土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
69 巻, 4 号
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地震工学論文集第32巻(論文)
  • Ali DERAKHSHANI, Ikuo TOWHATA
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_1-I_8
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     In order to explore the effects of ground shaking on buried lifelines new experiments were devised. Single gravity model shaking table experiments were developed and conducted to examine the response of instrumented pipes buried in dry sand when subjected to shaking. This study was aimed to obtain a better understanding of the behavior of embedded lifelines by considering the effects of geometrical complications. Since, such structures may be close to underground concrete walls of adjacent buildings in an urban environment, the influence of nearby concrete structure was also investigated. Details of the experimental setup and procedures are first explained. Then, test data are discussed in terms of longitudinal bending moment and soil pressure distribution of model structures as well as P-Y curves.
  • 木全 宏之, 堀井 秀之, Mahmoud YAZDANI
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_9-I_19
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     アーチ式コンクリートダムを対象に,基礎岩盤の不連続面の進行性破壊を考慮した非線形動的解析を実施し,基礎岩盤に注目した耐震安全性評価を試みた.不連続面のすべりや開口に関する破壊指標を新たに提案,適用し,想定した入力地震動の加速度レベルを変化させた非線形動的解析から,基礎岩盤が終局破壊に至る限界加速度を求めた.非線形動的解析は,不連続面の方向や強度を変化させて実施し,限界加速度に基づいてアーチ式コンクリートダムの耐震安全性評価を試みた.
  • 中村 友昭, 水谷 法美, Xingyue REN
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_20-I_30
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     津波を模擬した段波の作用に伴う橋桁の挙動を3次元連成数値計算モデルにより解析し,固定した桁に作用する津波力の発生機構を考究するとともに,同モデルの再現性を津波力の観点から検討した.その結果,桁に作用する鉛直力や橋軸回りのモーメントが減少し最小値に達してから,わずかに増加するまでの位相については,桁の下側に生じる渦とそれに伴う圧力の低下を適切に評価できたことから,同モデルにより桁に作用する津波力を概ね再現できることを確認した.次に,桁を移動可能なものに取り替えた数値実験を実施し,桁の重量を大きくしたり下向きの鉛直力を増加させたりして静止摩擦力を増加させることによって,またその静止摩擦力を上回らないように水平力の増加を抑えることによって,津波の作用に伴う桁の移動を抑えられる可能性を明らかにした.
  • 崔 準祜, 徳永 裕二, 大塚 久哲, 小南 雄一郎
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_31-I_41
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     鋼製支承を有する多くの曲線橋では,支承部を上部構造の接線方向や法線方向に合わせて設置しており,解析ではその方向に合わせてモデル化を行うのが一般的である.しかし,支承部の設置方向が各支点において異なっていることから,支承部の支持方向と地震時慣性力の方向が一致しない箇所が存在し,地震力が支承部に対して斜め方向に作用した場合,支承部がどのように挙動するかは,これまで検討事例が無く,不明である.本研究では,曲線橋におけるローラー支承の動的挙動や解析手法を明らかにすることを目的とし,模型ローラー支承を用いて載荷方向をパラメータとした破壊実験を実施し,その実験結果に基づいてローラー支承の解析モデルを提案した.この提案モデル用いて仮想の曲線橋を対象に地震応答解析を実施し,現行の支承モデルを用いた結果と比較を行った.
  • 中尾 尚史, 張 広鋒, 炭村 透, 星隈 順一
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_42-I_54
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究は,橋が津波の影響を受ける時に橋桁に作用する圧力と橋桁支点部に作用する力を水路実験により計測し,その圧力と支点反力の関係について検討した.水路実験では長方形断面模型,2主桁断面模型,4主桁断面模型を作製して実験を行った.その結果,長方形断面の場合,両支点に下向きの支点反力が作用するが,2主桁,4主桁断面では津波が作用する側の支点で上向きの反力,反対側の支点で下向きの支点が作用し,津波が作用する側が持ち上がるような方向の回転力が作用することが分かった.さらに流体解析ソフトを用いた解析を行い,水路実験の再現計算を試みた.解析では長方形断面模型,2主桁断面模型をモデル化して解析を行った.その結果,津波が作用する側の床版側面や床版張出部,主桁に作用する圧力は実験結果を再現できることが分かった.
  • 志波 由紀夫
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_55-I_72
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本論文は,立坑構造物の耐震計算法として実務で多用されている,はり・ばねモデル応答変位法について幅広く考察したものである.まず,この耐震計算法が定着して来た経緯を振り返りつつ,現行の計算法における疑問点を挙げ,それについて立坑・地盤間の地震時相互作用の本質まで遡って考察した上で,現状の解析モデルにおける問題点を指摘した.次に,そうした従来モデルにおける不備を補うように改良を加えた解析モデル(改良型モデル)を提案した.また,ごく単純な地盤・立坑条件を想定し,改良型モデルに基づいてその地震時挙動を解析学的に定式化した.そして,改良型モデルの解析性能について検証した後に,立坑構造物の地震時応力の一般的特性に関して若干のパラメトリック・スタディを行った.
