土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
71 巻, 1 号
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和文論文
  • 高井 俊和, 彭 雪, 山口 隆司
    2015 年 71 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     フィラープレートを有する高力ボルト摩擦接合継手では,すべり耐力に影響を及ぼさないようその板厚が制限されている.近年の構造合理化の背景のもと部材が大型化し,フィラープレートも厚板化する傾向にあるが,その適用範囲について詳細な検討がなされた事例は多くない.
     そこで,本研究では,高力ボルト摩擦接合継手を対象にFEM解析を実施し,フィラープレートの板厚がすべり耐力に与える影響を検討した.その結果,すべり耐力はフィラープレートが厚いほど低下し,その低下度は母材とフィラープレートの板厚の比である断面変化率との関連が高いことを明らかにした.また,すべり耐力の低下要因として,連結板に伝達される荷重や,フィラープレートの各ボルト孔周辺の摩擦応力の不均等が生じていることを示した.
  • 中西 克佳, 森影 康, 川畑 篤敬, 鞆 一
    2015 年 71 巻 1 号 p. 10-19
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     本稿は,溶接継手の疲労強度を向上させ,従来よりも施工の確実性を高めたハンマーピーニングについての論文である.本ハンマーピーニングは,母材にのみハンマー打撃し,母材に塑性変形を生じさせることにより,溶接止端に圧縮残留応力を導入する技術である.本研究では,溶接継手疲労試験と有限要素解析とを行い,これら二つの結果によって,溶接止端における圧縮残留応力の大きさ,ハンマー打撃による塑性変形量とその疲労強度,およびそれぞれの相互関係を明確化している.その結果から,ハンマー打撃痕形状により,疲労強度向上を予想する方法を提案した.さらに,この結果の妥当性を,実構造を模した鋼桁曲げ疲労試験を行うことにより実証した.
  • M. Assad ALAMIRI, 後藤 芳顯
    2015 年 71 巻 1 号 p. 20-36
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     3方向地震動成分の同時入力下の無充填の鋼製橋脚の終局状態を汎用的に評価するために脚柱頂部に作用する3方向の力の成分と3方向のモーメント成分で表した限界相関式を円形断面鋼製橋脚柱について誘導した.この相関式は直線高架橋のT型橋脚のみならず,ねじりモーメントが作用する逆L橋脚や曲線高架橋の橋脚の耐震安全性照査にも適用できる.限界相関式は脚柱の各方向へのPushover解析で得られる限界点において橋脚柱頂部に作用する力とモーメント成分をもとに設定した.限界相関式の妥当性は,逆L橋脚で支持された2径間単純支持橋の数値解析モデルの水平2方向地震動下の終局挙動により検討した.その結果,地震動の違いに起因する荷重履歴の差や脚柱諸元の差によらず限界相関式は妥当な精度で橋脚の終局状態を予測しうること確認した.
  • 野阪 克義, 里深 好文, 伊津野 和行
    2015 年 71 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     自然災害発生時のこども,高齢者など災害弱者の避難支援に関する対策マニュアルが多くの自治体で整備されてきている.しかし,実際に避難することができない人も増えてきており,ハザードマップを公開する等これまでの情報提供型防災の効果には限界があり,在宅している人を守る構造的な対策が必要である.本研究では,普段の生活の場である住宅における自然災害からの被害軽減策として,フェンス付きブロック塀を減災構造として適用できないか検討した.土石流や洪水を想定し,流入してくる土砂を受け止める(もしくは流向をそらす)ことにより家屋への被害を低減できる可能性があると考えた.フェンス付きブロック塀の水平載荷実験を行い,実験結果にもとづいて土石流に対する安全性を検討,減災構造として適用可能な条件を求めた.
  • 彭 雪, 山口 隆司, 高井 俊和
    2015 年 71 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     引張力のかかる高力ボルト摩擦接合継手の設計では,すべりと母材降伏に対して照査される.その母材降伏照査では,継手の降伏耐力は母材純断面の降伏耐力に加えて,ボルト前面での摩擦伝達力が考慮されている.しかし,道路橋示方書や建築分野の鋼構造接合部設計指針では,摩擦伝達力の規定が異なる.本研究では,それらの基準が想定している降伏状態と照査規定の違いを整理している.また,近年増加している厚板多列の高力ボルト摩擦接合継手を対象としたFEM解析を実施し,それぞれの降伏定義に基づいた継手降伏耐力と摩擦伝達力の割合を比較し,降伏定義が違えば降伏耐力や,その割合も異なることを示している.加えて,それぞれの段階における降伏領域の進展状況を明らかにしている.
