移植
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56 巻, Supplement 号
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  • 福嶌 教偉, 瀬口 理, 塚本 泰正, 渡邉 琢也, 望月 宏樹, 下島 正也, 羽田 佑, 田所 直樹, 福嶌 五月, 藤田 知之
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s308
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    わが国のドナー不足は深刻であり、心臓移植総件数の8割の患者が待機中に死亡している。待機患者の移植率を改善させるためには、allocation systemの変更も1つであるが、医学的理由で辞退されたマージナルドナーの利用も重要な課題である。 当院では2015年4月から積極的にマージナルドナーを移植することとした。当院で心臓移植を施行した15歳以上の全例を対象とし、2015年3月末前後で1群69例、2群72例とし解析。移植時年齢は2群が1群より有意に高齢(45.6±13.1 vs 36.5±12.1歳)。候補順位によりG1(1位)、G2(2-5位)、G3(6位以降)とし、1群でG1 50例,G2 12例, G3 7例、2群G1 14例,G2 31例, G3 27例で、2群には4例が100位以降であった。1及び5年生存率は、1群で98.6、95.7%、2群で97.1、97.1%であった。以上、順位下位でも的確にレシピエント選択をすれば、マージナルドナーでも良好な成績が示された。これを達成するには、自施設のレシピエント候補リストを常に周知し、マージナルドナーに対しどの下位候補者を受けるかを把握しておくこと、下位でも適切に交差試験用の血清を提出することが重要である。そうすることで、候補者決定までの時間が短縮され、心臓移植に到達できると考えられる。なお、2群でマージナルレシピエント2例を移植後早期に失っており、マージナルドナー心を選択する場合にレシピエントの重症度を考慮することが重要であり、その点についても議論したい。

  • 三浦 正義, 東山 寛, 吉原 真由美
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s309
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    目的:移植腎長期成績改善のためには慢性抗体関連型拒絶反応(CAAMR)を含めた慢性変化の克服が必要である。当科におけるエベロリムス(EVR)を用いた導入免疫抑制療法の成績を検討した。 方法:2010年以降当科で移植前抗ドナー抗体(DSA)を有さず腎移植し3年以上の観察期間を有する成人例を対象とし、導入免疫抑制でEVRを使用したEVR群(n=47)と使用しなかったSTD群(n=55)で移植後6か月, 1,2,3,5年でEVRとタクロリムストラフレベル(TACC0)、ミコフェノール酸(MPA)AUC、推算糸球体濾過率(eGFR)、尿蛋白1日量(uP)、プロトコル生検におけるaahスコア、6か月以内の急性拒絶反応(AR)、3年以内のde novo DSAとCAAMR、CMV感染症、その他感染症、移植後新規糖尿病(NODAT)、スタチン介入頻度について比較した。 結果:EVRC0は4-5ng/mLで経過し、TACC0は1年目まではEVR群で低かったが、2年以降はレジメン設定通りに減量されずにSTD群と同等だった。MPAは3年目までEVR群で低かった。eGFR、尿蛋白には差がみられなかった。ARの頻度はEVR群で低い傾向がありde novo DSA, CAAMRともにEVR群は皆無だった。aahスコアにも2群間差がなかった。CMV感染症はEVR群で少なかったが、他の感染症頻度は差がなかった。NODAT及びスタチン介入頻度はEVR群で高かった。EVR群16例で3年以内にEVR中止となったがその原因はEVR中止によりいずれも改善した。 結語:DSA、CAAMRの抑制による予後改善が期待される。

  • 岩本 整, 沖原 正章, 赤司 勲, 木原 優, 今野 理, 松﨑 智子, 山田 宗治, 尾田 高志, 竹内 祐紀
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s310
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    はじめに)当院での腎移植における免疫抑制プロトコールの変遷は、それまでのメチルプレドニゾロン+タクロリムス(TAC)+ミコフェノール酸モフェチル(MMF)+バジリキシマブから2013年より移植後3カ月からmTOR阻害薬(EVR)を追加するいわゆる維持期EVR導入ロトコールを導入し、その後2019年より術後7日目にEVRを追加する早期EVR導入プロトコールを導入した。

    (対象と方法)2014年5月から2020年3月までに当院で施行された腎移植のうち、TACとEVRが投与された72例を対象とした。早期導入群29例と維持期導入群43例の、移植後3、12カ月で行っているプロトコール腎生検(PB)のBanff分類に基づく病理所見を比較検討した。

    (結果)移植後3カ月のPBで早期導入群のct0は23例(85.2%)、ct≧1は4例(14.8%)、維持期導入群でct0は31例(72.1%)、ct≧1は17例(27.9%)であった。移植後12カ月では早期導入群のct0は12例(63.2%)、ct≧1は7例(36.8%)、維持期導入群でct0は13例(43.3%)、ct≧1は17例(56.7%)であった。術後1年以内のBPARは早期導入群で1例(3.4%)、維持期導入群で6例(14.0%)認めた。

    (結語)EVR早期導入レジメンの短期成績は維持期導入に比べ急性拒絶反応の発生率を有意に下げた。IF/TAの進行予防の効果は今後の中長期的な観察が必要である。

  • 石山 宏平, 奥村 真衣, 安次嶺 聡, 三輪 裕子, 岩﨑 研太, 小林 孝彰
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s311
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    エベロリムス(EVR)は免疫抑制作用以外に、CNI減量による腎毒性の軽減、CMV・EBVなどのウイルス感染症抑制効果や抗腫瘍効果などが期待される。当院では現状の維持免疫抑制療法に課題がみつかった時期にadd on もしくはconversion therapy としてEVRを使用している。

    2012年以降に当院で施行した生体腎移植214例のうち43例にEVRを使用した。移植直後からEVR開始した14例を除いた29例(拒絶反応8例、癌発症1例、ウイルス感染症11例、細菌感染症3例、CNI毒性3例、心血管イベント1例、代謝拮抗薬有害事象2例)に対してEVR併用を行った。MMFから変更するか、標準的三剤にEVRを追加するかは症例毎に決定した。EVR併用時に使用されていたCNIは、CyAが19例、TACが10例であった。適宜血中濃度測定を行いトラフ値(C0)に加えて、AUC(0-4h)を算出することで免疫抑制療法の指標とした。EVR併用時期は移植後平均811±915日であった。EVR併用後の腎機能は併用前の血清クレアチニン値が2.2±0.9mg/dlから半年後で2.0±0.6mg/dlと改善傾向を示した。EVR併用後に尿蛋白漏出、脂質代謝異常が悪化した症例は認めなかった。移植直後からEVR開始した14例を含め、経過中にEVRを中止した症例を10例(拒絶反応1例、EVR関連間質性肺炎1例、感染症4例、その他4例)認めた。

    EVR併用に伴う臨床所見の改善効果を十分に認めたが、過剰免疫抑制とならないように使用免疫抑制剤の定期的なTDM管理を行うことが重要と考えられる。

  • 加藤 容二郎, 吉武 理, 天野 悟志, 杉山 元紀, 青木 武士
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s312
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

     本邦での添付文書上、エベロリムス(以下EVL)の効能又は効果は、心移植、腎移植、肝移植における拒絶反応の抑制とされている。

     一方で、抗ウイルス効果も着目されており、日本移植学会より腎移植後3か月以内にCOVID-19を発症した場合、MMF減量、EVLをadd onする調整法が公表され、基礎研究においては、EVLによりサイトメガロウイルス感染細胞数が減少した報告もある。

     近年当院では、拒絶反応の抑制のみならず、抗ウイルス効果にも着目し、腎移植後3カ月以上経過し、移植腎機能が安定している希望者を対象に、EVLのadd onを開始した。添付文書上の副作用として、腎障害(10.6%)、感染症(23.1%)、高脂血症(16.0%)、移植腎血栓症(0.4%)等が記載されている事から、当院でのEVL add onの開始基準を、1)尿蛋白定性陰性、2)総コレステロール値基準値内、3)Dダイマー基準値内としている。導入はEVL 0.5㎎/日より開始し、副作用が疑われる症状や検査結果が無い事を確認してから、1.0㎎/日、1.5㎎/日と徐々に増量している。現時点ではEVL add on開始後、特に重大な合併症なく、中断者ゼロで経過している。

     また、具体的な1例として、腎移植後1年以内に、顆粒球減少症を伴うサイトメガロウイルス初感染の症例に、各種薬剤調整およびEVLをadd onすることで、血液製剤を使用することなく軽快し、その後も臨床的に拒絶反応無く経過している1例を経験したので、併せて報告したい。

  • 泉 惠一朗, 村松 真樹, 米倉 尚志, 西川 健太, 櫻林 啓, 前田 真保, 青木 裕次郎, 小口 英世, 板橋 淑裕, 濱崎 祐子, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s313
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【目的】血液型適合腎移植において、タクロリムス(Tac)とステロイド(MP)に、それぞれEVRとミコフェノール酸モフェチル(MMF)を加えた3剤併用プロトコルについての比較を行う。

    【方法】2018年6月~2020年3月までに当院で施行した血液型適合の生体腎移植のうち、既存抗体陰性の33例を対象とした。初期免疫抑制剤としてEVRを選択した17例、MMFを選択した16例の移植後1年間の治療成績を後方視的に調査した。

    【結果】

    年齢はEVR群42±14歳、MMF群42±11歳、性別(M/F)はEVR群11/6例、MMF群7/9例であった。EVR群では17例中7例がプロトコルから脱落した。その理由としては3か月定期生検によるborderline changes 2例、蛋白尿増悪2例、CNI毒性に伴う投薬変更1例、口内炎1例、リンパ瘤1例であった。一方、MMF群では経過中にプロトコルの脱落はなかった。移植3,12か月目の血清Cre(mg/dL)は両群に有意な差を認めなかった(EVR群 1.3±0.45,1.4±0.59、MMF群1.3±0.43,1.3±0.38)。経過中に臨床的拒絶反応はなく、移植3,12か月目の定期移植腎生検の病理所見では、EVR群に拒絶反応例はなく、MMF群では拒絶反応1例と原疾患の再発を1例認めた。ウイルス感染はEVR群でBKV1例、CMV2例、MMF群でCMV8例であった。

