土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
78 巻, 4 号
選択された号の論文の66件中1~50を表示しています
地震工学論文集第41巻(論文)
  • 伊藤 浩二, 佐々木 智大, 樋口 俊一
    2022 年78 巻4 号 p. I_1-I_9
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     近年,液状化地盤にあるRC製構造物では,大規模地震における安全性を適切に評価する場合,従来の地下水以深の飽和地盤の地震時,地震後の挙動に加えて,地下水以浅の不飽和地盤の挙動も忠実に再現する非線形地震応答解析が望まれている.このような課題に対して,広範な飽和度を有する不飽和・飽和地盤の地震時から地震後の過剰間隙水圧の蓄積,消散を統一的に表現する有効応力解析手法を構築した.既往の不飽和浸透の模型実験,不飽和浸透流解析と本手法との比較から,不飽和地盤の有効応力解析手法の適用性を検証した.液状化地盤にあるRC製地中構造物の大規模地震時の挙動を把握するために,不飽和・飽和地盤,RC製構造物の材料非線形を考慮した本手法を適用し,不飽和・飽和地盤,RC製地中構造物の適切な地震時挙動が得られることを示した.

  • 竿本 英貴, 宮本 崇
    2022 年78 巻4 号 p. I_10-I_21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     近年,機械学習は土木分野で積極的に適用されているが,代表的なベンチマーク・データセットは十分に整備されていない.土木分野の特徴を有するデータセットを構築することは,機械学習の活用促進のために必要不可欠である.本研究では橋梁モデルに対する有限要素解析を通じて橋梁の損傷推定に対するデータセットを4つのケースに分けて提案する.19の機械学習アルゴリズムに生成したデータセットを入力し,各アルゴリズムから得られた決定係数を基にデータセットを評価した.結果,損傷部材数を1としたケースでは決定係数が0.5から1.0の範囲内に分布し,難易度の観点からベンチマークとして適切であると判断した.損傷部材数を2とした場合は,半数程度の部材で決定係数が0.5以下となりチャレンジングなベンチマークと位置づけられる.

  • 小池 武, 長谷川 延広, 濱野 雅裕, 渡邊 拓
    2022 年78 巻4 号 p. I_22-I_32
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     水道施設の耐震設計における性能設計が一般化しない.それは性能設計化を実現するための性能目標が明確かつ定量的に設定されていないためである.この課題に対して,本論では,耐震性能 1, 2, 3 に対して水道事業体,管路メーカー,管路施行者が目指すべきそれぞれの目標値を算定する方法を提示する.さらに,水道事業体が管理・運営する水道ネットワークシステムの耐震性能を信頼性設計法に基づいて実現する手法を「水道システムの耐震安全性能照査法」として提案する.

  • 楊 勇, 谷本 俊輔, 桐山 孝晴
    2022 年78 巻4 号 p. I_33-I_44
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     本論文では,液状化により地盤抵抗を失い橋台基礎の被害が発生しうる可動支承側の橋台を対象とし,橋台が高く液状化層が薄い条件で動的遠心模型実験を実施し,橋台に対する3種類の補強対策の効果を調べた.その結果,鋼管矢板壁による前面分離型の補強対策は,橋台の変位・回転への抑制効果が限定的であり,加振中の最大応答時の既設杭の曲げモーメントや作用土圧が無補強の場合とほぼ同程度であった.また,斜杭による側面一体型の補強対策は,補強後の橋台杭基礎に作用する流動力が大きくなることや,斜杭を有する杭基礎の変形モードの影響で,橋台の変位・回転への抑制効果が限定的であった.一方で,鋼管矢板壁による側面一体型の補強対策は,補強後の杭基礎の剛性が大きく増加し,橋台の変位や回転が大きく抑制された.

  • 楊 勇, 行藤 晋也, 堀内 智司, 桐山 孝晴
    2022 年78 巻4 号 p. I_45-I_56
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     本研究では,既設橋梁杭基礎の補強工事の施工性向上が期待できる,既設・増設フーチングを剛結合せずに接触構造の増し杭工法を提案し,遠心模型実験・フレーム解析を用いてその補強メカニズム及び補強効果を検証した.補強メカニズムとしては,既設・新設フーチングの接触より一部の水平地震力が既設側から増設側に伝達し,既設側に作用するせん断力を減少することが確認できた.実験・解析においては,補強後の既設側のせん断力が無補強の場合と比べて大きく低減し,また,せん断力低減に伴い杭基礎の曲げモーメントへの抑制効果も確認できた.

  • 伊藤 裕也, 栗間 淳, 後藤 浩之, 澤田 純男
    2022 年78 巻4 号 p. I_57-I_69
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     地盤の液状化による埋設管の被害はこれまで多くの地震災害で発生しているが,液状化地盤と非液状化地盤の境界付近に見られることが多い.2011年東北地方太平洋沖地震では,液状化地盤が大きく揺動したことでひずみが集中し管路被害が生じたとする見解があるが,液状化地盤を流体のように揺動させてその影響をみた研究はこれまでなかった.本研究では,有限変形を考慮した有限要素法を用いて,流体状に振る舞う液状化地盤の揺動(スロッシング)現象について数値解析を行った.流体に対する解と比較することで手法の妥当性を検証した後,浦安市の液状化地盤を対象とした動的解析を行った.スロッシング現象により生じる地盤ひずみを求めることでひずみの局所化が発生すること,またその位置と実際の埋設管被害との関係について考察した.

