移植
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56 巻, Supplement 号
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  • 中川 由紀, 野崎 大司, 小笠 大起, 知名 俊幸, 河野 春奈, 清水 史孝, 磯谷 周二, 永田 政義, 武藤 智, 堀江 重郎
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s116
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    はじめに: 近年糖尿病性腎症の腎不全の増加に伴い、腎移植を希望する患者も男性が多く占め、夫婦間腎移植も増加している。必然的にドナーの女性の占める割合も多くなる。腎移植における性差によっての予後の違いやリスク因子に性差の関連性について検討したので報告する。

    対象:2010年1月から2019年12月までに日本で行われた14604症例の生体腎移植にてついて解析した。

    結果: 血清Cr, eGFRは女性ドナーの方が良かった。男性ドナーは女性ドナーに比べ、Body mass index とBody Surface Area は優位に大きいが、喫煙者が多くなる、高血圧、糖尿病の割合が多く、ハリスククドナーが多かった。ドナーの性別によってのレシピエントの生存率、生着率ともに、男性ドナーの方が女性に比べ優位に予後が良かった。

    日本の生体腎移植の中で1年後のCrを確認できた7577症例の1年後eGFRが 30mi/min以下のCKDリスク因子について検討した。ドナー年齢、レシピエント年齢、ドナーのBody Surface Area 、ドナーの糖尿病の既往、ドナーの高血圧の既往、Baseline eGFR が有意なリスク因子であった。性差は有意なリスク因子とはならなかった。

    結語:本邦ではドナーの女性の占める割合が6割以上であった。男性ドナーの方がバックグラウンドは腎機能の予後不良リスク因子を多く占めていたが、移植腎生着率は良好である。移植腎の予後に、体格差が関与している可能性が高い。

  • 佐藤 幸毅, 大平 真裕, 今岡 祐輝, 今岡 洸輝, 谷峰 直樹, 黒田 慎太郎, 田原 裕之, 小林 剛, 井手 健太郎, 田中 友加, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s117
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】

    肝内在性ナチュラルキラー (lr-NK)細胞はTNF関連アポトーシス誘導ligand (TRAIL)依存性に抗腫瘍活性を有す。当科では生体肝移植後腫瘍再発予防目的にドナー肝由来lr-NKの養子免疫療法を施行中。肝切除後にTRAIL+lr-NKが減少し、抗腫瘍効果低下が臨床上の課題点。マウス実験でaryl hydrocarbon receptor(AhR)がlr-NK maturationに関与し、肝切除後もlr-NK のTRAIL活性維持を過去に報告。今回はlr-NK mRNAを解析しメカニズムを追究。

    【方法】

    lr-NKからTRAIL+/– NKにsortingし、microarray解析施行。その結果からIngenuity Pathway Analysis (IPA)を行い、AhRからTRAIL geneへのpathwayを解析。AhR agonist; 6-formylindolo[3,2-b] carbazole (FICZ)を投与したlr-NK mRNAのmaturation gene群の発現変動をRT-PCRで解析。またin vivo肝転移モデルでFICZ投与による抗腫瘍効果を解析。

    【結果】

    microarray解析で、AhRはTRAIL+NK で高度にup regulate (fold change: 10.0)。RT-PCRでlr-NK mRNAを解析、FICZ投与群でT-bet発現、Eomes発現は有意に低下(p<0.01)、Foxo1発現は有意に上昇 (p<0.01)。肝転移モデルでFICZ群で有意に転移巣を抑制 (腫瘍占有面積率:Control v.s. FICZ: 8.5±1.1% v.s. 1.5±1.2%)。

    【考察】

    FICZ-AhRシグナル伝達を介してlr-NKのmaturation gene発現は変動、TRAIL活性に関与する可能性。今回の研究で肝切除後腫瘍再発に関わる肝内免疫の新知見を得た。

  • 西牧 宏泰, 齋藤 純健, 稲垣 明子, 中村 保宏, 山名 浩樹, 猪村 武弘, 大橋 一夫, 宮城 重人, 亀井 尚, 海野 倫明, 後 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s118
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】臨床肝細胞移植の治療成績には依然として大きな改善の余地がある。比較的良好な結果が報告される動物実験と臨床症例の相異の一つとして、全身麻酔、特に吸入麻酔薬の使用の有無が挙げられる。代表的吸入麻酔薬であるイソフルランは、門脈拡張作用と抗炎症作用を併せ持つことから、移植肝細胞の生着への影響を検証した。【方法】F344ラットをドナー、F344を背景に持つ近交系無アルブミンラットをレシピエントとし、覚醒下で肝細胞移植を行うawake群(AW群)、イソフルラン吸入麻酔下で移植を行うisoflurane群(ISO群)の2群に分け、1.0×10⁷個の分離肝細胞を移植した。移植後、血清アルブミン、AST、ALT、LDH値および血中炎症性因子を測定し、さらに免疫組織化学染色とex vivoイメージングも行った。【結果】ISO群の血清アルブミン濃度は、AW群に比べて有意に高値を示した(p<0.05)。ISO群の血清AST、ALT、LDH濃度は、AW群と比べて有意に低値を示した(p<0.0001)。ISO群におけるIL-1β、IL-10、IL-18、MCP-1、IP-10、RANTES、Fractalkine、およびLIXは、AW群よりも有意に抑制された。一方でレシピエント肝臓の壊死領域は、ISO群においてAW群よりも限局される傾向が確認されたが、肝実質における移植肝細胞の分布には、両群間で差を認めなかった。【結論】イソフルランの使用が、肝細胞移植における動物モデルと臨床移植成績の解離の一因である可能性が示唆された。

  • 徳重 宏二, Enzhi Yin, 原田 昌樹, 松本 龍, 奥村 康, 竹田 和由, 内田 浩一郎
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s119-s120
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】肝移植における虚血再灌流障害(IRI)は患者予後に大きく関連する。炎症細胞の肝組織浸潤が複雑に関与し,有効な治療法は存在しない。【方法】マウスIRIモデルを作成した。虚血再灌流後、肝組織に浸潤する炎症細胞について、肝組織切片、血清中の肝逸脱酵素(GOT, GPT)を解析した。【結果】再灌流後、肝組織内に多数の好中球浸潤を認めた(Fig.A)。anti-Gr1-モノクローナル抗体(mab)により好中球を除去したところ、肝逸脱酵素の減少を認めた(Fig.B)。好中球の炎症組織への遊走に関連するCD321分子を解析したところ、虚血後1時間、さらに再灌流後45分間、肝類洞内皮細胞に高発現していた(Fig.C)。抗CD321mab (90G4)を再灌流直後に門脈内注射したところ、肝組織障害や肝逸脱酵素の減少を認めた(Fig. D)。【結語】抗CD321mabは肝IRIの治療法となる可能性がある。

  • 今岡 洸輝, 大平 真裕, 佐藤 幸毅, 今岡 祐輝, 谷峰 直樹, 黒田 慎太郎, 田原 裕之, 井手 健太郎, 小林 剛, 田中 友加, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s121
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】動脈硬化は、心血管合併症リスクのみならず術後合併症、予後に関連すると報告されている。当科ではこれまで大動脈石灰化が肝臓移植や肝癌肝切除術後の長期予後に関してリスク因子であることを報告してきた。しかし、肝内免疫、特に肝内在性ナチュラルキラー(lr-NK)細胞に対する動脈硬化の影響については、明らかになっていない。我々はlr-NK細胞の腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)活性に着目した。本研究の目的は動脈硬化が肝内免疫、特に抗腫瘍効果に与える影響を明らかにすることである。

    【方法】①動脈硬化マウスモデル(ApoE KO マウス)及び野生型マウス(B6マウス)を用いてFCM法でlr-NK細胞活性の評価及びマウス肝癌細胞株(Hepa1.6)に対する細胞傷害性試験を比較検討した。②生体肝移植ドナー53例を大動脈石灰化の程度を評価し、高石灰化群・低石灰化群の2群に分類した。移植時の肝灌流液中リンパ球を用いて、FCM法でlr-NK細胞の機能分析を行った。

    【結果】①ApoE KO群では野生型マウス群と比較し、lr-NK細胞の割合(6.9% vs. 9.1%)、TRAIL活性の発現(19.5% vs. 35.7%)、及びlr-NK細胞の細胞傷害性(1.1% vs. 7.5%)は有意に低下した。②高石灰化群(n=7)では低石灰化群(n=46)と比較し、lr-NK細胞の割合(34.7% vs. 33.8%)に有意差はなかったが、TRAIL活性の発現(29.6% vs. 50.8%)は有意に低下した。

    【考察】動脈硬化マウスモデルで肝内NK活性の低下を認め、石灰化が強いドナーの肝内NK活性が弱い結果から、動脈硬化が肝臓内の抗腫瘍免疫を低下させる可能性が示唆された。今後このメカニズムについて、動脈硬化マウスモデルを用いて解析を行う予定である。

  • 片桐 弘勝, 菅野 将史, 梅邑 晃, 武田 大樹, 長瀬 勇人, 真壁 健二, 天野 怜, 菊地 晃司, 新田 浩幸, 佐々木 章
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s122
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    背景;肝臓外科手術では肝移植後 small for size・術後肝不全などの問題があり、これらの根治的治療は存在しない。当教室では、肝切除モデルマウスにおいて、移植されたMuse細胞が損傷部特異的に集積し肝組織を構成する各細胞に分化することを報告した。ヒト肝切除や肝移植など物理的傷害を伴う治療におけるMuse細胞動態・意義および外科侵襲との関連に関する報告はない。目的;肝手術におけるMuse細胞動態を明らかにし、1) Muse細胞が侵襲度の指標となり得るか検証すること、2)肝再生との関連について検証すること。対象と方法; 本研究は前向き研究として進行中であり、現時点37症例についてデータの一部を報告する。1) 侵襲度評価として、major liver resection (MLR)とminor liver resection、および腹腔鏡下肝切除と開腹肝切除における末梢血Muse細胞動態の解析を行う。2) 肝再生評価として、Muse細胞動態と肝volumetryの検討を行う。結果; 担癌患者でBase lineのMuse細胞数が高値であった。Muse細胞数は術後3日でピークがみられた。合併症全例でMuse細胞数の再上昇がみられた。Muse細胞増加率(ΔMuse)はMLR群で有意に高値であった(p=0.003)。ΔMuseは合併症例を除外すると開腹群で有意に高値であった(p=0.040)。肝volumetryで肝再生率が高い群でΔMuseが有意に高値であった(p=0.027)。結語;Muse細胞は侵襲度の指標となる可能性がある。Muse細胞により肝再生が促される可能性がある。

