顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
52 巻, 2 号
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特集:超解像顕微鏡研究の最前線
  • 岡田 康志
    2017 年 52 巻 2 号 p. 61-
    発行日: 2017/08/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー
  • 岡田 康志
    2017 年 52 巻 2 号 p. 62-66
    発行日: 2017/08/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    生きた細胞内の微細構造が動く様子を高分解能で観察するためには,空間分解能と比例して時間分解能を向上させる必要がある.しかし,従来の超解像顕微鏡法においては,時間分解能を犠牲にして空間分解能を向上させるものが多く,生きた細胞の観察には適していなかった.筆者らは,超解像顕微鏡法の一つである構造化照明法の原理が共焦点顕微鏡と類似していることに基づき,共焦点顕微鏡の光学系を用いることで構造化照明法を高速化することに成功した.生細胞観察に広く用いられているスピニングディスク式の共焦点顕微鏡の光学系を利用することで,時間分解能10 ms(100フレーム毎秒),空間分解能約100 nm(回折限界の2倍)が達成され,生きた細胞内での細胞内小器官の微細動態が観察可能となった.

  • 大友 康平, 渡邊 裕貴, 山中 祐実, 後藤 亜衣, 日比 輝正, 根本 知己
    2017 年 52 巻 2 号 p. 67-71
    発行日: 2017/08/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    多光子励起過程を利用したレーザー走査型蛍光顕微鏡(多光子顕微鏡)法は,励起の局所性,低侵襲性,深部到達性という生体内部の微小構造を可視化する上で好ましい特徴を有する.蛍光バイオイメージングに使用する発色団の大半は可視域にスペクトル特性を有するため,本法の励起光には近赤外域で発振するレーザー光源を用いる必要がある.そのため,集光スポットのサイズが波長依存的に大きくなり,一光子励起過程を前提とした共焦点顕微鏡法と比較すると,空間分解能の点で劣る.著者らは多光子顕微鏡法について,超解像顕微鏡法の一つである誘導放出制御(STED)法の適用による空間分解能向上,ニポウディスクを用いた多点走査機構による共焦点効果の適用による時空間分解能の向上に成功したので,可視化事例とともに本稿で紹介する.

  • 玉田 洋介, 早野 裕, 亀井 保博, 服部 雅之
    2017 年 52 巻 2 号 p. 72-76
    発行日: 2017/08/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    超解像イメージングは,光の理論限界を超えた分子スケールの空間分解能で細胞の蛍光観察を行う技術であり,今後の分子生物学研究に必須となってくることが予想される.しかし,生きた細胞や組織の深部で起きる生命現象を観察する場合,超解像性能がうまく発揮できないことが知られている.これは,イメージングに用いる光が,生細胞や組織を通過する際に複雑に乱れることに起因する.この光の乱れの問題を解決し,生細胞や組織の深部でも超解像イメージングを可能にすると期待されているのが,補償光学である.補償光学は天文学において発展した技術であり,地上望遠鏡を用いた天体観測の際に,大気揺らぎによる光の乱れを補正することで,高解像の天体観測を可能にしている.本稿では,補償光学の概要と,補償光学を生細胞や組織のイメージングに適用する研究について紹介するとともに,補償光学を用いた超解像イメージングへの発展について考察する.

  • 和沢 鉄一, 新井 由之, 永井 健治
    2017 年 52 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2017/08/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    SPoD-ExPANは,偏光方向が周期的に回転する照明光を用いた蛍光顕微鏡と画像再構成計算を組み合わせた超解像イメージング技術である.その主たる特徴は,2次元検出器を利用して広視野の画像を取得するためサブ秒以下の時間分解能でイメージングが可能でありながら,100 nm以下の空間分解能を達成している点である.SPoD-ExPANを含む従来の多くの超解像イメージング技術では,0.1 kW/cm2–1 GW/cm2の強い照明光が用いられることから,生細胞に対する光毒性や蛍光プローブの褪色等が問題であった.そこで我々は,近年開発した高速・ポジティブ型光スイッチング蛍光タンパク質KohinoorをSPoD-ExPANと組み合わせることで,~1 W/cm2の非常に弱い照明光強度で観察可能な超解像イメージングを実現し,これらの問題を解決した.本稿では,SPoD-ExPANの原理,実装,そして実施例について報告する.

解説
  • 武藤 俊介, Ján Rusz
    2017 年 52 巻 2 号 p. 82-89
    発行日: 2017/08/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    磁性元素に局在する磁気角運動量(軌道/スピン角運動量)をナノ領域で測定するために,試料を通過する高速電子のエネルギー損失分光(EELS)によって磁気カイラル二色性(MCD)信号を検出する手法をエネルギー損失磁気カイラル二色性(EMCD)測定と呼ぶ.これは左右旋回円偏光X線を用いるX線吸収分光(XAFS)スペクトルの差を取るX線磁気円二色性(XMCD)のEELS版と位置づけられる.2003年にウィーン工科大学のSchattschneiderらによって原理提唱されてから10余年を経た今,理論・実験両面において多様な試行錯誤の後に,今や原子面分解能での磁気信号測定までが可能となり,現実の材料での定量測定応用まであと一歩のところまで進展しつつある.本稿では,本主題の原理的基礎から始め,その後主として我々のグループが携わった成果を中心に,この分野の現在までの発展の経緯と将来展望を解説する.

  • 山元 修
    2017 年 52 巻 2 号 p. 90-97
    発行日: 2017/08/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    皮膚科学分野における電子顕微鏡を用いた研究は1960~70年代にかけて米国のKen Hashimotoらを中心に盛んに行われたが,現在では皮膚科の形態学的研究は免疫組織化学の興隆によりそれにとって代わられた感がある.残念ながら,皮膚科学分野では電子顕微鏡が昔のような勢いを取り戻すことはないかもしれないが,その活躍の場を全く失ったかというと決してそうではない.本稿では電子顕微鏡には現在でも十分活躍できる場があることを,汗孔癌における細胞質内管腔構造,筋線維芽細胞や異型線維黄色腫におけるフィブロネクサス接着装置,脂腺癌における脂質滴,偽血管性有棘細胞癌におけるトノフィラメント,Fabry病における封入体,角化異常症,毛髪異常症を例にあげ,我々の行ってきた研究成果を中心に述べる.さらに,新たに加わった疾患の病態研究や新規開発物質のリスク評価にも応用の場が残っていることを述べる.

講座
  • 佐藤 繭子, 後藤 友美, 豊岡 公徳
    2017 年 52 巻 2 号 p. 98-103
    発行日: 2017/08/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル 認証あり

    植物は,厚い細胞壁や大きな液胞,硬いデンプン顆粒など植物特有の細胞内小器官・細胞構造をもつことから,電子顕微鏡(電顕)観察にあたって,試料調製時に様々な工夫が必要である.本稿では,植物の器官・組織・培養細胞を対象として,免疫電顕観察を行うための固定法から樹脂包埋,超薄切片作製に至るまでの工夫について紹介する.また免疫金染色法に関して,実例を用いて解説する.

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