  • 上田 恭平, 玉泉 聡士, 渦岡 良介
    2022 年78 巻4 号 p. I_70-I_78
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     緩傾斜地盤において地震後に時間遅れを伴う流動変形が生じる要因の一つとして,加振により上昇した過剰間隙水圧が再配分される過程で,表層の難透水層直下の砂層に下層から流入する間隙水の存在が挙げられる.間隙水流入により体積膨張を伴いながらせん断変形が進展するきれいな砂の挙動は実験的に調べられているものの,細粒分の影響に着目した研究はほとんど行われていない.本研究では,細粒分含有率(Fc = 0, 10, 20, 30%)を変化させた供試体を作製し,中空ねじり試験機を用いて初期せん断応力を載荷した上で非排水繰返しせん断履歴を与えた後,間隙水注入による強制膨張せん断試験を実施した.その結果,細粒分含有率は,砂の非排水繰返しせん断特性のみならず,その後の間隙水流入時のダイレイタンシー特性にも影響を及ぼすことが明らかとなった.

  • 後藤 浩之, Anirban CHAKRABORTY
    2022 年78 巻4 号 p. I_79-I_86
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     自然災害に対するハザードマップが現在広く活用されているが,ハザードマップで示される値は本来不確実性を有するものである.このため平均値だけでなく確率情報を活かして,表示される空間解像度を構成することが望ましい.既往の不確実性投影法(UPM)は確率分布を直接扱うことができないため,本研究では隣接点での値の有意差に応じて解像度を調整する新たな表示法(Uniform uncertainty mapping)を提案する.まずこの表示法の理論的な枠組みについて紹介し,数値的に与えた1次元/2次元問題に適用してその性能について評価する.その後,逆問題の例として微動アレイ探査において1次元の速度構造を推定する問題,ハザードマップの例として2次元の地盤増幅率の表示に関する問題にそれぞれ適用する.

  • 山口 和英, 堤内 隆広, 原 朗, 永井 秀樹, 肥田 幸賢
    2022 年78 巻4 号 p. I_87-I_97
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     著者らは,これまで断層変位による地中構造物の影響評価について検討してきた.断層が変位する場合には,一般的に地震を伴うことから地震の影響を考慮する必要がある.本論文では,断層変位と地震との重畳を受ける鉄筋コンクリート製地中ボックスカルバートの要求性能に応じた損傷や破壊に対する評価について解析的に様々な検討を行った.この結果,重畳現象に対する損傷評価では断層変位の作用による構造物の弱軸方向の変化に留意する必要があること,今回提案する耐力曲線により弱軸方向の安全率を定量的に評価できることが分かった.また,重畳現象に対する損傷評価においては,三次元材料非線形FEMを用いた応答震度法による静的解析が適用できることを確認した.更に動的解析の適用性も検討した.

  • 能島 暢呂, 横山 太郎
    2022 年78 巻4 号 p. I_98-I_116
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     直交水平2成分の地震動波形の最大値指標(NS, EW),幾何平均GM,大きい方の値Larger,軸回転による最大値rot100を対象として,指標間比率の自然対数変換値が従う確率分布をモデル化した.(NS, EW),GM,Largerの3指標間の比率分布については正規分布を基本とし,rot100を分子とする比率分布についてはガンマ分布を基本としてモデル化した.K-NETの加速度波形とその時間積分による速度波形,および,5%減衰の線形一自由度系の応答波形を用いて,確率モデルが実データに適合することを示すとともに,分布の周期依存性について考察した.中央値rot50に関する修正モデルと,比率の分母・分子を入れ替えた場合の反転モデルを合わせて,全指標間の比率分布の確率モデルを体系化し,超過確率レベルを用いた指標変換を可能とした.

  • Yue PAN, Yasuko KUWATA
    2022 年78 巻4 号 p. I_117-I_126
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     Seismic fault displacement poses a significant threat to various types of civil structures. Location and amount of displacement have a high degree of uncertainty for carrying out the countermeasure of fault movement. Therefore, the current countermeasures are conducted in such a way that the possible surface displacement on the active faults crossing the buried pipeline is estimated using an empirical formula. By the way, if the fault displacement does not appear on the ground surface, the ground strain due to the fault dislocation may cause damage to the pipeline. This study aims to clarify the possible deformation of buried pipelines caused by fault dislocations based on the elasticity theory of dislocation and to provide a database for exploring fault countermeasures for buried pipelines.

  • 青木 康貴, 布施 柚起, 石橋 寛樹, 秋山 充良, 越村 俊一
    2022 年78 巻4 号 p. I_127-I_137
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     地震動と津波を受ける橋梁の損傷が道路ネットワークの接続性に及ぼす影響の確率論的評価手法を提示する.地理情報システムとグラフ理論を用いることで,地震動・津波ハザード評価,道路ネットワーク内の橋梁の位置情報,および橋梁のフラジリティ評価を関連付ける.そして,Monte Carlo法を用いた反復計算により,地震動・津波ハザード強度の空間的な変動,および各橋梁のフラジリティとその損傷度の推定に伴う一連の不確定性を考慮し,橋梁の損傷により道路ネットワーク内の着目地点間の接続性が確保できない確率を算定する.ケーススタディでは,南海トラフ地震の影響域にある道路ネットワークを対象に提案手法を適用し,橋梁位置毎の地震動・津波ハザードの違いや橋梁間の損傷の相関性が道路ネットワークの接続性に及ぼす影響を考察した.

  • 坂下 克之, 畑 明仁, 渡辺 和明, 村田 裕志, 河村 圭亮, 小松 怜史, 野尻 慶介
    2022 年78 巻4 号 p. I_138-I_151
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     構造物の耐震性能照査を材料非線形解析により行う場合の照査基準値(部材厚増分・圧縮縁変位差・偏差ひずみ第二不変量)に対して,地中RC構造物の耐震性能照査手法の高度化を目的として実施した実大規模の試験体を用いた載荷実験結果と照らし合わせて,損傷指標としての適用性を検討した.試験体は1辺1.1mの正方形断面RC柱である.試験ケースは,N-1:基本ケース,P-1:あと施工型せん断補強鉄筋あり,N-2-1:斜め載荷,N-2-2:プレクラックありの4ケースで,P-1以外はせん断破壊先行型の配筋仕様である.検討の結果,それぞれの実験条件下における各照査基準値の推移と試験体の損傷状況との関連が明らかになるとともに,既往のマニュアル等で規定されている限界値が,想定されている損傷範囲に概ね適合し,かつ安全側であることが確認された.