  • 江川 裕人
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s133
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    この1年は、COVID−19に対して、日本移植学会、厚生労働省、J O T、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本脳神経外科学会が結集して取り組んだ年でした。まず専用ホームページを立ち上げて、未知の状況に対して警戒体制を敷き、情報収集を進めタイムリーに情報を発信しつつ、移植継続・再開のための可能な限りの方策を行政と進めた結果、移植現場からクラスターを出すことなく移植医療を最大限に継続することができました。人事交流を軸として築き上げてきた厚生労働省との連携と信頼が臓器提供現場でのP C R検査容認といった有事における迅速な対応を可能としました。臓器提供環境改善委員会で進めてきた互助制度が人流抑制に貢献しひいては臓器提供の意思を叶えることに貢献することができました。COVID−19の移植医療への影響に関する調査研究として、生体移植と死体移植、臓器提供を対象とした三つの特別研究班と、臓器移植患者のワクチン接種の効果と影響を調査する研究班の合計4つの厚生労働研究班が立ち上がりました。厚生労働科学研究「脳死下・心停止後の臓器・組織提供における効率的な連携体制の構築に資する研究」(嶋津班)と同「5類型施設における効率的な臓器・組織の提供体制構築に資する研究」(横田班)にも移植学会の委員会活動を分担研究とする形で参加して共に歩んでいます。この第57回学術集会で、布田先生・酒井先生率いるTransplant Physician 委員会が内科系基幹学会との連携を動かし始めています。「提供の意思に応えるために」という行動原理を共有した個人・団体の連携を進めてきたこの5年間の成果が未曾有の困難な状況の中で進むべき道を照らし我々を導いてくれています。

  • 小野 稔
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s134
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    改正臓器移植法が施行されて以来11年が経過し、脳死臓器提供は間もなく800例に到達します。わが国における臓器移植は、生体・脳死を含め、いかにQOLの高い優れた長期生存を可能にするのかを真剣に議論する時代に移行しつつあります。この思いを今回のテーマ「成熟期に入った臓器移植」に込めました。これまでMC制度によって非常に高い臓器提供率とともに、欧米と同等かそれ以上の優れた移植後成績を残してきました。これまでともすると閉鎖的であった移植医療はGift of Lifeが生み出す明るさと力強さを前面に掲げて、開かれた医療として社会に受け入れられる基盤の構築が必須となっています。脳死移植医療の安定化には提供施設の働き方改革が不可欠となります。多忙な救急医療の現場を支援する時代にマッチしたさまざまな施策が重要であることは論を俟ちません。提供病院における選択肢提示や脳死判定等への協力体制作りが動き始めたことは、今後の移植医療の円滑な推進にとって極めて重要です。日本移植学会が推進する「互助制度」の円滑かつ実効性のある導入が移植実施施設の働き方改革にも不可欠です。全世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症に対して、移植学会はいち早くレシピエントおよびドナーの安全性、移植医療に関わるすべての医療従事者の安全性確保の観点から提言してきました。わが国の移植医療はレジリエンスを獲得し、成熟すべき段階に差し掛かりつつあると思います。

  • 服部 英敏, 加藤 文代, 野本 美知留, 菊池 規子, 市原 有起, 斎藤 聡, 新浪 博士, 萩原 誠久, 布田 伸一
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s137
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    心臓移植後の予後に影響する移植後遠隔期の合併症である移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は、その80%以上の症例はB細胞起源で、Epstein-Barr virus(EBV)感染を認める。EBV特異的細胞障害性T細胞(EBV-CTL)の機能不全を背景としたEBV感染不死化B細胞の制御不能な増殖を病態とし、リンパ組織の反応性増殖から悪性リンパ腫まで幅広い疾患スペクトラムを呈する。PTLDのリスクファクターとしては、EBV感染状態に影響する免疫抑制状態、移植時年齢、移植からの期間、人種などがあげられるが、EBV陽性ドナーからEBV陰性レシピエントへの心臓移植例では高率に発症する。ハイリスク症例では、定期的EBV-DNA量のモニタリング検査が早期診断に有用であるが、腹部症状や呼吸器症状など多彩な臨床像を呈するため、まずはPTLDを疑うことが診断の第一歩といえる。

    本シンポジウムでは、当院および関連施設における心臓移植後症例(100例)において、歴史背景に応じた免疫抑制状況でのPTLD発症例(確診5例)について後方視的な検討結果を述べ、治療目標であるPTLD消失とともに移植臓器の機能維持のためのエベロリムスおよびリツキシマブ導入を加えた免疫抑制薬の調整、抗ウイルス療法、化学療法の効果について、症例提示を加えて解説する。

  • 進藤 考洋, 浦田 晋
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s138
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】移植後EBV感染症はリンパ増殖性疾患PTLDに至るまで病像は多彩であり、スクリーニング、治療に関しては、尚発展の余地がある。【目的】小児心臓移植におけるPTLDおよびEBV high loadに対する検査、治療の実際を東京大学、当センターの事例から考察する。【結果】症例はPTLD診断2例および、移植後EBV high loadを生じた2例。PTLD診断例は、発症年齢が3歳と1歳で、それぞれ移植後2年、4カ月での診断。前者はカルシニュリン阻害薬CNIの減量、リンパ節摘出、リツキシマブ投与で緩解した。後者はさらに化学療法を要したが緩解した。EBV high load例は診断年齢が3歳と2歳、それぞれ移植後6ヶ月および6カ月以内。前者は急性拒絶反応のためにCNIの減量が難しく、画像検査で可能な限りPTLDを除外してリツキシマブを投与した。後者は現在に至るまで5年近く、高EBV血症が持続しているが、CNIの減量、エベロリムスへの変更調整で、PTLD発症には至っていない。いずれも当センター高度感染症診断部において、末梢血における感染細胞同定解析を行い、B細胞感染性であることを確認した。【考察】移植後EBV感染症は病像が多彩であり、専門家との連携が有用である。当センターでは早期から腫瘍科および高度感染症診断部のサポートを得ている。末梢血における感染細胞の同定解析は特異な検査であるが、EBV high load例に対する感染細胞同定解析がリツキシマブ投与を準備する戦略につながり得る。

  • 日高 悠嗣, 山永 成美, 椛 朱梨, 川端 知晶, 豊田 麻理子, 伴 英樹, 山本 泰弘, 高野 雄一, 稲留 彰人, 宮田 昭, 横溝 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s139
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【緒言】臓器移植後のEpstein-Barr Virus (EBV)感染は,移植後リンパ増殖性疾患 (Post-transplant lymphoproliferative disorders: PTLD) を発症し,移植腎の予後のみならず生命予後も悪化させることが知られている.【目的】当院で2009年から2020年の間に腎移植を施行した患者のうち,早期グラフトロスや他院フォローとなった症例を除いた218例の腎移植後EBV感染症について検討した.【結果】移植前のEBVドナーseropositive/レシピエントseronegative (D+/R-)症例は4例だった.移植後血中EBV陽性は6例 (6/218; 2.8%)に見られ,そのうち3例 (3/218; 1.4%)がPTLDを発症している.またD+/R-症例のなか移植後6ヶ月経過したレシピエントは,未だ血中EBV陰性である.PTLD発症からグラフトロスとなったのは2例で,1例は生検から移植腎PTLD+二次性FSGSの診断に至り,生体腎移植から2年9ヶ月後にグラフトロスとなった.また1例は生体移植後5年で肝腫瘍を契機にPTLDの診断に至り,急激な経過からdeath with functioning graftとなった症例である.【結語】当院腎移植患者のEBV感染からPTLDを発症する頻度は既報と差がなかったものの,3例中2例がグラフトロスに至っており,EBV感染の早期発見と治療介入によるPTLD発症を抑制することが大事である.当院のEBV感染に対する免疫抑制剤の調整やグラフトロスに至った2例の経過も含めて報告する.

