土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
67 巻, 1 号
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和文論文
  • 小林 憲治, 日野 伸一, 山口 浩平, 貝沼 重信
    2011 年67 巻1 号 p. 1-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
     GFRP(ガラス繊維強化ポリマー)は軽量で耐食性に優れ,新たな土木構造材料として期待されている.GFRPは異方性材料で,強度や弾性係数を部材の部位や角度に応じ自由に設計できる.しかし,土木構造部材への適用を図るには,設計手法の確立による指針等の整備が必要であり,十分な研究データの蓄積が必要となる.著者らは,大量生産性に優れる引抜き成形法で製作されたGFRP材に着目し,そのはり部材の材料特性を検討するため,材料強度試験と大気暴露試験を行い,異方性材料の強度特性や材料設計の妥当性および経時変化特性を明らかにした.また,はり部材の曲げ試験により曲げ耐荷挙動を把握し,はり部材の変形性状が初等はり理論で評価可能なことを明らかにした.さらに,数値解析ではり部材の曲げ耐荷挙動が再現可能なことを確認した.
  • 高田 佳彦, 坂野 昌弘
    2011 年67 巻1 号 p. 13-26
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
     近年,鋼床版の疲労損傷が道路管理上深刻な問題となっている.Uリブ構造においてデッキプレートに疲労き裂が進展した場合,交通荷重の支持機能の低下の恐れがある.都市高速道路の厳しい制約を踏まえて,今回,デッキプレートとUリブとの溶接部の疲労対策として,交通規制を必要としない,補強,予防保全の対策工を検討した.本検討では,FEM解析および実橋を再現した試験体を用いた静的載荷試験により,対策効果を評価した.その結果,Uリブ間鋼板補強工法は10%程度の応力低減効果に留まりUリブ内のデッキプレートのたわみ変形の低減が不可欠であること,およびUリブ内モルタル充填の併用により応力低減効果は90%と,最も高い対策効果が得られた.さらに疲労試験により,このモルタル充填併用工法の疲労耐久性向上効果を確認した.
  • 佐野 正, 山下 幸生, 松井 繁之, 堀川 都志雄, 久利 良夫, 新名 勉
    2011 年67 巻1 号 p. 27-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
     鋼板接着工法は損傷したコンクリート部材の表面にエポキシ樹脂で鋼板を接着し,部材内部の鋼材を外側から補おうとする補強工法である.長年にわたって多くの橋梁床版に適用されているが,経年に伴って鋼板の浮きが発見されている.本研究では,人為的に浮きを設けた鋼板接着補強RC床版を作製し,輪荷重走行試験を実施して破壊過程を観察するとともに,樹脂の再注入による補修を行った.劣化度を用いた検討の結果,劣化度が使用限界(1.0)を超える1.3の場合でも,再注入を行うことで劣化度が0.69まで改善できることがわかった.
  • 阿部 忠, 木田 哲量, 高野 真希子, 川井 豊
    2011 年67 巻1 号 p. 39-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/20
    ジャーナル フリー
     本研究では, RC 床版供試体に輪荷重走行実験を行い,走行荷重が作用する RC 床版の押抜きせん断力学モデルと耐荷力評価式を提案した.その結果,実験耐荷力と本提案式による押抜きせん断耐荷力とは良く近似する結論を得た.次に,コンクリートの圧縮強度が異なる RC 床版供試体に輪荷重走行疲労実験を行い,耐疲労性を評価した.この結果,圧縮強度が 21N/mm2に比して圧縮強度 32N/mm2のRC 床版供試体は 5 倍以上の耐疲労性を有していることが判明した.また,破壊荷重付近の押抜きせん断評価式を適用した S-N 曲線式を提案した.これによって, 1964 年および 1973 年の道示で設計された RC 床版の場合は松井らの S-N 曲線, 1980 年および 1994 年改定の道示の場合は本提案の S-N 曲線を適用することで RC 床版の耐疲労性の評価が可能となる.
  • 堺 淳一, 運上 茂樹, 星隈 順一
    2011 年67 巻1 号 p. 55-71
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/18
    ジャーナル フリー
     現在の道路橋の耐震設計基準では,地震時の落橋という致命的な被害を防ぐために落橋防止システムを設置することが規定されている.しかし,設計上の想定を超える地震動や地盤の破壊による変位などに関して,どのレベルの事象までを対象に落橋防止対策を行うのかを明確に設定するのが難しいことなどから仕様規定となっており,要求される性能を明確にし,落橋を防止するための合理的な対策及びその設計法を構築することが必要とされている.本研究は,既往の大規模地震において上部構造が落下した事例の分析を行うとともに,被災橋を対象にした再現解析から落橋現象を分析し,さらに落橋防止構造の力学的特性が上部構造の落下防止に及ぼす効果について解析的な検討を行ったものである.