  • 三好 俊康, 島谷 学, 鷲尾 朝昭
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_73-I_86
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     近年,再生可能エネルギーへの関心が高まり,その中でも風力発電施設の設置が増加する傾向にある.また,日本ではコスト面や風況の関係から,洋上への施設建設に注目が集まっている.本報告では,洋上風力発電施設として建設される風力発電タワー用風況等観測施設である「観測塔」を対象とした模型振動台実験の内容について示す.本構造物はRC製底版と鋼管等で構成される重力式ハイブリッド構造基礎を有する着底式構造であり,正弦波や地震動加速度波形を加振用波形として実験で用いた.その結果,構造物が不安定になるような挙動は示さず,動的荷重に対する安全性を確認することができた.
  • 中村 一大, 宮崎 知洋, 佐伯 昌之, 小國 健二
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_87-I_94
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     GPS on Every Roofは,地震発生時に家屋の倒壊状況を把握するシステムである.本システムは,GPS受信機を搭載した無線センサノードを家屋の屋根に搭載し,地震による変位を測定する.GPS解析は,通信量を抑制するためにオンボードで行う.しかし,解析に必要な倍精度演算を行う高機能CPUは,センサノードとしては消費電力が大きい.GPS無線センサネットワークの実用化に向けて,限られた電源で長期間稼働させることが課題であり,省電力化が望ましい.本論文で提案するハイブリッドセンサノードでは,高機能CPUと共に省電力CPUを搭載している.高機能CPUの使用をGPS解析に限定し,他の処理を省電力CPUで行うことで,センサノード全体の省電力化を目指す.検証実験では,測位精度の目標値を達成しつつ,全所要時間576秒のうち高機能CPUの稼働時間を10秒に抑えた.
  • Hideyuki O-TANI, Jian CHEN, Muneo HORI
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_95-I_101
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     Smart visualization of output from Integrated Earthquake Simulation (IES) performed for various earthquake scenarios is studied by taking advantage of existing methodology of big data visualization and by developing our own methodology which is suitable for earthquake disaster assessment. A key issue of being smart is to deliver information generated by IES to not only professional earthquake engineers, but also non-professional government officials and city residents. Simple visualization for city residents, wide area visualization for government officials, and dual visualization for professional engineers are proposed to bring common recognition to IES users. As a trial of smart visualization, both structure-wise and scenariowise damage condition statistics are graphed by means of histograms and mosaic plots; spatial clustering analysis for damaged structures is introduced and the distance between the damage conditions of earthquake scenarios is defined and visualized, accompanied by scenario cluster analysis.
  • 炭村 透, 張 広鋒, 中尾 尚史, 星隈 順一
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_102-I_110
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,津波の影響を受けた橋梁の抵抗特性の検証を目的として,東日本大震災における橋の流出モードを踏まえ,支承部の抵抗特性に着目した実験を行った.4本の主桁で構成される上部構造を有する実橋梁を対象に,上下部構造を含めた縮小供試体を作成し,上部構造に津波によって生じる作用を模した荷重を載荷し,その時の個々の支承の破壊形態と,一支承線全体としての終局耐力について考察した.その結果,支承の破壊は設計計算で最も上向きの終局耐力が小さくなるサイドブロック本体ではなく,サイドブロック取付ボルトの破断によることや,その耐力は標準設計手法に基づく耐力よりも大きくなることを確認した.また,上部構造を含めた梁ばねモデルにより,一支承線全体に対する構造解析を行った結果,実験結果を比較的精度よく再現することが可能であることがわかった.
  • 森 敏, 千葉 一元, 小池 武
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_111-I_120
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震では東北地方太平洋沿岸部で津波による甚大な地震被害を発生したが,日本海側の供給基地から日本列島を横断して仙台市に輸送された長距離高圧ガスパイプラインは致命的な損傷を免れ短時日の内に供給運転を再開することができた.本研究では,元々1995年兵庫県南部地震以前に耐震設計されていた当該パイプラインが東北地方太平洋沖地震における山間部や沿岸部の地震被害にも関わらず所要の供給機能性能を発揮できたその耐震性能を解明して,今後の耐震設計に役立てようとするものである.
  • 能島 暢呂, 加藤 宏紀
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_121-I_133
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     東日本大震災により影響を受けた高速道路網の日交通量のデータを入手し,時空間的な変動を可視化するとともに,災害対応オペレーションと関連付けて高速道路機能の分析を行った.地震直後,約2,300kmにわたって通行止めの措置がとられ,緊急交通路指定による交通規制が続いたが,それらの解除とともに交通量は迅速に回復し,約2週間で震災前の水準に戻った.長期的にみるとその後も主要路線で交通量は漸増し,2011年7月~10月の間に1.6~2倍に達した.阪神・淡路大震災で大被害を受けた高速道路網の月平均日交通量のデータについても,同様の観点から時空間的分析を行った.また高速道路網の施設水準と機能水準を表す3種類の指標を算出し,両震災で比較を行った.
