土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
69 巻, 1 号
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和文論文
  • 片岡 正次郎, 白戸 智, 牛島 由美子, 高宮 進
    2013 年 69 巻 1 号 p. 1-19
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
     地震等の災害によりインフラに被害が発生すると,被害がインフラ相互に,さらには社会・経済活動にも波及し,損失が拡大する場合がある.本研究ではシステムダイナミクスに基づいて,インフラが災害により被災した場合の復旧過程をモデル化し,首都直下地震を対象とする震災復旧シミュレーションを実施した.各インフラの復旧速度が電力,情報通信,交通インフラに依存するモデルを構築し,これらの被災によってインフラの復旧がどの程度遅れるかを定量的に算出した.
  • 宮下 剛, 石川 敏之
    2013 年 69 巻 1 号 p. 26-39
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,多層のCFRP板が接着された曲げを受ける鋼部材に対して,準解析的なアプローチにより応力分布を求める新たな計算手法を提案する.具体的には,各層のひずみを状態変数とみなし,微小区間における断面力の釣合いから連立微分方程式を再帰的に導出する.そして,このとき構成される行列の固有値解析を数値的に実施してひずみの一般解を求める.一般解に含まれる未定係数は,ひずみの連続性条件と境界条件から決定する.提案手法を等曲げ問題に対して適用し,その妥当性を解析解,二次元と三次元の有限要素解析との比較を通じて検証した.その結果,提案手法は解析解と良い一致を示し,有限要素解析に対しては工学的に許容できる誤差の範囲内となった.
  • 中野 一慶, 梶谷 義雄, 多々納 裕一
    2013 年 69 巻 1 号 p. 57-68
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     本研究は地震災害による企業への影響を予測する手法として,企業の操業能力を対象とした機能的フラジリティ曲線を提案する.これは地震動に対する構造物の脆弱性を対象として発展してきたフラジリティ曲線を,企業の操業という機能に対して応用したものである.新潟県中越地震後に行った企業の被害についての調査データをもとに機能的フラジリティ曲線を推計する.その結果を業種間で比較し,企業の有する生産技術や設備の脆弱性の特徴について考察する.これは災害直後に地域の産業分布の特徴を考慮した経済影響評価を行う上で不可欠な基本情報となる.また,各個別企業にとっても,地震災害による企業活動への影響を事前に把握し,事業継続計画(BCP)を策定するための有用な情報となる.
  • 吉田 誠, 清宮 理
    2013 年 69 巻 1 号 p. 69-88
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,グラウンドアンカーで補強された重力式岸壁の模型振動実験および有効応力解析による実験の再現解析を実施した.その結果,グラウンドアンカーで補強した場合,ケーソンの水平抵抗力が増加するとともに,基礎捨石の変形が抑制されることでケーソン変位が低減し,かつ基礎捨石層厚の違いによる岸壁の挙動の差異が小さくなった.また,地震時におけるアンカーの張力と伸びの関係は,履歴ループを描き非線形な特性を示した.さらに,有効応力解析において,アンカー張力の非線形特性を反映することで,岸壁の変形およびアンカー張力の再現性が向上した.
  • 石川 敏之, 宮下 剛, László Gergely VIGH
    2013 年 69 巻 1 号 p. 89-100
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,一軸引張を受けるCFRP板接着鋼板に対して導出される6階の微分方程式の解(高精度解)と,これまでに導出されている2階と4階の微分方程式に分けて解かれた解(近似解)との比較を行った.鋼板の軸力,接着剤に生じるせん断応力および垂直応力の全体的な傾向は高精度解と近似解で同様であったが,近似解のCFRP板の端に生じるせん断応力と垂直応力は,高精度解よりも若干大きな値を示し,接着剤厚が薄くなるに従って,高精度解に対する近似解の比は大きくなった.最後に,一軸引張を受ける多層CFRP板接着鋼板に関して,ひずみの連立微分方程式を与え,数値解析による簡易な高精度解法を与えた.