    【結語】

    EVRプロトコルの短期的な治療成績はMMFプロトコルと比べて遜色はないものの、一方で内服の継続性がEVRプロトコルの課題として挙げられた。

  • 千葉 由美, 砂川 玄悟, 豊田 吉哉
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s314
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    はじめに

    コロナ禍により経年的に心臓移植を実施している米国急性期病院での研修の代替のオンライン学習にて得られた看護学生の学びを把握した。

    内容

    本学看護学科4年次生が履修する「看護の統合と実践」科目で心臓移植を行っている米国急性期病院に勤務する心臓外科医2名、看護師1名に半構成的にインタビューした。内容は看護師、Nurse Practitioner(NP)やPhysician Assistant(PA)等の活動、業務内容の留意点、患者家族への精神的支援、医師の看護師への期待等で内容をカテゴリ化し整理した。

    結果

    学びの内容は、看護師に関連し、看護師の資格(制度、教育プログラム、免許取得・更新、NPやPA)、NPやPAの業務(診察、一定レベルの診断、治療、処方、手術の補助)、看護師の能力(情報収集力、アセスメント力、他職種との連携、コロナ禍での家族支援、人種問題を考慮した対応となっていた。また医師からは、情報収集力、アセスメント力、医師や他職種への伝達力、予測力、患者指導力、継続ケア支援、終末期支援が求められていると学んでいた。以上のことから、学生はコミュニケーション力、アセスメント力、患者の意思決定支援、全人的苦痛緩和、悲嘆ケア、チーム医療推進、組織体制整備、家族支援、文化や宗教に応じたケアが重要と学んでいた。

    考察

    日米の違いを学ぶ機会にはなったが、移植に関する学習には課題があると思われた。

  • 千葉 由美
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s315
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    はじめに

     心臓移植は待機期間が長く、手術侵襲も大きく、さらに拒絶反応といった合併症が生じえるとされている。医療チームの一員として心臓移植に関わる看護を安全に行うための理解を深めることは重要である。本研究では心臓移植に伴う合併症管理ならびにその看護に関する文献検討を行った。

    内容

     Pubmedにて""heart transplantation"" ""complications"" ""management"" ""nursing""で検索し、合計34件がヒットした(2021年5月31日現在)。タイトル、抄録などを確認し、入手不可能な論文を除いた1990年以降の33件を検討した。

    結果

     論文数は1990年代7件、2000年以降26件であった。内容として、治療関連7件(補助人工心臓4件、抗凝固療法1件、細胞治療1件、薬剤管理1件)、ステートメント2件(心筋症1件、フォンタン循環1件)、心臓移植・関連疾患の概説5件(心臓・肺移植1件、アテローム性動脈硬化症2件、心不全1件)、管理と看護20件(心臓(心肺)移植:術後管理5件、長期管理7件、その他の管理1件、人生経験1件、感染症1件、妊娠1件、補助人工心臓:ミニレビュー1件、感染症1件、心不全管理2件)であった。

    考察

     心臓移植は、重症心不全の代替治療手段のない末期心疾患に対する治療法であるが、合併症管理ならびに看護に関する研究は十分といえないことがわかった。

  • 堀 由美子, 小西 伸明, 有薗 礼佳, 福嶌 教偉
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s316
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【目的】当院のレシピエント移植コーディネーターは(RTC)、2016年3名に増員(成人RTC2名、小児RTC1名)された。小児RTCが異動し、後任に引き継がれた。成人RTCは小児ケアの細部まで把握をしていないため、後任は戸惑うことが多かった。小児RTCは、休暇を取りにくかった。RTC1名はベテランであったため、情報がベテランRTCに集中することが多かった。①RTCの異動に伴う看護の質の低下を防ぐ②若手RTCを育成において、リーダーシップ、マネージネント能力の向上③誰もができるコーディネーション④休暇を計画的に取得できる体制構築が必要と考えた。

    【実際】看護の質の向上、超過勤務削減、若手RTCの育成を目的にチームナーシングを導入した。構成員はリーダーRTC1名、メンバーRTC2名、役割は、リーダーRTCは成人、メンバーRTC1は小児、メンバーRTC2は外来(超過勤務時間を考慮し遅出)とした。

    【結果】全患者・家族の把握やケア安定し、RTCの連携が容易になった。RTC異動後の看護の質の低下を防ぐことができた。若手RTCがチームの中でリーダーシップを発揮し、RTCの成長に繋がった。計画的に休暇を取ることができた。

    【今後の課題】役割を明確にすることで看護の質の低下を防ぎ、若手RTCの成長に繋がった。ドナー情報対応の増加によって通常業務の影響は大きく、看護の質の維持と業務改善は課題である。

  • 長屋 さつき, 阿寺 妙, 渡邉 恵, 小林 孝彰, 今井 美恵
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s317
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    A院では高齢の夫婦間移植が多く行われているが、2012年7月の移植開始後9年が経過し、免疫抑制剤療法の進歩や細やかな患者生活管理により長期生着が実現し、更なる高齢化が見られている。また移植が可能な施設が限られているため、近隣他県・遠方の方がA院で生体腎移植を受けられる症例も多くある。地理的な特徴から公共交通機関ではなく自家用車での通院が必要であり、レシピエント・ドナーの高齢化に伴うADL低下や認知機能低下、介護者の高齢化により通院が困難となるケースが増加する可能性がある。しかし、「免疫抑制剤の管理ができない」などの理由から地域施設での診療を受けられない現状があり、患者が可能な限り住み慣れた地域で長期的な定期治療が受けられるように医療や介護など地域連携体制の構築が不可欠であると考える。

    今回、医師と協力し地域連携を行った症例について提示し報告するとともに、A院における患者の現状と課題を明確化し、今後の支援に活かしていく。

  • 原田 絵美, 友松 桐子, 犬飼 祐美, 伊藤 美樹, 鈴木 舞, 剣持 敬
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s318
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】移植腎の長期生着を阻むノンアドヒアランス防止には自己管理指導が必須だが,未だ確立した方法はない.原疾患として糖尿病が腎移植後ノンアドヒアランスの危険因子とされる.今回,糖尿病を原疾患とする腎移植患者への自己管理指導法確立のため,患者の自己管理状況と指導方法を検討した.

    【対象と方法】2018.1~2020.8に実施した腎移植患者74名(膵腎移植含む)を対象とし,原疾患により1型糖尿病群19名,2型糖尿病群16名,非糖尿病群39名に分類した.内服管理不足,水分出納・バイタルサイン未測定,感染予防対策未実施の項目のうち1つ以上ある場合,ノンアドヒアランスと定義し,3群で比較検討した.

    【倫理的配慮】藤田医科大学病院,看護研究倫理審査会で承認を得た.

    【結果】ノンアドヒアランスの患者は,1型糖尿病群の19例では1例(5%)のみがノンアドヒアランスであった.これに対し,2型糖尿病群では16例中5例(31%)と多くみられた.非糖尿病群では39例中2例(5%)にみられた.

    【考察および結語】2型糖尿病を原疾患とする患者のコンプライアンスが低く,1型糖尿病ではコンプライアンスは高く維持されることが明らかとなった.2型糖尿病を原疾患とする患者への自己管理指導法は,Shared Decision Making(SDM)を取り入れた個別の指導法が必要である.今後,指導ツールの工夫,指導内容の改善等により,患者背景やライフスタイルを考慮した自己管理指導法の確立につなげたい.

  • 吉田 茉知, 安藤 惠子, 上野 美紀, 井上 悠子, 田中 理恵, 高橋 優, 金子 瞳, 森田 陽子, 玉田 愛実, 柳谷 広大, 渡邉 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s319
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    背景:近年,家族の若年化や経済的困窮,ひとり親世帯など家族背景が複雑化し育児の負担が増大している.小児生体肝移植看護では患児に加えて生体ドナーを含めた家族への長期の包括的支援が必要となる.

    方法:過去3年間に実施された小児生体肝移植症例を病棟看護師の語りを通して振り返り,移植看護の現状と課題を分析した.

    結果:移植適応の可能性が浮上した早期から医師・看護師・移植コーディネーター間で情報を共有し,生涯ケアを念頭に特に移植コーディネーターと家族の有効な関係構築支援を心掛けてきた.社会的問題の解決が必要な症例では移植前より外来や地域連携部門と協働を行った.周術期オリエンテーションは入院前から外来・病棟共通の資料を用いた指導が,生体ドナーの意思決定支援の観点からも重要である.移植前の家族の不安が医療者への不満となり表出された症例では,移植後に想定される様々なトラブルシューティングについて多職種間で術前検討を行った.これは家族の不安解消だけでなく移植チーム全体の安心感にも繋がった.退院支援では,怠薬による再移植の経験から患児の発達段階や家族背景に応じ学校との調整を行った.

    結語:小児生体肝移植前後の看護は成長発達的課題と生涯を見据えた長期的ケアが特徴である.外来・病棟で一貫したケアを提供すべく移植コーディネーター・病棟看護師を含め多職種による患児・家族の支援体制確立が不可欠である.

