臨床実践に習熟しなかばパターンのように仕事をこなしている状況において、それを少しでも研究的に対象化することで、結果的により深い実践的課題にアプローチしようとするものである。これは、いかなる専門職や現場においても重要な実践的態度であり方法である。そして、この「研究的臨床実践」に必要な方法こそ、先の「生きていることに伴うエスノグラフィー」であると思われる。その場合のエスノグラフィーとは、どのような概念的且つ実践的方法論として捉えればよいかについて議論した。つまり、エスノグラフィーの質的研究方法におけるシークエンス分析の適応と、そのための記録の方法について議論し試案を提示した。
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  • 渡 正
    22 巻 (2014) 2 号 p. 53-65
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は、スポーツ社会学が質的研究を行う上で重要だと考えられる論点を提示することにある。それは端的に言ってそのスポーツ実践がもつ固有の論理を描くべきだという点に尽きるだろう。スポーツ実践固有の論理を見つめることによって、スポーツ実践の中に研究対象の「社会的なるもの」を描くことが質的研究のダイナミクスである。だが、これまでのスポーツ社会学は、こうした「スポーツ実践固有の論理」を描くことにどこまで自覚的だったろうか。
     かつての機能主義的なスポーツ社会学においては、「スポーツを社会に従属するもの」と想定し、全体社会の変化や特徴がスポーツにそのまま反映されるという立場をとった。ここで採用されたスポーツと社会の関係性のありようは、今なお質的研究を行おうとする際に陥りやすいものでもある。そこで、スポーツ実践固有の論理を描いた最近の研究としてフィリピンのローカルボクサーと車椅子バスケットボール実践のエスノグラフィを取り上げた。
     前者は、スポーツ実践とそれが存立する社会的機制を問題化し、その交差点にボクサーの日常、つまりスポーツの経験があるとする。後者は、スポーツ実践のさなかに様々な「社会なるもの(the social)」が現出するとする。つまり、スポーツの経験とは、その実践の文脈における相互行為とし て達成されるものと捉える。いずれにせよ、この二つのスポーツ実践の質的研究は、当事者たちの実践が行われるその「固有の論理」に照準し、質的な調査や分析はその把握のために用いられている。 「固有の実践の論理」を描くことを重視する立場は、スポーツをとりまく社会的事実(社会構造や規範)を外挿することでスポーツ実践を説明しないという態度でもある。徹底して相互行為の中で/中からスポーツ実践を捉え、その実践の固有の論理を描くことが、スポーツの経験を社会学することなのだろう。
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  • 海老原 修
    22 巻 (2014) 2 号 p. 67-82
    公開日: 2016/07/02
    ジャーナル フリー
     社会科学による質的なデータの数量化は主に同じ土俵上での相対的な重みづけを志向しており、変換されたダミー変数は説明変数であって被説明変数にはなりにくい。量的研究が質的現象を説明するのか、質的研究が量的現象を説明するのか。はたして、両者は対称的な位置づけなのか、もしかすると非対称ではないだろうか。このスタンスに基づき、体育・スポーツ研究領域で長い間、普遍的なデータを提供している内閣府「体力・スポーツに関する世論調査」に質的研究事例を、文部科学省「体力・運動能力調査報告書」に量的研究事例を求めて、それぞれの解釈と課題を提供した。 質的なデータが示す時系列分析は当事者のみならず社会の変容を理解する好材料を呈示する。一方で、量的データはウソをつくかもしれない。平均値の表示は作為的か不作為か判然としないが、体力低下がまやかしである可能性を教えてくれる。2人の得点が50点ならば平均値は50点であるが、2回目に1人が0点となってしまった。したがって平均点50を維持するには残る1人が100点を取らねばならない。3人の平均値が50点であるが、2回目には2人が0点となってしまったので、残る1人は150点を獲得しなければならない。平均点を表示する体力・運動能力の年次推移の背後には、運動やスポーツを行なったりやめたりする子どもたちの運動習慣の変動があり、運動実施状況別にたどると体力・運動能力そのものは不変である可能性が浮かび上がる。このような錯誤を指弾する姿勢は肉感的なフィールドワークによってかたちづくられる、ほんとかしらん、なぜなのかしらん、といった不思議の開陳である。聞き取りや参与観察、インタビューなど質的なアプローチが、研究対象にたいして多元的・多段階的な昆虫の複眼と単眼による量的な分析を刺激し続けている。
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