環境経済・政策研究
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3 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
会長講演
学術賞受賞記念講演
  • 細田 衛士
    2010 年 3 巻 1 号 p. 7-20
    発行日: 2010/01/28
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    本論文は,筆者がこれまで行ってきた資源循環型社会の研究の概要を説明し,あわせて今後の研究の方向性を具体的に示すことを目的としている.筆者の資源循環型社会の研究は,3つの分析的接近方法を採ることによって進められてきた.すなわち,経済理論分析,法制度論的分析,およびデータ分析の3つの接近方法である.理論分析は,たとえば拡大生産者責任を経済学的にどのように裏付けるかといったことに用いられる.また,グッズとバッズの相対性を示す際にも強力な武器となる.法制度論的分析は,廃棄物処理法や個別リサイクル法などの制度的枠組みと市場の成果との関係を示すのに不可欠である.理論分析や法制度的分析によって得られた結果は,データ分析によって補強される.たとえば,日本の自動車リサイクル法も以上の接近方法によってその機能が明らかにされる.同法では拡大生産者責任の1要素である物理的責任が生産者に課せられているが,本研究の理論モデルによってその効率性が明らかにされる.また制度的枠組みが廃車ガラなどの取引市場をどのように規定しているか明らかにするとともに,シュレッダーダスト等を生産者の無料引き取りとした時の廃車ガラ取引への影響をデータによつて確かめる.

Articles
  • 松下 和夫
    2010 年 3 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 2010/01/28
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    環境政策統合(EPI)は,持続可能な開発を実現するために設計された政策原則である.その起源はEU統合の過程に求められ,ブルントラント委員会報告を中心とする持続可能な開発に関する議論を通じて広がってきた.特にEUではアムステルダム条約(1997年採択)に明記され,実務上の経験が蓄積されている.本稿は,環境政策統合に着目し,EUにおける環境政策統合の規範的な議論および「ドイツ国家持続可能な開発戦略」などの実践の評価を踏まえ,わが国の環境政策統合の研究および実践への合意を論じる.

  • 武田 史郎, 川崎 泰史, 落合 勝昭, 伴 金美
    2010 年 3 巻 1 号 p. 31-42
    発行日: 2010/01/28
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    2009年12月にコペンハーゲンで開催されるCOP15において,京都議定書の次の国際的枠組みが決められることになっている.これに向けて,政府の「地球温暖化問題に関する懇談会」の下に「中期目標検討委員会」が設けられ,4月に6つの選択肢がまとめられた.日本経済研究センターは,筆者等が開発した応用一般均衡モデルを利用し,委員会において他の研究機関とともに温室効果ガス削減の経済社会への影響分析を行った.本稿では日経センターCGEモデルを詳細に説明するとともに,検討委員会での中期目標シナリオの分析を行う.

  • 原嶋 洋平
    2010 年 3 巻 1 号 p. 43-54
    発行日: 2010/01/28
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    本稿は,国際政治学の代表的な視点から,WTO環境交渉における重大な変化の要因を考察することを目的とする.ドーハ開発アジェンダにおけるWTO環境交渉では,その中心的な争点が環境目的の貿易措置から環境物品・サービスの貿易自由化に移った.これに伴って,主要国の立場も接近した.さらに,EUとアメリカが「気候に優しい物品・サービス」の貿易自由化で共同提案を実現させた.これらの重大な変化は,自由貿易と環境という2つの異なる国際制度や規範の衝突によるものであった.考察の結果,複数の異なる問題が交錯する場合の国際交渉は,国際制度の衝突が緩和され,あるいは規範の両立が見込めるような方向に変化することが明らかになった.

  • 笹尾 俊明
    2010 年 3 巻 1 号 p. 55-67
    発行日: 2010/01/28
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    全国47都道府県のパネルデータを用いて,産業廃棄物税(以下,産廃税)導入による産廃最終処分量の削減効果について,課税方式別に分析する.併せて,経済状況が最終処分量に与える影響についても分析する.分析の結果,三重・滋賀両県で導入されている課税方式では,県内排出の最終処分量は課税当初減少するが,その後増加に転じること,また県外搬入を含めた場合は増加のみが確認される.一方,その他の県で導入されている課税方式では有意な影響は見られないことが示される.また経済状況に関しては,農業と建設業の生産額増加が最終処分量の増加をもたらす一方,窯業・土石については最終処分量の減少をもたらすことが示される.

  • 桑名 謹三
    2010 年 3 巻 1 号 p. 68-78
    発行日: 2010/01/28
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    環境汚染を引起した企業の法律上の責任の履行を確保するため,企業に金融保証の手配を義務付ける政策が多くの国で実施されている.金融保証の効果を分析した先行研究のほとんどすべてが特殊な性格を有するモデルを使用している.さらに,多く研究はリスクのモニタリングを行えば企業の注意水準を最適化できるとしているが,これらの議論はモニタリングのコストが極めて高額であることを無視したものである.そこで,本論では一般的な性格を有するモデルを採用し,不完全情報下において,モニタリングを実施しない場合の金融保証のリスク抑制効果を分析した.結果は,金融保証によるリスク抑制の可能性の存在を示すものであった.

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