顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
47 巻, 4 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
特集:発生過程における細胞移動のライブイメージング解析
  • 小曽戸 陽一
    2012 年47 巻4 号 p. 185-
    発行日: 2012/12/30
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 有紀
    2012 年47 巻4 号 p. 186-190
    発行日: 2012/12/30
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー

    血管は,生体機能の維持にとって欠くことのできない非常に重要な器官である.胚発生期においても,心血管系は最初に機能を開始し,胚発生の維持に必須の役割を果たす.血管は機能的なネットワークを作りながらも,胚の成長にあわせて走行パターンを変化させていく.筆者は,血管ネットワークがどのような個々の血管内皮細胞の動きによって形成され,またどのようにして胚の成長に対応するのかを解明するため,トランスジェニックウズラTie1:H2B::EYFP胚のタイムラプス観察を行ってきた1).このウズラ胚を用いれば,からだの三次元的構造の中での血管形成の様子をタイムラプス観察できることから,高等脊椎動物の血管イメージングモデルとして今後の貢献が期待される.本稿では,Tie1:H2B::EYFP胚のタイムラプス観察結果をもとに,羊膜類胚において血管形成がどのような血管内皮細胞の挙動によって支えられているのかを紹介する.

  • 野口 立彦
    2012 年47 巻4 号 p. 191-195
    発行日: 2012/12/30
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー

    複数の雄由来の精子が,限られた数の卵を競い合う精子競争においては,相手を打ち負かす様々な精子形態が進化する.ショウジョウバエのある種では,より長い精子を雌が選択してきた結果,体長2 mm程度の雄の精子が6 cmにも達する.D. melanogaster種の精子前駆細胞を初代培養し,ライブ観察する系を利用して,長大な精子の伸長メカニズムについて解析した.この精子伸長は特殊であり,精子運動に必須の鞭毛軸糸ではなく,巨大ミトコンドリアと細胞質微小管が内骨格として細胞伸長を促進することが判明した.巨大ミトコンドリア自身が微小管重合中心として働き,ミトコンドリア周囲の細胞質微小管がモータータンパク質と滑り運動を起し,伸長力を発生する.つまりショウジョウバエの長大な精子形成において,ミトコンドリアは本来の細胞呼吸の場として働くだけではなく,細胞の外形態を決める新たな役割を進化・獲得したと考えられる.

  • 小曽戸 陽一
    2012 年47 巻4 号 p. 196-200
    発行日: 2012/12/30
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー

    近年の光学顕微鏡及び組織培養技術の発展により,生組織内での細胞運動を経時的に観察する研究が盛んになってきた.本稿では,胎生期脳の神経前駆細胞が示す細胞周期依存的な核運動(エレベーター運動)を解析した研究を紹介する.マウス胎児脳組織を用いた定量的タイムラプス測定,シミュレーション解析などにより,G2期にアピカル表層に向かう細胞核移行は微小管細胞骨格の細胞周期依存的な制御が必要な「能動的」運動であることに対し,G1期の逆方向の核移行は組織中の細胞密度勾配に従った「受動的」な運動であることが示された.これにより,エレベーター運動の最大の特徴である「胎生期脳の上皮組織の恒常性」と「個々の細胞運動」との調和が保たれる仕組みを説明する新規メカニズムが,見出された.本稿ではライブイメージング・モデリングの一例として,組織内での細胞運動解析に用いられる手法を紹介し,またそこから得られる新たな細胞運動のコンセプトについても論じていく.

  • 小林 徹也
    2012 年47 巻4 号 p. 201-205
    発行日: 2012/12/30
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー

    イメージング技術の発展により,生命科学の様々な分野において画像や動画が実験の一次データとして得られるようになってきた.しかし多くの場合,画像の評価方法は「見る」という定性的かつ主観的な方法にとどまり,画像が有する定量的情報が最大限に活用できていない.また最近では,データ取得の簡便さから「見る」ことが不可能なほどの多量の画像も生成されている.画像解析に基づく定量的解析や自動的な情報の取捨選択は,今後の生命科学研究において不可欠であり,バイオイメージインフォマティクス分野として台頭しつつある.本総説では,バイオイメージインフォマティクスに関連する背景,基本情報などを豊富な参考文献とともに紹介する.また具体的な画像解析の問題として,核などの粒子オブジェクトの同定,膜などの境界領域の同定,そして分子発現の定量化に関わる画像解析例を紹介する.最後に,今後のこの分野の発展において解決すべき課題を議論する.

解説
  • 上村 想太郎
    2012 年47 巻4 号 p. 206-210
    発行日: 2012/12/30
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー

    近年開発されたZero-Mode Waveguides法と呼ばれる次世代1分子蛍光イメージング技術は従来の全反射型1分子蛍光イメージング法の問題点を克服した.我々はその技術を応用し,tRNA(転移RNA)を蛍光標識することによってタンパク質翻訳系を1分子レベルで再現させ,その結果タンパク質翻訳過程を世界で初めて可視化することに成功した.さらにそのデータを解析することによって従来まで明らかにされてこなかったtRNAのリボソームへの結合・解離のタイミングを解明することができた.また,tRNAの蛍光標識の代わりに翻訳開始因子などを蛍光標識すると翻訳開始過程における翻訳因子の会合の様子を可視化することもできた.これらの結果が示しているように次世代1分子蛍光イメージング手法はあらゆる複雑な分子メカニズムを解明するのに最も適している.