  • 和田 一範, 櫛谷 拓馬, 豊岡 亮洋
    2022 年78 巻4 号 p. I_152-I_161
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     都市部にはロッキング橋脚を有する鉄道橋梁が数多く存在し,桁の過大変位抑制や落橋防止対策の推進が求められている.しかし,同形式の橋梁は,都市部特有の事情として施工・設置スペースが狭隘であるため,従来の対策工では適用困難な場合がある.そこで,著者らの一部は,施工性に配慮した狭隘箇所に設置可能な小型で落橋防止機能を兼用した制震装置を提案している.本研究では,提案する装置を概略設計する方法を提案する.具体的には,1自由度系の非線形応答解析結果を整理することで,装置の諸元に対する桁の応答変位および橋脚の応答塑性率を簡易に算定可能なノモグラムを提案した.

  • 伊藤 陽, 奥津 大, 古川 愛子, 庄司 学, 鈴木 崇伸
    2022 年78 巻4 号 p. I_162-I_172
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     通信用管路の地震時の被害を事前に予測することが震災対策において重要となる.本稿では地震時の管路被害予測に機械学習により構築される予測モデルが有効であるか検証した.1995年兵庫県南部地震,2004年新潟県中越地震,2007年新潟県中越沖地震,2011年東北地方太平洋沖地震の4地震における管路点検結果と複数のパラメータを学習用データとしてモデルを構築した.このモデルは4地震の評価用データに対して十分な分類性能を持っており,いずれの地震に対しても被害を十分に予測できるものとなった.一方で予測モデルにとって未知の2016年熊本地震の被害の予測においては性能が低下したがPGVが高い管路被害を予測することができており,液状化履歴や断層の影響を加味する事で予測モデルの性能向上ができる可能性が得られた.

  • 白井 拓己, 能島 暢呂, 猪股 渉, 田村 健, 水上 清二, 土師 正聖
    2022 年78 巻4 号 p. I_173-I_185
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     都市ガス供給システムの地震観測体制が,供給停止判断の妥当性や導管被害推定の推定精度に及ぼす影響について検討するための手法を提案した.第1に,地震計設置地点のランダムな選定,あるいは偶発的な欠測を想定して,「k-out-of-n遮断システム」の変化による供給停止確率の変化を,超幾何分布による確率モデルで定式化し,その影響要因について考察した.第2に,地震計設置地点の計画的な選定,あるいは設置状況の変化(増設・移設・削減)を想定して,Ordinary Krigingの手法を用いて,ブロック内における地震計の相対的な重要度を評価して順位付けを行う「観測地点評価」の手法と,ブロック内の地震動分布の補間推定精度に基づく「観測体制評価」の手法を提案し,所与の地震計数のもとでの最適な地震計配置について考察した.

  • 焦 禹禹, 能島 暢呂, 加藤 宏紀
    2022 年78 巻4 号 p. I_186-I_197
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     災害に伴いライフラインの機能に支障が生じた場合,迅速かつ精度の高い復旧見込み情報の公表が求められる.本研究では,停電の復旧見込みの信頼性向上を目指して,カルマンフィルタを応用した逐次更新手法の開発を検討した.まず,停電の解消過程に逐次的に指数関数を当てはめ,状態空間モデルを用いて,復旧ペースを表すパラメータの予測分布の逐次更新式を定式化した.さらにカルマンフィルタリングとカルマン予測を実行し,予測分布の平均値(点推定)と95%信頼区間(区間推定)に基づいて3本の復旧見込み曲線を求めた.加えて,極端なケースとして,最良と最悪との復旧ペース(95%信頼区間の上下限値)を想定した2本の復旧見込み曲線を示した.予測の不確定性を考慮して,幅を持たせて復旧見込みを表現することを提案した.

  • 栗間 淳, 新垣 芳一, 後藤 浩之, 澤田 純男
    2022 年78 巻4 号 p. I_198-I_205
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     液状化が発生すると土骨格の剛性が低下し,土粒子と間隙水が混ざった泥水のような挙動を示すようになる.本研究では,内部侵食と同様の力学的プロセスを仮定した地盤の固体から流体への相変化の表現を定式化し,運動量の保存を含む支配方程式を導いた.提案手法は,仮想的な状況下ではNavier-Stokes方程式に帰着できることを確認した.また,提案手法を用いて一次元モデルの数値解析,及び遠心場振動実験の再現解析を行った.その結果,提案手法は固相と液相の双方を矛盾なく解析できるとともに,相変化を自然に表現できることを示した.

  • 横澤 直人, 河原井 耕介, 中尾 尚史, 石崎 覚史, 大住 道生
    2022 年78 巻4 号 p. I_206-I_218
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/27
    ジャーナル フリー

     道路橋の設計で用いられる地震動は,既往の地震被害や調査研究を基に,地震動特性等のばらつきを考慮して設定されているが,実際には設計地震動を上回る地震動が作用する可能性は否定できない.そこで,筆者らは,設計地震動を上回る地震動を受けた場合でも,機能が損なわれない又は早期に機能復旧できる道路橋を実現する崩壊シナリオデザイン設計法を提案し,当該設計法を実現する手段として,耐力階層化鉄筋を用いたRC橋脚を検討してきた.本研究では,耐力階層化鉄筋を用いたRC橋脚の載荷実験を行い,耐力階層化鉄筋によって橋脚の耐力が増加することを確認した.また,耐力階層化鉄筋の遊間長の設定には,塑性ヒンジ領域の曲率の影響に加えて,軸方向鉄筋の伸び出し及びRC橋脚の残留伸びの影響を考慮する必要があることが明らかになった.