  • 徳永 宗正, 曽我部 正道, 谷村 幸裕, 小野 潔
    2015 年 71 巻 1 号 p. 72-86
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     鉄道構造物の弾性固有周期は維持管理に,等価固有周期は耐震診断に重要な指標である.本論文では,常時微動測定により同定した鉄道高架橋の弾性固有周期を基に,等価固有周期を推定する手法を提案した.具体的には,高架橋群の振動モード形状の特徴を利用して,固有振動モードを効果的に同定する手法を提案し,ラーメン高架橋の弾性固有周期を5%以内の誤差で同定できることを示した.さらに,ラーメン高架橋の弾性固有周期/等価固有周期の比が構造形式に応じてほぼ一定値となることを示し,この関係を利用した換算法により10%程度の誤差で,常時微動測定から等価固有周期を推定できることを示した.橋脚に対しては,隣接構造物との連成や地盤条件のばらつき等の影響を受け易い構造物であることから,誤差が大きくなることを明らかにした.
  • 岩田 直泰, 津野 靖士
    2015 年 71 巻 1 号 p. 87-98
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     現在,地震時における列車の運転規制は鉄道沿線の地盤上の揺れに基づき実施されている.しかし,より適切な運転規制のためには,鉄道構造物の地震応答も考慮する必要がある.本研究ではモデル路線を設定した上で,観測微動に基づき路線に沿った地下速度構造の推定を行うと共に,構造物の振動特性の把握を行った.そして,沿線に設置した地震計の記録を参照し,路線に沿った地盤上と構造物上の地震動を推定した.それらを実測と比較した結果,高い相関が確認された.また,推定した地盤上と構造物上の地震動から,路線に沿った表層地盤ならびに構造物の地震動増幅特性を算出した.これらの情報は地震発生直後の列車運行の再開判断に適用できることに加え,地震発生前の弱点箇所抽出や安全確認の重点箇所選定などにも活用できる.
  • 中島 章典, NGUYEN MINH HAI
    2015 年 71 巻 1 号 p. 99-112
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     貫通鉄筋を有する孔あき鋼板ジベルにおいて,ジベル孔径,貫通鉄筋径,ジベル鋼板厚などを変えた時の貫通鉄筋の挙動は必ずしも十分に明らかにされていない.本研究では,ジベル孔径と貫通鉄筋径の相対関係,あるいはジベル鋼板厚を変えた押抜き試験を行い,それぞれの場合のせん断力とずれ変位の関係に加えて貫通鉄筋のひずみ挙動を詳細に調べた.また,貫通鉄筋のひずみ挙動に着目した非線形数値解析を併用して,孔あき鋼板ジベルのせん断抵抗に寄与する貫通鉄筋のせん断分担力を算定した.そして,貫通鉄筋がせん断耐力に及ぼす効果はジベル孔径,貫通鉄筋径およびジベル鋼板の板厚によって異なることを確認し,これらの結果を整理して貫通鉄筋を有する孔あき鋼板ジベルのせん断耐力評価式の作成を試みた.
  • 本田 敦, 高橋 和也, 野澤 剛二郎, 土肥 哲也, 小川 隆申, 飯田 雅宣, 藤野 陽三
    2015 年 71 巻 1 号 p. 128-138
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     列車速度500km/h領域の超高速鉄道では列車が長大トンネルに突入するとき,トンネル内で生じる圧縮波がトンネル内を伝播し,反対側坑口から微気圧波が発生することが懸念される.本論文は,沿線の環境保全を図るため,超高速鉄道における長大トンネル内の圧縮波の伝播性状を解明するとともに,微気圧波の低減対策として反対側坑口に設置される緩衝工の効果を明らかにすることを目的とする.前者では,山梨実験線の現地計測や波動伝播解析を行い,圧縮波の伝播に伴って圧力勾配が増加し,圧力勾配が大きくなる区間において微気圧波の低減対策が必要となることを明らかにした.また,後者では,模型試験や山梨実験線の現地計測を行い,反対側坑口の多孔板を有する緩衝工の微気圧波低減効果を確認することにより,その有効性を示した.