  • 松村 宗幸, 宮城 重人, 戸子台 和哲, 柏舘 俊明, 藤尾 淳, 宮澤 恒持, 佐々木 健吾, 斎藤 純健, 金井 哲史, 海野 倫明, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s140
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は移植後の生命を脅かす予後不良な合併症である。2021年までに生体肝移植を施行した208例を対象として臨床病理学的に解析した。対象はPTLDと診断した10例(proven PTLD4例、probable PTLD6例)。移植時の年齢中央値は小児8例では11か月、成人2例では60歳。移植時のEBV-IgGはD+R+が9例、D+R-が1例。原疾患は胆道閉鎖症が8例、B-LC1例、B型劇症肝炎1例。免疫抑制剤の導入はFK+MPが7例、FK+MP+Basiが3例。PTLD発症までの期間中央値は小児で9カ月、成人で38カ月。PTLD発症時のEBV-PCRのウイルス量の中央値は小児で39410copies/ml、成人で0copies/ml。病変の局在はAnn Arbor分類Ⅰが4例、Ⅱが1例、Ⅲが2例、Ⅳが3例であった。proven PTLDの4例において、2例は鼠経リンパ節生検、1例は頸部リンパ節生検、1例は肺生検にて病理検体が得られた。病理像はWHO分類でnondestructive PTLD1例、polymorphic PTLD1例、monomorphic PTLD(DLBCL)2例。6例は免疫抑制剤の減量を施行、3例ではRituximab投与、1例ではRituximab+CHOP療法を行った。外科治療として成人の1例では脾臓摘出+胃部分切除+膵尾部切除を施行し、小児の1例では縦郭の残存腫瘍に対して切除を施行した。全例で生存。小児のPTLDの多くがEBVの感染/再活性化に起因するため、免疫抑制剤の減量後に増悪する場合、病理組織が得られていなくても化学療法を施行することにより良好な予後が得られる可能性がある。

  • 湯沢 賢治
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s141
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    2020年1月に国内でのCOVID-19患者の確認を受け、2月から国内でのCOVID-19対策が始まった。日本移植学会は感染弱者である移植患者を守り、ドナーから伝播を防ぎ、摘出関係者の感染と拡散を予防し、移植医療を維持するために2月26日にCOVID-19対策委員会を組織した。感染症専門医と米国の移植外科医、移植感染症専門医も加わっている。

    委員会では3月6日に「新型コロナウイルス感染症の移植医療における基本指針第1版」を配信し、本年2月4日の第4.1版まで改訂を重ねてきた。移植患者への啓発、移植の可否、リスク評価、免疫抑制療法、治療について提言を行っている。また、学会HPに専用のサイトを設け頻回に更新し、多くの情報を配信している。そして、移植患者のCOVID-19を全例登録し、その実態を公表している。これは疫学研究としてだけでなく、治療について助言を求められた際に委員会として助言するためでもある。また、本年2月4日には「日本移植学会COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)」を公表し、移植患者にワクチン接種を推奨している。

    移植患者のCOVID-19登録では、2021年5月末までに158例が登録されている。第1波の際は一般人の0.084%が移植患者の感染だったが、第2波、第3波と次第に低下し、第4波では0.014%と6分の1になり、移植患者への啓発活動の成果と考えられる。

    COVID-19蔓延の集中治療の現場において臓器提供は維持されており、それに感謝し、移植医療を維持するため委員会は活動している。

  • 芦刈 淳太郎, 大宮 かおり, 林 昇甫
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s142
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    2020年からの新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の国内蔓延に伴い、臓器提供や移植の現場において多大な影響を及ぼしている。日本臓器移植ネットワークにおいては、2020年2月の早い段階から順次対策を立てて対応しており、COVID-19 感染症蔓延下の臓器提供時におけるリスクを整理しリスク低減策を講じてきた。

    特にコーディネーター(Co)においてはあっせん事例発生時に提供施設派遣は避けられないため、あっせん活動の制限や停止の可能性も含め様々なリスクについて検討し、基本的感染対策や健康管理表の作成をはじめ、早期のワクチン接種等のリスク低減策を講じてきた。

    一方で厚生労働省、提供施設、各学会等外部からのCOVID-19関連の要請に都度協議や調整を行い対応してきた。ドナーのCOVID-19 検査については、各事例において提供施設主治医と調整し、承諾97事例(2020年4月~2021年5月、不成立事例含む)中98%で核酸検出検査または抗原定量検査を実施しあっせんに至っている。また、吸引痰での検査実施へ移行協議中である。提供施設からは、MCや摘出チーム等外部からの立ち入りに関して、健康管理表や問診票の提出、流行地域からの立ち入り制限や人数最少化、COVID-19 検査の実施等の要請を受け対応している。臓器摘出の互助制度利用時の臓器搬送については、Coによる搬送の実施及び搬送委託企業の体制を整備した。

    COVID-19 感染症蔓延下における安全なあっせんについて具体的事例を交えて取り組みと課題について発表する。

  • 佐々木 ひと美, 西田 幸代, 木村 友和, 吉川 武志, 南里 麻己, 増田 朋子, 小林 知子, 山本 恭代, 樋口 はるか, 松下 千 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s143
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    緒言:2019年から始まったCOVID-19感染は未だ解決されず、世界的パンデミックの状況が持続している。日本泌尿器科学会では第1回目の緊急事態宣言が出された2020年5月にCOVID-19感染拡大による医師の仕事や生活に対する影響についてアンケート調査を施行した。

    対象と方法:アンケートは日本泌尿器科学会ダイバーシティ委員会で作成され、全国に発令されていた緊急事態宣言が解除された2020年5月26日に、アドレスを登録しているすべての日本泌尿器科学会員(8510名)に対し、学会事務局よりメール配信しGoogleフォームのアンケートリンク先を周知した。周知は2回行い、最終的に1048名(12.3%)から回答を得た。

    結果:回答者の中で女性が占める割合は全体の10.6%であり、泌尿器科学会員に占める女性の比率(7.7%)とほぼ同じであった。最も回答が多かったのは50代、以下60代、40代であった。診療体制では診療制限、外来者数の減少、望ましい医療行為を提供できなかったと答えた割合が多く、特定警戒都道府県では傾向が顕著であった。また16%では発熱外来担当、そのうち34%が実際にCOVID-19患者や疑い患者の診療に当たったと回答した。感染拡大により、仕事と生活のバランスが楽になったと回答したのは30%、一方辛くなったと回答したのは27%であった。家庭での負担について、全体の28%で負担が増えたと回答しているが、男性では27%であったのに対し女性では43%であり、女性に負担が大きかったことが示唆された。負担が増えた多くの原因は家事の増加や子供のケア、介護に関わるものであった。一方、講演会や専門医取得・更新のための講習のオンライン化や学会のWeb開催に関しては、今後も形態を維持してほしいとの意見が聞かれた。

    結語:アンケート結果からは、本来COVID-19の治療には関わらない泌尿器科医であっても、仕事・家庭ともに感染拡大の影響を受けており、特に女性医師では負担と感じる割合が高かった。

  • 伊藤 泰平, 剣持 敬, 太田 充彦, 蔵満 薫, 曽山 明彦, 木下 修, 江口 晋, 湯沢 賢治, 江川 裕人
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s144
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    <目的>

    COVID-19の感染流行によって,地域によって緊急事態宣言が発令され,人や物の流通が制限されている.摘出医も例外ではなく,制限を受ける場合もあり,COVID-19感染流行期における理想的な臓器摘出を創出するためのアンケート調査を実施した.

    <方法>

    令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)新型コロナウイルス感染症流行時に移植実施施設において脳死下・心停止下臓器移植医療を維持推進するための調査研究の一部としてアンケート調査を行った.アンケートはWeb形式で行い,それぞれの施設の代表者に記名式で答えてもらった.

    <結果>

    アンケートは206施設中177施設から回答があり,回収率は85.9% であった.他施設の摘出に対し,いわゆる互助を行ったことがある施設が54施設(30.5%)であった.一方,互助を受けたことがある施設は48施設(27.1%)であった.今後の理想的な互助やブロック制に関する回答は,胸部臓器移植施設では19施設(95%)が従来通りの全国での斡旋,摘出を希望したのに対し,腹部臓器移植施設では,39施設(25.3%)であり部分ブロック制(斡旋は全国で,摘出は地域施設が行う)を希望している施設が最も多かった(85施設(55.2%)).

    <結語>

    COVID-19の感染流行によって,本邦における臓器摘出制度のあり方の見直しが必要な可能性もあり,本アンケート結果がその創出の一案となると考えられた.

  • 小川 絵里, 岡島 英明, 上林 エレーナ幸江, 岡本 竜弥, 波多野 悦朗
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s145
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症は成人小児で感染状況が大きく異なる.日本での小児感染状況を踏まえ,コロナ禍における京大病院での小児肝移植医療の現状と子育て中の医師の立場から思うところをお伝えしたい.

    2021年6月現在,日本の陽性者における10歳未満小児割合は,3.4%に過ぎず,重症例は数例,死亡例は報告されていない.よって,小児領域において医療のひっ迫は感じない.一方で,肝移植を行う場合,ICU病床確保は必須である.京大病院では,小児も成人も同じICUに入室し,さらにICU内に重症コロナ病床を確保しているため,コロナ患者が入室した際には,ICU枠も手術枠も制限される.我々は,限られた枠の中で一人でも多くの子供たちの命が救えるよう,子供たちが早く退院できるよう,重症度を判断し,ICU滞在期間を予測し,手術を計画した.幸い,コロナ禍の影響を受けにくい小児病棟がBack Up 病床として機能し,小児医療に対する周囲の理解と協力により,症例数を減らすことなく小児肝移植を施行できている.

    家庭内においては,自身が子育ての中心を担えてない現状のなかで,高齢両親に幼稚園児の付き添いで外出させてしまうことを心苦しく感じた.また,子供たちには自粛を守りながらもできる限り多くの楽しみを経験してほしいと思う一方,自身には医療従事者として課せられたルールを遵守する義務があり,日常生活の中で葛藤が生じている.

    小児移植医として,母として,医療現場においても日常生活においても,子供たちにはできる限り通常通りの医療,生活を提供したいと考え日々模索している.

  • 橋口 裕樹, 佐藤 滋
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s146
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    臓器移植前に実施するクロスマッチ検査は, 検査施設により検査方法や判定基準が異なり, 検査結果に差を認める場合がある. これらを是正する目的として日本移植学会と日本組織適合性学会では, 全血を使ったクロスマッチ精度管理を連携して行い, 今回で9回目となる. 日本移植学会よりドナー全血サンプルを配布し, 各検査施設にてリンパ球を抽出する. レシピエントの血清は日本組織適合性学会が Quality Control Workshop で使用するサンプルより指定したものを使う. これらを各施設でクロスマッチ検査を実施し結果報告する. 今回の参加施設は47施設の参加であった. また昨年度よりABO血液型抗体価の精度管理も追加で実施しているが血液型抗体価も施設間差が大きく, 脱感作時の指標として他施設と比較する場合には注意が必要である. 当日は参加施設の検査データを集計した解析報告を行う.

