土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
68 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.28
  • 牧野 秀成, 塩谷 茂明, 木村 法由, 浅野 一郎
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1199-I_1203
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,船舶の海上交通において海難防止を目的とした新たな航海情報支援システムの構築を目指す.今回は,第一報として,全周囲カメラを用いた視覚的情報提供に関する手法を提案した.これは,全周囲カメラにより撮影された画像に,その地点の位置情報を付加し,地理情報システムを用いた地図上で重畳表示を行うものである.これにより,操船者は通常使用されている海図等の二次元情報に加え,特に要所地点において周囲の環境を可視化することでより効果的な情報を取得できるため非常に有効である.さらに,出航前に初めて航海する海域を模擬航海するなどの使用により,操船者の安心感を増す航海情報の提供として海難防止にも寄与できる.
  • 間瀬 肇, 安田 誠宏, 池本 藍, Tracey H. A. TOM, 森 信人
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1204-I_1208
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     洋上風力発電施設のオペレーション,タンカーの港への入港判断,フェリーの運航判断,マリンレジャーの計画等に利用可能な風と波浪の予測情報の予測・表示システムを開発した.予測情報は,リードタイム,予測期間,利用目的によって予測値の利用価値が決まる.洋上風力発電施設のオペレーション・アンド・メンテナンスの工程計画には1週間先,ケーソン据付等の港湾・海洋工事に対しては3~4日先,海水浴,サーフィン,ヨット等の海浜・海域利用では2~3日先の情報が必要であるので,それらに応じた予測情報を得られるようにしたシステム開発を行った.
  • 野志 保仁, 宇多 高明, 清水 達也, 熊田 貴之, 冨澤 和雄, 川瀬 栄, 下木 豪
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1209-I_1214
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     九十九里浜南端部に位置する一宮海岸は有名なサーフスポットのひとつである.とくに一宮海岸に設置されている7~10号ヘッドランド間では,夏季の南東からの入射条件下でサーフィンに都合のよい波が立つと言われている.本研究では,太東崎沖に発達する広大な岩礁帯(器械根)による屈折回折効果を波浪場の計算により検討することにより,当該区域のサーフスポットの成立理由を明らかにした.この結果,夏季には,沖合にある器械根による屈折・回折が著しいことから,一宮川河口から太東漁港までの全域でサーフィンに都合のよい波が立つことが分かった.
  • 小嶋 博明, 高橋 敏彦, 新井 信一
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1215-I_1220
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本研究は,海岸環境の向上や海岸保全の一助となる基礎データの蒐集を目的として,仙台新港におけるサーファーの海岸利用動向や海岸環境に関する調査を行った.主な内容は,現地の海岸利用状況と波浪の関係やアンケート調査である.現地調査は,2004年から2010年までの7年間で夏場の全曜日を含む7日間,アンケート調査は2010年に行った.現地調査より,サーファーの約10%が女性であり,多くのサーファーが午後より午前中に海岸を利用している.サーファーが一定以上集まる砕波波高は1.3~1.8mであり,1/3最大砕波継続時間は11~18秒であった.アンケート調査によると,近年総合的に海岸環境は,良くなった,変わらない,悪くなったと感じているサーファーはそれぞれ約30%であった.
  • 宮川 昌志, 亀山 剛史, 藤原 宗弘, 安岡 かおり, 松内 勇貴, 末永 慶寛
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1221-I_1226
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     現在,我が国の水産資源増殖の施策として,稚魚放流事業と増殖場造成という2種類の事業が推進されている.しかし,それらが別々の行政部門で相互の連携が弱い状況で行われてきたため,造成された増殖場を稚魚放流場所として活用されることが不十分であった.また,元々,増殖場造成用の構造物は,放流用稚魚の保護を目的としていないため,それらの構造物に放流した場合,天敵生物による捕食により,稚魚放流後の歩留まりがほとんど期待できないという現状で,稚魚の資源への加入が困難という状況に陥っている.この問題を克服するために,岩礁性魚類幼稚魚にとって天敵生物からの捕食圧を低減し,保護される場所を提供することは,放流稚魚生残率を高めるために極めて有用なものとなる.しかし,放流稚魚の保護用に,適正な基質をどのような間隔で,どのように配置すればよいかという点について,これまで検討された例はなかったことから,本研究では,この点について解明することとした.
