本論文は, ロボット制御システムにおける並行プロセス指向言語COLおよび仮想マシン (COLマシン) のインプリメントに関するものである.これまでに独立に開発された個々の機能を統合して高度な機能をもつシステムロボットを構成する場合, ただ単にハードウエアを結合しただけでは不十分で, 各機能の制御ソフトウエアをも有機的に結合しなければならない.このとき各機能の制御ソフトウエアを並行して実行されるプロセス (並行プロセス) として記述できれば簡潔明瞭なプログラムになることが多い.このようなソフトウエアを既存のプログラミング言語を用いて記述しようとすると, 並行プロセスの記述能力が低いため, 各機能の制御プログラムとプロセスのスケジューリング・ソフトとを同じプログラム中に混在させてしまうことになる.このため, プログラムの作成や, 時間に依存する誤りのデバッグに多大な時間を浪費することが多い.
これに対しCOLは並行プロセスの記述能力を強化した言語であり, 次の各機能を有する: (1) 並行プロセス処理能力, (2) イベント処理能力, (3) 優先度処理能力, (4) 共有変数処理能力, (5) 実時間処理能力, (6) 入出力処理機能, (7) 割込み処理機能, (8) プロセスの状態制御機能.COLの処理系は次の2つの部分からなる.P-codeを生成するコンパイラ部分とP-codeを実行するインタプリタ部分である.
COLを用いてマニピュレータの指先に実装したタッチセンサの管理, 座標変換, 軌道の計画, フィードバック機能等を記述した.そして, 実際にCOLマシンでマニピュレータを制御した.さらに, COLマシンの性能解析を行った.
COLはただ単にロボット制御用言語ではなく, COLを用いることによってランタイム・システムを含むロボット制御システム全体を記述することが可能である.また, このシステムでは新たに開発される様々な機能を容易にシステムに取り込むことが可能である.
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