  • 増田 智先
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s147
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    (一社)TDM品質管理機構は、日本TDM学会と日本移植学会の協力により2016年4月に発足し、主に免疫抑制薬(タクロリムス、シクロスポリン、ミコフェノール酸、エベロリムス)について各医療機関ならびに外注検査室における日常の測定精度管理を客観的に評価するための外部精度管理機構として活動している。毎年4月中の参加申し込みを募り、5月~6月にかけて各薬物3種類のスパイクサンプルを参加施設に送付する。各施設は日常診療で実施される血中濃度測定業務に組み入れて測定結果をWeb経由で報告し、8月に開催される研究会において集計結果の報告を受ける。各参加施設は、それぞれの採用している測定法の統計データを参照し、自施設で得られた結果との整合性を確認する。本法人の実施している、全国QC(Quality Check)サーベイは国内唯一の第三者評価機構であり、新型コロナ禍の中2021年度も昨年に引き続き70施設の参加を得てQCサーベイ事業を実施することができた。経年的に施設間誤差が縮小する傾向が見られるなど、参加施設の血中薬物濃度測定の精度管理に対する意識・技術は高いと考えられる。術後管理を円滑に行う上で、免疫抑制薬の精密な血中濃度管理は移植臓器の生着に加えて副作用発現の抑制に必須と考えられ、未だ参加実績のない施設への啓発と普及を図りたいと考える。

    本企画では、2021年度の免疫抑制薬全国QCサーベイの結果を供覧しながら本事業の役割について解説する。

  • 山田 全毅
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s148
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    移植後 EBV (Epstein-Barr virus) 感染症は、移植後リンパ増殖性疾患 (post-transplant lymphoproliferative disorder: PTLD) の発症に寄与することが知られており、移植レシピエントの生命予後にかかわる重要な感染症のひとつである。移植後EBV感染症の重篤化やPTLDの発症を予防するという観点からは、EBV核酸定量によるEBV DNA量のモニタリングが重要である。本邦では2018年の診療報酬改定より、EBV核酸定量検査が保険収載され、また検査会社の報告単位の標準化も進んだことで、保険診療内で、世界標準の移植後EBVモニタリングを導入することが可能となった。これを受けて日本移植学会ではEBV感染症およびEBV関連PTLDの診療の標準化を目的としてガイドラインを作成した。

    本ガイドラインではEBV感染症の一般的な総論から、検査診断の概説、さらにクリニカルクエスチョ (CQ) をカバーしており、全ての固形臓器移植診療チームに広く活用頂ける実践的な内容になったと自負している。

    本講演では、2021年夏に発行された本ガイドラインの要点を中心に、内容の周知に努めたい。

    1. EBV総論

    2. 移植後EBV感染症とPTLDの診断法

    3. EBV関連PTLDの疫学的リスク

    4. 移植後EBV感染症とマネージメントに関するCQ

  • 佐藤 滋
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s149
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

     2020年診療報酬改定で、EBV とCMVの核酸定量測定が保険適応となった。日本移植学会では先に「臓器移植関連EBV感染症診療ガイドライン2021年版」を上梓した。遅れて、「臓器移植関連CMV感染症診療ガイドライン」策定委員会を江川理事長の指示で設置。移植学会の医療標準化・移植検査委員会がガイドライン統括委員会となり、2021年2月8日第1回オンライン委員会を開催。策定委員は16名、予定している外部評価委員は3名で、策定推進中である。

     ガイドライン章構成は、1.はじめに、2.CMV概論、3.CMV感染の検査法、4.臓器移植後CMV感染およびCMV感染症のリスク因子、5.治療薬、6.臓器移植後CMV感染の予防と先制治療、7.臓器移植後CMV感染症の症状・診断・治療、8.SARS-CoV-2波及時の臓器移植後CMV感染、9.臓器移植後CMV感染の免疫機構への影響、とした。15のClinical Questionを設置している。

    2011年日本臨床腎移植学会から「腎移植後サイトメガロウイルス感染症の診療ガイドライン2011」が上梓された。すでに10年を経過しており、新たなガイドラインが必要となっている。また、今回は全臓器対象のガイドラインとすべく、日本移植学会が策定する運びとなった。2022年版として上梓する予定である。

  • 田中 一樹, 岩﨑 研太, 奥村 真衣, 三輪 祐子, 安次嶺 聡, 石山 宏平, 細道 一善, 藤田 直也, 小林 孝彰
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s150
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    腎移植における拒絶反応は確定診断のため侵襲的な検査である移植腎生検が必須となるが、患者負担が大きく頻回な検査を行うことは不可能である。医療分野における低侵襲のLiquid Biopsyサンプルを用い、バイオインフォマティクスと次世代技術を用いた少量サンプルで生体内の病態を把握する試みは、今後の移植医療においても必要不可欠である。今回我々は移植後de novo DSAを産生した生体腎移植施行症例(9症例:男性8症例、女性1症例)を対象とし、移植前、移植後(1~2,6,12,24ヵ月)に採取した末梢血単核細胞36検体からmRNAを抽出し次世代シークエンサーにて遺伝子解析を行った。移植前リツキシマブ使用群においては、1年後でIgG関連遺伝子の有意な減少を認めていた。DSA陽性症例では、補体・凝固を含めた炎症性のマーカーの上昇が確認された。マクロファージ関連遺伝子の上昇も確認でき、獲得免疫を基盤とした免疫反応で産生されるDSAの出現と、自然免疫との関連が示唆された。単一遺伝子ではなく、複数の各種免疫反応に関わる遺伝子群の変化をバイオインフォマティクスのアプローチを用いて解析を行うことにより、低侵襲かつ少量のLiquid Biopsyサンプルから、DSA産生までの経時的変化を追跡することが今後必要になる。

  • 山根 宏昭, 田中 友加, 井手 健太郎, 田原 裕之, 大平 真裕, 谷峰 直樹, 今岡 祐輝, 佐藤 幸毅, 井出 隆太, 築山 尚史, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s151
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】

    エプレットミスマッチ(MM)と術後de novo DSA(dnDSA)の出現や移植後拒絶反応との関連について報告されているが、その機序は不明瞭である。本研究では、腎移植患者におけるエピトープMMと抗ドナーT細胞応答およびdnDSA発現について検討した。

    【方法】

    2011~2019年に初回生体腎移植を行った106例を対象とした。エプレットの解析はHLA Fusionを用い、antibody verifiedエプレット(Ver Ep)MMとAllエプレット(All Ep)MMで評価した。抗ドナーT細胞応答はCFSE-MLRアッセイで評価した。

    【結果】

    エプレットMMとMLRによる抗ドナーT細胞応答の関連解析では、エプレットMM数が多いほど移植前のCD4・CD8陽性T細胞応答性は亢進していた。さらに、CD4陽性T細胞応答性は移植前のみならず移植後長期経過に伴ってClass IIエプレットMMと相関していた(p=0.014)。dnDSA出現は、HLA-C Ver Ep MM 2以上(HR 4.49, p=0.023)、Class II Ver Ep MM 9以上(HR 5.21, p=0.011)が独立した危険因子として抽出された。

    【結語】

    腎移植患者において、エプレットMMが移植後の抗ドナーT細胞応答性に関連する可能性が示唆された。またエプレットMMはdnDSA発現のリスク因子と考えられた。

  • 藤田 高史, 石田 昇平, 田中 章仁, 齋藤 尚二, 安田 宣成, 丸山 彰一, 加藤 真史
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s152
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    2018年4月1日から抗体スクリーニング検査および抗体特異性同定検査による抗HLA抗体の測定が保険収載された。当院では2019年から腎移植外来に通院している患者に対して、年に1回の抗体スクリーニング検査の実施を開始した。今回我々はPreformed DSAを有する症例を除く、112例を対象に、抗体スクリーニング検査の結果と移植腎機能について検討した。112例中20例(17.9%)で抗HLA抗体が検出された。すべてnon-DSAであった。抗HLA抗体スクリーニング検査時の血性クレアチニン値は抗HLA抗体陰性例では平均1.27mg/dl、抗体陽性例では1.48mg/dlで有意差を認めた(p=0.022)。eGFRは抗体陰性例で46.5ml/min/1.73㎡、抗体陽性例で39.3ml/min/1.73㎡で有意差を認めた(p=0.015)。検出された抗HLA抗体は6例でClassⅠ、14例でClassⅡであったが、二群間で移植腎機能に有意差を認めなかった。non-DSAのみが検出された場合では治療介入の必要性は明確ではないが、特に注意して経過観察する必要がある。

  • 高本 大路, 佐々木 元, 高田 祐輔, 平野 哲夫
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s153
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【緒言】FCXM陽性の腎移植に対して様々な脱感作療法の有効性を検討した報告が散見される。一方で脱感作が成功しなかった症例や移植そのものを断念せざるを得なかった症例も多いが報告は少ない。当院でのFCXM陽性症例で検討を行った。【対象と方法】2018年5月から2021年5月までに施行されたFCXM検査119例の中で陽性となった8例(7%)について検討を行った。【結果】移植検討時の平均年齢は50歳(31-71歳)で女性6例、男性2例であった。ドナーは配偶者が5例、親子が2例、兄弟が1例であった。DSAは全例で陽性、classⅠのみ陽性が2例、classⅠ・Ⅱともに陽性が6例であった。Highest MFIは平均値で11241(2024-21677)であった。感作歴は妊娠歴6例、輸血歴2例、移植歴2例(重複あり)であった。CDCXMは4例で陽性で全例で移植を断念した。CDCXM陰性の4例では1例が高容量IVIG及びRituximab、血漿交換の併用により脱感作成功しFCXM陰性化し移植を行った。1例は前述の脱感作を行ったが、FCXM陰性化せず移植断念となった。残り2例は今後、前述の脱感作を行う予定である。【結語】FCXM陽性症例に対して高容量IVIGが投与できるようになり、今まで移植を断念せざる得なかった症例でも移植を受けられる可能性がでてきた。

