全熔着鐡試驗に於ける試驗片の製作に於ては,比較的薄い板に多くのビードを重ねて置くため相當烈しい歪を生する.此の歪を豫防する手段としては種々あると思ふが,比較的簡單で,容易に實行出來る方法としては,試驗片を緊結して歪の發生を全く拘束する方法と,今一つは豫め反野に歪を與へて置き熔接を重ねるに從つて,その恢復を計り熔接完了と共に正常に戻らせる方法の二つを擧げる事が出來る.前者(拘束法)はその製作に當つては餘り問題はないが,後者(逆歪法)の場合にはその恢復する角度の量が判らぬと豫め與へる逆歪をどの位としてよいか見當がつかない.又歪を拘束する場合と,自由に發生させる場合とでは殘留應力の關係から仕上つた試驗片の性質に變化があるのではないかと云ふ事が想像出來る.本研究は之等の點を確めるために小規模の實驗を行つたもので,その結果の主なる點は,(1)逆歪の量は傾斜角で約7.0°~9.5°位,(2)歪を拘束した場合は強度には餘り影響はない樣であるが伸率が減する傾向がある,等其他を得た.
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