土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
78 巻, 3 号
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和文論文
  • 國領 ひろし, 嶋 丈示, 堀口 俊行, 園田 佳巨, 石川 信隆
    2022 年 78 巻 3 号 p. 316-330
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,大規模な土石流が鋼製透過型砂防堰堤(鋼製堰堤)に正面から直進して作用する場合(正面載荷)および支川から偏心して作用する場合(偏心載荷)を想定して,鋼製堰堤の耐荷性能をリダンダンシーおよびロバストネスの観点から検討するものである.まず,鋼製堰堤のリダンダンシーの評価指標を部材消失前の余剰耐力比および部材消失後の残存耐力比と定義する.次に,鋼製堰堤のロバストネスの評価指標を土石流の載荷方向の変動を考慮した偏心載荷による耐力低下率と定義する.さらに,数値計算例として構造形状の異なる鋼製堰堤モデルを対象に,正面載荷および偏心載荷に対する増分弾塑性解析を行い,構造形状の違いによる耐荷性能を調べるとともに,リダンダンシーおよびロバストネスの定量的評価を行うものである.

  • 杉山 裕樹, 金治 英貞, 渡邉 裕規
    2022 年 78 巻 3 号 p. 331-349
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,主径間長650mを3径間有する多径間連続斜張橋および多径間連続吊橋を対象に,主径間長600mの2主塔斜張橋および既往の長大橋実績と比較することで構造実現性を確認する.静的構造特性では多径間連続斜張橋および多径間連続吊橋とも従来の2主塔斜張橋に比べ活荷重による部材設計への影響が大きいものの実現可能であることを確認した.耐震性に対しては両橋とも実現性に対する大きな課題はないことを確認した.桁の耐風性に対しては多径間連続斜張橋は桁のたわみ振動数が小さいものの,既往2主塔吊橋と大差がなく,ゼルベルグ式による検討の範囲では実現可能であることを確認したが,多径間連続吊橋では桁のたわみ振動数が多径間連続斜張橋のそれよりもさらに小さく,桁の耐風性に対して慎重な検討が必要であることを確認した.

  • 井上 凉介, 坂井 藤一
    2022 年 78 巻 3 号 p. 350-367
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

     矩形水槽のバルジング地震応答挙動については,まだ研究事例が少なく,十分な解明がなされていないので,各種水槽の耐震設計指針においても,バルジング振動関連の明確な規定が存在しない現状にある.本論文は,FEM解析によって矩形水槽のバルジング挙動を詳しく解明し,箕輪らの実験・解析研究の結果との比較から,箕輪のFourier級数による解析には適用限界があり,一般的な水槽のバルジング振動を解析するには,FEM等による数値解析が必要であることを示した.さらに,FEM地震応答解析においては,煩瑣な時刻歴応答解析を実施しないでも,簡略解析法によって矩形水槽の動圧力地震応答値を比較的よい精度で求められることを検証し,この解析法を各種水槽の耐震設計指針等において動的解析法中の一種の簡便法として用いることを提案している.

  • 佐倉 亮, 森山 仁志, 山口 隆司, 田畑 晶子, 青木 康素
    2022 年 78 巻 3 号 p. 389-406
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

     鋼I桁高力ボルト摩擦接合連結部は,フランジとウェブが協働してすべり抵抗を発揮することが知られている.協働作用を考慮したすべり耐力評価式として総すべりモーメント法があるが,桁接合部のすべり耐力を正しく評価できない場合も報告されている.本研究では,協働作用を考慮したすべり耐力評価式を確立するための検討として,ウェブ継手のボルト列数およびフランジ継手のボルト軸力をパラメータとした鋼I桁接合部の純曲げ試験を行った.その結果,桁接合部全体の総すべり耐力は,すべり抵抗モーメント比ΣMfs/MSLや曲げ剛性比EfIf/E1I1の関係に影響を受け,ウェブ列数はウェブ継手単体を対象に決定する必要はなく,フランジ継手とウェブ最外縁行の群としてのすべり耐力を確保することで,現行道示の規定よりも削減できる可能性があることを示した.

  • 日野 篤志, 室野 剛隆
    2022 年 78 巻 3 号 p. 407-416
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

     著者らは,これまでにラーメン高架橋を対象として地表断層変位が作用した際の挙動について検討を実施してきた.これらの検討は,作用時の挙動が未解明な地表断層変位のみに着目したものであった.より実際の挙動に近い形での評価を実施するために,本稿では揺れの影響としての慣性力と地表断層変位の影響を考慮した検討を実施した.

     検討では,慣性力と地表断層変位を同時に作用させた場合に,どの程度の組合せで構造物が損傷するのかを示したラーメン高架橋の損傷局面を算出した.具体的には,まず慣性力を所定のレベルまで作用させて,その後,地表断層変位を構造物に損傷が発生するまで作用させることで算出した.これは,対象構造物の地表断層変位に対する所要性能を表すものであり,今後の耐震設計への活用が期待される性能の評価手法を提案する.