  • 古澤 ミユキ, 石田 英樹, 海上 耕平, 八木澤 隆史, 神澤 太一, 尾本 和也, 田邉 一成, 高木 敏男
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s154
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    抗HLA抗体スクリーニング検査と抗体特異性同定検査が、臓器移植後に保険収載となり約3年経過した。中でも、スクリーニング検査は、いかに偽陰性を出さないように検査を行うかが重要な検査法である。今回われわれは、2020年11月から2021年1月までに測定可能であった204症例を対象にLABScreen mixedを用いて、抗体特異性検査同定検査法との相関について検討を行った。検討方法は、スクリーニング検査の判定基準を、HLA-Class1 , 2ともにcut off 1.5 , 2.5 , 3.5 , 4.5の4群に分け、解析を行った。なお、測定条件を同一にするために、同一ロットで一人の技師が測定および解析を行った。結果は、Cut off1.5のLABScreen mixとsingle antigenの乖離率は、Class1 :7(3.4%),Class2: 9(4.4%)、cut off2.5は、Class1:15(7.4%),Class2:9(9.3%)、cut off3.5は、Class1:19(9.3%),Class2: 35(17.2%)、cutoff4.5は、Class1:19(9.3%),Class2:35(17.2%)であり、cut offを上げると乖離率も上がる傾向が認められた。スクリーニング検査の役割を把握した上で、自施設の測定値を考慮した、適切なcutoffの設定が重要であると思われた。

  • 西川 晃平, 橋口 裕樹, 金本 人美, 加藤 桃子, 東 真一郎, 佐々木 豪, 加藤 学, 舛井 覚, 吉尾 裕子, 井上 貴博
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s155
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    LABScreen Single Antiegn®(SA)は、腎移植レシピエントの術前感作状態の評価に使用されているが、DSAのnMFIが低いにも関わらず早期よりAMRを来たす症例も存在する。今回この様な症例に対し、後方視的にEpitope解析を行った。患者は妊娠歴のある65歳女性でドナーは夫。術前FCXMはT-cell陰性、B-cell陽性で、SAではDRB1*12:02 (nMFI: 581.56)がDSAとして検出された。nMFIが低値のため特別な脱感作は不要と判断し、Rituximab 投与・血漿交換施行後に血液型不適合腎移植を施行したが、移植後2か月でCAAMRが出現した。本症例での術前・後のSAのdataを用いEpitope解析を行った結果、反応を示すアレルに96HK、37Fが広く分布しており、免疫原となっている可能性が示された(図)。このように多くのアレルで共有されるEpitopeへの抗体が存在する場合には、SAでのnMFIは過小評価される可能性があり注意を要する。Epitope解析はSAの補助として有効な可能性がある。

  • 中尾 俊雅, 阪本 靖介, 清水 誠一, 三森 浩太郎, 栁 佑典, 内田 孟, 福田 晃也, 堀川 玲子, 笠原 群生
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s156
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】プロピオン酸血症(PA)はプロピオニオニルCoAカルボキシラーゼの活性低下によって,高アンモニア血症,中枢神経障害,心障害を含む様々な症状を呈する.肝移植は欠損酵素の補充目的に行われており,当院で施行したPAに対する生体肝移植の治療成績を報告する.

    【対象】 2005年11月から2021年5月に小児生体肝移植を施行した604例のうち,PA患者9症例(遺伝子診断:8例,酵素活性診断:1例)を対象とした.

    【結果】術前全症例において、代謝不全に対する加療が必要で,7例に血液浄化療法を施行した。1例で心不全に対してECMO施行したが、術前に心機能が回復し肝移植適応となった。その他の症例では術前心機能は保たれていた.頭部MRIでは1例にびまん性の脳萎縮を認め,2例に異常信号を認めた.移植時の月齢は16.7ヶ月,ドナーは父親4例,母親5例,グラフトは外側区域グラフト8例,Hyper-reducedグラフト1例であった.術後に代謝不全となったのは1症例1回のみであり,点滴加療で改善した.発達評価(FSIQ)は術前後で大きな変化を認めなかった.心障害は1例に心電図上QT延長を認めたが,心筋症は認めなかった.フォローアップの中央値は5年5か月である.全例生存し,修学年齢に達した3例中2例が支援学級に通学中である.

    【結語】PAに対する生体肝移植術後の成績は良好であり,代謝不全予防や神経学的予後改善の観点から,コントロール不良なPAに対しては肝移植が考慮されるべきである.

  • 平田 雄大, 眞田 幸弘, 大西 康晴, 岡田 憲樹, 堀内 俊男, 大豆生田 尚彦, 佐久間 康成, 佐田 尚宏
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s157
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】小児肝移植後のEBV感染の頻度は高く、稀に移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)を発症する。PTLDの死亡率は高いとされ、早期発見治療が必要である。今回、当科における小児生体肝移植後PTLDに関して報告する。

    【対象】2020年12月までに小児生体肝移植を施行した314例。移植後EBV-DNAを定期的にフォローし、PTLDは病理学的に診断した。

    【結果】PTLDは6例(1.9%)に発症。男/女:1/5例、移植時年齢は中央値1歳(0~10)。全例胆道閉鎖症。ABO血液型は一致3例、適合2例、不適合1例。EBV serostatus(D+/R-)6例。PTLD診断時期は移植後692日(152~2782)。臨床症状は発熱4例、リンパ節腫脹2例。診断時EBV-DNAは5650copies/ml(17~25000)、免疫抑制剤(IS)内服数は3剤2例、2剤3例、1剤1例。病理診断は早期病変2例、多形性PTLD2例、DLBCL1例、Burkittリンパ腫1例。治療はIS減量+リツキシマブ(RTX)3例、IS減量+RTX+化学療法1例、IS減量1例、その他1例。1例で再発、全例生存。PTLDの危険因子はEBV serostatus (D+/R-)であった(p=0.04)。

    【結語】EBV serostatus (D+/R-)は小児肝移植後PTLDのハイリスクである。PTLDは、定期EBV-DNAフォローによる早期診断とIS減量やRTX療法、化学療法などの集学的治療により予後良好である。

  • 梅村 謙太郎, 三田 篤義, 大野 康成, 増田 雄一, 吉澤 一貴, 窪田 晃治, 野竹 剛, 細田 清孝, 蒲池 厚志, 後藤 貴宗, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s158
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【緒言】

    当院では小児肝移植を開始し30年が経過し移植後長期生存例が増えた. 晩期合併症やcarry-over期の諸問題を検討した.

    【対象・方法】

    小児期(18歳未満)に肝移植を行った134例を対象とした.

    【結果】

    移植時年齢は中央値1.36歳(0.38-16.9), 原疾患は胆道閉鎖症(n=100), 劇症肝炎(n=15), Alagille症候群(n=6), その他(n=13)であった.

    移植後生存率は1年 91%, 5年 88%, 10年 86%, 30年 81%であった. 10年以降の死亡は6例認め, de novo肝炎(n=2), 肝静脈合併症(n=1), 肺炎(n=2), 脾動脈瘤破裂(n=1)であった.

    再移植は4例で, 原因はde novo肝炎(n=2), 胆管合併症(n=1), 原因不明肝炎(n=1)で, 原因不明肝炎例は肝炎再発で初回移植から13年後に死亡した.

    門脈圧亢進症は21例に認めた. 門脈狭窄(n=6)は完全閉塞(n=1)を除き, 再吻合(n=1), 血管内治療(n=4)で門脈開存している. 門脈血栓閉塞(n=2)は抗凝固療法, グラフト機能低下(n=12)は再移植(n=3), 脾摘(n=2)を施行した.

    服薬アドヒアランス低下は18例あり, 拒絶反応(n=5)を認め, 門脈閉塞による肝肺症候群でHOT導入(n=1), 脾機能亢進で脾摘(n=1), 脾動脈瘤破裂で死亡(n=1)した.

    移植後20年以降に CKD G2以上の腎機能障害を14例(34%)に認めた.

    【結語】

    移植後10年以降も晩期合併症やアドヒアランス低下と関連する死亡例が認められた. また, 移植後20年以降に腎機能障害が顕在化する可能性があり, 長期にわたるフォローアップが必要である.

  • 眞田 幸弘, 佐久間 康成, 大西 康晴, 岡田 憲樹, 山田 直也, 平田 雄大, 宮原 豪, 片野 匠, 堀内 俊男, 大豆生田 尚彦, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s159
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    背景:青年期胆道閉鎖症(BA)に対する肝移植は適応とドナー選択に難渋し予後不良である。今回当科のBAに対する肝移植を検討した。

    方法:対象は2020年12月までに生体肝移植を施行したBA 227例中青年期例の27例。移植時年齢は中央値14.2才(12.0-26.3才)、観察期間は8.5年(0.0-17.2年)。

    結果:青年期BAと非青年期BAの移植適応は、非代償性肝硬変15例と123例、難治性胆管炎6例と32例、門脈圧亢進症5例と44例、肝肺症候群1例と0例、成長障害0例と1例。青年期BAは有意に高齢ドナーかつグラフトは小さく(p<0.001)、長時間手術であった(p<0.001)。青年期BAと非青年期BAの15年グラフト生存率は95.3%と86.0%(p=0.013)。青年期BAのグラフト不全の原因は難治性拒絶反応2例、消化管穿孔1例、敗血症1例。難治性拒絶反応2例の服薬アドヒアランス不良で、移植後15年と8年時に生体再肝移植を施行。非青年期BAのグラフト不全の原因は難治性拒絶反応4例、急性脳炎2例、消化管穿孔1例、脳出血1例、肝静脈閉塞1例。難治性拒絶反応4例の服薬アドヒアランスは良好で、移植後2年、7カ月、5年、2年時に生体再肝移植を施行。

    結語:青年期BAの移植適応は非青年期BAと同様であるが、高齢ドナーかつグラフトは小さく、服薬アドヒアランス不良が関連してグラフト予後が劣る。脳死肝移植数の増加や適応拡大、将来的な肝移植適応を予測できるバイオマーカーの確立、継続的な服薬指導が求められる。