  • 市瀬 友啓, 中桐 栄, 島田 広昭, 古林 将
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1227-I_1232
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     水産資源の維持・増大と漁業経営の安定化に資するため,各地で漁場整備事業が実施されているが,こうした事業の定量的な効果算定を行うためには,継続的なモニタリング調査等が必要となり,費用面からも定性的な評価にとどまることが多いのが現状である.本研究では,HEPを応用して構築した予測モデルをマダイの漁場環境評価に適用しようとして以下の結論を得た.餌料環境のポテンシャルが向上し,マダイの生息環境は改善したことから,マダイの漁獲量は増加した可能性が示唆された.マダイの全漁獲量のうち約2割については,漁場造成に伴う餌料の増加が寄与する可能性が示唆された.本研究により得られたHEPを応用して構築した予測モデルは,評価海域の漁獲量の傾向だけでなく,マダイの餌料環境に着目した漁場環境評価に活用できることが示唆された.
  • 渡辺 雅子, 大塚 弘之, 上月 康則, 大田 直友, 河井 崇, 萬宮 竜典, 岡田 直也, 中野 晋
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1233-I_1237
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     希少種ルイスハンミョウの生息環境を代償する目的で,徳島県沖洲に人工海浜が造成された.ルイスハンミョウは海浜生態系の高次捕食者であるため,生息場所の物理的環境条件の模倣だけでなく,餌生物を含む海浜の食物連鎖の再現も目標とされた.人工海浜の概成後,2007-2010年におけるルイスハンミョウ出現数は年々増加しており,本ミチゲーション事業はその目的を達成したといえる.一方,希少種の保全と海浜の利活用を両立するためには,その主体となる地域住民とともに利活用のあり方を検討する必要がある.そこで,多様なステークホルダーによるワークショップが開催され,規制ルールが検討された.その結果,幼虫の生息環境保全のために人を対象とした侵入防止柵が設置され,また,環境維持におけるその有効性が検証された.このことから,協働による海浜の維持管理体制の構築の重要性が示唆された.
  • 西 隆一郎, 大牟田 一美, 相良 拓也, Arthur THUMBAS, 細谷 和範
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1238-I_1243
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     砂質性海浜に上陸・産卵するアカウミガメは絶滅危惧種であるために,海岸保全事業に関する代表的な指標動物となっている.しかしながら,台風の上陸時期と一部重なるアカウミガメの上陸・産卵の回数は毎年一定ではなく変動するので,その変動が海岸保全に起因するものか,海洋環境の変動に起因するものかの判断は難しい.本研究では,ウミガメの産卵が特に多い鹿児島県と宮崎県のデータ及び古くからの記録が残る徳島県の蒲生田海岸および日和佐海岸で記録された年毎の上陸数に基づいて上陸数指標(年毎の上陸数÷海域毎の既往最大上陸数×100)を計算し,異なる海岸での上陸数の比較を行う.また,日単位から数十年単位の異なる時間間隔での上陸数の変動特性を,海水温,黒潮の位置,年毎の台風上陸数との相関解析に基づいて検討する.