  • 北島 和樹, 海上 耕平, 石井 宏太, 大木 里花子, 藤原 裕也, 林 千裕, 蓑田 亮, 八木澤 隆史, 神澤 太一, 尾本 和也, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s322
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】巣状糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)の腎移植後約30%に再発を認め、移植腎機能に影響を及ぼす。今回我々は移植後再発FSGSに対する治療としての血漿交換療法(PE)の有効性を明らかにするため、当科で経験した症例を対象に臨床経過、予後などを検討したので報告する。

    【対象・方法】2005年以降の腎移植症例のうち再発FSGSと診断し、PEを施行した13例を対象に後方視的に評価した。

    【結果】平均移植後観察期間は6.96(0.6-20.8)年であった。再発FSGS診断は病理診断8例、蛋白尿増加(>1g/day)5例であった。治療は平均PE回数:28.4(9-96)回で、PEおよびリツキシマブ併用は7/13例(53%)であった。治療成績は移植腎生着が7/13例(53%)で、平均移植腎生着期間:5.6(0.7-20.8)年であった。生着症例のうち3例で蛋白尿改善(<1g/day)を認めた。移植腎喪失6例の原因は再発FSGS増悪4例、重症感染症と消化管出血合併1例、脳出血1例であった。

    【まとめ】

    腎移植後再発FSGS治療として多くの施設でPEやリツキシマブ投与を行っているが、小規模な報告が多く、治療効果に関しては一定の見解が得られていないのが現状である。再発FSGS症例の移植腎生着率は約50%と報告されている。今後のさらなる症例の蓄積が必要と考える。

  • 和田里 章悟, 荒木 元朗, 松本 准, 関戸 崇了, 吉永 香澄, 丸山 雄樹, 定平 卓也, 西村 慎吾, 和田 耕一郎, 小林 泰之, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s323
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【目的】

    腎移植患者における新規酸分泌抑制薬ボノプラザンのタクロリムス血中濃度に対する影響を検討した。

    【対象と方法】

    2018年8月から2019年9月に、ラベプラゾールからボノプラザンに変更した腎移植患者を対象とした。Cytochrome P450(CYP)3A5、CYP2C19の遺伝子多型に基づき、患者群毎の内服変更前後でのタクロリムストラフ値(ng/mL)を比較した。

    【結果】

    全患者(n = 52)におけるトラフ値の変化に有意差はなかった(前5.5 ± 1.1、後5.8 ± 1.2、p = 0.11)。CYP3A5 poor metabolizer群 (n = 25) では、トラフ値の変化は中央値0.4ng/mLであった (前5.5 ± 1.1 ng/mL、後5.9 ± 1.2、p = 0.049)。CYP3A5 intermediate metabolizer群 (n = 23) およびCYP3A5 extensive metabolizer群 (n = 4)では、前後のトラフ値に有意差はなかった。CYP3A5 poor metabolizer群におけるCYP2C19遺伝子多型によるサブグループ解析では、いずれのCYP2C19遺伝子多型においても変化に有意差は認めなかった。

    【結語】

    腎移植患者においてラベプラゾールからボノプラザンへの変更はタクロリムストラフ値に臨床的意義のある変化を来さない。

  • 安藤 忠助, 秦 聡孝, 三股 浩光
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s324
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【緒言と目的】

    HIF-PH阻害薬は新たな作用機序の腎性貧血治療薬である。腎移植後のESA低反応性腎性貧血に対するHIF-PH阻害薬の初期使用経験を報告する。

    【対象と方法】

    ESAを投与中でもHb11.0g/dL未満の腎移植後の腎性貧血患者を対象とした。

    最終ESA投与から4週間以上のwash out期間を経た後にDIに従ってHIF-PH阻害薬へ切り替え投薬し、投薬前後の血液検査結果を比較検討した。

    【結果】

    患者は男女それぞれ3名ずつで、平均投薬期間は2.7ヶ月であった。投薬開始時の年齢(y)、移植後経過期間(m)、Hb(g/dL), Cr(mg/dL), フェリチン(ng/mL:12-60), エリスロポエチン(mIU/mL:4.2-23.7)はそれぞれ平均値で64.7, 117.7, 10.0, 1.93, 125.4, 31.7であった。

    観察期間中、5名でHb値が上昇し、うち2名はHb>11.0となった。

    特記すべき副作用を認める症例はなかった。

    【結論】

    HIF-PH阻害薬はESA低反応性の腎移植後の腎性貧血に対して効果が期待できると思われる。また外来通院間隔を長くすることが可能であり、with/afterコロナ時代に適していると思われる。

    しかし、症例の積み重ねや長期経過観察が必要である。

  • 寺西 淳一, 米澤 光祐, 花井 孝宏, 望月 拓, 石田 寛明
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s325
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    緒言:今回、貧血に対してESA製剤を定期使用していた腎移植患者にHIFプロリン水酸化酵素阻害剤であるロキサデュスタットへの切り替えを行った症例を経験したので報告する。対象・方法:外来腎移植患者のうち、定期使用していたESA製剤を中止し、ロキサデュスタットを開始し3カ月以上経過した症例を対象とした。ESAからの切り替え時のロキサデュスタット開始容量は添付文書通りの推奨容量で行った。ロキサデュスタット開始時の患者背景、開始前1年間と開始後3カ月間のHb中央値とHbの変動について後方視的に比較検討した。また、Hbの変動は、観察期間中のHbの最大値と最小値の差と定義した。結果:対象は、腎移植後7年~23年経過した男性2名と女性3名の計5例で、全例でEVRを使用し、5例中4例の移植腎機能低下の原因は、慢性抗体関連拒絶反応であった。ロキサデュスタット開始時のHbは全例10g/dL以下であり、推奨用量での切り替えによりHb低下例はみとめなかったが、Hb10g/dLを目安に調整したところ、2例で増量を要した。開始前1年間と開始後3カ月間のHb中央値の比較では、3例で増加を認め、全例でHbの変動が減少した。また、観察期間中に有害事象は認めなかった。結語:少数例のため、今後も検討を要すが、腎移植患者におけるESA製剤によるコントロール不良な貧血に対してロキサデュスタットが有用である可能性が示唆された。

  • 佐藤 優, 野口 浩司, 目井 孝典, 加来 啓三, 岡部 安博, 中村 雅史
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s326
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】近年、腎性貧血に対して低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬が使用されている。HIF-PH阻害薬はエリスロポエチン産生を誘導するだけでなく、様々なHIF-1α標的遺伝子を活性化することで腎保護作用を示すとの報告もあるが、腎移植患者への使用に関する報告はほとんどない。

    【対象と方法】2019年6月から2021年4月までに当科で生体腎移植術を施行した18歳以上の患者のうち、タクロリムスおよびミコフェノール酸モフェチルを用いて免疫抑制剤の導入を行った患者を対象とした。周術期にDaprodustatを内服開始した群(Daprodustat群)と開始しなかった群(対照群)とで、傾向スコアマッチング法を用いて術後2週間の周術期アウトカムを比較した。Hb値、eGFRの変化の比較には反復測定分散分析を用いた。

    【結果】対象患者はDaprodustat群12例、対照群73例で、傾向スコアマッチング後はDaprodustat群12例、対照群12例となった。術前から術後2週間でのHb値は2群間で有意差はなかった。術前から術後2週間のeGFRの平均値はDaprodustat群で有意に高い結果となった(p=0.035)。周術期合併症(Clavien-Dindo分類≧III)やグラフト機能発現遅延の発症率に有意差はなかった。

    【結論】生体腎移植周術期に、Daprodustat阻害薬は安全に使用でき、またグラフト腎機能発現に関して有利である可能性が示唆された。

  • 瓜生原 葉子, 荒木 尚
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s327
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】2019年4月より中学校の道徳が教科化され,7社の教科書に「生命の尊重」の題材として臓器移植が掲載された。そこで,教員が円滑に授業を実施できる環境整備が必要と考えられる。本研究の目的は,授業の実施状況と環境整備に対する要望の把握である。【方法】6都道府県全中学校1,461校の道徳推進教師宛にDMを送り,書面中のリンクからweb調査に回答していただいた。調査項目は,使用教科書の出版社名,授業実施状況,授業実施までの準備,使用した資材,授業の工夫,websiteに関する要望,実施満足度,今後の実施意向などであった。【結果と考察】364校からの回答を得た。授業実施率は2019年度56.4%,2020年度は60.7%であった。授業準備について,68.8%が大変であったと回答し,補助資材の要望は82.8%であった。使用した資材は,教科書会社の資料とインターネット検索資料が多かった。情報の精査についての戸惑いがあり,情報を一元化したwebsiteの必要性が確認された。研究班で構築したwebsite「生命の尊さを伝える広場」への使用意向は99.1%であった。授業実施の満足度は91.0%,次年度実施意向は90.1%と高かった。授業実践動画の掲載などwebsiteの内容を充実させ,周知させることで,より多くの教諭の準備負担が軽減され,実施率が上がることが示唆された。

  • 佐川 美里, 田村 智, 高橋 恵, 関 一馬, 上村 由似, 片岡 祐一, 吉田 一成
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s328
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】ICUにおいて脳死ドナーの発生は希少であり、その家族へのケアは手探りであることが多い。今回臓器提供から約1年後に、ドナー家族とともに入院から退院後の思いを振り返る機会を得た。【目的】ドナー家族の心情に寄り添ったケアへの示唆を得る。【方法】事例研究。JOTを介してドナー家族と病院スタッフでWEB面談を実施。面談記録から家族の入院から退院後の心情変化、有効であったケアを考察する。【事例】A氏壮年期男性、脳血管障害。入院後、妻より臓器提供の質問があり概要とその機会について説明。3病日、妻が本人の意思表示を発見し、14病日に脳死下臓器提供となった。【医療者の対応と家族の心情】1.入院中のケア:病状説明について、「治療の限界への変わらないスタンスがありがたかった」と表出し、家族ケアでは「家族それぞれに向き合ってもらえた」と振り返った。2.終末期の情報提供:医療者は悲嘆する家族に対し、臓器提供の選択肢の説明に躊躇したが、家族は「違う病院だったら臓器提供の選択肢もなく、亡くなるのを見送るだけだったかもしれない。A病院に来て、臓器提供できたことは意味があった。」と表出された。【結論】ドナー家族とともに入院から退院後の家族の思い・医療者の対応とケアを振り返ったことで、家族の揺れ動く心情に合わせた真摯なケアの重要性を再認識した。医療者の連携した関わりは、家族の満足度が高まることが示唆された。

  • 宮島 由佳, 纐纈 一枝, 髙木 友貴, 岩崎 有杜, 剣持 敬
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s329
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院は2021年5月までに、260件の臓器提供の実績を有する。コロナ禍においても2件の脳死下臓器提供を行った。院内コーディネーター(以下院内Co)の役割として、職員に対する臓器提供、臓器移植の普及・啓発がある。院内啓発活動としてはシミュレーションや勉強会等があり、職員の理解を深めるために重要である。今回、当院の臓器提供についての勉強会とシミュレーションにつき報告し、その効果について検討した。

