土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
74 巻, 3 号
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和文論文
  • 吉田 賢二, 東山 浩士, 馬場 敏, 松井 繁之
    2018 年 74 巻 3 号 p. 306-318
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
     輪荷重走行下のロビンソン型合成床版では,底鋼板上面に溶接されたスタッドに回転せん断力が繰返し作用し,疲労破壊する場合がある.そのため,1997年に合成床版に適用するスタッドのせん断疲労設計法が基準化された.その後の研究では,回転せん断疲労試験機の改良によりばらつきの少ない疲労試験結果を得ることができた.さらに,スタッド溶接に用いるフェルールの改良により約3倍の疲労寿命向上を実現できた.本研究では,スタッド溶接部を詳細にモデル化した3次元FEM解析により輪荷重走行試験と回転せん断試験におけるスタッドに作用するせん断応力と疲労寿命の関連性を検討し,回転せん断試験結果により合成床版内のスタッドの疲労寿命を推定した.さらに,従来型スタッドに対する改良型スタッドの疲労寿命の違いについて考察した.
  • 松本 徳久, 安田 成夫, 曹 増延
    2018 年 74 巻 3 号 p. 319-329
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー
     本研究において,ダムサイトの地震記録の分析などにより荒砥沢ダムの約23年間にわたる振動特性(固有振動数,加速度増幅率)の変化について考察した.2008年の岩手・宮城内陸地震を受けて,一時的にダム堤体の水平方向の固有振動数及び加速度増幅率は大幅に低下したが,本震の約一週間後にこれらの振動特性が地震前の状態にほぼ回復した.また,地震記録のクロススペクトル及びコヒーレンス関数分析により天端中央の地震応答に対する下方岩盤並びに両岸地山の地震動の寄与度合について考察した.ダム堤体の1次固有振動数までの低振動数範囲ではダム堤体の地震応答に対して下方岩盤の地震動の寄与が大きいこと,それ以上の振動数範囲では両岸地山の地震動の寄与は卓越する場合もあることを指摘している.
  • 松本 理佐, 河本 隆史, 石川 敏之, 服部 篤史, 河野 広隆
    2018 年 74 巻 3 号 p. 330-348
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
     疲労き裂に対する簡易な補修法の一つとして,鋼板や炭素繊維強化樹脂成形板など当て板の接着が注目されている.しかし,当て板接着補修は,その補修効果の定量的評価が困難なため,積極的な活用には至っていない.本研究では,当て板接着によるき裂進展遅延効果を定量的に評価する方法として,板曲げ応力を受ける当て板接着されたき裂を有する平板および面外ガセット溶接継手の応力拡大係数を定式化した.また,面外ガセット溶接継手を用いた板曲げ疲労試験によって当て板接着補修によるき裂進展遅延効果を確認した.最後に,応力拡大係数の理論式を用いてき裂進展解析を行い,疲労試験の結果を評価した.その結果,提案式によって,当て板接着によるき裂遅延効果を精度よく評価できた.
  • 浅尾 尚之, 中山 太士, 藤井 堅, 福田 光央, 石川 敏之, 松井 繁之
    2018 年 74 巻 3 号 p. 349-358
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
     開床式の鋼プレートガーダー鉄道橋では,上フランジにおいて,まくらぎ下が局部的に腐食する損傷が多数発生しており,この局部腐食は桁の耐荷力に大きく影響する.通常,まくらぎ配置により上フランジが腐食すると,桁の曲げ耐荷力が低下する.本研究では,まくらぎ下に腐食損傷を有するプレートガーダーの残存耐荷力の簡易評価法を示す.本評価法は,腐食減耗にともなって現れる圧縮フランジおよびウェブパネルの終局モードから得られる耐荷力の最小値を以て終局強度とするものであり,まくらぎ下の上フランジ腐食を模擬した載荷実験結果および複合非線形有限要素解析結果と比較することにより,本簡易評価法が,まくらぎ下が腐食したプレートガーダーの残存耐荷力を精度よく評価できることを示す.
  • 山下 修平, 下里 哲弘, 田井 政行, 有住 康則, 矢吹 哲哉
    2018 年 74 巻 3 号 p. 359-375
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
     高力ボルト摩擦接合継手を適切に維持管理するためには,継手を構成する各部材(高力ボルト,母板,連結板)の腐食状態とすべり耐力の関係を明らかにすることが求められる.本研究では,実橋の環境下で腐食減肉した連結板を用いて,腐食形状の計測と分類,高力ボルト締付け時の接触圧分布及びすべり耐力に関する各種試験を行い,腐食減肉形状がすべり耐力特性へ与える影響について検証した.その結果,腐食減肉が大きい片側連結板の降伏とすべり耐力特性に相関性があることを示し,実腐食減肉形状を有する連結板のすべり耐力の評価法を示した.