  • 森本 剣太郎, 橋本 なつみ, 増田 龍哉, 滝川 清
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1244-I_1249
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     八代海は潮位差が大きくために,塩生植物が繁茂・群落しやすい環境が整った海域である.しかしながら,干潟の減少や海岸線の人工化に伴って,他の動植物と同様に塩生植物も生育場を失いつつある.最近では,干潟の再生および生物多様性の推進が謳われ,塩生植物においても自生地保護の事業が行われている.八代海においては現存する塩生植物の分布や生育条件に関する情報がほとんどない状況にあり,本研究では八代海における塩生植物の繁茂状況および生育条件を確認するために50地点の現地調査を実施した.その結果,塩生植物は漁港等の遮蔽域や河川の汽水域で,小規模ながら現存していることを得た.また,ホソバノハマアカザは,他の塩生植物よりも塩分濃度が低く,地盤高の高い箇所に繁茂していることを得た.
  • 上村 了美, 吉田 潤, 岡田 知也, 古川 恵太
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1250-I_1255
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     本稿では,秋田港の大浜地区生物共生型実験護岸(以下,実験護岸)における初年度のモニタリング調査結果を報告するとともに,ハタハタの産卵場所として維持管理していく可能性についても言及した.
     調査の結果,実験護岸周辺は表層の塩分が低く,水深に伴う光量子の減衰が顕著という河口域の特色の下で,付着珪藻,アカオビシマハゼに代表される根魚,物質循環に寄与するとされるムラサキイガイやマナマコなどの生息場所になっていることが分かった.実験護岸前において,抱卵しているハタハタは採集できたが,護岸での産卵は確認できなかった.この原因は,産卵に適した大型海藻がほとんど出現しなかったことにあると推察された.実験護岸周辺の塩分と光量子が大型藻類の成長を阻害している可能性があり,このような場合の対策として,大型藻類を人工物で代替して産卵場としての機能を創出する方法が考えられた.その際には,事後のモニタリングによる効果の検証等を含めた維持管理が必要であると考えられた.
  • 小枩 裕典, 藤原 宗弘, 松内 勇貴, 宮川 昌志, 末永 慶寛
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1256-I_1261
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     瀬戸内各府県では,水産資源生産力向上や環境保全を目的にアマモ場造成事業が行われている.しかしながら,アマモ場造成適地である沿岸浅海域は,埋立地や港湾施設として利用されているため,新たな適地選定が求められている.香川県さぬき市津田湾では,1996年に離岸堤背後域へアマモ場造成が実施されて以降,アマモ生育場が拡大していることから,新たなアマモ場造成地として離岸堤背後域の活用が期待されている.本研究では,当該海域のアマモの観測結果および数値計算により,アマモ場の生育維持機能を評価し,海岸構造物を利用したアマモ場造成技術を検討した.その結果,離岸堤背後が好適なアマモの生育環境であることが判明した.一方,離岸堤背後で形成される静穏域が,アマモの生育阻害要因の発生に寄与することも明らかとなった.
  • 越川 義功, 日比野 忠史, 吉岡 一郎, 出路 康夫
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1262-I_1267
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     ヘドロが堆積した海域にアマモ場を再生するため,アマモに対する石炭灰造粒物の生育適性検討および広島港での石炭灰造粒物基盤によるアマモ増殖試験を行った.
     石炭灰造粒物におけるアマモの生育状況は,対照区である海浜砂と同様に分枝,活着し,その生長量,活着点数では有意な差は認められなかった.広島港に造成した石炭灰造粒物基盤は,造成初期に地盤変動が確認されたものの,導入したアマモ苗は流出対策を施すことによって定着し,草体数が200本以上に達した。この結果から,石炭灰造粒物で造成したアマモ生育基盤は、少ない移植本数のアマモでも効果的にアマモ場を形成する基盤として,有効に機能することが示唆された。
  • 佐藤 仁, 山本 潤, 山内 弘明, 今林 弘, 山下 俊彦
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1268-I_1273
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     砂浜域に位置する重要港湾釧路港の島防波堤では,浚渫土砂を利用した背後盛土により,浅場を利用した岩礁性藻場の創出機能を付加させている.本構造物の藻場機能については,初期段階の検討は行われているが,長期的な藻場の形成過程や環境条件などについては不明な点が多い.