    【方法】2019年4月~2020年3月に「臓器提供」、「家族面談」、「法的脳死判定」、「小児の臓器提供」の4つのテーマにわけて勉強会、シミュレーションを開催した。

    【結果・考察】4回で計104名の参加があった。開催後アンケートでは参加者の臓器提供への理解度が深まり、救命救急センターの看護師から院内Coへのポテンシャルドナー(以下PD)の連絡数が、2019年度7件に対し2020年度は29件と大幅に増加した。さらに、シミュレーションへの参加をきっかけに臓器提供や院内Co活動に興味をもち、2021年度より院内Coとして活動を始める看護師もいた。

    【まとめ】院内普及啓発活動の結果、院内CoへのPDの連絡数の増加がみられた。臓器・組織提供では多職種での連携が必要であるが、職員の異動等により臓器提供経験が少ない職員も増えることが考えられる。そのため、今後も定期的に開催する必要があると考える。

  • 田村 智, 高橋 恵, 関 一馬, 上村 由似, 佐川 美里, 吉田 一成, 片岡 祐一, 浅利 靖
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s330
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】諸外国では脳死の可能性がある患者(PD:possibleドナー)が搬送された段階から臓器移植専門のスタッフが介入する例がある。来院時に自動的にPDを抽出した場合、どの程度が脳死前提条件を満たすのか検討する。

    【方法】2018~2020年に当院救命センターに搬送された患者のうち、来院時の情報からPDの条件(JCS100以上の脳血管障害または頭部外傷、院外心肺停止)を満たした75歳以下の患者を対象とする後方視的観察研究。PDから、①脳死前提条件を満たし、②脳死とされうる状態と診断され、③オプション提示を受け、④臓器を提供した患者のそれぞれの割合を検討した。

    【結果】対象は591例で原因疾患は、脳血管障害296例(50%)、心肺停止後196例(33%)、頭部外傷99例(17%)であった。脳死の前提条件を満たした症例は86例(14%)、脳死とされうる状態と診断されたのは17例(2.9%)、オプション提示を受けたのは23例(3.9%)、臓器を提供した患者は6例(1.0%)であった。疾患別では、脳血管障害は①8.8%、②2.4%、③4.7%、④1.0%で、心肺停止後は①30%、②5.0%、③4.1%、④1.5%、頭部外傷は①10%、②0%、③10%、④0%であった。

    【結語】来院時にPDを抽出した場合、14%が脳死の前提条件を満たすが、その後オプション提示まで至る例は少ない。しかしながらオプション提示後は3割が臓器提供をしており、そこに至るまでの原因を明らかにすることで提供例の増加につながる可能性がある。

  • 荒巻 和代, 塚本 篤, 古川 みゆき, 片原 美香, 青柳 武史, 谷口 雅彦, 島 弘志
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s331
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    背景:当院は、救命救急センターとして過去に4例の脳死下臓器提供を経験した。臓器提供は救急・集中治療における終末期医療の選択肢の一つであるが、チーム一丸となった懸命な治療と共に、家族に寄り添った支援や説明が重要であり、そのために職員の理解は必須である。

    目的:当院職員の終末期医療と移植医療に関する意識調査を行った。

    対象と方法:全職員2399名を対象に、院内電子版で、単一或いは多肢選択型の質問からなる無記名アンケート調査を行なった。

    結果:職員の7割弱(医師5割、看護師6割、他医療職7割、事務職9割)が回答。終末期医療はほぼ全員が認識していた。全体の2/3が、自身の終末期医療を考えていたが、意思を回りに伝えたのは1/4に過ぎなかった。医師・看護師の1/4、他職種の1/2は考えていなかった。臓器移植もほぼ全員が認識していた。移植は脳死(4割)、心停止後(3割)、生体(2割)の順に望ましいとしたが、1割弱は反対であった。免許証や保険証の意思表示欄は全員が知っていたが、意思表示しているものは全体の1/4に過ぎなかった。「脳死は人の死か」の質問に、4割(医師8割)は肯定、4割は否定、2割は分からないと答えた。両テーマについての院内勉強会を職員の6割が希望した。

    結論:終末期医療も移植医療もほとんどが認識しているが、意思表示はそれぞれ全体の1/4 に過ぎなかった。更なる理解を得るために関連部署と連携した啓発活動が必要である。

  • 加藤 櫻子, 纐纈 一枝, 宮島 由佳, 吉川 充史, 明石 優美, 剣持 敬
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s332
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    (はじめに)当院は多くの臓器提供実績を活かし、拠点施設として4連携施設と共に、臓器提供施設連携体制構築事業(2019~2021年度)を実施したので報告する。

    (目的・方法)本事業の目的は、臓器提供に関する地域における教育体制構築と臓器提供事例発生時の連携施設への支援体制構築にある。当院は、月1回の定例会議を軸に、研修会、講演会、シミュレーションなどを企画、連携施設の教育体制構築を支援し、拠点施設の提供事例発生時には、見学受け入れを行い、連携施設の事例発生時にはコーディネーターの派遣などを行った。さらに、毎月死亡患者の調査を行い、連携施設の提供への認識を高めた。

    (結果・考察)本事業実施で各施設職員の臓器提供への意識が高まり、連帯感が生まれた。2019年度活動実績より、2020年度3例の脳死下臓器提供(拠点2例、連携1例)、心停止下1例(拠点)の実績を上げた。2021年4月にも連携施設から脳死下臓器提供があり、拠点施設よりコーディネーター、摘出医師を派遣、臓器提供のプロセスすべてを支援した。また愛知県の臓器提供数は2019年全国3位、2020年は第1位であった。

    (まとめ)本邦の臓器提供数増加のためには地域での臓器提供推進の取り組みが必須である。本事業は、現場レベルでの連携構築が可能で、臓器提供という結果につながりやすく、今後は各地域で連携を構築することで全国の臓器提供数増加が期待される。

  • 川﨑 剛, 鈴木 秀海, 鈴木 拓児, 吉野 一郎
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s333
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    本邦の肺移植実施件数は、2010年の改正臓器移植法の施行後、増加傾向にある。難治性呼吸器疾患患者にとって、肺移植は予後を大きく改善しうる貴重な医療であり、肺移植後の良好な予後には細やかな全身管理が不可欠である。肺移植後の長期管理中には、慢性拒絶、感染症、悪性腫瘍をはじめとする免疫調節にともなう合併症をはじめ、日常的に生じる一般的かつ多様な合併症についても包括的に管理する必要がある。

    肺移植後の慢性期全身管理における医療体制の問題点として、移植医療という特殊性から、肺移植後患者の診療に対応しうる医療施設や医師が限られている点がある。海外では移植内科医を含めた移植医療体制が整っている国もあるが、本邦では肺移植医療への呼吸器内科医の関与が乏しく、呼吸器外科医が中心となって対応している。本邦の肺移植実施件数をさらに増加させ、肺移植医療の発展を円滑に促進させるためには、呼吸器内科医が肺移植に関する知識および経験を共有し、呼吸器外科医とともに肺移植診療に従事する体制の構築が重要である。

    当院では肺移植の適応評価を呼吸器内科医が窓口となって実施しており、肺移植後の全身管理についても、呼吸器外科と呼吸器内科が交互に外来診療を担当するなど、肺移植診療における呼吸器内科医の積極的な関与を進めている。

    当院の取り組みを例に、肺移植後の慢性期全身管理における呼吸器内科医の連携の在り方と展望について検討したい。

  • 宮原 聡, 西野 菜々子, 緑川 健介, 阿部 創世, 岩中 剛, 上田 雄一郎, 早稲田 龍一, 白石 武史, 佐藤 寿彦
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s334
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    移植後の消化器合併症は時に原因究明と治療に難渋する。当科で経験した、肺移植後の重篤な消化器合併症5例を報告する。

    症例1は60歳男性、移植後14日目。胸痛と呼吸苦が出現し、完全房室ブロック、ST上昇から冠攣縮性狭心症と診断、直後に胸腔ドレーン刺入部から腸液の漏出を認め、緊急手術で十二指腸潰瘍穿孔が確認された。症例2は60歳男性、移植後1年半。心窩部痛を主訴とし多発潰瘍を認めた。PPI増量中に急性拒絶を発症しステロイドパルスを行った3週間後に潰瘍出血を認め、CMV胃腸炎と診断。症例3は60歳男性、移植後4年7か月。右下腹部痛を訴え虫垂炎の診断で抗生剤加療を行ったが、すぐに症状再燃し緊急手術を行った。腫大した虫垂と腹腔内リンパ節の腫大からPTLDと診断された。症例4は54歳女性、移植後3年。慢性腎不全で外来通院中に下血を来たし、回腸末端の潰瘍性病変を認めケイキサレート内服による粘膜障害が判明した。症例5は53歳男性、移植後4か月。急性拒絶反応に対してステロイドパルス中に季肋部疼痛が出現し、free airを認め緊急手術となった。横行結腸憩室穿孔が認められ人工肛門増設で減圧を行った。1週間後の注腸造影で上行結腸の造影剤の漏出が認められ、右結腸切除を行い多数の憩室と穿孔を確認、ムーコル感染による腸管穿孔と診断された。感染症による消化器合併症は特に劇症であり致死的である可能性が示唆された。

  • 前田 寿美子, 荒木 修, 井上 尚, 菅沼 良恵, 東郷 威男, 梅田 翔太, 森園 翔一朗, 矢﨑 裕紀, 眞柄 和史, 千田 雅之
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s335
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    固形臓器移植後の慢性期には、固形臓器および造血器悪性腫瘍の発生リスクが上昇することが知られている。

