土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
77 巻, 1 号
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和文論文
  • 水野 孝則, 有田 貴司, 山極 伊知郎, 小川 隆申, 久保 淳一郎, 藤野 陽三
    2021 年 77 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/20
    ジャーナル フリー

     超高速列車がトンネルに突入する際に生じる圧縮波はトンネル内を伝播し,出口側坑口だけでなくトンネル途中の枝坑坑口からも微気圧波として放射される.また,枝坑坑口は地表面にあるため,換気によって発生する風切り音対策も考慮しなければならない.そこで,風切り音も低減可能な枝坑での微気圧波低減対策を提案する.風切り音については,枝坑断面の拡幅による風速低減と枝坑換気口による流れの均一化により低減可能であることを示した.一方,微気圧波は断面拡幅で強まることが明らかになったため,過去に提案された多孔板対策工に加え,換気ファンなどの付帯設備も活用し,枝坑全体で低減させる対策を提案した.そして,その効果を模型実験および数値解析により検証した結果,枝坑坑口付近の微気圧波を基準値以内に抑えられることを明らかにした.

  • 佐藤 顕彦, 林 厳, 北根 安雄, 杉浦 邦征
    2021 年 77 巻 1 号 p. 13-27
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,切込みにより損傷を与えたGFRP積層板に対して,両面に補修板を接着した試験片を対象に,一軸引張実験と再現解析を実施して補修効果を検討した.実験の結果,補修試験片の引張強度は損傷時より向上したが,健全時の引張強度には回復しない可能性があることが分かった.また,健全状態の積層板についても補修板の接着により引張強度が低下することを確認した.その後,引張実験において補修板の剝離と母材の脆性破壊という2種類の破壊モードが確認されたため,有限要素解析を実施して,これらの破壊モードに関する考察を行った.その結果,補修板の接着により損傷部と接着端部において母材表面に応力集中が生じ脆性破壊を引き起こすこと,使用する接着剤により応力集中が卓越する箇所や破壊モードが異なることを明らかにした.

  • 杉本 悠真, 岑山 友紀, 山口 隆司
    2021 年 77 巻 1 号 p. 28-41
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     高力ボルトエンドプレート接合に設置する水平リブはエンドプレートの変形を抑えるとともに,主桁引張フランジに作用する引張力を一部分担することで,エンドプレート間の離間やボルト軸力の増加を抑える効果があると報告されている.しかし,水平リブに作用する実際の引張力を梁理論計算により推定することは困難であり,水平リブを有するエンドプレート接合の設計法は提案されていない.そこで,本研究は水平リブに作用する引張力の推定式の提案を目的に,水平リブを有するI桁のFEM解析を実施した.解析の結果,水平リブおよび下フランジに作用する実際の引張力を推定するための補正係数を,水平リブの構造パラメータをもとに提案した.加えて,水平リブを有するエンドプレート接合の水平リブ,下フランジ引張力の特徴についても明らかにした.

  • 土井 達也, 室野 剛隆, 張 鋒
    2021 年 77 巻 1 号 p. 42-58
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     著者らは比較的軟弱な表層地盤を対象とした基礎形式として,小径杭併用土のう基礎を提案している.本構造は杭頭に土のうを敷設し,構造物を構築するもので,疑似的に直接基礎を構築することによる応答加速度の頭打ちや,杭頭接合部の省略,杭の小口径化を期待している.本研究では実規模の提案構造の応答値評価モデルを構築し,杭頭絶縁基礎,杭基礎と地震時の応答加速度や杭の断面力などを比較した.その結果,橋脚高がある程度低い場合を除き,提案構造ではフーチングの浮き上がりによる長周期化により,杭基礎に比べて応答加速度の頭打ち効果やく体基部の曲げモーメントの抑制効果が得られ,応答変位や残留変位も杭基礎と同等程度以下であることがわかった.さらに,土のうの敷設により小径杭の曲げモーメント低減効果が付加されることがわかった.

  • 石川 敏之, 水谷 壮志
    2021 年 77 巻 1 号 p. 59-72
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,軸力あるいは等曲げモーメントを受ける鋼管のCFRP接着補修・補強に対して,接着層によるせん断遅れを考慮した鋼管,CFRPに生じる応力および接着剤に生じるせん断応力の式を与える.導出したCFRP接着鋼管に生じる応力および接着剤に生じるせん断応力の分布と有限要素解析結果が同様な分布になることを示す.そして,鋼管に生じる応力の式を用いて,CFRP接着鋼管が完全合成となるためのCFRPの定着長の算定式を与える.また,CFRP端の接着剤に生じるせん断応力を用いてエネルギー解放率を与え,有限要素解析から得られるエネルギー解放率と合致することを示す.CFRP接着鋼管のひずみエネルギーの変化量からもCFRPのはく離によるエネルギー解放率を導出し,接着剤のせん断応力から導出したエネルギー解放率と合致することを示す.

