野菜土壌病害の発生実態調査を進める過程において,1984年,熊本県下に,Aphanomyces raphaniに起因される
ハクサイ根くびれ病が,とくに7月下旬~8月中旬に播種された早出し栽培を主体に多発しているのを発見した。しかし,これらの多発圃場であっても,1985年及び1986年には本病の発生はほとんど認められなかった。そこで,これらの圃場の土壌中における病原の存否を調査した結果,1984年に本病が発生し病原を検出した圃場のほぼ全部に,本病病原を検出した。これらの中には,1984年の本病多発後,春作にスイカ,夏~秋作に陸稲が栽培され年間を通じてハクサイ等のアブラナ科植物が栽培されなかった圃場も含まれる。しかし,一般に秋作ハクサイが栽培された圃場が,本病無発生であっても病原菌の検出率は高い傾向を示した。1984年に病原を検出しなかった圃場では,その後の2年を通じて本病原は検出されなかった。
本病原に感染したハクサイは,幼苗時には立枯れ症状を成長後には根くびれ症状を発現するが,この2症状型では前者の発現比率が著しく高いことが明らかになり,これによる本病の潜在的な被害が多いことをうかがわせた。
ハクサイ根くびれ病の発生を支配する環境条件を解明する手段として,本病の発生と土壌温度並びに土壌水分との関係について調査した。その結果,本病の発生は多湿区(目標pF1.8)の25°~30℃の高温区に多く15°区にはみられなかった。乾燥区の発病は低率であった。
以上の結果から,本病が一亘多発した圃場では,病原が土壌中に長く残存し,ある年次に発病好適条件が充足された時に多発生すると推察された。
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