     本研究は,長期間にわたる調査により,砂浜域に形成された岩礁性の藻場創出効果の持続要因について検討した.その結果,砂浜域に創出された背後盛土は,岩礁性の海藻群落が持続的に形成され,十分に藻場創出機能を有している.また,海藻着生は天端部に限られるが,濁りのある砂浜海域においても海藻の生育に必要な光環境が良好であることが判明した.
  • 酒向 章哲, 横山 大介, 中山 学之, 高橋 秀則, 廣部 俊夫, 鈴木 誉久, 藤井 良昭, 鳴海 日出人
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1274-I_1279
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     北海道南西部に位置する函館漁港は,荒天時における港内侵入波や北防波堤からの越波による港内擾乱により,陸揚岸壁において漁業作業に障害が発生している.また,北防波堤の前面水域は大型褐藻類が消失し,キタムラサキウニが優占する「磯焼け」が顕著に見られる.このため,北防波堤の改良において,重力式混成提の前面に潜提を設置した2重防波堤を採用し,藻場造成機能を付加した構造とした.本研究では,潜堤完成後のモニタリング調査から,潜堤及びその周辺における藻場造成状況等について報告する.
  • 横山 大介, 中山 学之, 高橋 秀則, 廣部 俊夫, 鈴木 誉久, 酒向 章哲, 秋田 雄大, 鳴海 日出人
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1280-I_1285
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     北海道南西部に位置する函館漁港の北防波堤は1960年に建設され,老朽化が進み,越波により岸壁への漁船係留および本施設背後のプレジャーボートの安全な係留に支障をきたしている.これらの支障を解消するため,2010年度より既設北防波堤約130mの改良を進めている.なお,改良にあたっては,本施設周辺の漁場は磯焼けが顕著にみられることから,重力式混成提の前面に潜提を設置した2重防波堤を採用し,藻場造成機能を付加する自然調和型の構造とした.潜堤の天端高さはウニの摂食行動を抑制する流速を発生させるためにDL-0.1mとした.本研究では,潜堤完成後に実施した潜堤および周辺海域における波浪・流況調査から,潜堤での波浪流速の制御効果等について報告する.
海洋開発論文集 Vol.28(第36回海洋開発シンポジウム特別セッションのまとめ)
  • 古川 恵太, 明田 定満, 鈴木 高二朗, 木村 克俊, 五明 美智男
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1286-I_1290
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     1970年代以降,閉鎖性水域の水質悪化の問題解決を目指して環境改善技術の開発が精力的に進められてきた.当初は対処療法的な環境改善技術が主体であったが,近年では,「自然共生型事業」や「影響の低減よりも回避」といった考え方が主流となり,環境改善技術もそうした流れを受けて変わりつつある.そこで,第35,36回海洋開発シンポジウムにおいて,「閉鎖性海域における環境改善技術」をテーマに特別セッションを実施し,その方向性,開発のロードマップについて議論した.その結果,短期的には,個別技術の高度化・汎用化・コストの削減をめざし,安全の確認を怠らず,効率の定量化とともに,適用範囲の明確化を行っていくことが期待されるとともに,将来的には,防災や利用といった側面との総合化を目指していくべきと結論付けられた.
  • 下迫 健一郎
    2012 年 68 巻 2 号 p. I_1291-I_1293
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/18
    ジャーナル フリー
     我が国における海域施設の設計・施工に関する技術は,被災によってもたらされた数多くの経験をもとに発展を遂げてきた.しかしながら,近年でも波浪による被災は依然として起きている.そのなかには過去の被災と同様の原因によるものも含まれており,これまでの経験が必ずしも活かされていないと考えられる.またその一方で,波浪等の外力の巨大化,あるいは施設の老朽化が要因と思われる新たな被災事例も発生している.
     本セッションでは,“過去の事例に学び,将来に活かす”という観点から,近年発生した海域施設の被災事例に関するレビューを行うとともに,海域施設の設計・施工技術の新たな展開の方向性について検討を行った.
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