  • 酒井 久和, 秦 吉弥, 渦岡 良介, 吉澤 睦博
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_134-I_141
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     我が国の3大都市圏には海抜0m地帯が広く分布していることから,切迫する南海トラフの巨大地震など継続時間の長い地震動に対する河川,海岸堤防の耐震性評価の精度向上が重要となる.本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震,2003年宮城県北部の地震,1978年宮城県沖地震において被害程度の異なる鳴瀬川河川堤防地点に対して,微動観測に基づく地震動を推定した.当該地点において1次元の全応力地震応答解析によるせん断応力の時刻歴応答と累積損傷度理論に基づいて液状化指数を算定し,地震被害と算定値との関係を検討した.その結果,巨大海溝型地震のような継続時間の長い強震動に対しても,本簡易液状化評価手法が,液状化を伴う土構造物の耐震性検討の有効な1次スクリーニング手法となる可能性を有することが分かった.
  • 酒井 久和, 奥村 誠, 塩飽 拓司, 香川 敬生, 長谷川 浩一, 澤田 純男, 多々納 裕一
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_142-I_147
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,広域な道路ネットワークの地震による途絶確率を把握する目的で,斜面の崩壊確率の簡易的な算定手法の提案を行った.国土交通省から提供を受けた六甲全山の地形データ,1995年兵庫県南部地震の斜面崩壊領域データ,地表面加速度データなどをもとに,全斜面から補強斜面を除外した.斜面の勾配,平均曲率,地表面最大加速度を説明変数としたロジスティック回帰分析とともに,平均曲率を除いた回帰分析も行った.その結果,斜面の勾配,地表面最大加速度に基づく斜面の崩壊確率の推定式が,兵庫県南部地震における実崩壊状況と整合し,実用化の可能性を有することが確かめられた.
  • 橋本 隆雄
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_148-I_160
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震では,岩手県一関市にある中里地区館ニュータウン(4.8ha)の道路沿い高さ約10mの盛土法面が一部大規模な滑動崩落等により,建物の全壊1棟,大規模半壊7棟,半壊8棟,一部損壊1棟,未判定4棟の被害を受けた.そこで,被災を受けた地区の測量,地盤調査,建物傾斜等の調査を行った.被災した宅地地盤は,盛土厚5.0~7.0mの強風化泥岩の上のN値=3の極端に軟弱な地盤で斜面に沿って厚くなる流れ盤形状となっていた.特に法面の法尻からの大規模崩壊した宅地地盤は,法尻直下の地盤がN値=1の沖積層粘性土地盤であることが明らかとなった.本論文は,これら被災原因の分析を行い,今後の大規模盛土の復旧対策や滑動崩落防止事業の教訓を得ることを目的としている.
  • 小山 真紀, 石井 儀光, 古川 愛子, 清野 純史, 吉村 晶子
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_161-I_170
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本論文は,居住者の年齢構成などに応じた災害対策の立案に資することを目的として,2005年国勢調査の500mメッシュ人口統計,日本統計センターによる500mメッシュ推計昼間人口(2005年),日本地理学会災害対応本部津波被災マップ作成チームによる2011年3月11日東北地方太平洋沖地震に伴う津波被災マップ,消防庁による被害報告および特に被害の大きかった被災地3県の県警における安否確認情報を用いて浸水市町村における年齢別死亡率の推計を行うものである.この推計を通じて,昼間人口と夜間人口による傾向の違い,浸水域と流失域における死亡率の特徴,男女別の特性について明らかにした.
  • 上仲 亮, 鍬田 泰子, 竹田 周平
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_171-I_181
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,地震動や津波による水管橋の被害が複数報告されている.本研究は,地震動で被災した水管橋の中で最も口径が大きい,茨城県水戸市那珂川を横断する那珂川水管橋に着目し,その被害メカニズムの解明を試みた.本水管橋の微動観測により振動特性を明らかにし,これらを固有値解析で検証するとともに,推定された地震波形に基づく3次元時刻歴応答解析を行った.水戸市周辺では,高振動数成分が卓越した強震動が観測・推測され,本水管橋の固有振動数での応答値はレベル2地震動の設計値を下回っていたが,高振動数成分で設計値を上回る地震動であった.本解析では,推定地震動を用いることで橋軸直角方向の支承の損傷状況を再現した.
  • 後藤 洋三, 印南 潤二, Muzailin AFFAN, Nur FADLI
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_182-I_194
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2012年4月11日に発生したスマトラ北部西方沖の地震(M 8.6)の際に約400 km離れたスマトラ島アチェ州の州都バンダアチェで大規模な避難騒動が発生した.幸い1 mを大きく超えるような津波は観測されなかったが,2004年12月のインド洋大津波で住民の1/4が亡くなった同市では,海岸地域の住民10万人以上が津波を恐れて内陸に避難し,各所で大渋滞が発生した.そこで著者らは,住民の0.73 %にあたる1065名にインタビューすることにより避難の実態を調査し,同市の防災対策に役立つ事項を提言した.一方,著者の内の一人は東日本大震災における津波避難の実態調査も行っており,本論はバンダアチェ市民の避難行動の特徴を東日本大震災の調査結果と比較しつつ分析した結果を述べる.
  • Ahmed ALHOURANI, JiDANG, Takeshi KOIKE
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_195-I_206
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     A framework of seismic design method appropriate for earthquake disaster conditions of developing countries is proposed. For countries in which seismic load data is either unavailable or incomplete, a rational and simple seismic design guideline is developed utilizing the performance-based seismic design approach. For this purpose, the current seismic design practice in Syria is discussed.
