環境経済・政策研究
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7 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
学術研究論文
  • ―日本の新聞報道におけるフレーミングと言説の経時変化―
    朝山 慎一郎
    2014 年 7 巻 2 号 p. 1-13
    発行日: 2014/09/28
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    本稿は現在,主要な気候変動緩和策として位置づけられる排出取引の言説的な意味が日本の新聞報道においてどのように構築され,通時的に変化してきたのかを分析した.フレーミング理論に基づき,1997年から2010年までの新聞報道の批判的言説分析によって,排出取引に関する6つのフレームを同定した.排出取引のフレームは政策的な変化に伴い通時的に変化しており,2001年には批判的な言説から肯定的な言説へと排出取引の意味づけが大きく転換していた.本稿の分析結果からは,排出取引のメディア言説が緩和策のあり方をめぐる規範と共鳴し,さらには現代の資本主義経済のあり方をめぐる価値観をも内包していることが指摘できる
  • ―誰がどのような情報を必要としているのか?―
    井元 智子
    2014 年 7 巻 2 号 p. 14-23
    発行日: 2014/09/28
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    東日本大震災により発生した大量の廃棄物を迅速に処理することが難しいとの判断により,他の自治体での廃棄物処理の枠組みが提案された.協力したいという意見の一方,受入れる災害廃棄物が放射能に汚染されているのではないか,放射能被害が出るのではないかとの意見も存在する.このような状況下で,最初に受入れを表明した東京都は住民説明会を開催した.本研究はこの住民説明会を対象とし,放射能リスクに対して人々がどのような情報を必要としているのかを明らかにした.解析の結果,人々の属性によって欲している情報に有意な差があることがわかった.また,説明される情報と参加者が欲している情報にギャップがあることも明らかになった.
  • ―ヘドニック価格法による家電エコポイント制度の評価―
    森田 稔, 松本 茂, 田崎 智宏
    2014 年 7 巻 2 号 p. 24-36
    発行日: 2014/09/28
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    省エネ製品の普及を目的としたリベートプログラムが多くの国々で導入され,日本でも同様のエコポイント制度が近年導入された.本稿は,エコポイント制度が消費者のエアコンの省エネ性能評価にどのような変化をもたらしたのか検証した.市場データを用いたヘドニック価格分析を実施し,消費者の主観的割引率を求めた結果,エアコンの省エネ性能に関して,消費者は先行研究に比べ極端な近視眼的意思決定をしていないことが示された.一方で,エコポイント制度が,消費者の省エネ性能に見出す経済的価値を低下させたことが示された.本稿の結果は,エコポイント制度が省エネ型エアコンを飛躍的に普及させたものの,消費者の省エネによる将来便益の過小評価をむしろ助長させてしまった可能性を示唆している.
  • 蒲谷 景
    2014 年 7 巻 2 号 p. 37-49
    発行日: 2014/09/28
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    生態系勘定や面源負荷対策において,窒素除去サービスは重要な意義を持つが,日本全国の多様な生態系を対象に,同一の手法を用いて物量と経済価値の双方でこれを評価した研究は国内では見られない.本稿では,Integrated Valuation of Environmental Services and Tradeoffs (InVEST)に降雨からの窒素沈着や窒素除去限界などの要素を加味したモデルを用いて,2009年における日本全国の窒素除去サービスを評価した.その結果,窒素除去サービス量は約24万6,859 t,その経済価値は約2,737億円と推定されるとともに,同一の土地利用でも地理的要因により経済価値は異なることが示された.また,1991年を対象とした分析と比較したところ,現在の生態系サービスの劣化が懸念される結果が示された.
  • ―潜在クラスモデルによる選好変容の実証研究―
    向井 登志広, 阿部 直也, 森住 俊哉
    2014 年 7 巻 2 号 p. 50-62
    発行日: 2014/09/28
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    太陽光発電(PV)システム導入後10~20年以上の運用期間において十分な発電量を得る上で,適切な維持管理の選択実施が不可欠である.本稿では,住宅PVシステムを設置予定の消費者が維持管理策を検討する上で有益と思われる不具合リスク情報に着目し,情報の有無による選好変容の様子を,ランダム化実験に基づくコンジョイント型調査により実証的に検証した.その結果,不具合リスク情報の普及により点検サービスを重視するが機器保証は最低限のもので良しとする消費者が増加する一方で,有償の機器保証や点検サービスを決して選択しようとしない消費者が減少する等,同システムの社会定着に有益な効果があることが確認された.
研究展望
  • ―日本型エコロジー的近代化は可能か―
    松下 和夫
    2014 年 7 巻 2 号 p. 63-76
    発行日: 2014/09/28
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
    本稿では「持続可能な発展」が経済活動において主流化されない背景として「無限の経済成長が可能であり,経済成長がすべての問題を解決する」との言説が根強いことを指摘し,閉鎖性経済への再認識が必要であることを提起した.また,「持続可能な発展」が本来不断の社会変革プロセスを意味すること,持続可能な発展の実践思想としてのエコロジー的近代化論が北欧・ドイツなどで一定の成果を上げてきたこと,その手法として環境政策統合が展開されたことを論述し,その上で日本の環境政策展開の特異性と持続可能性の主流化への示唆を論じた.
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