    当施設では2021年6月までに脳死肺移植18例、生体肺移植3例を実施した。このうち3例にのべ4件の悪性腫瘍が発生した。

    (症例1)移植時58歳男性。原疾患:特発性間質性肺炎。移植後31か月に左下葉肺癌(扁平上皮癌)に対して左下葉切除術、縦隔リンパ節郭清術施行。移植後56か月に左上葉肺癌(小細胞肺癌)に対して左残肺摘除術施行。移植後67か月に骨転移で小細胞肺癌が再発。外照射に加え、化学療法(CBDCA+VP16)4コース実施。refractory relapse(左胸膜播種)に対し、現在AMRによる2次治療中。(症例2)移植時58歳男性。原疾患:特発性間質性肺炎。移植後10か月に汎血球減少。移植後15か月にMDS-EB1の診断。アザシチジンでの治療を受けるが急性骨髄性白血病に転化し、移植後22か月で死亡。(症例3)移植時40歳男性。原疾患:その他の間質性肺炎。移植後47か月で右頬部に有棘細胞癌が発生。地元かかりつけ病院皮膚科で手術。現在無再発で経過観察中。

    肺移植後慢性期に発生する悪性腫瘍は、発生母地の多様性や進行の速さ、使用薬剤による副作用などから早期に発見しづらい環境にある。また、肺移植後の臓器機能が不十分な場合、悪性腫瘍の治療にとってリスク因子や障壁となる可能性がある。当施設の経験例について共有し、診断経緯や治療に関する課題について報告する。

  • 富岡 泰章, 杉本 誠一郎, 川名 伸一, 久保 友次郎, 清水 大, 松原 慧, 田中 真, 枝園 和彦, 諏澤 憲, 三好 健太郎, 山 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s336
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】移植後の腎機能障害は死亡リスクの上昇につながる遠隔期の主要な合併症であり,肺移植後10年で約10%が血液透析や腎移植に至る.血液透析が長期予後に与える影響は明らかでないため,肺移植後に血液透析導入に至った症例について後方視的に検討した.

    【対象と方法】1998年1月~2020年1月に当院で肺移植を受けた患者で,2021年3月まで追跡した.全生存率,慢性移植肺機能不全(CLAD)無病生存率および血液透析導入後の転帰を含む臨床学的因子を検討した.

    【結果】肺移植を受けた204例のうち15例で血液透析が導入され,術後1年以上生存した症例の8.1%を占めていた.観察期間の中央値は14.2年(四分位範囲11.2-18.2年)で,観察期間中にCLADを9例で発症,6例が死亡した.死因は5例が感染症であった.肺移植の適応疾患は肺高血圧症が5例(33.3%),リンパ脈管筋腫症が4例(26.7%),間質性肺炎が2例(13.3%),GVHDが1例(6.7%),その他が3例(20%)であった.年齢の中央値は32歳で,当院の肺移植後長期生存者における割合と同様,女性,生体肺移植,両肺移植の割合が高かった.血液透析の導入は,9例が予定,6例が緊急であった.10年全生存率,10年CLAD無病生存率はそれぞれ79%,57%であった.透析導入までの中央値は11.5年で,透析導入後の5年全生存率は53.3%であった.15例のうち2例で生体腎移植を施行した.

    【結語】肺移植後の慢性腎臓病に対しても血液透析導入により長期生存が望まれる.

  • 栢分 秀直, 田中 里奈, 山田 義人, 豊 洋次郎, 大角 明宏, 中島 大輔, 濱路 政嗣, 長尾 美紀, 伊達 洋至
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s337
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】サイトメガロウイルス(CMV)は肺移植後の予後や慢性移植肺機能不全発症リスクなどに影響を与えうることが知られており、肺移植後の感染症の中でも重要な病原体の一つである。今回我々は当科で施行した肺移植症例におけるCMV感染の頻度や治療等を後方視的に検討した。【対象】2008年から2019年までに当科で施行された肺移植症例227例(生体肺移植92例、脳死肺移植135例)。なお当科のCMV対策に関しては、主として1年間、Valganciclovirによる予防治療を行っている。【結果】肺移植後にCMV感染を来したのは63例(27.8%)であり、CMV感染までの期間は中央値で208日(6-2566日)であった。63例のうち、CMV抗体がドナー陽性でレシピエント陰性のミスマッチ症例が17例(27.0%)を占めた。CMV抗原血症のみを来した症例は51例であった一方で、臓器症状を伴うCMV感染症は12例であり、その内訳はCMV肺炎が4例、CMV腸炎が4例、CMV胃潰瘍が3例、CMV網膜炎が1例、CMV肝炎が1例(重複あり)であった。治療は主にGanciclovir(GCV)の点滴による治療が行われたが、GCV耐性が疑われた5例では、Foscarnetに変更して治療が行われた。【結語】肺移植後のCMV感染は比較的頻度が高く、また予防治療終了後の移植後慢性期にも生じうるため、継続的なモニタリングと適切な治療介入が重要である。

  • 平間 崇, 秋場 美紀, 春藤 裕樹, 渡邉 龍秋, 渡辺 有為, 大石 久, 新井川 弘道, 岡田 克典
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s338
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    肺移植は、他に有効な治療がない進行した呼吸器疾患を有する患者において、生活の質を高めかつ生存期間を延長させることができる唯一の治療法である。気管支拡張症や慢性閉塞性肺疾患は肺移植の適応疾患であるが、これら呼吸器疾患は移植前において肺非結核性抗酸菌症(NTM)合併の危険因子である。2000年~2021年に東北大学で肺移植を施行された140名のうち、NTM肺疾患の既往のある患者は7名(5.0%)いた。一方、肺移植後は生涯にわたり免疫抑制剤を使用するため、術後に肺NTMを合併することも稀ではない。2000年-2021年に東北大学で肺移植を施行された140名のうち、移植後にNTMの検出を認めた患者は21名(15%)、NTM肺疾患を合併した患者は10名(7.1%)いた。移植患者数の増加に伴い、肺移植術前術後の肺NTMについて報告は増えてきているものの、肺移植に関連するガイドラインでどのように介入をされるべきかについては言及するに至っていない。そこで、本シンポジウムでは、最新の知見をもとに肺NTMを含め呼吸器感染症を合併する患者の肺移植登録、待機期間中の対応、また肺NTMを合併する患者の肺移植周術期管理ならびに術後の抗菌化学療法について、海外のNTMガイドライン等を踏まえて解説する。

  • 木下 修, 三瓶 祐次, 長谷川 潔, 小野 稔, 田村 純人
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s339
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    東京大学医学部附属病院では2020年度に脳死下臓器提供に関する手順・マニュアルの見直しを行った。ここで当院組織バンクの組織移植Coが院内ドナーCoとしてポテンシャルドナーが生じた場合の窓口となって支援していく体制となったので紹介する。

    当院は心・肺・肝・腎の移植実施施設であり、心臓弁・血管移植を担う組織バンクも設置している。また、2020年度末までの国内749例の脳死ドナーのうち5例(0.7%)は当院からの提供である。筆頭演者は担当患者の臓器提供の経験があり、心臓移植と心臓弁・血管移植の臨床に従事し移植医療の知識があるため、この見直しのWGに参加した。過去に「どのような患者が組織提供や臓器提供ができる可能性があるのか?」「どのようにオプション提示をしたらよいのか?」「臓器提供・組織提供を進める時の手順は?」といった質問を受けたことがあり、この問題を解消するため移植医療に詳しい組織移植Coを院内ドナーCoとして窓口にすることを提案した。回復の見込みがなく死期が迫っている患者が生じた場合に、どの診療科でも既に施行している検査・診察で判断できるようなフローシートを作成し、心停止後提供あるいは脳死下提供の可能性がある場合に院内ドナーCoへ一報してもらい、その後の手続きを支援することとした。この体制により、これまではオプション提示が検討されず死亡退院となっていた組織と臓器のポテンシャルドナーが増えることを期待している。

  • 小川 真由子, 井浦 裕子, 福嶌 教偉, 福嶌 五月, 井山 なおみ, 江崎 綾奈, 明石 優美, 渡邉 和誉, 剣持 敬, 北村 惣一郎
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s340
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】臓器・組織提供に際しての業務は、第一報受信での情報収集、関係各所との調整、ドナー家族への対応、摘出手術対応等多岐に渡る。特に、膵島提供は腹部臓器提供時にのみ実施されることから、臓器・組織双方における関係機関、ドナーコーディネーター(以下Co.)、医師等の連携が不可欠だが、そのための知識や技術を個々で習得することは困難である。今回、西日本組織移植ネットワーク(事務局:国立循環器病研究センター)において、膵島提供時の連携に主軸をおいたオンライン研修会を実施した(2020年12月)ので、考察含め報告する。

    【研修会参加者】臓器移植Co.23名、組織移植Co.25名、医師22名、等

    【研修会概要】①ドナー管理、②膵島移植概論、③膵島移植・提供の流れ、④膵島提供の流れ(シミュレーション・質疑応答)を取り上げた。④では、段階毎に、状況説明および各関係者がどこで何を実施するのかを共有しつつ、実際の流れ、関係者間の連絡、調整する内容、他機関に求める事項等を確認した。

    【考察】研修会を通じてある程度概要を共有することができた。一方で、各機関の現状、連絡のタイミング、調整する内容などについて共通認識を得るに至っていないという現状も浮き彫りとなり、引き続きCo.勉強会を計画、実施している。関係者全てが互いに“顔の見える関係”であることが連携の第一歩であると考え、今後もそのための土台作りに努めていく。

  • 三瓶 祐次, 山内 治雄, 赤松 延久, 木下 修, 益澤 明広, 本村 昇, 長谷川 潔, 小野 稔, 田村 純人
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s341
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    東日本組織移植ネットワークは2016~2020年の5年間に265件のドナー情報を受信し、77例の組織提供を得た。同期間東日本における腎臓提供数は192例であり主な組織バンクが対応地域としている関東地域に限った場合は115例(日本臓器移植ネットワークHPより)であった。組織提供と臓器提供が連携する機会は多く、ドナー情報受信では75.8%が臓器移植コーディネーター(以下Co.)からの入電であった。また、同期間中ドナー情報の連絡元施設として5件以上の連絡があったのは9施設(98件)、2件以上5件未満の連絡があったのは34施設(95件)と経験施設の連絡が占める割合が多く(72.8%)、提供施設にて組織提供も認知され、相互の連絡体制が定着しつつあることがうかがえた。対して、同期間中ドナー情報より問い合わせのみの24件を除く組織提供に至らなかった164件の検証では、医学的理由(60件)、本人拒否の意思確認や家族辞退(52件)に続き、組織バンク都合による辞退(19件)の占める割合が大きかった。各組織バンクの限定した対応の背景として、長年組織移植Co.の定着率が改善され得ず臓器移植医療に比べ人的資源が脆弱であることが挙げられる。提供体制維持と発展のために各組織バンクの基盤強化と連携の継続が重要であり、制度面の整備が望まれる。また、臓器提供の進展に伴い組織提供の協力が広がる一方で、組織移植への理解は未だ限られ、移植医療の広がりについてさらなる市民啓発が必要である。