  • 小野 祐輔
    2022 年78 巻4 号 p. I_219-I_226
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     断層と交差する埋設管は,断層の運動により直接被害を受ける可能性がある.埋設管の損傷は社会活動に多大な影響を及ぼし得るため,十分な事前の対策が望まれる.本研究では,横ずれ断層変位に対する埋設管の応答を詳細に分析するため,三次元個別要素法解析を実施した.個別要素法は,粒状体の集合である地盤の特性を適切に扱うことができるため,地盤と管の間に生じる相互作用を詳細に検討することができる.断層面の法線方向と管軸の交差角を30°とした解析モデルを設定した.緩い砂地盤と密な砂地盤の二種類の地盤モデルに対して,それぞれに左横ずれと右横ずれの断層変位を与えた解析を実施した.解析結果から,個別要素法による数値解析が横ずれ変位を受ける埋設管の応答の検討に有用であることを確認した.

  • 坂井 公俊, 小野寺 周
    2022 年78 巻4 号 p. I_227-I_240
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/27
    ジャーナル フリー

     鉄道橋りょう・高架橋の地震応答値の算定手法として,地盤-構造物を2質点系に置換した非線形動的解析法の検討を行った.具体的には,地盤と構造物の静的非線形解析をそれぞれ実施し,この結果から両者を1自由度系に置換するとともに,これを結合することで2自由度系による動的解析を実施可能とした.この手法を柱高さ8mの鉄道RC橋脚に適用し,詳細な動的解析結果と比較することで,2自由度系による評価の有効性を確認した.さらにこの結果に基づいて,鉄道構造物の地震応答値を簡易に評価する際の非線形応答スペクトル法を高精度化するための手法の検討を行った.この手法では,地盤と構造物の周期特性,強度特性を考慮した上での簡易な構造物挙動の評価を可能としているため,耐震設計における地震応答値の算定手法として活用が期待される.

  • 柳田 尚毅, 酒井 久和, 小野 祐輔
    2022 年78 巻4 号 p. I_241-I_252
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     石積み擁壁は地震に対して非常に脆弱な構造物であり,多数の被害事例が報告されている.これらの被害を軽減するため,石積み擁壁の地震時の崩壊メカニズムを数値解析によって解明しようとする試みがなされてきた.しかし,石積み擁壁に対する3次元解析において,多様な積み石形状を考慮した解析の事例は多くない.本研究では,DEM(個別要素法)を用いて,様々な要素形状に対応可能な3次元DEM要素を開発するための基礎的検討として,複数の6面体ブロックを剛結することで容易に任意形状を再現できる簡易異形多面体モデルの妥当性の検証を目的とする.そこで,凸形状を持たせた積み木の落下実験と,実験に対する数値シミュレーションを実施した.その結果,積み木の落下実験を精度よく再現しており,簡易異形多面体モデルの妥当性が確認された.

  • 宍倉 佳浩, 村田 裕志, 河村 圭亮, 渡辺 和明, 畑 明仁, 永田 聖二, 横田 克哉
    2022 年78 巻4 号 p. I_253-I_265
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     あと施工プレート定着型せん断補強鉄筋(以下,PHB)のあと施工の影響を考慮した鉄筋コンクリート部材の三次元材料非線形FEM解析は,これまで分散鉄筋でのモデル化の検討例が多く,離散鉄筋によるものはない.本研究では,PHBのあと施工の影響の新たなモデル化手法として,離散鉄筋を用いた手法を提案した.そして,コンクリートと鉄筋の付着すべり関係のパラメータスタディを実施し,PHBの端部定着機構が通常のせん断補強筋と異なることによるせん断耐力の低下,特徴的なひび割れ性状といったあと施工の影響を定性的に評価できることを明らかにした.また,PHBで補強された部材厚1m以上の実大規模RC部材を対象に,提案したモデル化手法を用いた三次元材料非線形FEM解析による再現解析を行い,あと施工の影響と破壊モードについて分析した.

  • 名波 健吾, 坂井 公俊
    2022 年78 巻4 号 p. I_266-I_274
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     鉄道橋りょう・高架橋の耐震設計時の地震応答値の算定法としては,構造物の骨格曲線をバイリニア型で表現した等価1自由度モデルによる動的解析を用いる場合が多い.このバイリニア型の骨格曲線はプッシュオーバー解析から得られた荷重-変位関係を必ずしも正確には再現できておらず,特に中小規模の地震を対象とした場合には,詳細モデルによる応答値とは乖離が見られる.本検討では,構造物の荷重-変位関係をより適切に表現可能な骨格曲線の設定方法を提案した.具体的には,一般的なトリリニア型に楕円形状の関数を加えることで,簡易かつ適切に構造物の荷重―変位関係を表現可能とした.提案法を用いて地震応答値を算定した結果,バイリニア型を用いた応答値と比較して詳細モデルに近い時刻歴応答を再現できることを確認した.

  • 皆川 大雅, 庄司 学
    2022 年78 巻4 号 p. I_275-I_282
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     2016年熊本地震では内陸地殻内地震特有の強震動が観測されると共に,複数の断層帯に沿って多くの地表断層変位が観測された.熊本県の上・下水道埋設管路はこの地震で甚大な被害を受けており,この被害の要因は強震動および液状化が支配的ではあるが,多くの地域で観測された地表断層変位による作用も考慮する必要がある.本研究においては,熊本地震で被災した益城町の上水道埋設管路および熊本市・益城町の下水道埋設管路の内,観測された地表断層線との距離をもってデータを抽出し,水処理系管路の断層変位に対するフラジリティ特性を分析した.

