顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
51 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特集:植物形態研究の最前線
  • 峰雪 芳宣
    2016 年 51 巻 3 号 p. 139-
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2019/08/27
    ジャーナル フリー
  • 長里 千香子, 寺内 真, 本村 泰三
    2016 年 51 巻 3 号 p. 140-144
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2019/08/27
    ジャーナル フリー

    褐藻類はコンブやワカメなどを含むグループであり,沿岸域において最も大型化する光合成生物である.全ての種が多細胞体制をとり,単列糸状,多列糸状,細胞や組織の分化が見られる複雑な多細胞体をとるものがある.隣接細胞間には原形質連絡と呼ばれる10–20 nmの小さな細胞質トンネル,細胞間連絡が存在している.同じく原形質連絡を有する陸上植物では,細胞質分裂時に形成されることが知られている.褐藻類では細胞質分裂および原形質連絡の出現時期が不明だったことから,電子線トモグラフィー解析を含めた微細構造観察を行った.その結果,中心体から伸びる微小管が交差する領域が細胞質分裂面となり,その予定域にゴルジ小胞と平板小嚢と呼んでいる扁平な膜構造が出現し,それらが融合することで隔壁が細胞膜内部より遠心的に発達し,親細胞壁に到達することが示された.また,原形質連絡は細胞質分裂時に形成されることが確認された.

  • 竹内 美由紀, 峰雪 芳宣
    2016 年 51 巻 3 号 p. 145-149
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2019/08/27
    ジャーナル フリー

    電子線トモグラフィー法は,試料を連続的に傾斜させて透過形電子顕微鏡で撮影を行い,得られた二次元の傾斜画像シリーズから三次元像を再構築する方法である.細胞内微細構造の三次元観察や定量的解析に利用されており,本稿では,細い繊維状の構造物であるアクチン繊維と微小管の細胞内分布やその相互作用の解析に応用した例を紹介する.分裂準備帯は高等植物体細胞分裂のG2期から前期に細胞表層に観察される,微小管が帯状に並んだ構造である.この分裂準備帯の微小管の配向制御にはアクチンが関与していると考えられているが,その機構はわかっていない.アクチンと微小管の相互作用を明らかにする上では,その細胞内での微細構造や配置は重要な情報である.電子線トモグラフィー法を用いた解析により,分裂準備帯の微小管やマイクロフィラメント一本一本を可視化し,これらの位置関係を調べることができた.

  • 坂本 勇貴, 松永 幸大
    2016 年 51 巻 3 号 p. 150-153
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2019/08/27
    ジャーナル フリー

    透明化技術は顕微鏡で試料の深部を観察する際になくてはならない技術である.動物の脳を透明化するための技術“Scale”の開発を皮切りに動物組織に対する透明化技術が劇的に進展した.植物においても複数のグループから蛍光タンパク質の蛍光を保持したまま透明化できる方法が報告されてきたが,どの方法も数日から数週間の時間がかかり,ハイスループットな解析には適していなかった.我々が開発した植物の透明化技術“TOMEI(Transparent plant Organ MEthod for Imaging)”は6時間以内に試料を透明化し,数百マイクロメートルの深部の観察を可能にした.TOMEIを利用することで,シロイヌナズナの葉,蕾,根,根こぶ,イネの葉の深部観察が可能となり,蛍光輝度の定量化も可能であることを示した.

  • 永原 史織, 東山 哲也
    2016 年 51 巻 3 号 p. 154-158
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2019/08/27
    ジャーナル フリー

    被子植物の重複受精では,2つの精細胞が異なる2つの受精相手である卵細胞および中央細胞とそれぞれ融合し,次世代を担う胚およびその栄養組織となる胚乳を形成する.重複受精は,現在陸上において繁栄している被子植物が獲得した受精戦略として興味深いが,その詳細な機構は未だほとんど明らかになっていない.その理由として,重複受精が花器官の中の雌しべの奥深くで行われており,その過程を生きたまま直接観察することが困難であったことが挙げられる.近年,重複受精のライブイメージング技術の開発および様々な細胞操作技術との組み合わせにより,ダイナミックな重複受精の実態が徐々に明らかになりつつある.本稿では,ライブイメージング技術を基盤とした重複受精研究の現状と今後の展開について詳細に議論したい.

解説
  • 渡辺 雅彦
    2016 年 51 巻 3 号 p. 159-164
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2019/08/27
    ジャーナル フリー

    小脳は,様々な知覚と運動機能の統合を行っているが,情報処理のための神経回路は基本的に同一である.我々は,小脳の回路形成・維持・再生におけるグルタミン酸受容体GluD2(GluRδ2)の働きについて,遺伝子欠損マウスを用いて主に形態学的な研究を行ってきた.ここからわかってきたのは,GluD2は,プルキンエ細胞と様々な神経線維の間の接着を強化するということである.さらに平行線維シナプスの接着強化は,代謝型のグルタミン酸受容体mGluR1を活性化することで,生後早期における細胞体からの余剰な登上線維シナプスを除去し,近位樹状突起からの平行線維シナプスを除去する.したがって,GluD2により駆動される平行線維シナプスの構築とそれに伴って駆動されるmGluR1依存的なシナプス刈込みが,このニューロンの2つの回路特性を形作る.

講座
  • 市村 浩一郎, 角田 宗一郎, 坂井 建雄
    2016 年 51 巻 3 号 p. 165-170
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2019/08/27
    ジャーナル フリー

    足細胞は腎糸球体における血液の選択的濾過に必須な上皮細胞であり,複雑な突起構築を有する.足細胞はボウマン腔と呼ばれる腔所に面していることから,走査電顕法によりその立体構造が解析されてきた.しかし,従来の走査電顕法による解析にはいくつかの限界があり,足細胞の正常構造,発生過程,病態変化の三次元的な理解は完全とは言えなかった.私どもはFIB-SEM法を足細胞の三次元構造解析に適用し,従来の方法では解析が困難であった多くの問題を解決できた.本講座では,FIB-SEM法で明らかにできた足細胞の立体構造を,正常状態,発生過程,病態変化という3つの観点から概説したい.

  • 藤田 真, 小瀬 洋一
    2016 年 51 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2019/08/27
    ジャーナル フリー

    電子レンズの設計技術について2回に分けて概説する.前篇(本講座)では光学設計について解説する.電子光学では電磁ポテンシャルが通常光学の屈折率の働きを担う.電子光学設計は実効的な屈折率であるポテンシャルの空間分布をデザインすることと言えるが,そこにはLaplace場という強い制約が課せられる.そのため電子レンズでは収差の影響を抑えるために短焦点距離化という手法がとられてきた.代表的な短焦点距離化の原理について紹介する.また近軸軌道方程式から得られる光学パラメータとエミッタンス図を組み合わせた効率的な光学設計手法について述べる.後篇では低収差レンズの具体的な設計例やその実装に必要な技術についてまとめる予定である.

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