  • 一井 康二, 森 佑樹, 角田 光法
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_207-I_217
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     経験的グリーン関数法では,想定する大地震と同じ震源域,同じメカニズムで生じた過去の中小地震記録を合成することによって,大地震の波形を推定する.この手法による強震動予測の精度は,予測に用いる中小地震記録(要素地震)の選択によって左右されると考えられるが,実際には,同じ震源域,同じメカニズムであっても個々の地震で地震動は微妙に異なる.そこで,ある観測点における複数の中小地震記録において,中小地震記録の波形類似度と合成波の波形類似度を評価した.そして,合成波における波形類似度を中小地震記録の波形類似度から評価できる可能性を検証した.
  • 一井 康二, 山本 豊, 角田 光法
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_218-I_227
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     地震による港湾施設の被災は国内外の物流機能の低下を招き,被災港湾の周辺地域の復旧・復興の妨げとなるため,重要な港湾施設においては地震後においても物流機能が維持できるような耐震改修が必要である.地震時の機能損失の原因として,岸壁の変位により移動式荷役施設のレールが切断されることがある.本研究では,ケーソン式岸壁上の移動式荷役施設のレールの耐震設計法を構築することを目的として,ケーソン間の相対変位を確率的に評価する手法を提案する.兵庫県南部地震における岸壁の被災事例を基に分析を行い,バースの長さに応じて,許容最大相対変位と被災確率との関係を示すことができた.
  • 松野 隆志, 一井 康二, 北出 圭介
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_228-I_234
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     等方圧密状態にある砂地盤の液状化特性についてはこれまでに多くの研究がなされ,様々なことが明らかにされている.載荷振動数の影響もその一つであり,等方圧密状態における通常の液状化試験では,載荷振動数は砂の液状化特性にほとんど影響を及ぼさないことが室内試験により確かめられている.しかし,構造物や盛土直下の地盤など,一定の軸差応力が作用した異方圧密状態にある砂地盤の液状化特性に関する研究は十分ではなく,載荷振動数の影響も明らかにされていない.
     本研究では,中空ねじりせん断試験装置を用いて軸差応力一定,軸ひずみを許容する条件で載荷振動数を変化させて繰返し非排水せん断試験を行い,載荷振動数の影響を検討した.試験の結果,載荷振動数が低いほど軸ひずみが増加しやすいことが明らかになった.
  • 常田 賢一, Rakhmadyah BAYU, 谷本 隆介, 中山 義久
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_235-I_251
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震では,津波後に津波堆積物が陸上部に残留した.特に,砂質土による津波堆積物は,過去の地震による津波到来の証として位置付けられているが,今回の津波による堆積物の諸特性の把握が必要である.本研究は,仙台平野の海岸線から内陸に至る3断面を対象として,津波による土砂の堆積箇所における堆積土層厚および堆積構成を把握するとともに,堆積土層および原地盤から土試料を採取し,粒度特性を調査した.その結果,既往の津波堆積土に関する調査結果との比較に基づいて,堆積土層厚の海岸線からの距離減衰特性を明らかにするとともに,粒度特性の視点から津波堆積土の堆積特性に関する幾つかの知見を提示している.
  • 長尾 毅, 山田 雅行, 野津 厚
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_252-I_259
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     深層地盤構造,常時微動H/Vスペクトル,近傍地点のサイト増幅特性をもとに対象地点のサイト増幅特性を評価する方法について検討を行った.多次元効果等による1次元鉛直入射を上回る増幅特性を常時微動解析等により評価し,これをもとに1次元鉛直入射の周波数伝達関数を補正するものである.13地点を対象に提案法,既往の研究による方法と強震記録より求められたサイト増幅特性の比較を行い,提案法の適用性を議論した.
  • 築地 拓哉, 寺嶋 黎, 庄司 学, 永田 茂
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_260-I_279
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震において被害が顕著であった茨城県潮来市および神栖市の上水道配水管網の被害について,当該管理主体に対するヒアリング調査を行い,管路の敷設位置,被害箇所,管種・管径および地盤条件の情報を取得した.管路の被害率として被害箇所数を敷設延長で除したものとして定義し,管種・管径および微地形の観点からそれらの被害率と計測震度およびPGVの空間分布との関係を分析した.さらに,地震被害率曲線を構築し,既往の研究で得られた地震被害率曲線と比較検討を行った.
  • 安井 譲, 西川 隼人, 小嶋 啓介, 前田 寿朗, 纐纈 一起, 宮島 昌克
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_280-I_290
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     著者らは,地震動H/Vスペクトルは水平と上下の一次元波動伝達関数の比に基盤面の水平と上下の入射波スペクトルの比を乗じて計算できるとの計算法を提案している.近年,地震による地盤の揺れを拡散波動場と仮定することにより,地震動H/Vスペクトルは伝達関数の比に基盤の速度比により定まる係数を乗じて求められるとする同様な計算式が誘導された.これを契機に,著者らの計算法の伝達関数に代ってサイト増幅特性を用いる方法を改めて提案するとともに,その方法の妥当性を拡散波動場理論によるものと関連付けながら考察することとした.その際,対象は福井地域の地震観測記録とした.その結果,サイト増幅特性の比に乗じる係数として基盤の速度比により定まるものを用いれば,計算による地震動H/Vスペクトルは観測値とよく一致することが分かった.さらに,地震動H/Vスペクトルを同定・逆算して得られた地盤構造を用いて計算した一次元波動伝達関数とサイト増幅特性との対応を考察した.