  • 中山 洋斗, 劉 ウェン, 丸山 喜久
    2022 年78 巻4 号 p. I_283-I_293
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     東北地方太平洋沖地震では,東日本の広域にわたって液状化が発生した.現在の液状化予測では詳細な地盤調査データを利用した手法がよく用いられているが,このような手法を広域に適用することは困難である.そのため,道路や水道,都市ガスのようなライフラインネットワークの被害予測には,簡便に面的な評価を行える手法の確立が望まれる.そこで,本研究ではサポートベクターマシンとランダムフォレストを用いて,液状化発生予測モデルを構築することを目的とする.既往研究の検討結果を踏まえて,液状化の発生に影響がある地震動継続時間を変数として新たに加えた.また,液状化の発生傾向によってモデルを微地形区分に基づきグループ分けすることを検討した.

  • 植村 佳大, 前田 紘人, 高橋 良和
    2022 年78 巻4 号 p. I_294-I_306
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/27
    ジャーナル フリー

     著者らは一連の研究の中で,軸力支持下において耐震性能の改変が可能なメタボリズム柱構造の開発を行っている.メタボリズム柱構造は,柱基部を二重構造とし,地震エネルギー吸収能を期待する可換部を外殻に,常時の軸力・せん断力を支持する永続部を柱内部に配置した構造である.本研究では,新たなメタボリズム柱構造として,メタボリズム柱構造の可換部に鋼製部材を適用した鋼製メタボリズム柱構造を提案し,その性能と部材の可換性について実験的検討を行った.その結果,提案構造が安定した履歴形状を示すと同時に,可換部を取り替えることで,耐震性能の新陳代謝が可能であることがわかった.また,提案構造では,永続部によって圧縮反力が担保されるため,可換部座屈後の柱の荷重低下を抑止できることが明らかとなった.

  • 土井 達也, 室野 剛隆, 張 鋒
    2022 年78 巻4 号 p. I_307-I_320
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     著者らは杭と土のうを併用して杭頭とフーチングを絶縁する「杭併用土のう基礎」を提案している.本構造は杭頭に土のうを敷設し,構造物を構築するものであり,もともとは杭とフーチングを分離することにより,応答加速度の頭打ちや,杭頭接合部の省略,杭の小口径化を期待した手法であるが,縦ずれ断層変位に対しても杭とフーチングを分離されているので,フーチングや杭の損傷が抑制され,従来の杭基礎に比べて復旧性が向上する可能性がある.そこで本検討では,杭併用土のう基礎と杭基礎に対して縦ずれ断層変位が作用した場合の変位や断面力を比較した.検討の結果,杭併用土のう基礎では軌道面の変位が杭基礎に比べてやや大きくなるが同程度であること,フーチングの曲げモーメントや杭の応答曲率は杭基礎に比べて大幅に抑制できることを確認した.

  • 杉山 裕樹, 吉田 高之, 西田 康人, 吉原 瑞貴, 佐々木 達生, 宮田 秀太, 中村 太郎
    2022 年78 巻4 号 p. I_321-I_333
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     平成29年の道路橋示方書の改定に伴い,レベル2地震動の影響を考慮した設計状況における上部構造の耐荷性能の照査の一環として,床版の照査を実施する必要が求められている.改定された道路橋示方書に対応した計算例では,上部構造に生じる断面力を100%床版が負担することによる応答算出の結果が示されている.この設計法では,従前の設計法に比して著しく不合理となる場合もある.本研究では,鉄筋コンクリート床版をソリッド要素,主桁をシェル要素とした部分FE解析を実施し,横荷重を受けた際の床版及び主桁の荷重分担を解析的に確認した.あわせて,ファイバー要素を用いた骨組解析を実施し,両解析の比較分析により,横荷重が作用した状態において,主桁は床版と同程度の荷重を分担していることが評価できたため,その結果を報告する.

  • Hyuk Kee HONG, Yoshikazu TANAKA, Anurag SAHARE, Kyohei UEDA
    2022 年78 巻4 号 p. I_334-I_343
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     One of the ways of investigating the influences of soil liquefaction on the structural systems during a seismic event is by using a deterministic model based on finite element or finite difference analysis. However, a deterministic model does not consider the intrinsic spatial variability of a natural ground, which might have huge significance on the structural response. Little works have been done to assess the effects of spatial variability involving a liquefaction-induced lateral spreading phenomenon on the soil-structure interactions. In the present paper, a finite element analysis is carried out for the developed deterministic and stochastic models (considering spatial variability) to examine the differences arising from spatial variability in the backfill soil on the performance of a sheet-pile during seismic loading. The developed finite element model, with soil elements modeled using a strain space multiple mechanism model, was initially validated with the centrifuge model experiment to predict the accuracy of the deterministic model. A stochastic field using a discretized Gaussian distribution was considered for the realization of soil spatial variability through a relative density as a varying parameter. The results among the stochastic and deterministic models were in reasonable agreement, far away from the sheet-pile. On the other hand, closer to a sheet-pile, there were considerable differences in the generated excess pore water pressure among the two approaches, highlighting the importance of soil spatial variabilities involving soil-structure interactions for large deformation analysis. However, by adopting a lower and an upper bound for the deterministic analysis, such soil spatial variability effects can be reasonably considered during the seismic analysis, which resulted in close agreement for the mobilized sheet-pile head deformations.

  • 松田 泰治, 宮武 修也, 梶田 幸秀
    2022 年78 巻4 号 p. I_344-I_353
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/28
    ジャーナル フリー

     地震時に道路橋の損傷を瞬時に判定し,迅速な道路網の復旧を実現することを目的に,本研究ではニューラルネットワークを用い,橋梁で観測された加速度応答から支承および橋脚における損傷度の判定を試みた.まず,観測された加速度応答から免震支承の変位応答をニューラルネットワークで再現できることを確認した.また,ニューラルネットワークと完全積分を併用して加速度応答から橋脚基部の曲率応答を再現できることも確認した.最後に模擬地震動を用い,免震支承の変位応答および橋脚基部の曲率応答を基に損傷程度を判定する本手法の精度を検証した.

