我が国では少なくとも10種のContarirnia属に属するタマバエの分布が確認されており(YUKAWA,1971;YUKAWA, unpublished),世界では100以上の種が知られている。それらは形態上相互に極めて類似しており,これまで種の分類は,主として,寄主植物の違いに基づいて行われてきた。しかし,成虫の刺毛数や形態計測の詳細なデーターに基づいて,これらの種を分類しようという試み(HARRIS,1966)もなされ,一定の成果が得られている。そこで筆者は,ソルガム類(Sorghuyn spp.)の穂を加害するソルガムタマバエ(=ソルゴータマバエ),Contarinia sorghicola(COQUILLETT,1899)の同定を容易にするために,また,同じイネ科植物を寄主とする近縁の2種,ムギクロタマバエ,Contarinia sp.(湯浅,1937;筒井,1956)とヒエタマバエ,Contarinia sp.(仮称,種名未決定)との区別点を明らかにするために,これら3種の刺毛数を数え,形態を計測した。
ソルガムタマバエは世界各地に広く分布しており(HARRIS,1970),我が国にも分布していることがすでに報告されている(湯川・田中,1976)。しかし,我が国におけるソルガムタマバエの生活史や寄主植物の範囲などについては詳しく調べられておらず,今後,本種の生態学的な特質を明らかにしていくためにも,本種と近縁種との形態上の区別点を明瞭にする必要があろう。
本文に入るに先だち,材料を採集して下さった鹿児島県農業試験場の田中章氏と当時,宮崎大学農学部に在学中であった小出聖氏,ならびにムギクロタマバエの標本調査に御助力頂いた農業技術研究所の福原楢男氏に厚く御礼を申し上げる。
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