  • 久世 益充, 杉戸 真太
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_291-I_297
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     やや深い基盤構造の影響による,地域固有の地震動特性について検討し,その推定法を提案した.検討では,過去の地震動観測記録に基づいた地震動算定法EMPRを使用した.EMPRでは,震源断層をM6相当の小断層に分割し,個々の小断層からの非定常パワースペクトルを重ね合わせて地震動を算定している.重ね合わせ数は震源特性を規定するパラメータであるため,重ね合わせ数に着目して地震動特性を推定する事とした.具体的には,複数の地震における,複数地点の観測記録を用いて,それぞれの観測記録より非定常パワースペクトルを算出した.観測記録の非定常パワースペクトルを用いて,EMPRに基づいて重ね合わせ数を算出した.着目する地域とその他周辺地域の重ね合わせ数を比較した結果,地域固有と思われる周期数秒レベルの地震動特性を確認することがきた.
  • 秦 吉弥, 釜井 俊孝, 王 功輝, 野津 厚
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_298-I_310
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震では,仙台市青葉区折立団地の宅地造成盛土が崩壊するなど,深刻な被害が発生した.折立団地における本震時の地震動を推定することは,被災機構の分析等を行う上で非常に重要である.そこで本研究では,折立団地において常時微動計測および余震観測を実施し,当該地点におけるサイト特性を評価した.その結果によると,折立団地における本震時の地震動は,周辺の既存強震観測点(MLIT仙台西,仙台宮城I.C.,Small-Titan栗生小,K-NET仙台)における地震動とは大きく異なっていたと考えられる.さらに,複数のサブイベントの地震波形への寄与を考慮できる拡張型サイト特性置換手法を用いて,Small-Titan栗生小での本震記録を再現し,手法の適用性を確認した上で,折立団地における地震動の推定を行った.
  • 五十嵐 晃, 党 紀, 村越 雄太, 伊東 俊彦
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_311-I_325
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,一定鉛直荷重と水平2方向載荷を受ける高減衰ゴム免震支承の水平1方向および水平2方向載荷実験を行った.高減衰ゴム支承(HDR-S)試験体を対象とした水平1方向および2方向の静的載荷試験およびハイブリッド実験を実施し,水平2方向載荷された免震支承の復元力履歴および地震応答を得た.さらに,免震支承の2方向復元力特性を適切に反映した地震応答を算出できる2方向復元力モデルの検討の観点から,バイリニアモデル,MSSモデル,Park-Wenモデルを用い,解析パラメータを1方向静的載荷結果により同定し,静的および動的解析を行い,実験結果との比較により,これらの既存モデルの適用性の比較検討を行った.
  • 楠 謙吾, 中澤 博志, 菅野 高弘, 大久保 陽介, 規矩 大義, 藤田 大樹
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_326-I_336
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     液状化による地盤の強度,剛性,物性値の変化,あるいは地盤変状の経時変化を把握することは,液状化地盤上に建設された土木施設において,被災後復旧計画や供用再開を図る上で非常に重要である.一般に液状化が発生すると,過剰間隙水圧の発生により地盤の強度や剛性が消失し,その後,過剰間隙水圧の消散とともに地盤性状は回復すると考えられる.しかし,地盤の密実化がどの程度生じ,強度やせん断剛性がどのように変化するのかといった視点から,体系的にまとめられている調査結果が少ないのが現状である.
     本報告では,室内における簡易な土槽実験を行い,液状化発生後,過剰間隙水圧消散過程から数か月後に至るまでの地盤剛性の回復と地盤沈下における長期的な地盤性状の変化の把握を試みた.
  • 北出 圭介, 一井 康二, 木下 洋樹, 久賀 真一, 米浦 大輔
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_337-I_344
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     平成23年3月11日に発生した東日本大震災では,京浜工業地帯・京葉工業地帯の沿岸部の埋立地において,液状化に起因した工場の被害が多数発生した.このような工場の被害において,工場敷地内の液状化の有無に基づいて被害の傾向を評価することは,今後の液状化対策の費用対効果等を検討する上で有用である.そこで,本検討では,地震動強さおよび液状化の有無と工場の被災による経済損失の関係を,種々の公表資料から調査した.地震動強さは工場近隣の計測震度とし,液状化の有無は工場近隣における液状化の有無により推測した.また,被災による経済損失は,有価証券報告書の記述から推計した.そして,液状化が生じた場合の工場の敷地面積1m2あたりの工場の被害増加額を概算した.