  • 榎 直人, 松田 泰治, 梶田 幸秀
    2022 年78 巻4 号 p. I_354-I_361
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     既往の研究ではニューラルネットワークがもつ自己組織化能力に着目することで規則的な波である漸増漸減波を強制変位として与えたことによって得られた荷重-変位関係を教師データとした際に,非線形履歴復元力特性のモデル化を既存の数式モデルを経ずに行うことが可能であるとしている.そこで本研究ではより複雑かつランダムな人工波を加速度として用い動的解析を行った.そうして得られた荷重-変位関係を教師データとして用いることで同様のモデル化が可能かどうか確認した.また検証波として未学習の人工波 10 波,そして設計地震動 12 波を使用し,学習済みのニューラルネットワークを経た動的解析を行うことで推定精度向上に寄与する手法の検討を行った.

  • 党 紀, 山崎 信宏, 秋池 佑香, 石山 昌幸, 染谷 優太
    2022 年78 巻4 号 p. I_362-I_373
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     設計時の最大地震動を超えた地震に襲われても,危機的状態に落ちにくい,機能を早期に回復できる橋梁の実現が今後の橋梁耐震設計上に重要な課題の一つである.その一つ方法として,速度依存型ダンパーと履歴依存型ダンパーを直列する直列ダンパーCaSSを用いることが提案されている.この直列ダンパーを用いた機能分散型免制震橋の耐震性能と危機耐性,地震リスク低減性能,反脆弱性ともに優れたことが今までの解析的研究で解明されているが,実用化のための動的実験による検証が不可欠である.本研究では,シリンダー型ダンパーとせん断パネルダンパーで構成された直列ダンパーCaSSを用いた機能分散型免制震橋を対象に,Host PC制御およびDSP制御システムを用いて実時間ハイブリッド実験を実施した.

  • 党 紀, 談 雨晴, 五十嵐 晃, 姫野 岳彦, 濱田 由記
    2022 年78 巻4 号 p. I_374-I_382
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     寒冷地における橋梁への高減衰免震ゴム支承の適用にあたっては,低温環境のゴム支承の復元力特性への影響とそれによる橋梁の地震時性能の低下が懸念される.低温環境では,高減衰ゴム支承の剛性および減衰の顕著な増加が生じる一方,繰り返しせん断変形に伴う自己発熱による内部温度の変化によるゴム材料の応力-ひずみ関係への影響のため時間的に変動する複雑な履歴復元力特性となる.本研究では,断熱ケース内に収納することで低温条件を保持したまま高減衰ゴム支承試験体のせん断載荷を行うことができる載荷装置を用い,橋梁構造物の地震応答を模擬するサブストラクチャハイブリッド実験を実施した.

  • 森岡 朝子, 北居 祐馬, 野田 裕樹, 鍬田 泰子
    2022 年78 巻4 号 p. I_383-I_392
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     橋梁添架部の添架管として用いられる水道用溶接鋼管に替わり,「溶接鋼管と同等以上の継手強度」を備え,作業者の溶接技量に依存すること無く,簡単且つ確実に接続可能なメカニカル形式の耐震性鋼管継手を著者らは既報で開発し,継手の引張性能を検証した.添架管継手の耐震性照査手法が確立されていないことを踏まえ,本研究では添架管継手の耐震性能を整理した上で,現行基準を援用して添架管継手の応答値算定方法(静的計算)を提案した.さらに,添架管が布設されている種々の既設橋梁を対象にして,橋梁と添架管とを梁ばね要素でモデル化して動的解析を実施し,継手の静的応答値算定方法の妥当性を確認した.その上で,開発した耐震性鋼管継手に耐震性能があることを確認した.

  • 浅野 拳斗, 孫 巨搏, 葛 漢彬, 劉 厳, 王 占飛
    2022 年78 巻4 号 p. I_393-I_405
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     考案した矩形断面の鋼輪型拘束材(Steel Ring Restrainer,以降SRRと呼称)は,落橋防止装置としての新たなダンパーである.本論文では,SRRの力学的挙動に及ぼす鋼輪の各種寸法と鋼種の影響を評価するために,実験と有限要素解析によりパラメトリックな研究を行い,SRRの荷重-変位曲線の予測式を提案した.その結果,鋼輪の各種寸法と鋼種がSRRの挙動に影響を与え,特に断面積と鋼種は最大耐力と荷重-変位曲線の剛性に,曲線部の半径はSRRの延性(変形性能)に最も影響することがわかった.そして,得られた予測式はSRRの荷重-変位曲線を精度良く予測できる結果となった.

  • 池田 修斗, 劉 厳, 葛 漢彬, 康 瀾
    2022 年78 巻4 号 p. I_406-I_416
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     近年,様々な優れた特性を持つ鋼材が開発され多くの鋼構造物に適用されている.それらの鋼材の特性を明らかにし,橋梁の性能に適合した鋼材を選定することで,橋梁の性能向上およびライフサイクルコストの低減が可能となる.本研究では,高応力三軸度領域(応力三軸度η ≥ 1/3)における高強度鋼材の延性き裂の発生・進展を模擬するため,ノッチを有する試験片の単調引張実験を行い,異なるノッチ半径やノッチ角度,鋼種および化学成分による影響を比較し,破断に至るまでの力学的特性とき裂の発生・進展を明らかにしようとしている.

  • 池尾 光慶, 田口 実季, 藤江 渉, 葛 漢彬, 劉 厳
    2022 年78 巻4 号 p. I_417-I_430
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     本研究では,き裂進展を模擬する3段階2パラメータ延性破壊モデルを用いて無補剛箱形断面鋼製橋脚の弾塑性繰り返し解析を行う.まず,T型溶接継手を対象に提案された0.5mm角メッシュモデルの結果から1mm角メッシュモデルに対し損傷開始パラメータを補正する方法が無補剛箱形断面橋脚に対し適用可能か検討した.また,Pushover解析を実施し,単調載荷下においてメッシュ分割の違いが非破壊解析に及ぼす影響について検討した.さらに,Pushover解析から得られた各パラメータを用いて延性破壊解析を行い,実験結果と比較した.

