京都議定書の発効以後,先進国では様々な温暖化対策が行われている.しかし運輸部門における二酸化炭素(CO2)の排出抑制は進んでおらず,日本も同様に十分な対策が行われていない.この運輸部門において,CO2排出量を増加させている最大の要因は自家用車の利用の増加にあると考えられる.そのため自動車の利用を抑制する必要性がある.その手段として,しばしば鉄道やバスといった公共交通機関の利用促進が提案されている.しかし,実際のデータを使い,公共交通機関の利用促進が自動車の利用を抑制し,CO2排出量をどの程度削減する効果があるかは分析されてこなかった.
そこで本論文では環境クズネッツ仮説のモデルを応用し,パラメトリックモデルである固定効果モデルとノンパラメトリックモデルを用い,鉄道とバスを利用することによるCO2削減効果を推計した.推計の結果,鉄道において輸送人員数が伸びることにより,ある程度のCO2の削減効果が期待されることが頑強に実証された.
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