  • 藤間 功司, 樋渡 康子
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_345-I_357
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     必要なハード整備と減災活動を継続していくため,津波防災施設の役割と限界を明確に示す必要がある.ここでは,地震の発生頻度を考慮した上で複数の大きさの地震の発生可能性を考え,それぞれに対して津波被害想定を行うことにより,ある規模Hの津波防災施設を建設したときの期待被害軽減額B(H),期待被害額D(H)を算出する手法を提案する.また,津波防災施設の規模に関して速やかに地元自治体と合意して減災を進めるためのスキームとして,本手法の結果と費用C(H)を考慮して,社会の負担を小さくする方向で合意を促進するスキームを提案する.本手法を用いると残余リスクを明らかにでき,具体的な減災目標を設定することが可能である.
  • 杉岡 弘一, 藤林 美早, 杉山 尚希
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_358-I_365
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     長大橋のレベル2地震動に対する耐震性能向上対策として,制震・免震設計法の適用が増加してきている.ここでは,せん断パネルダンパーに着目し,その適用効果を検証するため,1質点系モデルを用いた時刻歴応答解析を実施した.解析ケースの設定に際し,耐震性能向上対策として,せん断パネルダンパーを適用した長大鋼アーチ橋の固有振動周期の違いに着目し,その違いを表現できる上部構造重量・橋脚剛度と降伏耐力を考慮した.その結果,固有振動周期をはじめとする橋梁諸元によって,せん断パネルダンパーを設置する橋梁の地震応答低減効果が変化することを明らかにするとともに,せん断パネルダンパーの固定支承側橋脚,可動支承側橋脚および両橋脚への配置が地震時水平力の分散効果に及ぼす影響を示している.
  • 辻原 治, 宮原 和子
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_366-I_375
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     災害時の避難に向けて,自主防災組織などにおいて避難訓練を行うことが重要である.しかし,災害の発生形態は一様ではなく,それぞれに応じた訓練を行うことは現実的ではない.一方,災害発生の曜日や時刻など様々なケースを想定した避難行動のシナリオを作成しておくは重要であり,また,避難訓練に参加できない住民が疑似体験できるソフトウェアを作成するといった観点から,避難行動をシミュレートする研究が実施されるようになった.しかし,住民レベルでの利用においては,利便性について改良すべき点は多い.本研究では,解析モデルの作成から解析結果の3次元アニメーション表示までの手続きが簡便に行える避難行動シミュレーションシステムを開発した.
  • 猪子 敬之介, 大嶽 公康, 成田 健太郎, 有賀 義明, 林川 俊郎
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_376-I_384
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     ポンプ場のような高台にある水道施設では,不整形地盤上に池状構造物が隣接し相互が水道管路と接続される条件で建設されることがある.しかしながら,これらの構造物群と周辺地盤の地震時における動的相互作用に関しては依然不明な点が多い.そこで,本研究では2次元動的有限要素解析を用いて,不整形地盤上のRC池状構造物間の地震時挙動について検討を行った.その結果,基盤面が傾斜し軟弱土の塑性化が生じる不整形地盤上にあっても,RC池状構造物と周辺地盤に剛性差がある場合には,周辺地盤の水平変位の減少や加速度応答の増加が見られること,2つのRC池状構造物間の相対変位に比べて,RC池状構造物と地盤との間の相対変位の方が大きくなる傾向を示すこと,などの結論を得た.
  • 上田 恭平, 井合 進, 飛田 哲男, 小堤 治
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_385-I_395
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     地盤・構造物系の地震時被害推定においては,地盤や構造部材を適切にモデル化し,信頼性のある解析手法を用いる必要がある.本研究では,大変形理論に基づき拡張されたひずみ空間多重せん断モデルを用い,ケーソン式混成防波堤を対象に地震応答解析を実施した.その結果,従来の微小変形解析ではケーソン天端の沈下量などをやや過大評価しているのに対し,大変形解析では実際の被災程度に合致する値が得られた.このことより,材料非線形性に加えて幾何学的非線形性を適切に考慮することで,より精度の高い地盤・構造物系の地震時被害推定が可能になるといえる.また,液状化対象層の内部摩擦角にばらつきを与えて地震応答解析を実施した結果,大変形解析では微小変形解析と比較して,ケーソン天端の沈下量のばらつきが低減されることがわかった.
  • 佐藤 雄亮, 伊津野 和行
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_396-I_404
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本論文では,地震動のスペクトル特性に着目して,地震動の継続時間が送電用鉄塔の応答に及ぼす影響について非線形地震応答解析により検討した.解析では,高さ77.5mの送電用鉄塔を対象として,3基4径間の鉄塔-架渉線連成系モデルを作成し,スペクトル特性や継続時間の異なる3種類の地震動による非線形地震応答解析を実施した.地震動の継続時間が有する特性としては,繰り返し数と長周期成分の2つの側面に着目した.解析の結果,鉄塔応答への影響はほとんど見られなかったが,地震動の長周期成分の影響により,電線応答が増幅される傾向が見られた.
  • 酒本 真先, 丸山 喜久, 山崎 文雄
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_405-I_416
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,東北地方太平洋沖地震の前震,本震およびそれに誘発されて発生したとされる2地震で観測されたK-NET,KiK-netの地震記録を使用して,速度応答スペクトルの距離減衰式を構築し,それによって得られる地点補正項を用いて地盤増幅特性の推定を行った.地点補正スペクトルとKiK-net観測点の地中と地表間の伝達関数を比較したところ,地点補正スペクトルが地盤増幅特性の推定に有効であることが示された.さらに,地点補正スペクトルを全国を網羅する地盤データとして整備されている微地形区分や平均S波速度に関して整理を行い,地盤増幅特性を広域に均質なデータで評価するための基礎的検討を行った.