  • 杉山 裕樹, 吉田 高之, 西田 康人, 吉原 瑞貴, 佐々木 達生, 吉澤 努, 鬼木 浩二
    2022 年78 巻4 号 p. I_431-I_444
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     臨海部の流動化の影響を考慮すべき橋では,一般に,流動力の作用に対する基礎の照査を行う.橋の上下部接続部が剛結構造である場合,高次不静定構造であるため流動化による基礎の永久変位が橋の耐震性や被災後の供用性に影響を及ぼす可能性がある.本検討では,臨海部の高架橋を対象に,流動化による基礎の永久変位がもたらす影響を,地盤-基礎の有効応力解析と構造物の動的解析を組合せた検討により評価した.最初に,FLIPによる有効応力解析を行い基礎の永久変位を算出した.次に,橋の立体骨組モデルを用いて地震動に続く作用として基礎天端に基礎の永久変位を強制変位入力し,要求性能に対する橋の照査を行った.また,強制変位入力後の橋梁に対して,活荷重(変動作用)による応答を算出し,被災後に関する考察を行った.

  • 高橋 幸宏, 能島 暢呂, 香川 敬生
    2022 年78 巻4 号 p. I_445-I_458
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     本研究では,水平2成分(断層直交成分,断層走向成分)の地震動分布における空間的な相互関係を保持したまま,2成分の地震動分布を同時にシミュレーションする方法を提案する.具体的には,水平2成分の地震動分布からなる相互共分散行列に特異値分解解析を適用し,両成分で相関が強い空間特性を示すモード形状と各ケースの地震動分布を特徴付ける主成分得点を抽出する.次に,主成分得点を2成分の共分散構造を保持した係数ベクトルで置き換え,モード形状と合成することで2成分の地震動分布を同時にシミュレーションする.2成分の主成分得点の相関係数をコレスキー分解する方法と,主成分得点の差分をランダムシミュレーションにより与える方法により,2成分の相関性を再現した地震動分布をシミュレーションすることができた.

  • 杉山 佑樹, 佐藤 忠信, 室野 剛隆, 坂井 公俊
    2022 年78 巻4 号 p. I_459-I_467
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     観測されている加速度時刻歴のフーリエ変換の実数部をモデル化するため,実数部に見られる非定常性の抽出法や,確率特性の同定法について検討する.まず,実数部の絶対値を平滑化することで非定常性を抽出し,これを対数正規確率密度関数でモデル化する.次に,実数部から非定常性の影響を除いた過程を「標準化実数部過程」とし,弱定常性を仮定した分析を行う.その結果,標準化実数部差分の分散値は,離散角振動数間隔の2乗に比例するベキ乗則を有していることがわかる.さらに,ベキ乗則を用いて標準化実数部の角振動数に対する相関特性を表現する.また,標準化実数部の平均勾配の確率特性は正規分布に従っており,その特性からベキ乗則が誘導できることを明確にする.さらに,実数部の非定常性と標準化実数部の確率特性を同定する.

  • 齊藤 剛彦, 宮森 保紀, 中村 保之, 竹ノ内 浩祐, 山崎 信宏
    2022 年78 巻4 号 p. I_468-I_477
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     高減衰ゴム支承の温度依存性や加振が進むにつれて水平力が徐々に低下する特性を含めて,橋梁全体の地震時応答を検討するため,低温実験室に整備した載荷装置を用いた仮動的実験を行った.仮動的実験システムにはオープンソースのUI-SIMCORを用い,構造計算部分には汎用構造解析ソフトTDAP IIIを用いることで,汎用性の高いシステムを構築した.対象橋梁はII種地盤上の免震橋とし,温度を+23℃と-20℃で実験した.実験の結果,加振が進むにつれて支承の履歴曲線が変化することを応答解析に取り込むことができた.また,橋脚基部の非線形履歴特性を表現することができた.+23℃と比較して-20℃では支承の最大せん断ひずみが0.6から0.7倍に減少し,橋脚基部の最大塑性率は1.14から1.16倍に増加した.

  • 高橋 幸宏, 能島 暢呂, 香川 敬生
    2022 年78 巻4 号 p. I_478-I_493
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     本研究では,震源パラメータ設定が周期に依存した水平2成分の地震動強度の空間特性に及ぼす影響を分析した.横ずれ断層における600ケースの周期・成分別の絶対加速度応答値の分布をモード分解し,モードと震源パラメータとの関係性を機械学習のランダムフォレストによってモデル化した.このモデルに,機械学習モデルの解釈手法である説明可能なAIを適用し,モードごとに支配的な震源パラメータを明らかにした.モード1には周期・成分別の距離減衰勾配が現れ,モード2以上には,地震モーメントの違いによって全域で地震動強度を増減させるモードや,アスペリティ配置や破壊開始点の位置に関するモードが現れた.

  • 青田 洸希, 藤岡 光, 藤倉 修一
    2022 年78 巻4 号 p. I_494-I_502
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     2016年熊本地震の際に,山岳地に位置する鋼斜張橋である桑鶴大橋では,支承の逸脱などの被害が生じた.桑鶴大橋は,曲線桁かつ不等径間桁の特徴を有しており,これらの橋梁形式が起因して被害が生じたと考えられる.そこで本研究では,桑鶴大橋が有する構造的特徴が地震応答に与える影響を明らかにすることを目的として,実橋梁である不等径間曲線桁モデルに加え,不等径間の直線桁モデルと直線桁の等径間モデルに対して自重解析および非線形動的解析を行った.解析の結果,不等径間桁の支承では,自重状態に生じる負反力が地震時には増幅されてさらに大きな負反力が生じ,また,不等径間桁および曲線桁では,桁の重心位置と主塔位置との関係から,地震時に回転応答が生じ,桁が回転しやすい構造であることを明らかにした.

