電極棒の品質を規格分類する時最も基本となるものは其の熔着鐵の性質と接手としての能率である。本文は特に熔着鐵の引張性質に就いて記述したものである。
鋼構造の電弧熔接に用ひる軟鋼用電極棒の熔着鐵に就いて過去約10年間の實驗記録によれば實用上最も多く使用されたものは強度約45kg/mm
2,伸率約25%(ゲージ長=4 A)である。此の値は現在に於いても充分實用に堪える一標準を示すと考へてよいが未だ軟鋼材と比軟する時は伸率が劣つてゐる。
熔着鐵の強度及伸率を變動させる原因の中で熔接工の技倆は決定的なものではなく或る程度の熟練者に依る時なその技術的要素は殆ど無視出來る。これより寧ろ電極棒の材料の差に基く變動の方が大であるがこれも亦避け得る處である。熔接の極性は熔接位置と共に伸率に影響し逆極性は順極性より、横向、上向は下向より伸率を低下させる。
熔着鐡のヤング係數は極性に基く變化少く大體軟鋼の場合と同樣と見倣すことが出來るが鋼裸棒による物は低くなつてゐる。
電極棒の引張性質を年度順に調査する爲強度一伸乘數による時はその最高値は年々上昇傾向を辿つてゐるが、最低値は依然として變化がない。之は年々種類の増加を來しつゝあるのを示すものである。しかし構造用電極捧では1,000~1,200が適當であつて之を標準と考へることが出來る。
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