  • 北村 健, 丸山 喜久, 山崎 文雄
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_417-I_428
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     津波災害の新たな評価指標として,津波被害関数の構築とその高度化が検討されている.本研究では,津波を引き起こすと考えられる歴史地震を想定した千葉県内の建物被害を評価するため,津波被害関数を新たに構築した.津波被害関数は,東北地方太平洋沖地震津波における千葉県旭市の建物被害データと津波数値解析の結果から,建物が晒される浸水深等とその被害率の関係を確率分布関数によって表現した.さらに,主に千葉県や神奈川県が実施している津波被害想定に使用されている津波波源モデルを利用した津波数値解析を行い,各地震津波による千葉県内の被害建物棟数を推定し,被害の傾向を分析した.
  • 速水 景, 葛 漢彬, 羽田 新輝, 森 翔吾, 鈴木 俊光
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_429-I_439
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究は,過去に建設された鋼製橋脚において,フィレットがないタイプの隅角部に着目し,その様な隅角部において溶接未溶着が内在する場合の極低サイクル疲労き裂の発生と最終的な破壊モードに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした実験的検討である.近年,溶接構造物の施工時における溶接不具合(欠陥)の内在が問題視されており,隅角部の梁-柱接合部におけるフィレットを極力小さくした上で,十字継手の溶接脚長の大きさを既往における研究実験供試体より小さくし,未溶着部から破壊するように設計・製作した供試体について繰り返し載荷実験を行い,溶接未溶着高さが延性き裂発生と進展に与える影響を実験的に検証した.実験の結果,未溶着高さの違いが延性破壊の特性に大きく影響することが明らかにされた.
  • 中村 佳昭, 葛 漢彬
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_440-I_447
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本論文は,補剛箱形変断面鋼製橋脚の数値解析の結果および変断面部で座屈が生じない条件式の提案に関してまとめたものである.断面が2段階に変化する補剛箱形変断面鋼製橋脚において,変断面部で局部座屈が生じると,橋脚基部で生じる場合に比べて耐震性能が低下してしまうことを踏まえ,補剛箱形変断面鋼製橋脚モデルに対して行った繰り返し弾塑性有限変位解析の結果をもとに構造パラメータの変動を考慮した変断面部で座屈が生じないための条件式を提案する.本研究の結論として,今回提案した条件式を設計に取り入れることで,補剛箱形変断面鋼製橋脚の座屈位置および耐震性能の低下の有無を容易に知ることができるといえる.
  • 横井 勇, 小倉 祐美子, 須田 治夫, 木間 貞治, 松田 滋夫, 徳江 聡, 盛川 仁, 野口 竜也, 石田 勇介
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_448-I_453
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     従来より航空重力探査用センサーには小型で高い感度を持つフォースバランス型のセンサーが採用された例があり,成果を挙げている.しかし,航空機のようなキャリアの振動は非常に大きく,これを避けるために大掛かりな姿勢制御や振動制御のためのシステムを必要としていた.重力観測システムを小型化するためにはこれらの制御システムを用いることなくセンサーの出力から後処理で重力変化を抽出できるようなシステムであることが望まれる.その際,センサーは重力の微細な変化に追随可能な高い感度と分解能,キャリアの振動によって飽和しない広大なダイナミックレンジという互いに相反する性能を同時に満足しなくてはならない.しかし,従来のアナログ方式のサーボ回路を有するセンサーは,サーボ回路の自己ノイズのためにこの要求を満足することが難しい.そこで,デジタル処理によってサーボ回路を制御することでアナログ回路を簡略化し,広いダイナミックレンジと高い分解能を同時に満足するこれまでにない新しいセンサーを開発した.最初に制作した試作品は短周期成分の波によって出力波形が大きく歪んでしまうという問題を抱えていることが明らかとなった.そこで,これに大幅な改良を加え,周波数帯域を分割して制御を行うことで,出力値から短周期成分の影響を除去することに成功した.
  • 大塚 久哲, 高 文君, 崔 準祜, 今村 壮宏
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_454-I_463
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     著者らが行ったI型断面フレキシブルRC橋脚供試体の水平載荷実験によれば,本構造は,脆性的なせん断破壊ではなく,大きな曲げ靭性を有する挙動を示した.そこで,本研究では,既往の水平載荷実験と有限要素解析を基に,鉄筋コンクリート部材の復元力特性と損傷状況を関連付け,損傷レベルの限界点を明らかにすると共に当該橋脚の第2剛性低下率および靭性率に関する評価を行った.