  • 阿部 英司, 石川 亮
    2012 年47 巻4 号 p. 211-215
    発行日: 2012/12/30
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー

    最近,結晶中の軽元素原子を捉える高感度イメージング法として,収差補正後の大角度収束ビームを用いた環状明視野(Annular Bright-Field: ABF)STEM法が注目を集めている.通常のSTEM明視野結像と比較して,ABF結像は極めて高感度であり,結晶中のリチウム原子や水素原子の観察がなされるまでに至っている.本稿ではABF結像の妙味を,TEM法との相反性に基づいて解釈を試みた例を簡潔に述べる.

講座
  • 川瀬 知之, 奥田 一博, 吉江 弘正
    2012 年47 巻4 号 p. 216-222
    発行日: 2012/12/30
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー

    われわれが実施している自家培養骨膜シートをもちいた歯周再生治療は,健康な歯槽骨から採取した骨膜片をシート状になるまで培養し,骨欠損のある部位に移植する治療法である.作製された骨膜シートは,豊富な細胞外基質と重層化した細胞集団が効果的に統合した人工的な組織である.骨原性誘導によって,そこに含まれる細胞のアルカリホスファターゼ活性が大きく亢進し,石灰化物沈着も促進する.これは骨芽細胞系の未分化な細胞が数多く含まれていることを示唆するが,組織特異性幹細胞が含まれる可能性も考えられる.「生きたDDS(Drug Delivery System)」として骨代謝に関与する増殖因子を徐放することと考え合わせると,十分に自家骨の代替となりうるものとして位置付けられる.培養期間の短縮化が最大の課題であるが,培養法の改良やスキャホールドとの複合化などにより解決の方向性が見えてきた.また,同時に検討している高機能化の実現によって,中規模骨欠損にも対応できる移植物への発展性も期待される.

  • ―各種顕微鏡からのアプローチ―
    梅田 誠, 田口 洋一郎
    2012 年47 巻4 号 p. 223-227
    発行日: 2012/12/30
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー

    歯の喪失時の歯科治療の一つとしてインプラント治療があり,それについては約40年前,ブローネマルクが骨とチタンとの結合,すなわちOsseointegrationを提唱して以来,新しい局面を迎えている.最近のインプラントフィクスチャーはチタンの表面性状を様々な方法で制御することによってOsseointegrationをより早期に安定化させる.このことは,臨床上良い初期固定を得られる点で非常に重要である.チタンの表面性状を制御と一言で言っても様々な手法が試されており,細胞接着の観点からの基盤構築はその後の分化に至るまでの細胞挙動に影響を及ぼす.今回,チタン金属表面のナノ構造化など新規の表面性状の制御を検討する上で必要な要素について各種顕微鏡を用いて観察した.

  • 齋藤 晃
    2012 年47 巻4 号 p. 228-237
    発行日: 2012/12/30
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー

    本稿では,電子線エネルギーフィルターをもちいて得た2次元非弾性散乱分布からフェルミレベル近傍の非占有状態の電子軌道の異方性を解析する手法を紹介する.まず,電子軌道の異方性が非弾性散乱図形にどのように現れるかを,グラファイトの|1s⟩→|π*⟩遷移をともなう非弾性散乱図形を例に挙げて解説し,われわれが行っている部分状態密度解析法を紹介する.この手法では,エネルギー損失を変化させながら取得した一連の内殻励起非弾性散乱図形に対して,励起終状態として可能な電子軌道をもとに計算した散乱図形を基底関数として成分分離を行い,部分EELSスペクトルを取得する.最後に,本手法の応用例として,カーボンナノチューブおよび超伝導物質MgB2におけるσ, π成分の部分EELSスペクトルの取得について,および高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8におけるdホールの異方性の解析について紹介する.

最近の研究と技術
  • 及川 義朗
    2012 年47 巻4 号 p. 238-240
    発行日: 2012/12/30
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー

    光学顕微鏡の解像度は光の回折限界によりおよそ200 nmである.近年,この限界を超えるべく新技術が開発され,実際の顕微鏡に適用されて製品となり,超解像顕微鏡と呼ばれている.その一つ「構造化照明法」は,周期構造をもった「縞模様」の照明にすることで,モアレ効果を利用して従来捕らえられなかった回折光を取り込み,解析により超解像画像を得る技術であり,解像度は水平方向,Z軸方向とも従来顕微鏡の約2倍,また時間分解能も1枚1秒程度を実現した.もうひとつの技術「ローカリゼーション法」は,1分子ごとに離散して蛍光を発するように工夫した標本で,1画面あたり100ポイント程度の点の画像をとって重心を記録することを数千回以上繰り返し,点像の集合として超解像画像を生成する方法である.この技術により,空間分解能は水平方向,Z軸方向とも従来顕微鏡の約10倍の解像度を実現した.本稿ではこれらの技術を紹介する.

  • 大島 永康, 鈴木 良一
    2012 年47 巻4 号 p. 241-244
    発行日: 2012/12/30
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー

    産業技術総合研究所では,電子加速器を用いて発生した高強度低速陽電子ビームを短パルス化し,ビーム径を10 mmから30 µm程度に収束して,材料表面近傍の局所的な陽電子寿命を計測する装置“陽電子プローブマイクロアナライザー(PPMA)”を開発した.PPMAは,陽電子の材料への入射位置を3次元的に制御し陽電子寿命マップを得て,原子サイズ欠陥の3次元分布を視覚的に評価することが可能である.

feedback
Top