  • 明石 優美, 加藤 櫻子, 吉川 充史, 纐纈 一枝, 會田 直弘, 栗原 啓, 伊藤 泰平, 剣持 敬
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s342
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

     臓器提供は臓器移植法下で実施され、JOTにより斡旋が行われるが、組織提供に法律はなく、日本組織移植学会ガイドラインを遵守し、東西組織移植ネットワークに所属する各組織バンクにより行われている。このように法律の有無や斡旋母体の違いにより、承諾書等の書類やコーディネーター(以下Co)が異なる。しかし、提供するドナー・ドナーご家族にとっては、臓器・組織提供の区別はなく、同じ善意に基づく提供は同じである為現場での連携が必要不可欠である。

     当院は、2021年4月までに脳死ドナー12件・心停止ドナー248件、計260件の臓器・組織提供を行ってきた。当院での臓器・組織提供連携の取り組みとして、院内ドナーCoとして組織移植Coを含めた増員を図り、臓器・組織提供一括コーディネーションを実施、また学内の組織移植の啓発・教育を行ってきた。更に、当院は膵島移植施設であり、準備が整い次第全国の膵島提供に対応する。院外での組織提供の啓発も開始しており、JOTCoや都道府県Coとの連携を密に行っているところである。

     院内における臓器・組織移植Coの連携を進める中で、組織提供の認知上昇と、一括コーディネーションによるドナー家族・主治医等の負担軽減が可能となった。臓器・組織提供では、組織間の連携・現場ドナーCo連携が不可欠であるが、院内での取り組みをモデルケースとして、膵島提供における全国対応時にも汎用できる取り組みを検討する。

  • 井山 なおみ, 穴澤 貴行, 伊藤 孝司, 秦 浩一郎, 岡島 英明, 波多野 悦朗
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s343
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    「重症低血糖発作を伴うインスリン依存性糖尿病に対する脳死又は心停止ドナーからの膵島移植」として先進医療Bで実施してきた膵島移植は、2020年4月に保険収載となった。先進医療Bの間には22例のドナーから膵島提供、17例の膵島移植が実施され、保険収載後はCOVID-19感染拡大による臓器提供数の減少の懸念にも関わらず、提供施設等の懸命な尽力により膵島提供についての情報は日本膵・膵島移植研究会事務局で定期的に受信しており、保険診療として臨床膵島移植再開後、1例の膵島移植が実施されている。

    実際、膵島移植で提供されるのは膵臓であり、手術時間・手術創も臓器提供と変わらないが、膵島移植は組織移植の範疇のため、ドナー家族には臓器提供とは別に組織提供のための説明と同意(以下、IC)が必要で、提供施設に対しては施設毎に組織提供のための施設使用許可取得が必須となる。また現時点で腹部臓器提供が行われる際にのみ膵島提供が可能であり、対応する膵島移植Co.(以下、組織Co.)は、日本臓器移植ネットワーク・都道府県Co.(以下、臓器Co.)と可能な限り初動から同じタイミングでコーディネーションを行う事が重要である。膵島提供コーディネーションの症例対応を重ねる中で、情報受信の早期化、臓器提供IC時の組織提供の提示等、臓器Co.・組織Co.間の連携構築が徐々に進んでおり、これまでの取り組みと今後の課題を検討する。

  • 宮城 重人, 戸子台 和哲, 藤尾 淳, 柏舘 俊明, 宮澤 恒持, 佐々木 健吾, 松村 宗幸, 齋藤 純健, 金井 哲史, 亀井 尚, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s345
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
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    背景:切除不能局所進行胆管癌の予後は極めて不良で5年生存は10%台に留まる。米国では移植&集学的治療を行うことで成績が飛躍的に向上する報告がされた。切除不能局所進行胆道癌に日本の御家芸である生体肝移植を開始すれば欧米以上の成績を上げる可能性がある。我々は、当科の肝門部領域胆管癌切除成績と非治癒切除例の成績を生体肝移植の成績と比較し、今後の局所進行胆管癌の肝移植治療への一助としたい。

    方法:2003年以降の肝門部胆管癌脈管非切除221例、動脈合併切除再建21例を対象とし合併症発生率及び成績を比較検討した。更に動脈合併切除例のうち病理学的動脈非浸潤症例と浸潤症例の検討や、胆管断端陰性例R0と陽性例>R1の検討も行い、肝移植成績212例と比較した。

    結果:脈管非切除例:動脈合併切除例の5年生存率は39.5%:46.3%であり、出血量、手術時間、CD3a以上合併症発生率を含め両群間に有意差を認めず動脈合併切除が安全に施行できていることが確認できた。その上で病理学的動脈非浸潤例と浸潤例を比較すると5年生存率は62.5%:33.6%と動脈浸潤例で有意に低値であった(P=0.044)。R0群と>R1群の2年生存率は90.0%:24.0%であった。一方2003年以降の成人生体肝移植の5年生存率は79.0%であった。

    結語:局所進行胆道癌動脈浸潤例や非治癒切除例では生存率が極端に低いことが分かった。切除不能局所進行例に対する肝移植で全肝を摘出すれば、生存率が改善する可能性が示唆された。

  • 原 貴信, 曽山 明彦, 松島 肇, 今村 一歩, 田中 貴之, 松隈 国仁, 足立 智彦, 伊藤 信一郎, 日高 匡章, 金高 賢悟, 江 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s346
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

     肝内胆管癌に対する治療の第一選択は肝切除であるが、肝機能低下、あるいは腫瘍が主要脈管を巻き込んでいる場合は切除不能であり、昨今このような症例に対する肝移植の適応が議論されている。

     2021年に肝移植学会のプロジェクト研究として、本邦の移植後偶発肝内胆管癌(術前画像で指摘不能、あるいは術前に肝細胞癌と診断)19例を報告した(J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2021)。肉眼型は腫瘤形成型7例、胆管浸潤型7例、胆管内発育型3例、不明2例。無再発生存期間は1年79%, 3年45%, 5年45%で、再発は全て3年以内で、全例が死亡していた。全生存率は1年79%, 3年63%, 5年46%で、これは本邦の肝細胞癌に対する移植成績(1年85%, 3年76%, 5年71%)を大きく下回っていた。サブグループ解析では腫瘍径2 cm以上、胆管浸潤型、脈管浸潤陽性例で予後が悪い傾向にあった。

     このように偶発症例であっても肝内胆管癌の移植後成績は満足のいくものではなく、免疫抑制や補助療法の工夫が必須である。患者選択についてはSapisochinらが、偶発肝内胆管癌29例の検討で単発・2 cm以下(n=8)では再発なく5年生存率73%だったと報告している。後の多施設共同研究でも単発・2 cm以下(n=15)では5年生存率65%、累積再発リスク18%であった。現在2 cm以下の肝内胆管癌で肝機能不良症例に対する肝移植の有効性についての前向き研究が進行中であり(NCT02878473)、その結果次第では一つの基準となる可能性がある。

  • 赤松 延久, 市田 晃彦, 長田 梨比人, 石沢 武彰, 有田 淳一, 金子 順一, 長谷川 潔
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s347
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    本邦では肝癌症例に対する肝移植の適応は「Japan基準」、すなわちミラノ基準あるいは5-5-500基準を満たすというdouble eligibility criteriaに拡大された。当院ではTokyo基準(5cm、5個以内)を拡大基準として適応してきた。2020年末までの165例の肝癌に対する生体肝移植において15例(9.1%)の再発を認め、5年生存率、再発率は82%、11%であった。5年再発率を基準ごとにみると、ミラノ基準、5-5-500基準、Tokyo基準、全患者でそれぞれ7.3%、7.1%、8.8%、10.4%であり、いずれの基準でも5年再発率は10%未満である。移植後再発のBiomarkerとして、教室の症例でAFP、AFP-L3分画、DCP、好中球リンパ球比、血小板リンパ球比を検討したところ、AFPのROC曲線下面積が最も大きく(0.852)、次いでL3(0.754)であり、AFPの有用性が確認できた。昨今、ミラノ基準はtoo strictであり、また従来の腫瘍の大きさ個数のみによる適応基準は不適切であるとのconsensusが得られており、腫瘍マーカーを含む肝癌のbiologyを加味した新基準の有用性の報告が多い。Japan基準もこの方向性に合致するものである。肝機能面では、一部のChild A症例やChild B症例で局所治療が不適応もしくは危険な患者においては、肝移植の成績が優ることは明確で有り、今後は、肝機能面での適応拡大が議論の対象と思われる。また再発高リスク群におけるimmunomodulationや補助化学療法の確立も今後の課題である。

  • 林 航輝, 長谷川 康, 八木 洋, 尾原 秀明, 北郷 実, 阿部 雄太, 松原 健太郎, 堀 周太郎, 田中 真之, 中野 容, 高岡 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s348
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【背景】

    肝細胞癌(HCC)を有する肝移植候補患者の選定にはミラノ基準が広く使用されていたが、適応拡大のため最近5-5-500基準が追加された. 一方で移植前治療の有用性は未だ確立されていない. 当施設の治療成績から移植前治療の意義について検証した.

    【方法】

    2000年から2019年に当施設でHCCに対して肝移植を施行した44例を対象として、移植前局所治療の有無, 初診時と移植直前の画像検査および術後最終病理診断においてミラノ基準に合致していたか否かを検証し, 移植後HCC再発の有無および長期予後を解析した.