  • 後藤 芳顯, 関 一優, 海老澤 健正, 呂 西林
    2013 年 69 巻 1 号 p. 101-120
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     CFT橋脚の耐震性能向上メカニズムとして,一旦生じた鋼管の局部座屈変形がその後の繰り返しで修復され,座屈変形の進展が抑制されるという今までにほぼ未知の挙動を著者らは数値解析で明らかにした.ここでは,その妥当性を円形断面CFT橋脚の2方向繰り返し実験と加振実験により検証した.その結果,鋼管に局部座屈が発生すると,圧縮力の大半はダイヤフラム等を介して充填コンクリートに伝達され,鋼管の圧縮力が減少すること,さらに,曲げモーメントで発生する引張力の大部分は鋼管に作用し,この引張力で鋼管の座屈変形が修復されことも明らかにした.加振実験では地震動のピークで発生した塑性変形は後半の振幅漸減域での繰り返しで減少し,残留変位が大幅に低減される挙動も観察された.これには局部座屈変形の修復挙動の関与が考えられる.
  • 松下 裕明, 矢吹 哲哉, 有住 康則, 下里 哲弘
    2013 年 69 巻 1 号 p. 121-132
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     著者らは鋼橋の耐久性向上の一方策として,耐食性の確保と低コスト化の観点から箱内補剛材を従来の構造用鋼とし,その外膜材にステンレス鋼を用いたステンレス橋梁を提案している.本研究では,ステンレス橋梁に用いられるハイブリッド補剛板を対象にパラメトリックな解析的検討を行うことによりその圧縮耐荷力特性を明らかにし,従来の構造用鋼と同等の評価が可能であることを定量的に示した.耐荷力評価に際して,パラメトリック解析で設定した解析モデルの適用性は実験結果と比較することにより確認されている.
和文報告
  • 篠田 昌弘, 真井 哲生, 江原 季映, 中島 進, 阿部 慶太, 藤田 圭一, 土屋 宗典
    2013 年 69 巻 1 号 p. 40-56
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
     鉄道橋梁下部構造物は,地震や風水害の危険にさらされており,定期的な検査と健全度診断が重要となる.鉄道橋梁下部構造物の代表的な健全度診断手法の一つに衝撃振動試験法がある.衝撃振動試験法は簡易・迅速であり現場で定量的な健全度診断が可能という長所があるが,重い重錘を使用することから,安全性,適用性,再現性に課題があった.そこで,重錘の代わりに小型起振器を使用した新しい振動計測法を提案した.振動計にはセンサに電源が不要な光ファイバセンサを開発した.実際の鉄道橋梁下部構造物において,振動試験を実施した結果,新しく開発した手法により,鉄道橋梁下部構造物の固有振動数を特定できることを示した.
和文ノート
  • 木下 幸治, 荒川 慎平
    2013 年 69 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
     鋼橋の疲労損傷事例として板曲げにより面外ガセット継手に生じる疲労き裂があるが,そのき裂の表面長さに対するき裂進展解析の精度は必ずしも明らかになっていない.本研究では,著者が実施した板曲げを受ける面外ガセット継手の疲労実験の進展解析を実施し,き裂深さと表面長さの精度を検証した.その結果,き裂深さは良く評価可能であるが,表面長さは回し溶接部長さ程度以上になると過小評価することが明らかとなった.そこで,実験に基づき得られたき裂形状比を進展解析に適用し,回し溶接部長さ程度以上の表面長さの簡易な推定を試みた.既往の研究で提案されたき裂形状比を著者の実験結果を反映させて一部修正し適用することで,回し溶接部長さ程度以上の表面長さを良く評価可能であることを確認した.
  • 南 邦明, 德富 恭彦, 清水 織恵, 河村 健一, 森井 茂幸
    2013 年 69 巻 1 号 p. 133-138
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/19
    ジャーナル フリー
     亜鉛アルミ擬合金溶射を施した高力ボルト摩擦接合継手には,溶融亜鉛めっきボルトF8Tを使用する.その際,ナット回転法においてボルトの締め付けを行うが,第1著者らは以前に,ナット回転量90°が適切な導入軸力が期待できることを示した.本報告は,提案したナット回転量の信頼性を向上させること,およびこれまで明確でなかった溶射皮膜厚の影響や混合面(箱桁のように箱内面は厚膜型無機ジンクリッチペイント,箱外面は亜鉛アルミ擬合金溶射という接合面)での適用性を検証することを目的とし,高力ボルト摩擦接合試験体を用いて,導入軸力確認試験およびリラクセーション試験を実施した試験報告である.
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