  • 後藤 芳顯, 水野 剛規, 王 慶云, 鈴木 森晶
    2021 年 77 巻 1 号 p. 73-92
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     ケーブル式崩壊防止装置の上路式トラス橋への適用性を検討した.本装置は,想定外の外乱で進行性破壊が生じた上部構造全体を,ケーブルのカテナリー作用で支えて大規模崩壊を防止する新しい方式である.また,本装置は,ケーブルの弛み量を調整することで,上部構造の応答が終局限界を超えて崩壊現象が生じた場合のみに機能させることができるので,崩壊防止装置の設計を上部構造の設計から分離できる特長がある.ここでは,まず,トラス橋の1/5供試体を用いて,下弦材破断時の崩壊防止装置の挙動と妥当性を検討した.つぎに,装置の設計法を確立するための基礎資料を得るために,実験で検証した実大トラス橋の解析モデルを用いて,下弦材破断時の上部構造と崩壊防止装置の連成挙動特性を明らかにした.

  • 石川 敏之, 八重垣 諒太
    2021 年 77 巻 1 号 p. 93-106
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     本論文では,軸力を受ける高力ボルト添接補修された断面欠損鋼部材の分担軸力を,主板と添接板の板幅が同じでボルトのすべりがない弾性範囲内の条件に対して,断面欠損を含む主板と添接板の高力ボルト間に対する変位の適合条件を与えて導出する.そして,導出した式によって,様々な断面欠損(上下対称)を高力ボルト添接補修した場合の有限要素解析結果を±5%程度の誤差で推定できることを明らかにした.さらに,断面欠損を模擬した試験体を製作し,弾性範囲内の断面欠損部と添接板の線形範囲内のひずみが,断面欠損部と添接板の断面積比から算出したひずみよりも,本研究で提案した推定式から算出されるひずみに近いことを明らかにした.また,断面欠損が深く,そして欠損が短い試験体では,断面欠損部が破断する結果が得られた.

  • 金 惠英, 藤野 陽三, 勝地 弘, SIRINGORINGO Dionysius Manly , 山田 均, 大越 秀治
    2021 年 77 巻 1 号 p. 107-120
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,まず,Large Eddy Simulation (LES)により橋桁上にある車両の周辺流を再現し,車両に対する空気力を求め,次に,その空気力を用いた車両の動力学的安定解析から横転,横滑り,ヨーイング現象の発生限界風速を求めている.その結果,1)車両周りの流れ場は,橋桁の端部から剥離するせん断流の影響を強く受け,車両の車線位置により流れ場が大きく変わり,そのため車両に作用する空気力特性も大きく異なる.次に,2)5質点7自由度の車両モデルに,得られた空気力を作用させ,横転,横滑り,ヨーイングの不安定モードの発生限界風速を求め,3)3つのうち,ヨーイングが支配的な不安定モードであり,限界風速は風上側車線に位置するときが最も低く,風下側車線に位置が変わるにつれ高くなることが分かった.

  • 上坂 健一郎, 時田 英夫, 森 猛, 内田 大介, 島貫 広志, 冨永 知徳, 増井 隆
    2021 年 77 巻 1 号 p. 121-131
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     首都高速道路は50年以上に渡り重交通下で供用されており,鋼I桁橋の横構ガセットプレートまわし溶接部に多くの疲労き裂が発生している.それらのほとんどは止端に留まっており,バーグラインダで切削除去することで補修を行っている.UITはこれまで止端から発生する疲労き裂の予防保全対策として用いられており,施工が容易で高度な技能を必要としない.本研究では,鋼I桁橋の横構ガセットプレートを想定し,止端から発生した疲労き裂に対するUITの補修効果についてモデル試験体の疲労試験を行うことにより検討した.そして,作用する応力範囲が65N/mm2以下であれば,止端に留まるき裂に対して打撃痕の深さが0.23mm以上となるようにUITを施工することで,疲労寿命は溶接ままの継手の2倍以上になるという結果を得た.

  • 坂井 公俊
    2021 年 77 巻 1 号 p. 132-145
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     地表で観測された地震記録から,逐次非線形解析に基づいて基盤入力地震動を推定する手法の提案を行った.提案手法では,地盤の非線形化に伴う周期特性の変化や,推定される地震動に無意味な短周期パルスが発生することを回避する工夫を行うとともに,地盤の等価1自由度モデルを併用することで,収束性の向上と計算の高速化を実現している.

     模擬地盤に対して提案手法を適用することで,手法の有効性を確認するとともに,観測記録にノイズが含まれる場合にも,適切な基盤地震動を推定可能であることを確認した.提案した手法は,逐次非線形解析に基づく基盤地震動推定時の課題を解決した上で,精度の高い基盤地震動を推定可能であるため,大規模地震時の基盤入力地震動の推定手法として活用が期待される.