  • 清川 昇悟, 舘石 和雄, 判治 剛, 加藤 遼二郎
    2022 年 78 巻 3 号 p. 417-431
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

     鋼橋の疲労き裂の対策として,ストップホール法と高力ボルトによる当て板添接を併用した場合,その疲労耐久性を定量的に評価する手法は確立されていない.本研究では,き裂を模擬したスリットにストップホールを施した鋼板に,高力ボルトにより当て板を添接した試験体に対する疲労試験を実施し,その疲労耐久性を調査した.

     試験の結果,ストップホールからの疲労き裂と当て板接合面でのフレッチング疲労き裂の2つの破壊形態が確認され,前者に対して,ストップホール壁の局部応力で整理した疲労強度に対して既往研究の当て板のないストップホールの疲労強度曲線が適用できること,後者は,高力ボルト摩擦接合継手の疲労強度と同程度であることを示した.これらの結果を踏まえ,疲労耐久性を定量的に評価したうえで当て板を設計する考え方を提示した.

  • 丸山 健司, 稲荷 優太郎, 長谷 俊彦, 神田 智之, 加藤 秀章
    2022 年 78 巻 3 号 p. 432-445
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

     橋梁の維持管理の観点から橋梁用免震ゴム支承には長期の供用期間にわたる耐久性が要求される.ゴムは屋外の使用環境において様々な要因で経年変化を生じる材料であるが,常時変形が作用する部材であるゴム支承では長期耐久性の観点からオゾン劣化による亀裂防止が重要である.本研究では,オゾン劣化の一因であるゴム支承表面のひずみ分布を有限要素解析により求め,ゴム支承の仕様や外部入力が与える影響を考察した.また,それら解析結果を元にゴム支承の最大表面ひずみの推定方法を提案するとともに,実環境でのオゾン劣化によるゴム支承の亀裂発生状況と表面ひずみの分布に関連について考察した.

  • 岩崎 英治, 中嶋 龍一朗, 稲葉 尚文, 橘 吉宏, 西川 孝一
    2022 年 78 巻 3 号 p. 446-461
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

     スパイクタイヤの使用禁止以降,路面に凍結防止剤を散布しているため,凍結防止剤の飛散による鋼橋の腐食事例が報告されている.しかし,凍結防止剤の散布量と鋼桁部への飛来量の関係や鋼材の腐食に関する知見は十分ではなく,冬期に乾燥・凍結頻度の高い路線の橋梁における知見があるのみである.そこで,冬期に湿潤・融解頻度の高い北陸地域と新潟県中越地域の高速道路の橋梁を対象にして,桁部への飛来塩分量の測定値から凍結防止剤由来の飛来量を分離する方法を提案した.また,凍結防止剤の散布量に対する桁部への飛来塩分量の割合を表す飛来寄与率の標準値を示した.さらに,海塩と凍結防止剤の飛来環境における飛来塩分量と鋼材の腐食の関係を定量的に調べて,この関係が海からの飛来塩分量と鋼材の腐食量の関係に類似であることを明らかにした.

  • 奥村 徹, 松村 政秀, 野中 哲也
    2022 年 78 巻 3 号 p. 462-479
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

     通常,弾性設計が行われる非エネルギー吸収部材からなる骨組構造を対象として,設計上の想定を超える地震動が作用した際の動的崩壊挙動について検討を行った.まず,上路式鋼アーチ橋の端柱部分を想定した崩壊モードの異なる2種類の骨組模型供試体を用いる振動台実験を実施し,対傾構の全体座屈や柱基部の局部座屈などの部材の破壊と骨組全体の崩壊挙動との関係について検証した.つぎに詳細なFEモデルを用いる時刻歴応答解析を行い,振動台実験における骨組模型の動的崩壊挙動の再現性について検証するとともに,Pushover解析により崩壊モードの予測が可能であることを示した.加速度振幅倍率を変化させた複数の地震動に対する崩壊性状をFE解析により確認し,振動台実験の結果を補完した.

  • 斉木 功, 三井 涼平, 横山 薫, 鈴木 俊光, 橋本 幹司
    2022 年 78 巻 3 号 p. 480-489
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

     橋梁のように移動荷重を受ける構造物の設計において,着目点の応力等を荷重載荷位置で表した影響線は必要不可欠な概念である.影響線を有限要素モデルで求めようとすると,荷重作用範囲の節点数と同じ数の解析が必要となる.一方,Müller-Breslauの原理を有限要素解析に適用する方法も提案されているが,着目点に不連続変位を与えるため,手間のかかるモデルの修正が必要となる.そこで本論文では,モデルの修正が不要で汎用有限要素解析コードへの実装が容易な影響線の解析手法を提案する.提案手法は有限要素離散化した問題へ直接適用した相反定理に基づいている.平面応力問題および3次元問題の具体例に対して,提案手法により求められた影響線を通常の単位荷重による有限要素解析結果と比較することで提案手法の妥当性を確認した.