    【結果】

    44例中31例でHCCに対する局所治療が行われ, 初診時ミラノ基準外11例のうち5例で基準内へのdownstageが得られていた. Downstage症例の5年生存率は手術時ミラノ基準外より有意に良好であった(100% vs 16.7%, p=0.017). Downstage 5例の内訳は、初診時腫瘍数3個以上3例、腫瘍径3cm以上2例で、5例全てで局所焼灼療法と動脈塞栓術の両者が行われていた. 移植直前の画像でCR判定された病変が病理診断でviableであった、あるいは画像上認識されなかったHCCが病理検査で同定されたことにより, 4例が病理学的ミラノ基準外であった(腫瘍数3個以上). 4例中2例は病理学的脈管侵襲も認めたが, 腫瘍径はいずれも基準内であった.

    【結語】

    Downstageが得られた症例は最終病理診断によらず予後良好であり, ミラノ基準外に対する移植前治療は有用な可能性がある.

  • 谷峰 直樹, 大平 真裕, 今岡 祐輝, 佐藤 幸毅, 井出 隆太, 山根 宏明, 橋本 昌和, 黒田 慎太郎, 田原 裕之, 井手 健太郎 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s349
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
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    All Japan dataから提唱された5-5-500基準とミラノ基準(MC)を合わせたJapan基準(JC)が保険収載された。2001年以降のHCC肝移植自験例119例で、JCを逸脱した15例(JC out)は、JCを満たした(JC in)にくらべ、有意に予後不良であった(5yDFS, 14.3% vs 70.0%, p<.0001)。現行のJCは非常に優秀な適応拡大基準であり、この基準を順守することが望ましいと考えられた。

    しかし、JC in症例でも術後病理学的ミラノ基準(pMC)を逸脱する症例(pMC out, n= 42)は、基準内症例(pMC in, n= 62)より有意に予後不良であった(5yDFS, 58% vs 78.1%, p= 0.0368)。術前pMC out 予測因子として、単変量で腫瘍個数, 腫瘍径, 術前治療回数, AFP, PIVKA-IIが、多変量解析でAFP (≥10ng/ml, OR=4.2)とPIVKA-II(≥100AU/ml, OR= 3.8) が独立因子として抽出された。

    当科では進行HCC症例に対し、再発予防目的にドナー肝由来活性化リンパ球を用いた細胞療法を施行してきた。JC inかつpMC out症例で本細胞療法を受けた症例はpMC in 症例と予後同等(n= 17, 5yDFS 70.6%, p= 0.61)、細胞療法を受けなかった症例は有意に予後不良であった(n= 25, 5yDFS 48.9%, p= 0.0074)。

    以上から、JCは優秀な拡大基準だが、予後不良群(pMC out)が存在する。術前因子から適格に予測し、追加戦略を立てることで、JCの拡大基準としての意義をより多くの移植患者にもたらすことができる可能性が示唆された。

  • 吉住 朋晴, 原田 昇, 伊藤 心二, 森田 和豊, 栗原 健, 冨野 高広, 小斎 侑希子, 冨山 貴央, 森永 哲成, 利田 賢哉, 二 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s350
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【はじめに】肝細胞癌(HCC)に対する肝移植の保険適用が新基準(5-5-500内あるいはミラノ基準内)に拡大され、BCLC Intermediate stageでも同基準内であれば、非代償性肝硬変例に対しては保険医療として肝移植の施行が可能となった。【対象】HCCに対して生体肝移植を施行した258例から摘出標本でvp2/vv2以上であった8例を除外した250例。【方法】術前画像診断でIntermediate stage相当(肝機能は考慮しない)のHCCは67例、Early stage HCCは183例。背景因子、移植後成績、予後不良因子を検討した。【結果】移植前治療既往、最終治療から移植までの期間、HCV陽性率、最大腫瘍径、腫瘍個数、腫瘍の局在、移植前AFP値で2群間に差を認めた。Intermediate stage HCCの生体肝移植後5年生存率(%)は69.4%、5年無再発生存率は75.5%でEarly stage HCCの成績と比較し、有意に不良であった(各P<0.0001)。Intermediate stage HCCにおいて、新基準外(ハザード比 3.75、P値0.03)と好中球リンパ球比 > 2.06(ハザード比 4.16、P値0.02)が移植後HCC再発の独立危険因子であった。新基準外(ハザード比 2.31、P値0.008)が独立予後不良因子であった。Intermediate stage HCCかつ新基準内32例の5年生存率は83.2%、5年無再発生存率は92.8%と基準外35例よりも良好であった。【考察】Intermediate stage HCCでも新基準内であれば、生体肝移植の良い適応であることが示唆された。

  • 秦 浩一郎, 伊藤 孝司, 加茂 直子, 福光 剣, 穴澤 貴行, 小木曾 聡, 影山 詔一, 政野 裕紀, 奥村 晋也, 波多野 悦朗
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s351
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    肝細胞癌(HCC)に対する肝移植は、癌と共にその発癌母地自体を健常肝に全置換し得る抜本的治療である。その移植適応は “癌が肝内に限局しているか否か” の見極めに集約される。

    ミラノ基準一強の20年を経て、HCCの形態学的(腫瘍径、個数)な基準は既に出尽くした感があり、近年は腫瘍マーカーによる生物学的悪性度を加味した基準が多数報告されている。更にPET等異なる悪性度評価に加え、NLR、Sarcopenia等患者側因子による成績も複数報告されている。一方で Circulating tumor DNA等のLiquid Biopsyによる臓器/腫瘍横断的な転移診断/予測がOncologyにおけるhot topicであり、現状の形態学+腫瘍マーカーによる適応基準は 今後こうした高精度な診断手法に置き換わっていく可能性もある。

    またSorafenib一強の時代を経て、薬物療法もまた百花繚乱の時代を迎えつつある。Lenvatinib、Atezo+Beva、Cabozantinib等が 肝移植前後のNAC, Down-staging, Adjuvantに用いられ、成績が改善される可能性もあろう。Everolimus導入による再発予防効果も実証されつつある。移植後再発に対する一定以上の治療効果が得られれば、そもそも厳格な適応基準を決める意義も減弱するのかも知れない。更に移植周術期/再発時の免疫チェックポイント阻害剤導入のリスク対効果についても今後の検討課題であろう。

    本演題では、現状のレビューと共に残された課題を抽出し、今後への期待と共に問題提起を試みてみたい。

  • 日比 泰造
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s352
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    序論:Transplant oncologyは移植医学と腫瘍学を融合させることでがんの診療・研究を発展させる概念として本邦より提唱された.(i)集学的治療の進化,(ii)切除限界の拡大,(iii)自己・非自己認識の解明,(iv)がん免疫ゲノミクスによる本態探究の4つの柱のうち,今回(i)に着目し肝細胞癌,肝門部領域胆管癌,転移性肝癌における概念実証を行う.

    本論:肝細胞癌の移植適応のgold standardであるミラノ基準を拡大すべく悪性度を反映した生物学的な予後予測因子が導入され,これに種々の局所治療を組み合わせることで移植成績がさらに向上している.移植の絶対的禁忌だった肉眼的血管侵襲陽性でも厳格な選択基準を用いることで満足すべき長期予後が得られつつある.切除不能な肝門部領域胆管癌に対し米国Mayo Clinicが1990年代に導入した術前化学放射線療法後の肝移植は非悪性疾患の治療成績と遜色なく,2010年より米国では通常の適応のひとつとして認められた.日本でも準備を進めている.切除不能な大腸癌肝転移に対しては2013年にノルウェーOslo大学が肝移植後の5年生存率が60%と良好であることを報告して以来,欧米各国で複数の前向き研究が進行中である.

    結論:Transplant oncologyの概念が導入され,肝胆道領域難治がんの完全治癒を目指すべく技術的な(狭義の)切除可能性""resectability""の議論から、腫瘍学的な(広義の)切除可能性=除去可能性""eliminability""の議論へと意識を変容すべき新たな時代を迎えた.

  • 岩井 友明, 香束 昌宏, 長野 祐樹, 長沼 俊秀, 熊田 憲彦, 武本 佳昭, 内田 潤次
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s353
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    【目的】高用量IVIG療法が抗ドナー抗体陽性腎移植患者の脱感作療法として2019年12月に保険収載され当院でも使用開始しており、その臨床的検討を目的とする。【患者】男2例、女2例の全4例で、年齢は平均48歳(28~70歳)、原疾患は腎硬化症1例、ADPKD1例、不明2例。ドナーは配偶者3例、父1例で、血液型不適合3例、適合1例であった。LCTは全例陰性、FCXM陽性(T,B共)が2例で他2例はflow-PRAのみ陽性。抗HLA抗体同定検査はclassIのみ陽性2例(MFI:13312, 603)、classIIのみ陽性1例(MFI:11436)、共に陽性1例(MFI:classI 1274, classII 706)であった。全例リツキシマブを使用し、TAC3例、CyA1例、血漿交換は2~9回施行した。IVIG(1g/kg)は3回2例、4回2例投与した。【結果】副作用は頭痛3例、消化器症状1例、肝機能障害1例認めた。また、抗血液型抗体価の上昇を1例認めた。FCXM陽性の2例でFCXM-T測定結果は25.3→3.0、2.2→2.1と陰性化はしなかったが(リツキシマブ投与にてFCXM-Bは判定困難)MFIは最大で13312→1795と低下した(IVIGの影響によりMFIが高めの可能性)。全例腎移植を施行した。結果は急性拒絶反応を認めず、CMV抗原血症1例、S-Cre:1.0mg/dl(0,75~1.45mg/dl)であった。【考察】全例で腎移植を行うことができ経過も良好であるが、抗ABO血液型抗体価が上昇した症例があり、また効果判定で難しい点がある事なども経験した。リアルワールドでの使用経験を報告する。