  • 松岡 弘大, 川埼 恭平, 田中 博文, 常本 瑞樹
    2021 年 77 巻 1 号 p. 146-164
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     列車通過時に共振が生じる橋梁(共振橋梁)は,乗り心地や付帯構造物への悪影響のほか,対策を要する場合もあり,適切に検知する必要がある.本研究は,走行列車の先頭車両と最後尾車両で計測した車体上下加速度を利用し,膨大な数の橋梁から共振橋梁を網羅的かつ効率的に検知する手法を検討した.共振橋梁に特有の振動成分について理論的に分析したうえで,フィルタ・包絡線処理と先頭および最後尾車両の差分処理で構成される車上計測データによる共振橋梁の検知手法を提案した.数値解析により検知精度を検証したうえで,実路線の営業車両で計測された車体上下加速度に提案手法を適用し,共振橋梁を抽出するとともに,抽出した橋梁の共振状態を地上計測により検証した.

  • 貝沼 重信, 楊 昊軒, 楊 沐野, 武藤 和好, 宮田 弘和
    2021 年 77 巻 1 号 p. 180-198
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究では飛来海塩環境におけるAl-5Mg合金溶射と重防食塗装の取合部の耐食・防食特性を明らかにするために,帯状の鋼素地露出部を導入した溶射皮膜と塗膜の皮膜重ね部,および溶射皮膜と塗膜の突合せ部を有する鋼板試験体の大気暴露試験を行った.また,大気暴露した試験体の溶射皮膜の膨れ性状や交流インピーダンスの測定,SEM-EDXやEPMAなどによる元素分析を実施した.これらの結果から,Al-5Mg溶射皮膜と塗膜の重ね部における鋼素地露出部からの溶射皮膜は,腐食環境によらず溶射皮膜のみの場合に比べて早期に劣化し,防食性能が低下すること,また,この傾向は付着海塩の雨洗作用がある環境に比して,雨洗作用が無い環境が強いことなどを明らかにした.

  • 後藤 芳顯, 海老澤 健正, 野中 哲也, Yan XU , 金治 英貞, 岡上 政史, 安藤 高士, 服部 匡洋
    2021 年 77 巻 1 号 p. 199-218
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー

     L2地震動に対して,せん断パネルダンパーのエネルギー吸収機能でCFT柱が無損傷に留まるように設計した鋼管集成橋脚が,設計通りの挙動を示すことと,L2を超える地震動でもCFT柱の大きなエネルギー吸収能で優れた耐震性を有することを検証するために,上部構造に3基の鋼管集成橋脚を剛結した縮尺約1/10の2径間連続高架橋模型による水平2方向同時加振実験を実施した.実験より,設計で目標としたL2下における橋脚の性能を確認できた.また,L2を超える地震動下では,CFT柱のエネルギー吸収能が有効に働き,L2の3倍程度の加振倍率まで,橋脚には耐力低下がなく,残留変形もほぼ生じないことを確認できた.さらに,CFT柱を合成はり要素で離散化した鋼管集成橋脚モデルによる実用的な耐震解析モデルの適用性とその限界についても明らかにした.

  • 田中 浩平, 坂井 公俊, 飯山 かほり, 盛川 仁
    2021 年 77 巻 1 号 p. 219-228
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー

     工学的基盤が傾斜する地点では,水平成層地点と比較して地震動が局所的に増幅する可能性がある.よって,例えば,鉄道構造物の耐震設計では,工学的基盤の傾斜が1:10以上の地点で地盤不整形性による地盤増幅の影響を考慮している.不整形性はボーリング調査結果から判断するが,現状では調査箇所間の変動を補間で推測する.線状に建設される鉄道・道路構造物は地点ごとに地盤構造が大きく変動し,調査を補間するだけでは不整形性を見落とす可能性がある.そこで,常時微動観測とボーリング調査結果を併用した工学的基盤形状の推定手法を提案する.具体的には,地点間のグリーン関数を同定する理論をもとに,2点同時の微動観測による鉛直スペクトル比と基盤深度の変化の関係を整理した.最後に提案手法の適用性を不整形地盤上の観測により確認した.

和文報告
  • 高森 敦也, 宮下 剛, PHAM Ngoc Vinh , 原田 拓也, 秀熊 佑哉, 大垣 賀津雄
    2021 年 77 巻 1 号 p. 165-179
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,鋼橋連結部周辺に生じる腐食損傷に対するCFRPシートを用いた補修工法に関する検討を行った.具体的には,H形鋼の上下フランジを添接板とトルシア型高力ボルトを用いて連結した鋼桁を製作し,4点曲げ試験を行った.ここでは,添接板際の鋼桁上下フランジ幅方向にザグリ加工を与え腐食損傷を模擬した.また,CFRPシート補修では従来の設計・施工マニュアルとは異なり,従前の基礎検討より,補修部のテーパー長を1:10から1:5に変更し,断面欠損部における高伸度弾性パテ材の塗布位置を不陸修正材上から鋼材表面とした.有限要素法による解析的検討も援用して,応力低減の観点から補修効果を評価したところ,設計・施工マニュアルから決定されるCFRPシート積層数ならびに今回の施工方法から,十分な補修効果が得られることが分かった.

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