顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
48 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
特集:細胞骨格イメージング
  • 吉川 雅英
    2013 年 48 巻 2 号 p. 77-
    発行日: 2013/08/30
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル フリー
  • 成田 哲博
    2013 年 48 巻 2 号 p. 78-83
    発行日: 2013/08/30
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル フリー

    近年電子線トモグラフィーにより細胞内構造の可視化が急速に進展している一方で,細胞内蛋白質構造のような微細構造の解析は未だ難しい.主な原因は,1:細胞内構造のS/Nの悪さ,2:ミッシングエッジやミッシングピラミッドなどの,データが存在しない逆空間領域の取り扱いの二つである.筆者らは,細胞の中で膜構造に次いで顕著な構造物である線維状蛋白質構造,特にアクチンフィラメント網構造の解析に的を絞り,共同研究者のJohn Victor Smallらが1の問題を負染色法によって部分的に解決,筆者らが2の問題を回避する方策を考案することによって,ある程度有用な細胞内構造解析技術を構築することができた.本項ではその技術を概説する.

  • 渡邊 直樹, 木内 泰
    2013 年 48 巻 2 号 p. 84-89
    発行日: 2013/08/30
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル フリー

    細胞骨格関連分子の細胞内ダイナミクスを捕捉するうえで,蛍光単分子イメージングは有用な情報を提供する.しかし,直接可視化による高精細な分子動態データが得られても,集団として分子がどのように振る舞うのか直観的に捉えにくいことがある.一方,蛍光消光後回復(FRAP:fluorescence recovery after photobleaching)など分子全体の分布変化を可視化する方法では,時空間分解能の制約が大きいため,分子の細かい動態や異なる動きをする分子種の存在を捉えることが難しく,ときに誤った解釈を与えてしまう.最近,われわれの研究において,FRAPやアクチン単量体濃度を連続的に定量するs-FDAP(sequential-fluorescence decay after photoactivation)法のデータと,蛍光単分子イメージングのデータを同じ条件下で比較することで,アクチン重合・脱重合サイクルのより深い理解につながった経験が得られたので,学術的背景とあわせて紹介する.

  • 釜崎 とも子, 上原 亮太
    2013 年 48 巻 2 号 p. 90-93
    発行日: 2013/08/30
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル フリー

    紡錘体は染色体を正しく二分するための構造である.機能的な紡錘体は,分裂期に微小管が高度に組織化されることにより形成される.これまでに,紡錘体微小管を生成する微小管形成中心として,中心体と染色体が知られてきた.近年,これらに加えて,紡錘体内部の微小管自身も,紡錘体微小管の生成・増幅に重要であることが分かってきた.このような微小管依存的微小管生成過程で中心的な役割を果たすのが“オーグミン複合体”である.我々はごく最近,ヒト紡錘体を電子線トモグラフィーおよび三次元モデリングにより解析した.その結果,オーグミン依存的な新規微細構造“エンドリンク”を介して微小管の枝分かれが形成されていることを突き止め,紡錘体における微小管依存的微小管生成過程に関する重要な知見を得た.

  • ―電子顕微鏡から細胞生物学まで―
    小田 賢幸, 吉川 雅英
    2013 年 48 巻 2 号 p. 94-99
    発行日: 2013/08/30
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル フリー

    鞭毛は多くの真核生物が持つ精巧な細胞小器官である.鞭毛の動きは多くの鞭毛タンパク質によって制御されているが,その複雑な機構は個々の分子を機能解析しただけでは捉えることができなかった.緑藻のクラミドモナスは長きに渡る研究の積み重ねにより,生化学,遺伝学,細胞生物学および構造生物学的手法によって鞭毛運動を追究することができる稀有なモデル生物である.私たちはこのクラミドモナスを用いて,鞭毛運動を駆動する分子モーターであるダイニンの制御機構を明らかにした.