  • 渡辺 正明, 後藤 了一, 川村 典生, 巌築 慶一, 嶋村 剛, 武冨 紹信
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s160
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    背景:臓器移植後および免疫不全状態における弱毒生ワクチンは、流行状況などを加味し実施を考慮すべきとされている。小児肝移植患者に対する弱毒生ワクチンの安全性と有効性を検討した。

    方法: 小児肝移植患者を対象とし、ムンプス、風疹、麻疹、水痘の抗体価(IgG)、移植前ワクチン接種歴を検討した。ワクチン接種歴にかかわらず抗体価陰性で、接種基準(免疫抑制剤の血中トラフ値が低値、直近6ヶ月間肝機能安定、十分なリンパ球数、リンパ球幼若化試験が基準値内、血清IgG 500 mg/dl以上)を満たす患者に対して、倫理委員会承認のもと、インフォームドコンセントを得た上で当該疾患の弱毒生ワクチンを接種した。接種後2ヶ月、以後6ヶ月毎に該当抗体価を測定し、安全性と有効性を検討した。

    結果:対象は、2-15歳の32例(男児8例、胆道閉鎖症27、急性肝不全2、Alagille症候群2、肝芽腫1)。抗体価陰性、抗体価陰性/移植前ワクチン接種は、ムンプス:13例(41%)、4/6例(67%)、風疹:15例(47%)、10/14例(71%)、麻疹:8例(21%)、14/14例(100%)、水痘:16例(50%)、5/7例(71%)であった。10例で接種基準を満たし、ワクチン接種後の抗体陽転化率は、ムンプス3/5例、風疹5/5例、麻疹5/5例、水痘4/7例であった。接種による疾患発症や有害事象は認めなかった。

    結語:ワクチン接種基準を満たす肝移植後小児患者に対する弱毒生ワクチン接種は安全に施行でき、多くの症例で抗体が獲得された。

  • 高瀬 洪生, 上野 豪久, 吉田 眞之, 松木 杏子, 東堂 まりえ, 岩崎 駿, 當山 千厳, 塚田 遼, 出口 幸一, 正畠 和典, 野 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s161
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【目的】体格の小さい乳幼児に対して、グラフト重量を減量する方法として、S2 mono-segment graft(MSG)が用いられているが、その成績については明らかになっていない。当院における治療成績を検討した。

    【方法】2010年4月~2021年3月に生体肝移植を受けた小児のうち、MSGを使用した8例について、患者背景、術後合併症と長期成績を検討した。

    【結果】原疾患は胆道閉鎖症が6例、劇症肝炎が2例であった。移植時月齢は中央値7.7ヶ月(範囲2.7ヶ月-12.7ヶ月)、移植時体重は中央値7.2kg(範囲4.8kg-9.0kg)であった。VolumetryによるGRWRは中央値2.5%(範囲1.7%-3.7%)、実際のグラフト重量による GRWRは中央値2.9%(範囲1.9%-3.7%)であった。ドナー手術時間は中央値415分(範囲356分-520分)で、外側区域グラフト症例より有意に長かった(p=0.01)。移植後フォロー期間は中央値38ヶ月(範囲15ヶ月-130ヶ月)であり、死亡例はなく、1例は抗体関連拒絶反応により移植後14日で再移植となった。後期合併症として門脈吻合部狭窄を2例に認め、バルーン拡張術を施行した。血清アルブミンは中央値3.9g/dl(範囲2.8g/dl -4.5g/dl)、総ビリルビンは中央値0.4g/dl(範囲0.1g/dl-0.8g/dl)、M2BPGiは中央値1.1(範囲0.2-2.56)であった。移植時と現在の身長・体重のZスコア差はそれぞれ、中央値+1.2(範囲-1.6-1.7)、中央値+0.95(範囲-1.3-3.2)であった。

    【結論】体格の小さい乳幼児におけるMSGの治療成績は良好であった。

  • 門田 守人
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s162
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    演者は、札幌医科大学で我が国一例目の心移植が行われた2年後の1970年に医学部を卒業した。この心移植以降、移植の研究は急速に下火になり、移植学会の発表論文数も半減していた。そのような中、肝移植を積極的に進めている陣内傳之助教授の主宰する大阪大学の第二外科に入局した。

    臓器移植の大きなハードルはやはり脳死問題であったが、陣内先生は1972年に発行された教科書の中に以下のように述べていた。「法制定なしに行われた臓器移植は倫理的に見て、果たして許せない行為であろうか。それが功名心からでなく、真に不治の患者を救命せんとして、確信ある研究結果に基づいてなされた行為であれば、かりに法に裁かれることがあろうとも、医の倫理から言えば、むしろ自己への非難を恐れて何もし得なかったものよりは上位である。医師として人命救助のためには、時として法を犯してもやらねばならないこともある。」筆者は、このメッセージを信じて疑わなかった。

    医師コミュニティ内では、脳死の存在、更に判定が可能、更に、「脳死が個体の死」についても、日本医師会生命倫理懇談会が1988年に認めており、既にコンセンサスはできていた。一方で、1989年脳死問題を回避した生体肝移植が実施された。これは心移植には応用できない。大阪大学では生体肝移植は行わないと決断し、ひたすら脳死移植推進に邁進した。当日は、移植黎明期の筆者の考え方を紹介したい。

  • 瀬戸口 誠, 兵頭 洋二, 新里 高広, 徳本 直彦, 齋藤 一隆
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s164
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    [緒言]腎移植後のプロトコール生検の意義の一つとしてsubclinical rejectionを早期発見し、介入することで、後の腎機能低下を防ぐことがある。

    [方法]2017年12月から2020年12月まで当院で腎移植を施行された42症例から得られた計80回の生検を解析の対象にした。プロトコール生検の時期は、移植後3か月、6か月、12か月、24か月としている。維持免疫抑制療法はタクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、ステロイドの3剤併用療法で行った。

    [結果]いずれ時期においてもTリンパ球関連型拒絶反応を認めなかった。borderline changesを認めた症例は3か月、6か月、12か月、24か月でそれぞれ1, 1, 2, 1例であった。急性抗体関連型拒絶反応は3か月で2例に認められた。患者別でみると、3か月でsubclinicalに急性抗体関連型拒絶反応を認めた症例は6か月、12か月目では慢性抗体関連型拒絶反応となっていた。12か月、24か月目のいずれもborderline changesを認めた症例は術後早期に急性抗体関連型拒絶反応を認めた症例であった。

    [結論] 約10%の症例でsubclinical rejectionを認めたが、明らかなTリンパ球関連型拒絶反応は認めなかった。移植後早期に拒絶反応を認めた症例に関しては治療効果の確認を判断するために一連のプロトコール生検を行う意義はあると考えられる。しかし、他の拒絶反応を認めなかった多数の症例一連の生検を行う妥当性は乏しく、症例毎に検討していくことが必要と思われた。

  • 難波 倫子, 濱野 高行, 京 昌弘, 谷口 歩, 田中 亮, 山中 和明, 阿部 豊文, 客野 宮治, 今村 亮一, 野々村 祝夫, 猪阪 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s165
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】海外では頻度の少ない移植後長期に施行されるグラフト生検の意義は確立されておらず、この価値を明らかにする。

    【方法】2002年から2018年の間に阪大関連3施設で施行した腎生検のうち、移植後10年以上経過した症例を対象とした。腎生検の前後の治療歴をカルテより抽出し、腎生検後に治療変更された群を介入群と定義し、治療変更のない非介入群を対象とした。この2群に対して、混合効果モデルを用いて生検前後のeGFR slopeを算出し、paired T検定で比較した。

    【結果】対象106例の移植後年数、生検時eGFR、尿蛋白の中央値(IQR)はそれぞれ、13 (11, 19)年、29 (24, 39) mL/min/1.73m2、0.47 (0.17, 0.83) g/日であった。主な生検理由は、Cr上昇が51例(47%)、蛋白尿が35例 (33%)であった。57例は生検結果に基づき介入がなされ、その内容は、免疫抑制剤増量が30例、減量が16例、種類の変更が6名、降圧剤調整が17例、その他が9例であった。腎生検前後で介入されていない非介入群は35例であった。生検前後1年のeGFR slopeを比較すると、非介入群では-4.0→-3.0 mL/min/1.73m2/年(P=0.29)であったが、介入群では-4.7→-3.1 mL/min/1.73m2/年(P=0.02)と有意に改善を示していた(P for interaction=0.02)。

    【結論】移植後長期でも免疫抑制により腎予後が改善する可能性があり、積極的に腎生検を行うことには意義がある。

  • 高橋 雄介, 窪田 理沙, 神農 陽子, 藤原 拓造
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s166
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    [目的]

    腎移植後surveillance biopsy(SBs)による早期治療介入の意義や、中長期予後評価における意義は議論の分かれるところである。

    当科における小児腎移植後SBsの検討を行った。

    [対象・方法]

    当科で施行した小児腎移植症例のうち、primary graft nonfunctionの2例と移植後生検未施行の1例を除いた13例に関し、移植後4-6ヶ月、1年、3年、5年、7年、10年のSBsに関する評価を行った。

    [結果]

    移植後4-6ヶ月の生検対象は13例でそのうち12例で生検を施行し、治療介入を必要とした拒絶反応は6例に認めた。移植後1年の生検対象は13例でそのうち12例で生検を施行し、治療介入を必要とした拒絶反応は5例に認めた。全例細胞性拒絶反応(borderline change含む)であり、抗体関連拒絶反応は認めなかった。移植後3年以降の生検では治療介入を必要とする拒絶反応は認めず、カルシニューリン毒性に関しても、移植後10年で1例に認めるのみであった。

    検討症例の中で、経過中BK腎症と診断された症例及び尿路奇形を合併し尿路感染を繰り返した症例に関してはSBsとは別に追加で生検を行い、BK腎症、逆流性腎症の評価を行った。

    [考察]

    腎移植後1年までは病理学的な拒絶反応の頻度も多く、治療介入の検討をする上でSBsの意義はあると考える。中長期に関しては病理学的な拒絶反応の頻度はほぼ認めず、また血管毒性などの頻度も低いことより、臨床所見に合わせエピソード生検を行うことで良いように思われる。