  • 大倉 一郎, 長井 和樹
    2011 年67 巻1 号 p. 72-85
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     複数枚のCFRP板が上下面に対称に接着された鋼板に対して,鋼板中央の応力を所定の値まで低下させるCFRP板の必要接着長さ,およびCFRP板の接着端のはく離せん断応力の推定式を与える.CFRP板が鋼板の上下面に対称に1枚または2枚接着された場合の,CFRP板の必要接着長さおよびはく離せん断応力の理論解に基づいて,複数枚のCFRP板が接着された場合に対する推定式を仮定し,その妥当性をFEM解析によって明らかにする.鋼板中央の応力を所定の値まで低下させ,かつCFRP板を鋼板からはく離させない特定の接着枚数が存在することを数値計算例によって示す.
  • 静間 俊郎, 中村 孝明, 吉川 弘道
    2011 年67 巻1 号 p. 86-94
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     都市間高速道路の地震災害において,被災箇所を回避しつつ健全な片側車線で対面通行ができれば,一定程度の車両通行機能は確保でき,さらに被災地への緊急車両の通行も可能となる.そのためには緊急時に上下線を行き来できる開口部を適切な位置に設ける必要がある.本論は,高速道路をブリッジ機能を有するラダー系システムにモデル化し,システムの復旧期間を定量的に評価する方法を提案すると共に,これを用いて開口部の効果を視覚的に把握できる復旧曲線を提示する.また,解析モデルとして設定した仮想高速道路のシミュレーションを通じ,提案手法の適用性と効果的な補強対策や開口部の設置位置について検討を行った.
  • 森 猛, 原田 英明
    2011 年67 巻1 号 p. 95-107
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     近年,いくつかの橋梁の鋼床版においてデッキプレート・トラフリブ縦方向溶接のルートを起点とした疲労き裂の発生事例が報告されている.そのき裂の橋軸方向の位置は,縦リブ支間である場合と横リブ直上である場合がある.縦リブ支間中央部のルート部から生じるき裂については,き裂発生・進展に対する溶込み深さの影響をモデル試験体の疲労試験とFEM解析により検討し,その結果を既に報告している.ここでは,横リブ直上のデッキプレート・トラフリブ縦方向溶接部のルートから生じる疲労き裂を対象として,その性状に対する溶接溶込み深さと交差部のスカラップの有無の影響について,疲労試験と応力解析を行うことにより検討した結果を報告する.
  • 千田 知弘, 佐々木 貴信, 薄木 征三, 後藤 文彦
    2011 年67 巻1 号 p. 108-120
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     近年の環境問題への関心の高まりから,CO2排出量が少ない木質系材料への関心が高まっており,土木分野においても,景観性に優れた木橋をはじめとして様々な施設への実用化が図られている.木質系材料は破壊性状が脆性的であるために,主要構造部材として用いる場合に,鋼材などの異種材料を用いて適切に補剛,補強したハイブリッド構造が提案されている.これにより集成材主桁と鋼床版を用いたハイブリッド木橋が実用化されているが,部材輸送上の制限から現場継手を要する場合には,施工性や強度など継手の性能が極めて重要となる.
     本研究では,集成材主桁と角形鋼管床版を用いたハイブリッド木歩道橋を対象に,実寸モデルの継手試験体を製作し,施工性の確認を行うと共に,載荷試験を行い,実験結果とFEM解析結果を比較検討し強度特性を評価した.
  • 深田 宰史, 室井 智文, 樅山 好幸, 梶川 康男
    2011 年67 巻1 号 p. 121-136
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     本研究で対象とした高速道路に架設されたPC桁橋は,大型車両の走行に伴い,車両と橋梁との連成振動が生じ,大きく振動していた.本研究では,試験車走行実験および路面計測により,その振動原因を路面凹凸の周期性であると判断した.そこで,様々な走行速度,重量およびばね特性を有した一般の大型車走行によって生じた車両と橋梁との連成振動により,橋梁が受ける影響として,主桁の応力度がどの程度,動的に増幅しているのか,2年間の長期モニタリングから明らかにした.さらに,その路面を補修したことにより,その応力度がどの程度低減できたのか,路面補修後の試験車走行実験と1年間の一般車走行を対象としたモニタリングにより明らかにした.
  • 金治 英貞, 尾立 圭巳, 鈴木 直人, 井上 一朗, 藤野 陽三
    2011 年67 巻1 号 p. 137-148
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     本論文は,既設長大トラス橋やアーチ橋などのフレーム系における座屈拘束ブレース(BRB)の性能評価を目的とした繰り返し載荷実験とその解析的検証について述べたものである.実験では,履歴特性の異なる平板型と十字型の芯材を各々用いた2タイプのBRBを用いて,特に実BRBの引張・圧縮領域における二次剛性の相違に着目し,実橋諸元を想定したフレーム内での性能比較を行なっている.また,横梁の非線形性を考慮したフレーム系解析では,実験結果と比較することによりBRBの履歴モデルの妥当性を検証している.これらの結果,横梁剛性,強度の小さい既設橋フレーム系において,BRBの引張・圧縮領域における二次剛性の相違は,フレーム変形特性,BRB履歴曲線に影響を及ぼすものの,減衰性能へはあまり影響を与えないことを示した.