  • 高橋 健太郎, 藤倉 修ー, 大藪 宏文, NGUYEN Minh Hai
    2022 年78 巻4 号 p. I_503-I_510
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     本研究の対象である球面すべり支承は,復元力を有しているため,ゴム部材等と併用する必要がなく,単体で免震支承として橋梁を支持することが可能であるが,その摩擦特性については必ずしも明らかになっていない.球面すべり支承の摩擦特性は,面圧・速度・温度依存性を有していることが知られている.動的解析において球面すべり支承の動的特性を把握するためには,これらの影響要因を適切に評価し,球面すべり支承の摩擦特性をモデル化する必要がある.そこで,本研究では,シングル球面すべり支承を用いた振動台実験に対して,摩擦係数の面圧・速度依存性を考慮したモデルを用いて再現解析を行った.結果として,摩擦係数の面圧・速度依存性の影響を考慈することにより,実験結果を比較的精度よく再現することができた.

  • 大野 紗希, 小野 泰介, 竹本 純平, 宮本 裕太, 平野 廣和
    2022 年78 巻4 号 p. I_511-I_522
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     本論文は,1980年に水槽耐震設計基準が制定される前の非耐震仕様のFRP製貯水槽を用いて,この貯水槽のバルジング振動特性を把握すると伴に,既存貯水槽における耐震性向上のためバルジング対策案の一つとして制振装置の検討を行った.貯水槽隅角部での損傷が問題となることから,ここに制振装置を設置することで,壁面応答を低減させることができた.さらにレインフロー解析を実施することで,大きな変位ならびに大きな加速度の繰り返し発生回数を抑制する減衰効果を明確にすることができた.

  • 白井 洵, 植村 佳大, 高橋 良和
    2022 年78 巻4 号 p. I_523-I_536
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     本研究では,セルフセンタリング機構による優れた復旧性と地震時のエネルギー吸収性能の両立を目的に,復旧時にのみセルフセンタリング機構が顕在化する柱構造の開発を目指す.具体的には,筆者らが過去に提案しているメタボリズム柱構造(常時軸力を支持する永続部と,地震時にエネルギー吸収性能を発揮する可換部で構成された柱構造)に対し,セルフセンタリング機構を発現するコンクリートヒンジを永続部に用いた構造を提案し,解析的検討を実施した.その結果,提案構造において,取替可能な可換部の塑性化による地震時のエネルギー吸収性能を確認した.さらに,地震応答解析を実施し,提案構造に地震後の残留変位を生じさせ,可換部撤去時の応答把握を目的とした動的解析を実施したところ,永続部によるセルフセンタリング機構の顕在化を確認した.

  • 佐藤 慶介, 小濱 英司
    2022 年78 巻4 号 p. I_537-I_550
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     本研究は,既設重力式岸壁前面に新設矢板を打設する増深改良を対象とし,有限要素法による地震応答解析の簡略化のための既設ケーソンとその築堤過程の省略の影響について検討し,その変形挙動のメカニズムを考慮した考察を行った.既設ケーソンの築堤過程の省略においては,ケーソン設置時の海底地盤への応力伝達が評価できなくなり,増深改良後の矢板前面海底地盤の拘束圧を小さく評価した.このことにより矢板根入れ部の変位に対する地盤の抵抗が小さくなり,改良岸壁の全体的な変位挙動を大きく評価するなど,その影響は小さくなかった.既設ケーソンのモデル化の省略においては,ケーソン底面付近での矢板への局所的に大きい土圧が表現されなくなり,矢板の曲げ変形の評価が小さくなった.

  • 上田 知弥, 植村 佳大, 高橋 良和
    2022 年78 巻4 号 p. I_551-I_564
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     現行の維持管理方策では,腐食が重度な場合,鉄筋の取替を含む大規模更新を行う.一方で,柱では支保工の設置等が必要となり容易には実施できない.そこで本研究では,軸力支持下での腐食鉄筋取替を容易にすることで,腐食環境下で構造物の機能維持を可能とするRC柱の開発を目指す.提案構造は,腐食を許容し腐食ひび割れ顕在時に取替が可能な可換部と,可換部取替時に軸力を支持する永続部からなり,供用しながら腐食鉄筋の取替が可能である.軸力支持下での取替実験及び正負交番載荷実験の結果,腐食の有無に依らず軸力支持下で鉄筋取替ができ,取替が復元力特性に影響を与えないことを確認した.また,取替時の永続部可換部間の付着の有無による影響を検証し,せん断ひび割れ抑制の観点から永続部可換部間の付着確保が望ましいことが分かった.

  • 野村 一貴, 植村 佳大, 高橋 良和
    2022 年78 巻4 号 p. I_565-I_579
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/06
    ジャーナル フリー

     構造物の建設時,計画段階で危機耐性を考慮すべきとされているが,危機耐性を組み込んだ構造計画手法は確立されていない.本研究では,連続トラス橋梁を例に危機耐性構造計画手法の提案を行う.提案手法では,まず構造における最重要要素をロバストネスインデックスにより特定する.次に,その最重要要素が欠落した構造に対して,耐荷メカニズムへの影響が大きい部材の集合である「力学的骨格」を図式力学により選定する.そして,力学的骨格の構成部材に発生する応力と許容応力度とを比較し,許容応力度を超過する部材があれば,力学的骨格の全構成部材の応力が許容応力度の範囲内に収まるよう対策する.この手法により,設計基準外事象下における連続トラス橋梁の耐荷性能が明示化され,危機耐性構造計画が実施可能となる.

feedback
Top