  • 清水 朋一, 加藤 慎也, 木島 佑, 狩野 香奈, 堀内 俊秀, 飯田 祥一, 東間 紘, 尾本 和也, 野崎 大司, 乾 政志, 石田 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s167
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【目的】腎移植後の慢性血管型拒絶反応症例について臨床病理学的に検討した。

    【方法】慢性血管型拒絶反応(CVR)をBanff分類のBanff scoreでの動脈内膜の線維性肥厚の指標であるcv と定義した。2010年1月~2020年12月で戸田中央総合病院での移植腎生検において、cv score≧1と診断されたのは27症例の34検体であり、これを対象とした。

    【結果】CVRの診断は移植後平均938日(55日~7242日)にされた。拒絶反応の既往は16例(59%)にあった。Banff scoreではcv1を22検体に認め、cv2は7検体、cv3は5検体に認めた。IF/TA(ct≧1 and/or ci≧1)は24検体(71%)と高率に認め、動脈内膜炎(v≧1)の併存を12検体(35%)に認めた。細動脈硬化(ah≧1)は17検体(50%)、中位動脈の動脈硬化は33検体(97%)に認めた。

    病理診断では、動脈病変のみのisolated v-lesion(IVL)が5検体(15%)、抗体関連型拒絶反応(ABMR)が10検体(29%)、細胞関連型拒絶反応(TCMR)は6検体(18%)、ABMR+TCMRが3検体(9%)、cv以外の拒絶がないものが11検体(32%)であった。

    観察期間中に3例(11%)の移植腎喪失があったが、17例(63%)は移植腎機能には影響が及ばなかった。

    【結論】CVRの3~4割はABMRが関与して、2~3割はTCMRが関与していると思われる。血管病変だけのIVLは1割に認められ、血管病変以外は問題がないものも3割あり、CVRと単なる動脈硬化との鑑別も難しいと思われる。またCVRが移植腎機能に影響を及ぼすのは4割程度であった。

  • 小島 英哲, 長谷川 康, 尾原 秀明, 北郷 実, 八木 洋, 阿部 雄太, 堀 周太郎, 田中 真之, 中野 容, 篠田 昌宏, 北川 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s168
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】当院においては移植後急性期・慢性期を問わず腎機能低下例や術前HCC合併症例に対しmTOR阻害薬であるエベロリムス(EVR)を導入している。しかし、腎機能低下例や慢性期でのEVR導入に関するエビデンスは乏しい。

    【方法】腎機能低下に対してEVRが導入された成人肝移植後患者32人を対象として、背景・生化学的検査値・合併症について後方視的検討を行った。

    【結果】32例の内訳は年齢の中央値が55歳(47-60),性別が男14 女18, 移植後1年未満の導入19例(急性期群)、移植後1年以上の導入13例(慢性期群)であった。両群の腎機能について、EVR導入時と導入1年半後時点を比較すると平均eGFRは急性期群で 37⇒41、慢性期群で41⇒41と両群とも保たれていた。有害事象は蛋白尿(CTCAE≧grade2)が全体の14例(45.2%)、脂質異常症が10例(32.3%)に見られ、蛋白尿の6割以上はEVR導入半年以内に出現していた。蛋白尿が出現した症例は術後1年半以降の経過で有意に腎機能が低下していた(P=0.025)。

    【考察・結語】腎機能低下症例についても急性・慢性期を問わずEVR導入は可能であった。一方蛋白尿は頻度が高く、mTOR阻害薬による腎障害に注意し早期の腎保護を図ることが必要である。

  • 増田 雄一, 三田 篤義, 大野 康成, 清水 明, 窪田 晃治, 野竹 剛, 細田 清孝, 副島 雄二
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s169
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    (はじめに)肝移植後免疫抑制療法(IS)におけるエベロリムス(Eve)の腎機能保護作用が報告され、本邦でも保険適用となった。

    (目的・方法)当科における成人肝移植後におけるEve導入例について調査検討する。

    (結果)Eve導入例はn=6で、成人肝移植症例中2.9%。Eve導入前ISはcalcineurin inhibitor(CNI)+mycophenolate mofetile(MMF)+steroid(n=4)、CNI+steroid(n=1)、CNI+MMF(n=1)であった。IS変更はすべて入院にて行い、Eve 目標trough濃度を3-7ng/mLとした。導入時期は移植手術後3ヶ月以内(n=1)、1年以内(n=4)、1年以降(n=1)。変更後観察期間中央値は6.6(1.3-17.1)ヶ月で、導入後ISはEve+ CNI+MMF+steroid(n=1)、Eve+ CNI +MMF(n=2)、Eve+CNI(n=1)、Eve+MMF(n=2)であった。移植前、導入、最終フォロ-アップ時のクレアチニン値(eGFR値)の平均値は1.83、2.11、1.72mg/dL(53、30、40)であり、Eve導入による重篤な合併症を認めなかった。

    (結語)Eve導入は重篤な合併症なくでき、今後は腎機能障害例において効果的なEve導入のタイミングについて検討が必要であると考えられた。

  • 松本 龍, 原田 昌樹, 徳重 宏二, 竹田 和由, 奥村 康, 内田 浩一郎
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s170
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】免疫抑制剤は肝移植後の予後改善に大きく寄与してきたが、長期間の免疫抑制剤服用に伴う副作用の問題が顕在化している。一方、免疫抑制剤の減量や中断(免疫寛容)は、各医療機関や医師の経験則に委ねられ、実態は不明である。本邦の免疫抑制剤使用、及び免疫寛容樹立に関する調査を行った。

    【方法】全ての肝移植実施施設を対象に、肝移植学会を通じてWeb調査を実施した。項目は①免疫抑制剤使用法、②免疫寛容樹立、③免疫寛容樹立患者背景の3つに大別した。

    【結果】回収率は69.2%(45/65施設)で、high volume施設に限ると96.8%(30/31施設)であった。①免疫抑制剤使用法は、移植後経過に伴い「薬剤数」や「CNI目標トラフ値」が減少する傾向を認めた。②「免疫抑制剤の減量、中断に向けた前向きな免疫抑制剤減量」を試みた施設は、9施設(20%)のみであった。減量基準は、「肝機能」(89%)、「移植からの期間」(67%)で、再開する基準は、「肝機能」(98%)、「肝生検で拒絶様の組織破壊像」(67%)であった。③免疫寛容樹立患者は、158名(全肝移植症例の1.9%)存在し(成人25名、小児131名)、移植後早期(5年以内)は成人16名、小児38名であった。

    【結語】肝移植後の免疫抑制剤使用及び免疫寛容樹立に関する本邦初めての大規模調査を行った。現在、免疫寛容患者158名に対して追加調査中である。

  • 川俣 太, 大野 慎一郎, 石野 信一郎, 上里 安範, 高槻 光寿
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s171
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】近年、腸内細菌叢の異常が肝移植後の急性拒絶に影響を与えることが報告されている。本研究では生体肝移植周術期の腸内細菌叢の解析を行った。

    【方法】2020年に行われた生体肝移植3症例のドナーとレシピエントの糞便検体(合計15検体)を16S rRNAを用いた遺伝子解析を施行し、腸内細菌叢の変化と術後経過を検討した。

    【結果】レシピエントの背景疾患はアルコール性が1例、AIHが1例、PBCとAIHの合併が1例であった。レシピエントはドナーと比較し、術前より腸内細菌の多様性の低下を認め、レシピエントではEnterobacteriaceae、Lactbacillaceaeが、ドナーではLachnospiraceae、Veillonellaceaeが優勢な腸内細菌であった。術後合併症は胆汁瘻を2例に認めたが、急性拒絶症例は無かった。術後合併症を認めなかった症例のレシピエントはドナーの腸内細菌叢に多く存在したLachnospiraceaeが増加し、ドナーの腸内細菌叢に近づいた(術後1か月)。胆汁瘻を発症した症例は長期間の広域抗生剤治療を要し、悪玉菌のEnterococcaceaeの比率が有意に高くなった(術後2週間)。

    【結語】生体肝移植後に抗生剤を長期使用する合併症が生じた際は、腸内細菌叢の多様性が低下し、悪玉菌が優勢となる。悪玉菌が急性拒絶に影響を与える可能性を鑑みると、腸内細菌叢を改善させる腸内細菌移植は、移植成績を向上させる新規治療戦略となる可能性がある。

  • 宇田川 大輔, 長谷川 康, 尾原 秀明, 北郷 実, 八木 洋, 阿部 雄太, 松原 健太郎, 山田 洋平, 堀 周太郎, 田中 真之, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s172
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】近年、葛西術後成人期に非代償性肝硬変に至り、肝移植を施行される症例がしばしばみられる。葛西術後成人期の肝移植に関する報告は限られている。本発表では、葛西術後肝移植の成績について成人例と小児例を比較・検討した。

    【方法】対象は2005年1月から2021年3月までに、当院で施行した葛西術後肝移植59例。患者背景、術後短期成績について検討した。

    【結果】成人(18歳以上)が16例、小児(18歳未満)が43例であった。生体/脳死移植はそれぞれ、12/4例と42/1例であった。手術時間、出血量/体重はそれぞれ1024分(726-1800分)と860分(644-2210分)、102 mL/kg(14-1422mL/kg)と89ml/kg(6-1680ml/kg)であり、手術時間は成人例で有意に長かった(p<0.05)。C-D≥IIIの合併症率はそれぞれ、66.7%と28.0%であり成人例に有意に多かった(p<0.01)。術後1/5年生存率はそれぞれ68.8/62.5% vs 97.6/97.6%,(log rank, p<0.001)と成人例で不良であった.成人例は1年以内の死亡が31.2%であったが,それ以外の症例は長期生存が得られていた.