  • 松林 卓, 岩波 光保, 横田 弘, 山田 岳史, 竹鼻 直人
    2011 年67 巻1 号 p. 149-164
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     繰返し衝撃荷重を受ける鉄筋コンクリート版の破壊性状を明らかにするため,重錘落下式衝撃載荷試験装置による二辺支持鉄筋コンクリート版の繰返し衝撃載荷実験を実施した.その結果,繰返し衝撃荷重によって押抜きせん断破壊に至る鉄筋コンクリート版について,衝撃荷重の繰返し作用が版の変位,重錘衝撃力および支点反力に及ぼす影響とその原因を明らかにした.さらに,鉄筋比,版厚など諸元の違いが繰返し衝撃荷重を受ける鉄筋コンクリート版の破壊性状に与える影響を明らかにした.
  • 堀 宗朗, 弓削田 恭兵, 市村 強, WIJARTHNE Lalith
    2011 年67 巻1 号 p. 165-176
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     本論文は,ライフラインの地震被害復旧の戦略立案支援を最終的な目的に,復旧過程を模擬するマルチエージェントシミュレーション(Multi-Agent Simulation, MAS)の開発を試みる.復旧過程を離散的な資材配分問題として定式化し,この数理問題を解く数値解析手法としてMASを設計する.開発されたMASは,ライフラインの修復と利用をする技術者と使用者のエージェントから構成され,多種多様のライフラインと技術者と使用者を扱えるよう,オブジェクト指向プログラミングが活用されている.ライフラインのモデルの自動構築も組み込まれている.簡単な資材配分問題を使って開発されたMASの妥当性を検証し,ケーススタディを行いMASの潜在的有効性を議論した.
  • 橋本 国太郎, 杉浦 邦征, 山口 隆司, 熊野 拓志
    2011 年67 巻1 号 p. 177-192
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     本研究では,鋼製橋脚の耐震性能の向上を目指し,幅方向テーパー鋼板を用いた箱型断面鋼製橋脚を新たに提案し,幅厚比パラメータおよびテーパー率をパラメータとした正負交番載荷実験,複合非線形FEM解析,ハイブリッド実験および動的複合非線形FEM解析(地震応答解析)を行い,その耐震性能を議論している.正負交番載荷実験および複合非線形FEM解析の結果,幅方向テーパーによってエネルギー吸収性能や塑性率が向上すること,幅厚比パラメータならびにテーパー率が大きいほどエネルギー吸収性能が向上することを明らかにした.ハイブリッド実験および地震応答解析により,阪神大震災クラスの地震を受けた場合,幅厚比パラメータR=0.4~0.5では,幅方向テーパーをつけることで,応答変位量が5%程度小さくなることも明らかになった.
  • 藤山 知加子, 櫻井 信彰, 前川 宏一
    2011 年67 巻1 号 p. 193-206
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
     鋼材とコンクリートの境界面特性及びリブ形状が合成床版の疲労破壊モードに与える影響を,実験と数値解析の両面から検討した.初期付着と接触摩擦の両者が期待できる場合,初期付着の部分的な喪失によって一旦荷重が低下するが,急激な破壊には至らなかった.その後の漸増載荷によって初期付着の喪失は版全体におよび,鋼材とコンクリートとの合成作用は両者の摩擦による機構に移行して耐荷力を保持したが,鋼材の降伏に伴い終局を迎えた.破壊過程は,初期付着と接触摩擦の両者を考慮した接合要素を用いた数値解析で再現が可能となった.鋼コンクリート境界面摩擦特性と初期付着の有無,及びリブ諸元が合成床版の破壊過程に及ぼす影響を定量的に数値解析から示した.
  • 羽田野 袈裟義, 松岡 克弥, Pallav KOIRALA, 中野 公彦, 種浦 圭輔
    2011 年67 巻1 号 p. 213-224
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/20
    ジャーナル フリー
     フロート・カウンターウェイト式波力発電方式は,可動物体型の課題であった構造強度の問題の主要部を解決した.しかしながら,水面上昇時と下降時の駆動トルクが異なるために,ワイヤーが弛緩した後に急激な緊張が生じるという課題がある.これを回避するため,ワイヤー経路途中にバネを有する蓄力装置を装着し,ワイヤー張力と発生電力の変動を抑える方法がある.本研究は,この方式の装置について力学モデルを構築すると共に,蓄力装置がもたらす波力発電装置稼働上の効用を評価している.蓄力機能の効果は,駆動プーリ・フロート間のワイヤー長の変動として力学モデルに評価されている.モデル計算の結果,蓄力機能により負のワイヤー張力の発生が抑えられること,蓄力機能は周期が短く波高が高い波で大きな効果をもつことなどを予測している.
和文討議
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