環境経済・政策学会の設立から30年が経過し,年々深刻化する環境問題に対して,研究成果の学術的意義に加え,政策貢献においても重要な役割を求められるようになってきた.本稿では,環境経済学・政策学分野における今後の研究の進展を期待し,気候変動が日本の農業へおよぼす影響と農家の適応問題について,適応策の推進のために私たちが取り組むべき政策課題を報告する.
持続可能な発展に関する4つの理論結果を紹介し,その含意を説明する.第1に,経済学的最適経路上で持続的経済成長と環境保全が同時に実現するための選好,技術,自然の再生・自浄能力に関する3つの条件を示す.第2に最適経路が持続的経路と非持続的経路に分かれる資本ストックのティッピングポイントの存在と性質を紹介する.第3に共有地の悲劇と国際環境協定について,マルコフ完全ナッシュ均衡の多均衡を示し,持続可能な均衡の存在とその効率性を論じる.最後に,気候変動問題の排出ギャップを取り上げ,経済学的最適経路の非持続性を指摘する.また,排出ギャップの解消のための新たな経済学研究を展望する.
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