  • 田井 政行, 三木 千壽
    2015 年 71 巻 1 号 p. 139-151
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究では圧縮残留応力が付与された溶接継手部の変動振幅荷重下における疲労強度改善効果の検討を行った.圧縮残留応力の導入には,ピーニング処理及び低温相変態溶接材料による付加溶接を用いた.さらに変動振幅荷重疲労試験中の残留応力分布を穿孔法により計測を行った.その結果,ピーニング処理により導入された圧縮残留応力は,変動振幅荷重中の最大荷重によってその一部が解放されることを明らかにした.それゆえ,ピーニング処理による変動振幅荷重下における疲労強度改善は一定振幅荷重下と比較して低くなり,破断時の疲労損傷度は修正マイナー則に基づいた場合でも0.2程度であった.変動振幅荷重中の最大荷重を一定振幅荷重の最大荷重とした疲労試験結果をベースに線形被害則を適用することで安全側に疲労寿命を推定できることを示した.
  • 本山 紘希, 室野 剛隆, 高野 裕輔, 青木 一二三
    2015 年 71 巻 1 号 p. 152-166
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
     斜杭基礎を有する高架橋においては通常の直杭基礎の場合と異なり,上部構造物に水平振動と逆位相の回転振動(逆ロッキング動)が発生する.本研究では,逆ロッキング動について相互作用の観点から分析し,逆ロッキング動が慣性力を低減する効果について検討をした.検討においては,まず,相互作用のうち特に地盤変位の影響について解析的な検討を実施した.次に,斜杭基礎の有効入力動に着目し,慣性力の低減効果について考察を行った.これにより,有効入力動の回転成分を考慮できる振動モデルを考えることで,斜杭基礎の慣性力低減効果を評価できることを示した.最後に,設計計算を念頭に静的解析法をベースとした斜杭基礎を有する高架橋の応答値算定法の例を示し,適用性について基礎的な検討を行った.
和文報告
  • 伊原 茂, 中野 博文, 齋藤 隆, 天野 寿宣, 斉藤 成彦
    2015 年 71 巻 1 号 p. 55-71
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
     供用下においてラケット型橋脚で支持されたダブルデッキ高架橋を拡幅するために,鋼製橋脚のアンカーフレーム代替機能を有する新たな定着構造である鋼製格子部材を埋設した合成構造フーチングを開発した.本報告では実構造物の1/5スケールの試験体を用いた橋軸方向・橋軸直角方向の載荷実験及び解析の結果について述べる.載荷実験の結果,橋軸方向ではレベル2地震時相当荷重の約3.5倍,橋軸直角方向では約2.0倍の耐荷性能を有することが確認できた.また,合成構造フーチングの各構成要素の初降伏順序及び発生荷重,耐荷性能,破壊進展過程に関して3次元非線形FEM解析を用いて検証を行い,実験結果を定性的に再現することができた.
  • 高橋 良輔, 斉藤 成彦, 中島 章典, 島 弘
    2015 年 71 巻 1 号 p. 113-127
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/20
    ジャーナル フリー
     頭付きスタッドのせん断力-ずれ変位関係を得る方法として押抜き試験が用いられている.この試験では頭付きスタッドの挙動に大きく影響する横方向力が作用するが,コンクリートブロックを面で支持するため鉛直反力位置が不明でその力を把握できない.そこで,現在提案されている単純支持と開き止めを併用した境界条件が明快な押抜き試験方法により頭付きスタッドの押抜き試験を行い,従来の支持方法と単純支持による境界条件の違い,支持位置,ブロック厚さがその耐荷挙動に及ぼす影響ついて検討を行った.その結果,単純支持では開き止めの有無と支持位置で供試体の拘束条件が変化し,破壊モードが変化することなど,単純支持と開き止めを併用した境界条件下での頭付きスタッドの耐荷挙動を明らかにした.
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