  • 篠田 和伸, 板橋 淑裕, 西川 健太, 櫻林 啓, 米倉 尚志, 小口 英世, 青木 裕次郎, 村松 真樹, 濱崎 祐子, 河村 毅, 宍 ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s354
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    抗ドナーHLA抗体(DSA)は腎移植後抗体関連型拒絶反応発症のリスク因子であり、慎重な治療戦略が必要である。我々は2019年12月までにサイモグロブリン(ATG)導入療法により23例のDSA陽性腎移植を行なった。2019年12月からはIVIGが術前脱感作療法として保険収載されたので、IVIGプロトコールに変更して4例のDSA陽性腎移植を行った(観察期間3~13ヶ月)。ATGプロトコールではリツキサン(100mg´2)、血漿交換(3~4回)の脱感作療法を行い術後にATGを使用したが、IVIGプロトコールではリツキサン、血漿交換に加えIVIG(1~2 g/kg)を術前日に投与した。導入免疫抑制療法はバシリキシマブを用いた。IVIG投与時に副反応は認めなかった。術後3ヶ月時の評価では4/4例でいずれもDSAはMFI<1000に低下していた。移植腎機能は全症例で安定しており3ヶ月生検、1年目生検を施行できた症例では拒絶反応を認めなかった。一方、ATGプロトコールの3ヶ月生検では、56.5%でMVI陽性、および35%でカットオフ値以上のDSAが検出されていた。ATGプロトコールでは術後サイトメガロウィルス感染症は55%(バリキサ予防投与下)であったがIVIGではいずれも認めなかった。IVIG投与は安全に実施でき術後の抗体関連拒絶反応の発症も十分に抑制され、術後感染症のリスクも低く抑えられていた。IVIGの短期成績は非常に良好であった。今後さらなる症例の蓄積が必要である。

  • 堀田 記世彦, 佐々木 元, 田邉 起, 高本 大路, 高田 祐輔, 岩原 直也, 篠原 信雄
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s355
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    海外では抗ドナー抗体陽性腎移植に対して、高用量IVIgを使用した脱感作療法の有用性が報告されていたが、本邦でも漸く2019年に高用量IVIgの「抗ドナー抗体陽性腎移植における術前脱感作療法」が保険収載可能になった。多くの施設では高用量IVIgに加え、リツキシマブと血漿交換を併用したプロトコールが行われているが、適応症例、投与量、血漿交換の併用方法などプロトコールは確立していないのが現状である。

    当施設でのCDCクロスマッチ(CDCXM)陰性、フローサイトクロスマッチ(FCXM)陽性例に対する脱感作療法は、血漿交換、リツキシマブ、低用量IVIgを併用で行っていたが、約半数で急性抗体関連型拒絶反応(AAMR)が発症する結果であった。今回、高用量IVIg導入にあたりIVIG投与に伴う心負荷、血栓症、頭痛や肝機能障害などの有害事象のリスクを考慮し、血漿交換と高用量IVIgを交互に計4回行うプロトコールとした。3症例に施行した結果、FCXMの陰転化が達成でき腎移植を施行できた症例が2例で、陰転化できずに移植を断念した症例が1例であった。移植した2症例はAAMRも認めず、3症例とも有害事象は認めなかった。本シンポジウムでは、今後の追加症例の結果も踏まえて当プロトコールの妥当性を検討する。

  • 井手 健太郎, 大平 真裕, 田原 裕之, 谷峰 直樹, 今岡 祐輝, 佐藤 幸毅, 山根 宏昭, 井出 隆太, 築山 尚史, 小野 紘輔, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s356
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

     我々は2009年よりPreformed DSA陽性腎移植症例に対してリツキシマブ・ボルテゾミブを用いた段階的脱感作療法を、当院倫理審査委員会の承認のもと最適医療の観察研究として実施している。この度、段階的脱感作療法の対象外である、低力価Preformed DSA陽性症例に対して、免疫グロブリン静注療法(IVIG)を用いた術前脱感作を経験した。

     症例は50代男性。2型糖尿病と慢性C型肝炎のため近医で加療を受けていたが、糖尿病性腎症の悪化を認めたため、夫婦間先行的腎移植を希望され当院へ紹介となった。CDC-XMはT cell, B cellともに陰性、FCXMもT cellは陰性であったがB cellは陽性、抗HLA抗体特異性同定検査でMFI 1,500のClass II抗体を認めたため、手術1週間前よりタクロリムス、ミコフェノール酸モフェティルの内服を開始、1g/kg IVIGを1回投与、術前DFPPを2回施行し腎移植を行った。術後は特に問題なく、3ヵ月目と1年目のプロトコール腎生検でも異常所見は認めず、現在までPreformed DSAは陰性が維持されている。

     低力価DSA陽性症例に対する術前脱感作の要否について、現時点ではコンセンサスは得られていない。IVIG + DFPPは低力価DSA陽性症例に対する術前脱感作療法の選択肢の1つとして成り得るが、投与回数や投与スケジュールなど、更なる症例の蓄積による検討が必要である。

  • 岡田 学, 友杉 俊英, 二村 健太, 平光 高久, 後藤 憲彦, 一森 敏弘, 鳴海 俊治, 小笠 大紀, 木下 航平, 大原 希代美, ...
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s357
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    抗ドナー抗体(DSA)陽性腎移植後に抗体関連型拒絶(ABMR)を経験することがしばしばある。ABMR発症例の臨床成績はDSA陰性腎移植やABMR非発症例と比較して劣るため、ABMRを予防するための脱感作療法は重大な課題である。

    本邦では、2019年12月にDSA陽性腎移植の脱感作療法として、高用量免疫ブロブリン静注療法(IVIG)が保険適用に追加された。これにより腎移植前IVIGが一般的な治療法となり、その効果が期待される一方で、適切な投与方法や副作用対策などの問題もある。

    当院では保険収載前に4例、保険収載後に6例のDSA陽性腎移植症例に対してIVIGを用いた脱感作を行った。保険収載後、最初のプロトコールでは腎移植手術2週間前からIVIGを合計3g/kg投与していたが、副作用による移植手術の延期やABMRを経験し、移植直前の超高用量IVIG投与が副作用や脱感作の効果の点で不利と考えられた。

    このため現在の脱感作プロトコールでは、IVIG合計4g/kgを、投与間隔を空けて投与している。当院のこれまでのIVIG症例の経過について振り返り、適切な脱感作療法について考察する。

  • 海上 耕平, 古澤 美由紀, 蓑田 亮, 八木澤 隆史, 神澤 太一, 北島 久視子, 尾本 和也, 新田 孝作, 田邉 一成, 石田 英樹
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s358
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    腎移植の普及とともに、夫婦間移植や多次移植などの移植症例も増加しているが、これらのうち抗ドナー特異抗体陽性症例は移植免疫リスクが高く、術後の拒絶反応惹起が懸念される。2019年12月より「抗ドナー抗体陽性腎移植における術前脱感作」が保険収載され、このような移植ハイリスク症例に関しても今後移植施行の増加が予想される。しかし、脱感作プロトコールに関して確立されていない部分も多く、術前および周術期管理や術後拒絶反応などに難渋するケースも少なくない。保険収載後、東京女子医科大学病院では計15例(2021年6月現在)の抗ドナー特異抗体陽性症例に対して免疫グロブリン脱感作治療を行い、腎移植を施行している。当院での生体腎移植脱感作に関してこれまでの経験と併せて報告する。

  • 世良 英子, 大谷 朋仁, 赤澤 康弘, 中本 敬, 戸田 宏一, 宮川 繁, 坂田 泰史
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s424
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    心臓移植は、重症心不全患者の治療選択肢として認知されるようになってきた。本邦における心臓移植は、深刻なドナー不足により待機期間が3年以上と長期化の一途をたどり、待機患者数は年々増加傾向となっている。植込み型左室補助人工心臓(LVAD)は、長期移植待機の橋渡しに重要な役割を果たしている。LVAD装着後の予後に影響する因子として、臓器障害の進行やINTERMACS profile 1やprofile 2の緊急度が高い状態が報告されており、心不全の経過の中でStage Dへの移行を疑い、病状の進行を見極めて、適切なタイミングで移植申請およびLVAD装着を行うことが非常に重要である。

    当院心臓移植適応検討委員会において適応判定を実施した重症心不全症例(282例)において、移植適応検討の時点でVADやIABPなどの補助循環を使用している症例は、経年的に減少を認めている。直近の4年間(2017-2020年)の検討症例において、補助循環使用は87例中17例(19%)で、約30%の症例がStatus 2での適応申請であった。今回、当院における移植適応検討症例レシピエントシートのデータから適応検討に至る経過や申請時の病状を検討し、重症心不全症例における適切なタイミングでの移植適応申請につながる心臓移植非実施施設との連携体制について議論したい。

  • 野本 美智留, 服部 英敏, 菊池 規子, 市原 有起, 斎藤 聡, 新浪 博士, 萩原 誠久, 布田 伸一
    2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s425
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/12
    ジャーナル フリー

    心臓移植待機患者の多くは植込み型補助人工心臓(LVAD)を装着し待機期間を過ごす。LVAD装着の緊急度や他臓器障害、右室機能不全の合併はLVAD植込み後の予後と関連し、INTERMACS Profile 3以上での植込みが望ましい。そのため、紹介施設とLVAD実施施設との間で、心臓移植の可能性がある患者に関しては早期から治療の連携が必要であり、また患者への疾病教育も重要となる。当院では、LAVD植込み後に紹介施設との合同カンファランスで経過の共有をはかり、共通認識を高める試みを行っている。また、患者に対してはwebシステムを用いた多職種による患者教育プログラムにより疾病教育の充実も目指している。更に、心臓移植後は拒絶反応や感染症管理だけでなく、悪性腫瘍や腎障害、移植心冠動脈病変等の遠隔期合併症への内科的管理も必要となる。しかし、本邦での心臓移植施設は小児心臓移植実施施設も含めて11施設と限られている。そのため、心臓移植後患者は遠隔病院への通院を余儀なくされており、移植後管理が可能なTransplant physicianの育成は急務である。当院では、移植後管理においても、緊急対応を要する場合には患者状態を共有し心臓移植非実施施設と共同で治療にあたっている。本セッションでは心臓移植前後における、心臓移植非実施施設との連携に関して当院での取り組みを概説し、今後の課題について検討を行う。

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