以上瑞穂橋竝に鈑桁橋用兩種の熔接支承沓の試驗を通して見るに、其接手に片刄又は兩刄熔接を使用せる此等の沓が、少くも其靜力學的試驗に於ては何等の好しからざる性状を示さなかつたと斷定出來る、只應力實測の結果から見て一般設計に用ひらるる慣用計算法による應力が實測値と一致しないこと。この原因が主として底面に於ける荷重の分布を均等なりと假定するところにあることが明かである。
今これ等の沓について行つた試驗の結果を要約すれば下掲の如くである。
1、主肋鈑の縁應力の實測値は其端部に於て比較的少く、中央部にむかつて急激に増加するこの理由は底面に於ける荷重の分布が均等でないことによるものである。又其實測を主肋鈑を等布荷重をうく為桁として取扱ふ慣用計算法又は理論計算法による値に比較するとき、端部のものは構橋、鈑桁橋用兩種の支承沓とも、計算値より低く、中央部のものは構橋用沓にては慣用計算法によるものと理論計算値との中間の値を示し、鈑桁橋用の沓にては兩計算値よりも遙かに低い値を示してをる。兩熔接沓にて共最大實測應力の割合に斯くの如き大なる相違あることは、底面の荷重の中央部集中の程度の差によるものであり、共集中の度は主肋鈑の高さと其間隔との比及主肋鈑の高さと其幅員との比に左右せられてをることが明かである。
2、これ等の關係は構橋用沓についての實驗では載荷100t乃至500tの間にては、載荷の大さに件つての顯著な變化は認められない。
3、主肋鈑の鉛直斷面に沿ひての水平應力の分布は、搖承の下にあたる部分に於ては、全高に亘り引張應力を示すもの多く、搖承直下にて壓縮應力を示す場合あるも、其量極めて低い、これに對し搖承より左右に距りたる斷面に於ては上部に壓縮、下部に引張應力を生じ高さの中央部に中立軸の存在を示しておる。又鉛直斷面に沿ひての直應力を見るに搖承直下の斷面は其頂部に於て著しく大なる壓縮應力を示し、高さの1/2以下に至つて大體一定値に達する。搖承直下より距りたる部分にては、この垂直壓縮應力は顯著に低下してをることが見られる。
以上の關係から見て、搖承にて傳逹せらるる荷重の一部は、主肋鈑搖承直下にあたる部分及中央隔鈑の壓縮にて直接底鈑に集中傳達せられ其殘部か底鈑に分布して主肋鈑端部に曲げを生するものであり、共分布も中央部より端部にむかひ漸減してをることが推斷出来る。
4、主隔鈑は主肋鈑の中央部と同等の壓縮垂直應力を示し、これと共に荷重の底鈑への傳逹に顯著に作用してをることが窺れる。
5、主肋鈑の補剛鈑中、中央部のものは主肋鈑のこれが取付けられた部分にて實測せられたる値と略同等の壓縮應力を全高に亘つて生じてをり、兩側の補剛鈑に至つては極めて僅少の應力を示したにすぎぬ、これ3に掲げたる荷重の中央部集中の結果に基くものである。
6、底鈑周邊の上面縁應力は、主肋鈑に平行なる邊の中央部に於て最も大なる値か示し、これと直角の邊に於ては比較的少い、この原因も、主隔鈑竝に主肋鈑中央部てなされる應力集中の結果と見做されねばならぬ。
7、慣用計算法を用ひて設計せられた兩熔接沓中構橋用のもりは設計荷重320tに對し其2倍640tまでの載荷をなしたるも、實測せる最大應力は、鋼の降伏點に達したると認めらるるもの幾分ありたるに止まる。從つてこの沓が靜荷重に對しては構橋主體とほぼ同値の安定率を有するものと斷定出來る。
鈑桁橋用のものは設計荷重126tにして、測定點中の最大應力が鋼の降伏點に逹したりと見做さるる時の載荷は400tにて、この沓の有する安全率は構橋用のものに比して幾分大なりと考へられる。
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