  • 五十嵐 徹, 澤田 純男, 後藤 浩之
    2022 年 78 巻 3 号 p. 490-507
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

     既存の耐震設計法では,半地下構造物に作用する地震時土圧を適切に評価できないため,近年では非線形動的FEM解析によって設計照査が行われている.本研究では,構造物全体系のつり合いを考慮して地盤線形時の土圧分布に地盤破壊の影響を再配分することにより,地震時土圧と残留土圧の分布を簡易的に推定する手法を提案した.二次元非線形動的FEM解析を用いて,構造物や地盤の物性,実地震動波形への適合性について,提案法の妥当性を検討した結果,半地下構造物の地震時と地震後の土圧分布を適切に推定できることが確認された.また,構造物側壁のせん断力と基部曲げモーメントを評価するための,土圧の合力と合モーメントの定量評価を行い,提案法が非線形動的解析結果に比べて 5~25%程度大きい安全側の値を与えることが示された.

  • 平尾 賢生, 佐々木 栄一, 伊藤 裕一, 竹谷 晃一, 阿久津 絢子
    2022 年 78 巻 3 号 p. 508-519
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/20
    ジャーナル フリー

     近年,防食等のため,接合面に無機ジンクリッチペイントを塗布した高力ボルト摩擦接合継手が適用されることが多くなっており,すべり係数に接合面塗膜厚さが影響することが明らかとなっている.供用中のボルト継手において,接合面塗膜厚さを非解体のまま計測できれば,現在の接合面塗膜厚さとすべり係数の規定に基づき,ボルト継手耐力を再評価できる可能性がある.さらに,接合後に塗膜厚さが変化する接触圧の大きい領域の計測も可能となれば,ボルト継手における耐荷性能のメカニズムの議論などに有益な情報となり得る可能性がある.そこで,本研究では,機械学習を援用した超音波計測手法の構築により,1枚の鋼板裏面塗膜厚さ評価の可能性を示した後,非解体でのボルト継手接合面塗膜厚さ評価を試みた.

  • 藤原 眞幸, 高井 俊和, 山階 清永, 彭 雪, 山口 隆司
    2022 年 78 巻 3 号 p. 520-528
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル フリー

     プレートガーダー橋の鋼I桁引張フランジ部における高力ボルト摩擦接合継手では,ボルトの千鳥配置と矩形配置を組み合わせた砲台配置が多く用いられる.多列高力ボルト摩擦接合継手のすべり係数低下の要因は矩形配置で検討されたものが多く,砲台配置継手におけるすべり係数の低下については評価はされているものの,その要因は明確でない.本研究では,砲台配置継手におけるすべり係数の低下性状に関して,その支配構造因子を明らかにするためにFEM解析を実施した.その結果,すべり係数の低下性状は,砲台配置されたボルトを矩形配置に並べ替えたときの継手長さと関連性が高いことを示した.また,矩形配置と同様にすべり/降伏耐力比βが大きいほどすべり係数が低下すること,継手幅,継手長さと相対変位の関連性を明らかにした.

和文報告
  • 石井 太一, 西田 陽一, 桝谷 浩, 栗橋 祐介, Trung Tran Le Hoang
    2022 年 78 巻 3 号 p. 374-388
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

     我が国は,急峻な山岳地帯が多く,落石による被災事例が頻繁に発生していることから,現在に至るまで様々な形式の落石防護工が開発されている.本研究は,柵高2m,施工延長15mのエネルギー吸収型落石防護柵の捕捉性能に及ぼす金網敷設長や載荷位置の影響を,実規模衝撃試験で検証したものである.実験では,重錘の変位,衝撃力,吸収エネルギー,ロープ張力などを計測し,複数の実験ケースの結果と比較検証した.実験結果より,本防護柵は,現行の落石対策便覧に記載されている衝突速度V=25m/sの条件下においても,最大106kJのエネルギーを持つ落石を捕捉することが可能であることが分かった.

和文ノート
  • 内田 大介, 南 邦明, 田村 洋, 吉岡 夏樹, 村井 武尊
    2022 年 78 巻 3 号 p. 368-373
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    ジャーナル フリー

     摩擦面に厚膜型無機ジンクンクリッチペイントを施した高力ボルト摩擦接合継手では,ボルト締付けによる塗装面のクリープ(押しつぶされる量)が大きく,摩擦面を粗面状態とした場合と比較してボルト軸力の低下が大きくなることが知られている.このクリープの影響は,塗膜厚が厚くなるほど大きくなること,フィラープレートの挿入で摩擦面の数が多くなった継手で大きくなることが確認されているが,塗膜厚と摩擦面数の双方に着目した検討事例はない.本研究では厚膜型無機ジンクンクリッチペイントの膜厚と摩擦面数をパラメータとした高力ボルト摩擦接合継手のリラクセーション試験およびすべり耐力試験を実施し,膜厚と摩擦面数が軸力低下に及ぼす影響を分析した.さらに,先行研究で示した摩擦面数に応じた導入ボルト軸力の推奨値の妥当性を確認した.

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