  • 七郎丸 一孝, 宮島 昌克
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_464-I_472
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     埋設管の被害は微地形分類図における微地形境界部に多く,また,過去の研究等でも地盤の不均一性(地盤構成や硬軟の変化域)が高い位置で管路被害が集中することがわかっている.したがって,地盤の不均一性を考慮した埋設管の耐震検討を行うことが必要となっている.水道施設耐震工法指針・解析2009年度版においても不均一度係数が定められており,この不均一度係数について,平成16年新潟県中越地震および平成19年新潟県中越沖地震による水道管の被害データ,微地形の種類,境界条件を踏まえ,微地形分類図,地盤データを用いて,静的解析および動的解析による地盤歪み算定した.この結果を比較し,微地形の種類と境界条件を考慮した不均一度係数の検討を行った.
  • 濱崎 翔平, Tze Liang LAU, 盛川 仁, 小倉 祐美子
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_473-I_478
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     近年,スマトラ島沖で多発している地震では,マレーシアの都市でも揺れが観測されており,マレーシア政府は耐震設計基準の導入を検討している.そこで本研究では,ペナン島の東海岸地域を対象地域として地盤構造の解明を目的とした微動アレー観測を行った.得られた観測データより,地震動のマイクロゾーニングに資するための基礎的検討として,SPAC法を用いてRayleigh波の位相速度の分散曲線を推定した.また,速度構造モデルを推定し,H/Vスペクトル比によってそのモデルの妥当性を検討した.H/Vスペクトル比に現れる地盤の卓越周期の特徴より,表層地盤と工学的基盤のS波速度コントラストは概して明確で,表層厚さは高々数十メートルであることが推定された.
  • 鈴木 崇伸
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_479-I_490
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本論文は水平成層地盤に斜め入射される平面波の特性を応用して,地表に水平に置かれる地中構造物の応答を周波数応答解析により計算する手法を述べている.水平2層地盤の表層応答に基づき,地表に沿って一定の速さで進行する波動を入力条件として,境界条件を設定した地中構造物の応答を計算する手順を提案している.入力地震動,表層地盤の周波数応答,はりの周波数応答を組み合わせた解析法は大量の既設構造物の耐震性評価に向いていると考えられる.
  • 有賀 義明, 石川 嵩, 猪子 敬之介, 大嶽 公康, 成田 健太郎, 竹原 和夫
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_491-I_500
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     複数の構造物が管路で連結された施設では,個々の構造物の地震時挙動が異なる場合,それらの連結部で地震時応力や相対変位が増大し,損傷・破壊が発生しやすくなることが想定される.本研究では,地震時挙動が異なる構造物によって構成される複合構造物の耐震性能照査の精度・信頼性の向上を目的として,形状が異なる新・旧のポンプ場が管路で連結されている場合を設定し,三次元動的解析により構造物の地震時挙動について検討した.その結果,新・旧のポンプ場は互いに離れたり近づいたりして挙動することから地震時には相対変位が発生し,その相対変位量はポンプ場の基礎地盤が軟質になると増大する等の結果を得た.
  • 下池 利孝, 大谷 修, 山上 順子, 廣岡 栄子, 小島 俊介, 小野 大輔, 石田 明子, 中山 彰
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_501-I_508
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     鉄塔-送電線系は,ライフラインで欠かす事の出来ない電気を供給する設備である.この鉄塔のような高い構造物やその高所に設置されている送電線の付属品は,巨大地震の発生に対して,耐震性の検討が進められている.これらの巨大構造の実機加振試験は不可能なことから,現状では数値シミュレーションに頼らざるを得ない.そのため,数値解析モデルは実体の挙動を的確に反映したものとする必要がある.
     本報は,圧縮を負担しない送電線に非線形性トラス要素を用いて,巨大地震時の解析を行い,線形モデルとの比較を行った.また,地震動の2方向同時入力および鉄塔間の時間遅れについても検討した.
  • 川西 智浩, 清野 純史, 井澤 淳
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_509-I_516
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     兵庫県南部地震における神戸高速鉄道の大開駅の崩壊事例のように,開削トンネルの中柱・中壁がせん断破壊した場合にはトンネルが崩壊し,大きな被害が生じるが,その他の部材が損傷した場合にトンネル全体系がどのような破壊となり,耐力がどの程度減少するのかはまだ明らかになっていない.そこで本研究では,中柱・中壁以外の部材として側壁を取り上げ,側壁が大きく損傷した場合におけるトンネル全体の形状の破壊状況を把握するための基礎的検討として,鉄筋コンクリートを用いた1層2径間の開削トンネル模型を製作し,気中静的載荷試験を実施した.
  • 森 翔吾, 葛 漢彬, 萩野 勝哉, 康 瀾
    2013 年 69 巻 4 号 p. I_517-I_527
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/19
    ジャーナル フリー
     本研究は無補剛断面鋼製橋脚における延性き裂の発生に着目し,延性き裂の発生を簡易に照査できる手法の確立を目的としている.簡易手法の確立のため,構造パラメータを変動させて解析を行い,ひずみ集中補正係数βの再検討を行った.また,再検討した補正係数βを用いた新たな提案手法による予測延性き裂発生点と,shell解析により得られた予測延性き裂発生点を比較することにより,beam解析でshell解析の延性き裂の発生を精度良く近似できることを示した.また,実験と既往の照査法より得られた延性き裂発生点とも比較を行い,前報で提案した簡易照査法よりも精度良く延性き裂の発生を予測できることを確認した.
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