解説
  • 桑畑 進
    2013 年 48 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 2013/08/30
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル フリー

    常温でも液体状態であるイオン液体は,蒸気圧が極めて小さく真空下でも蒸発しない.これを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると帯電せずに観察できるという筆者の発見より,イオン液体を液状の導電付与剤に用いる提案を行っている.柔らかく複雑な表面構造を有する,あるいは乾燥すると変形する生体材料等への適用は非常に効果的であり,液状ゆえに微小な箇所まで液体が広がり,さらに試料中にも入り込むことによって,少量で帯電を完全に防ぐことが可能である.また透過型電子顕微鏡(TEM)観察の場合,TEMグリッドにイオン液体の液膜を作製し,その中に試料が存在させれば試料の形状を崩すことなく観察が可能となる.さらにイオン液体中で化学反応を行い,その反応を電子顕微鏡,あるいはEDXでin situ観察することができる.例えば金属の電解析出のその場観察や,電気化学反応に伴うイオン濃度の変化等を調査してきた.

  • 海老原 達彦, 村井 稔幸, 西山 英利, 佐藤 真理, 須賀 三雄, 佐藤 主税
    2013 年 48 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2013/08/30
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル フリー

    タンパク質の細胞内分布は高度に制御され,刺激に応じてダイナミックに変化する.免疫電顕法はタンパク質の精妙な細胞内配置による機能の解明に貢献してきた.膜タンパク質が,刺激後に細胞内膜から細胞膜へ数秒以内に移動する例などが近年多く見つかってきており,多要素の変化を時間経過とともに解析する必要が増してきている.すなわち,従来よりも迅速な試料作製と観察が可能な,いわゆる高スループットな電子顕微鏡が求められている.大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)は,培養ディッシュ内の水溶液中試料をディッシュ底の電子線透過薄膜越しに倒立走査電顕で観察する新しいタイプの電顕である.試料は脱水処理なしに,蛍光抗体法と同様に手早く作製できる.しかも細胞や組織の抗原分布は薄膜から2~3 μmの厚さで観察可能である.さらに上方の光顕による蛍光像との対比によって,タンパク質複合体の形成など多分子相関の詳細な観察を実現している.

講座
  • 髙橋 伸育, 豊嶋 典世, 澤口 朗
    2013 年 48 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 2013/08/30
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル フリー

    スライドガラス上に貼付した準超薄切片やカバーガラス上に培養された培養細胞を電子顕微鏡で観察する場合,これらの観察試料を樹脂に包埋して超薄切する必要がある.従来法の1つに,樹脂を充填した包埋カプセルを試料の上から被せて包埋する方法があるが,包埋カプセルとガラス面が接着していないため,樹脂の漏出や重合過程でカプセルが横滑りする問題があった,特に免疫電顕用の低粘性樹脂は軽微な振動でも漏出しやすく応用が困難を極めた.

    これらの問題を解決するため,包埋カプセルとガラス面を接着させる「包埋カプセル補助ツール」を独自に作製し,簡便かつ確実な電顕試料作製法を開発した.本法により,一般的なエポキシ樹脂のみならず低粘性メタクリル樹脂の包埋において目的部位をピンポイントで透過電顕観察することが容易になり,医学生物学研究における電子顕微鏡の応用が広がるものと期待される.

  • 藤田 大介
    2013 年 48 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 2013/08/30
    公開日: 2019/09/10
    ジャーナル フリー

    表面におけるアクティブナノ計測技術として,超高真空場,昇温場かつ外部から印加された応力・歪み場における原子分解能の二探針走査型プローブ顕微鏡を開発した.外部からの応力場印加は,短冊状試料に対して石英の楔形ジグにて中央部分に上方変位を与えることにより実現し,一軸性の引張応力を試料表面に発生させることができる.また,試料の昇温制御により,降伏限界以下で弾性的な歪を与えることができる.STMモードでの昇温かつ応力印加時における原子分解能イメージングを初めて実現した.さらに,自己検出カンチレバーセンサーを用いた周波数変調方式の非接触原子間力顕微鏡モードによる原子分解能計測を実現した.応用としては,Si(001)表面構造における一軸性引張応力の効果により,ダブルドメイン構造におけるドメイン被覆率制御の実現とともにダイナミクスを明らかにした.

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