  • 橘 肇, 廣瀬 壮一, 古川 陽, 中本 啓介
    2018 年 74 巻 3 号 p. 376-384
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
     鋼板接着工法は,劣化損傷した鉄筋コンクリート構造物(以下,RC構造物)の補強方法として多く採用されてきた.本研究では,鋼板接着工法にて補強された道路橋RC床版が再劣化して剥離した鋼板の上面における滞水状況を,鋼板下面から超音波ガイド波を用いた非破壊検査にて定量的に推定することを目的としている.ここでは,鋼板接着床版と同様に下面を鋼板で覆われた鋼コンクリート合成床版やI形鋼格子床版も想定して,異なる鋼板厚と滞水層厚を様々に組合せたモデルについてガイド波の分散特性に関する理論解析を行い,実験にて提案手法の有効性を検証した.その結果,実験と理論解との間の良好な一致が得られ,本手法によって鋼板上面の滞水の検出と滞水層厚の推定が可能であることがわかった.
  • 南 邦明, 横山 秀喜, 德富 恭彦, 森井 茂幸
    2018 年 74 巻 3 号 p. 385-398
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー
     本論文は,亜鉛アルミ合金溶射を施した高力ボルト摩擦接合継手に関する研究である.本研究では,同継手に適切な導入軸力が期待できるナット回転量,封孔無による腐食の影響およびそのすべり耐力を明確にすることを目的に実施した実験的研究である.本実験では,合金溶射を施した試験体を作成し,ナット回転法を用いた導入軸力試験およびリラクセーション試験を行い,適切なナット回転量を検討した.次に,封孔処理無しによる発錆の影響を調べるため,合金溶射試験片を用い,海岸地域で曝露試験を実施した.そして,曝露した試験片を用いてボルト継手試験体を作成し,これを用いてすべり耐力試験を実施した.
  • 永田 真, 別府 万寿博, 市野 宏嘉
    2018 年 74 巻 3 号 p. 399-416
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,爆発荷重に対する合理的な耐爆構造設計に資するため,近接爆発による分布荷重を受けるRCはりの破壊メカニズムについて考察し,曲げ応答評価法の提案を行ったものである.まず,近接爆発時における爆風圧の分布特性を調べるため,C-4爆薬を用いて爆風圧の計測実験を行った.実験結果に基づいて,爆薬量,離隔距離および対象とする部材長を変数とした最大反射圧および力積の分布特性を評価する式を提案した.次に,C-4爆薬を用いてRCはりに対する近接爆発実験を行い,RCはりに作用する圧力,RCはりの最大応答変位,鉄筋ひずみおよび支点反力等を計測し,近接爆発を受けるRCはりの破壊メカニズムに関する考察を行った.さらに,近接爆発による分布荷重を考慮したRCはりの曲げ応答評価法について提案を行った.
  • 岩吹 啓史, 佐々木 栄一, 竹谷 晃一, 長船 寿一, 安田 英明
    2018 年 74 巻 3 号 p. 417-430
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,供用中高速道路橋に設置され稼働している既設TMDに対し,減衰装置であるオイルダンパを減衰調整が容易な電磁減衰装置に置き換え発電を可能とする発電型TMDを提案し,その制振効果及び低周波音低減効果を検証することを目的として,供用中実大橋梁による道路交通振動実験を行った.発電型TMDは,電磁減衰装置の電気抵抗値を変化させることで,制振重視型,吸収エネルギー重視型,発電エネルギー重視型など,設計目的に応じた設計が可能であることを数値シミュレーションにより示した.実大橋梁実験では,発電型TMDの制振効果は数値シミュレーションと概ね一致することを確認し電気抵抗値設計の有用性を明らかにするとともに,オイルダンパと同程度の制振効果及び低周波音低減効果を有する発電型TMDの実用化の可能性を示した.
  • 川崎 肇, 伊津野 和行
    2018 年 74 巻 3 号 p. 431-439
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/20
    ジャーナル フリー
     津波や洪水による橋梁の流出を防ぐ対策として,桁側面にフェアリングを設置することによって流体力を軽減させる方法がある.しかし,実際の適用にあたっては,施工上の条件などによって必ずしも側面全体に設置できるとは限らない.本研究では,部分的にフェアリングを設置した場合の流体力軽減効果について,実験的および数値解析的に検討を行った.その結果,フェアリングで側面の75%を覆うことで,側面全体を覆う場合と同等の抗力軽減効果を得られる場合のあることがわかった.ただし,鉛直方向の投影面積が増える影響等で,流体力が大きくなると揚力の軽減効果は見込めない場合もあった.
  • 吉田 純司, 小泉 和士
    2018 年 74 巻 3 号 p. 458-472
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
     実務における免震構造物の動的解析では,高精度で利用しやすい免震デバイスの力学モデルが必要とされている.そこで,著者らはバイリニアモデルをベースとして,積層ゴム支承の水平1方向の復元力特性を再現するハードニングダメージモデル(以後,HDモデルと呼ぶ)を提案した.本研究では,HDモデルの水平2方向への拡張とその妥当性の検証を目的とする.具体的には,古典弾塑性論を基に,バイリニアモデルを水平2方向に拡張した水平2方向バイリニアモデルと,それをベースとした積層ゴム支承の水平2方向HDモデルの定式化および数値計算手法を示す.次いで低硬度の高減衰積層ゴム支承の3軸載荷実験を行い,水平2方向HDモデルが支承の2方向復元力および地震応答を比較的精度良く再現できることを示す.