    【結論】BA術後成人期に肝移植を要する症例は、小児期の肝移植と比較して、周術期さまざまな合併症のリスクが高いことを念頭に置き、慎重に移植の適応を判断する必要がある。

  • 久保木 知, 古川 勝規, 高屋敷 吏, 高野 重紹, 鈴木 大亮, 酒井 望, 細川 勇, 小西 孝宜, 西野 仁恵, 大塚 将之
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s173
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    (背景) 肝硬変を伴う肝細胞癌(HCC)では根治治療が困難なことが多く、肝移植が考慮される。近年、HCCに対する肝移植の適応拡大が進められ、新適応基準として5-5-500基準が保険適用となった。(目的) ミラノ基準内とミラノ基準外かつ5-5-500基準内のHCC併存肝移植例のHCC再発率や予後を比較し、5-5-500基準の妥当性を再考。

    (対象・方法) 当科で肝移植を施行した56例のうち、HCC併存例10例を対象とし、各基準におけるHCC再発率および予後を評価した。(結果) 当科で肝移植を施行した56例中10例(18%)がHCC併存例であり、背景因子としてはHCV 4例、PBC 2例、HBV・AIH・NASH・アルコール性が各1例であった。10例中7例でミラノ基準外のHCCに対して肝切除・RFA・TACEなどによりミラノ基準内となるように治療介入がされており、その結果、術前の画像検査上は10例全例でHCCはミラノ基準内であったが、病理上は10例中5例でミラノ基準外のHCCが確認され、ミラノ基準外の5例中4例が5-5-500基準内、1例が5-5-500基準外であった。10例全例でHCC再発を認めておらず、5年以内の死亡例も存在せず、HCCコントロール・肝移植経過ともに良好であった。

    (結語) HCCに対する肝移植の新基準としての5-5-500基準の妥当性が再確認された。また、移植準備が整うまで、集学的治療を行うことにより5-5-500基準内に維持することで肝移植を施行するチャンスを広げるとともに肝移植後の予後を改善することが示唆された。

  • 原田 浩
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s174
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    移植片への免疫応答を抑えることが必須であるアロ腎移植において、考慮すべき有害事象は以下である。1.免疫抑制の結果の微生物感染症、悪性新生物の発生、2.不十分な免疫抑制の結果としての拒絶反応の発生(T細胞性、抗体関連、ともに急性、悪性)、3.免疫抑制薬の有害事象である高血圧、DM、脂質異常症などの発生、4.CKDのcarry over としての骨ミネラル事象、腎性貧血、原疾患再発などである。移植片および生命予後を損なわないようにするためにはこれらの発生を可及的に抑えるための免疫抑制方法を考慮しなくてはならない。現在わが国用いられている維持免疫抑制薬はTAC、CSAなどのCNI、MMFに代表される代謝拮抗薬、ステロイド剤、mTOR阻害薬であるEVRである。これらを2-4剤組み合わせての使用が標準であるが、各々の特性を十分考慮する必要がある。例えばCNIにはDM、高血圧、MMFには貧血、ステロイド剤にはDM、高血圧、脂質異常症、骨ミネラル事象の悪化、EVRには脂質異常症、高血圧の有害事象が知られている。一方CNIとくにTACの強力なT細胞抑制効果や、MMFの抗体産生抑制効果および、唯一の抗炎症作用を有するステロイド薬の効果や、EVRの抗ウイルス作用もときに有用なツールとなる。現実的には個々の症例に応じた完全な免疫抑制方法テーラーメード化は困難であるが、移植片および生命予後の改善に向けた薬剤の特性を考えた上での組み合わせが求められ、これにつき概説する。

  • 奥村 真衣, 渡邉 恵, 安次嶺 聡, 石山 宏平, 三輪 祐子, 岩﨑 研太, 小林 孝彰
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s175
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】

    現在腎移植における免疫抑制療法としてカルシニューリン阻害薬にミコフェノール酸モフェチル、mTOR阻害薬、ステロイドなどを加えた多剤併用療法が行われている。感染症、腎機能障害、悪性腫瘍などの合併症発現時における適切な維持免疫抑制療法は未だ確立されていない。

    【方法】

    当院ではトラフ値のみならず血中濃度—時間曲線下面積(AUC)を利用して免疫抑制剤の投与量を決定している。2012年7月から2020年10月の間に当科で行った生体腎移植204例を後ろ向きに観察研究し、モニタリングの詳細と合併症発症時の免疫抑制剤の調整など臨床結果を報告する。

    【結果】

    AUCコントロール下において、入院を要する移植後感染症を来したのは37/204例(重複感染を含む)であり、尿路感染症が最も多く認められた。BKウイルス感染(Viremia)は24/204例であり、そのうち20例で免疫抑制剤の減量もしくは変更を行なった。CNI腎毒性による減量は7/14例に認められた。調整後に拒絶反応を誘発した例は認めなかったが、BKV感染後の10例にde novo DSA産生を認めた。

    【結語】

    移植後合併症発現時には、免疫抑制療法の調整(減量、変更、中止)を考慮しなければならない。多くにおいて調整による効果が認められたが、有効な治療法のないBKウイルス感染症の場合には高い割合でde novo DSA産生を認めたため、減量(中止)時にはmTOR阻害剤への変更、BKV-DNAモニタリングなど厳重なフォローが必要である。

  • 田中 飛鳥, 井手 健太郎, 田中 友加, 大平 真裕, 田原 裕之, 森本 博司, 谷峰 直樹, 石本 達郎, 大段 秀樹
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s176
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    背景:高齢レシピエントは、加齢による免疫応答低下・薬物代謝の低下により過剰免疫抑制状態に陥りやすく、移植後感染症のリスクが高い一方、拒絶反応の発症率は低いと言われている。免疫抑制療法は移植医療に不可欠であるが、高齢者に対する適切な免疫抑制療法は確立していない。当科では、リンパ球混合試験(MLR)を用い術後免疫状態を定期的に評価し、アルゴリズムに従って免疫抑制薬の投与量を調整している。そこで高齢者の術後免疫状態及び免疫抑制薬の投与量・トラフ値を評価し、高齢者に対する免疫抑制療法について検討した。

    対象・方法:2009年9月~2020年5月に当科で腎臓移植を受けた患者66名を対象とし、高齢群を60歳以上(16名)、60歳未満を対象群(50名)とした。免疫抑制療法はCsA,MMF,MPの3剤を用い、術後1,3,5年目のMLRによる免疫状態の評価及び免疫抑制薬の投与量、トラフ値を検討した。

    結果:術後1,3,5年目の免疫状態は、高齢群と対象群共に抗ドナー・抗サードパーティー応答は適正に維持されていた。CsAのトラフ値はいずれのポイントでも同等であったが、経年的に高齢者群の投与量は有意に減少した。MMF、MP投与量に有意差は認めなかった。移植腎機能や拒絶反応等合併症の発生に有意差は認めなかった。

    結語:高齢レシピエントに対し、CsA投与量の減量は可能であるが、トラフ値の維持は必要である。高齢者と言えども免疫学的高リスク症例では、免疫抑制療法は慎重を要する。

  • 石田 英樹, 海上 耕平
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s177
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    免疫抑制剤の新たな開発や臨床応用は短期的な移植腎生着率を劇的な改善に導いた。1年生着率は95%以上にも及ぶ一方で長期生着率の成績は今昔さほど変わりはない。現在用いられている維持免疫抑制剤はカルシニューリンインヒビター(CNI)、代謝拮抗薬そしてステロイドなどである。

    2000年来の前2者の移植市場への登場は前述のとおり急性拒絶反応を減少させ、併用するステロイドの使用量を激減させることも可能となり移植患者のQOLを向上させた。

    その一方でCMV、BKなどのウイルス感染症を中心とした移植後合併症は移植臓器のみならず、時に生命にとっても致命傷となり適切な対応が必要である。

    このセッションでは、当科で経験したさまざまな移植後合併症に対する免疫抑制剤の対処法について論じてみたい。

  • 吉屋 匠平, 田中 彰子
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s180
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律が施行されてから約10年が経過し、臓器提供件数が微増にとどまる中で、令和3年4月より厚生労働省の厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会において、これまでの移植医療に関する施策を振り返り、課題を整理するとともに、臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)の改訂を含む、より移植医療を推進するための方策が検討されている。この検討を踏まえ、現状の臓器移植医療の課題と今後の施策の方向性および、それらの施策の中で移植医療における働き方改革につながる取組を中心に述べる。

  • 蔵満 薫, 小松 昇平, 木戸 正浩, 権 英寿, 福島 健司, 浦出 剛史, 宗 慎一, 原 麻由美, 後藤 直大, 浅利 貞毅, 柳本 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s181
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    背景;日本臓器移植ネットワークからの報告によると、2010年度には39件であった肝臓移植数は2019年度には87件まで増加している。肝臓では病状が深刻な患者から移植が実施されるため、単一施設で移植が続くことも珍しくない。2024年4月から導入が検討されている医師の働き方改革の中で規定されている時間外労働の上限をクリアするためには、移植医療におけるタスクシフティングが必須となる。自施設における互助制度の利用状況とレシピエント移植コーディネーター(RCT)の育成について報告する。

    現状;自施設では5ヶ月間で9回のドナー情報があり、うち5回摘出に赴いた。通常肝臓摘出手術には4名の医師を派遣しているが、4名派遣したのは1例のみで、その他4例では近隣の移植施設に互助を依頼した。RTCの育成目的に関連病棟では勉強会を毎年実施し、病棟師長の協力を得た上で2014年より移植外来への病棟看護師の派遣を開始した。関連学会へも複数名で参加し、2016年以降継続的にRCTの認定を得ている。

    考察;時間外労働の最たる理由となる摘出手術に際した人的資源の投入は、互助制度の利用により大幅な削減が可能となるが、削減された若手医師の摘出医としての育成が今後の課題である。移植患者の予後を担保するためにはRTCの存在が不可欠であるが、自施設では関連病棟でRCTを複数名育成することにより専従看護師の業務を軽減した。いかに継続して若手のRTCを育成するかが今後の課題である。

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