環境経済・政策研究
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1 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
Articles
  • 細田 衛士, 一ノ瀬 大輔
    2008 年 1 巻 2 号 p. 1-13
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    使用済み製品・部品・素材のリサイクルには,法制度の支えがなくても市場メカニズムのもとで円滑に機能するリサイクルと,法制度の支えがあって初めて機能するリサイクルの2つがある.本論文は後者のリサイクルに注目し,法で決められた制度のもとでリサイクルされるものの量がどのようなメカニズムで変動するか離散的動学モデルを用いて分析する.伸縮的な価格が数量の調整を行う市場リサイクルと異なり,法制度によって支えられたリサイクルにおいては,リサイクルされるものの量が変動を続け,安定化しない場合があることを示す.本モデルの想定するリサイクル制度は,容器包装リサイクル法であるが,必ずしも本モデルは容器包装リサイクル法の調整メカニズムのすべてを厳密に反映することを意図して構築されていない.その一部を取り出して抽象化し,動学的な数量調整の側面を分析し,安定性の条件や安定化のための裁量政策を示す.

  • 吉田 文和, 吉田 晴代
    2008 年 1 巻 2 号 p. 14-25
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    日本から再生資源を引き寄せ,環境負荷が高いと言われる中国のリサイクルの現状,それも含めて経済成長方式の転換を目指すと言われる中国の循環経済について考察する.日本と関係が深い非鉄再生金属産業と家電リサイクルを取り上げ,政策と政策実行の環境ガバナンスという視点から,中国のリサイクルに関する現状分析をふまえて中国循環経済の方向性と課題を明らかにする.中国の循環経済は,経済成長の障害となっている資源浪費と環境汚染を低減させながら,効率的な経済成長を日指すものであり,大量生産・大量消費自体は変わらないという限界がある.したがって中国の循環経済が発展すれば,日本への影響は一層大きくなる可能性がある.

  • 森 晶寿, 孫 穎
    2008 年 1 巻 2 号 p. 26-36
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,まず生態工業団地が企業間連携を通じた副産物利用を促すための実践的課題を整理した.そして生態工業団地の成功例とされるデンマークのカルンボーでこれらの課題を克服しえた社会的・経済的条件を再確認した.中国では,生態工業団地を産業集積の促進による地域経済成長と副産物利用の2つの目的を達成する手段として試行してきたが,これら副産物利用に関する課題をどのように克服してきたかを,蘇州工業団地と包頭アルミ業生態工業団地を事例として検討した.この結果,政府の計画と指令による実施のみでは克服できなかったこと,既存の企業間ネットワークを活用できるか,新規に市場を開拓する能力のある副産物利用の外資企業の誘致と政府支援策の組み合わせが重要な役割を呆たしたことを明らかにした.

  • 青柳 みどり
    2008 年 1 巻 2 号 p. 37-50
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    社会資本(Social Capital)は,環境行動促進に有効なのであろうか.我々は,これについて,日本全国成人を対象とした環境問題に関する世論調査を行い,分析を行ったので,その結果を報告する.調査は2006年3月に日本全国の成人男女を対象に実施した.その結果,社会資本に関連する項目は,環境行動の中でも他者への働きかけにおいて多くの行動で正の関連があった.他者に働きかける行動,消費者行動とそれぞれ8つと4つの行動をとりあげた.他者に働きかける行動では全てで「団体活動参加レベル」が正であったが,消費行動では「有機栽培のものの購入」のみであった.他者への働きかけは,まさに社会的な側面が強く他者とのネットワークが大きな意味を持つが,消費行動は,きわめて個人的な行動であるという側面が強いことが推測された.全体的に有意な場合が多かったのが,「環境問題について友人や家族と頻繁に話すか」ということであった.環境問題について頻繁に他者と話す環境にあるということ自体が環境行動を促す大きな要因であり,それは多くのタイプの環境行動に通じる促進要因であると考えられる.多くの行動で新聞を情報源とすることの有効性が明らかになった.またインターネットを情報源としていることも有効であった.テレビは,ジャンルごとにみた場合にはいくつかは正の効果を示した.また,社会的有効性感覚が正に有意となった,社会的行動について,この有効性感覚を持ちうるかどうか,が環境行動を促す重要な要因の一つでもあることが言えそうである.

  • 栗山 浩一
    2008 年 1 巻 2 号 p. 51-63
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    環境評価手法の中で人々に選好を直接たずねる「表明選好法」が注目を集めているが,表明選好法はアンケートを用いることからバイアスの影響を受けやすいという欠点がある.本論は,表明選好法のバイアスを経済理論モデルによって分析することで,バイアスを回避するための対策を示すことを目的とする.代表的なバイアスとして,回答者が意図的に回答を偽る「戦略バイアス」,表明額が実際に徴収されないことによって生じる「仮想バイアス」,税金や基金などの支払い手段が影響する「支払手段バイアス」を検討した.また,これまではバイアスとしては考えられていなかった抵抗回答も,戦略バイアスの一つとなりうることを示した.

  • 吉田 謙太郎, 金井 荘平
    2008 年 1 巻 2 号 p. 64-75
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,顕示選好法の回避支出法と表明選好法の選択実験を適用することにより,飲料水水質向上政策の限界支払意志額を推定するとともに,両手法の特徴とパフォーマンスについて比較分析を行うことである.調査対象地は茨城県つくば市であり,直接配布・郵送回収により220件の標本を得た.回避支出法については,残留塩素のパラメータにASCを使用したモデルでは係数の符号が不安定となり,選択実験については,排水設備の整備拡充に関するパラメータに統計的に有意な係数が得られなかった.表明選好法と顕示選好法の結合データを入れ子型ロジットモデルにより分析した場合に,良好な推定結果が得られた.

  • 田中 健太, 中野 牧子, 馬奈木 俊介
    2008 年 1 巻 2 号 p. 76-87
    発行日: 2008/07/25
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    京都議定書の発効以後,先進国では様々な温暖化対策が行われている.しかし運輸部門における二酸化炭素(CO2)の排出抑制は進んでおらず,日本も同様に十分な対策が行われていない.この運輸部門において,CO2排出量を増加させている最大の要因は自家用車の利用の増加にあると考えられる.そのため自動車の利用を抑制する必要性がある.その手段として,しばしば鉄道やバスといった公共交通機関の利用促進が提案されている.しかし,実際のデータを使い,公共交通機関の利用促進が自動車の利用を抑制し,CO2排出量をどの程度削減する効果があるかは分析されてこなかった.

    そこで本論文では環境クズネッツ仮説のモデルを応用し,パラメトリックモデルである固定効果モデルとノンパラメトリックモデルを用い,鉄道とバスを利用することによるCO2削減効果を推計した.推計の結果,鉄道において輸送人員数が伸びることにより,ある程度のCO2の削減効果が期待されることが頑強に実証された.

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