  • 小坂 崇, 金治 英貞, 一宮 利通, 藤代 勝, 三木 朋広
    2018 年 74 巻 3 号 p. 473-490
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
     都市高速道路では軽量な鋼床版の使用頻度が高いが,近年,鋼床版における疲労き裂が顕在化しており,維持管理にかかる費用が増加する傾向にある.そこで,著者らは鋼床版と同等に軽量で,より耐久性の高い超高強度繊維補強コンクリートを用いた道路橋床版であるUFC床版を開発した.本稿で述べるUFC床版はリブを有するワッフル型であり,従来のコンクリート床版と比較して部材厚が極めて小さく,PC鋼材を2方向に配置したプレキャスト床版である.このUFC床版について床版寸法を検討するとともに,3次元FEM解析によってUFCの応力度および床版の変形量を算出し,この床版の実現可能性を確認した.また,試験体に対する実車による振動試験および解析によって車両との共振が生じないこと,衝撃係数を確認し設計条件の妥当性を確認した.
  • 小坂 崇, 金治 英貞, 一宮 利通, 藤代 勝, 三木 朋広
    2018 年 74 巻 3 号 p. 491-503
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
     都市高速道路では軽量な鋼床版の使用頻度が高いが,近年,鋼床版における疲労き裂が顕在化しており,維持管理にかかる費用が増加する傾向にある.そこで,著者らは鋼床版と同等に軽量で,より耐久性の高い超高強度繊維補強コンクリートを用いた道路橋床版であるUFC床版を開発した.本稿で述べるUFC床版はリブを有するワッフル型であり,従来のコンクリート床版と比較して部材厚が極めて小さく,PC鋼材を2方向に配置したプレキャスト床版である.このUFC床版について実大試験体に対する輪荷重による静的載荷試験と,動的な輪荷重走行試験によって耐疲労性を確認した.UFC床版は設計に用いる活荷重であるT荷重の2倍程度で,100年に等価な繰返しをこえる段階まで剛性が低下せず破壊に至らなかったことから,高い耐疲労性を有することを確認した.
  • 寳地 雄大, 室野 剛隆, 齊藤 正人
    2018 年 74 巻 3 号 p. 504-515
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
     基礎を有する構造物では,地盤‐構造物系の動的相互作用により入力損失が生じる.入力損失に関する研究は,これまで剛なフーチングを有する構造物に対し,橋軸直角方向の2次元断面による検討がされてきた.しかし,ラーメン高架橋のように剛なフーチングに比べ柔な地中梁を有し,橋軸方向にも各部材が一体となった構造では,上部構造物を含めた構造全体の剛性により周辺地盤の挙動を拘束することで,より大きな入力損失を発現する可能性がある.そこで,本研究ではラーメン高架橋を対象に2次元,3次元モデルによる動的解析を行い両者の結果を比較することで,構造全体系から生じる入力損失効果について定量的に評価した.さらに,構造全体系の入力損失の評価について理論解を導きその妥当性を検討した.
  • 服部 雅史, 牧田 通, 舘石 和雄, 判治 剛, 清水 優, 八木 尚人
    2018 年 74 巻 3 号 p. 516-530
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー
     鋼床版のUリブ・デッキプレート溶接部を対象として,デッキプレート方向もしくは溶接ビード方向に進展する内在き裂を検出できる非破壊検査手法と,その測定精度について検討した.本研究では,鋼床版に磁石で固定でき,バッテリ駆動のモータにより橋軸方向に電動走行できる治具を取り付けたフェーズドアレイ超音波探傷装置を用いた.本装置によりデッキプレートおよび溶接ビードに内在する疲労き裂を同時に探傷することが可能である.振動式疲労試験機により,様々な寸法のデッキ進展型もしくはビード進展型の疲労き裂を導入した試験体を製作し,測定方法の検討,測定精度の検証,塗膜の影響の確認を行い,本手法が十分な検出性能を有していることを示した.
和文報告
  • 岩崎 英治, 中嶋 龍一朗, 多和田 寛, 石井 一騎
    2018 年 74 巻 3 号 p. 440-457
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/20
    ジャーナル フリー
     積雪寒冷地では,スパイクタイヤの使用禁止以降,凍結防止剤として大量の塩化物を散布しているため,路面上の凍結防止剤の飛散による腐食事例が報告されている.しかし,路面上に散布された凍結防止剤の散布量と鋼桁部への飛来量の関係や腐食に関する十分な知見は得られておらず,凍結防止剤を散布する地域に関しては,高知道での鋼材の腐食状況に基づいた配慮事項があるのみである.そこで,長野県内の平地部に建設された上信越道と長野道の複数の橋梁,高知県と愛媛県の県境付近の高知道の複数の橋梁を対象に,凍結防止剤の散布量と鋼桁部への飛来量,鋼材の腐食量の関係を定量的に調べた.また,凍結防止剤を散布する地域での耐候性鋼橋の適用性に関する検討を行った.
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