環境経済・政策研究
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14 巻, 2 号
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学術研究論文
  • ―E3MEマクロ計量経済モデルを用いた分析―
    李 秀澈, 何 彦旻, 昔 宣希, 諸富 徹, 平田 仁子, Unnada Chewpreecha
    2021 年 14 巻 2 号 p. 1-12
    発行日: 2021/09/26
    公開日: 2021/11/02
    ジャーナル フリー

    本稿では,「発電部門の石炭火力・原発の早期フェーズアウトは,日本経済と電源構成,そして二酸化炭素排出にどのような影響を与えるのか」という「問い」に対して,E3MEモデルを用いて定量的な回答を求めた.フェーズアウトシナリオとして,原発の場合,稼働年数40年に到達した古い原発からフェーズアウトし,石炭火力は発電効率の低い順から2030年または2040年までにフェーズアウトする2つのシナリオを設定した.そしてこのフェーズアウトシナリオが実現されたときに,2050年までの日本経済(GDP,雇用など),電源構成,発電部門二酸化炭素排出に与える影響について,E3MEモデルを用いて推定を行った.分析の結果,いずれのシナリオでも経済と雇用に悪い影響は殆ど与えないことが確認された.その要因として,再生可能エネルギー発電のコストが持続的に下落し,それが既存の石炭火力と原発を代替しても,経済への負担にはならないという事情が挙げられる.ただし,原発と石炭火力の代替電源としてLNG発電の割合が再生可能エネルギー発電の割合を大きく上回ることになり,発電部門における2050年の二酸化炭素排出量は,50%ほどの削減(2017年対比)に留まることも明らかになった.そこで本稿では,発電部門の脱炭素化のためには,規制的手法だけでなく,カーボンプライシングなど経済的措置の導入も必要であることが示唆された.

研究報告論文
  • ―市民会議による質問票調査から―
    山田 美香, 松本 礼史, 松岡 俊二
    2021 年 14 巻 2 号 p. 13-27
    発行日: 2021/09/26
    公開日: 2021/11/02
    ジャーナル フリー

    日本は,高レベル放射性廃棄物を最終処分法(2000年)に則り地層処分と定めているが,未だ,国民の関心は限定的である.本研究は,地層処分の社会的議論形成の難しさに対して,市民と専門家との対話形式の異なる市民会議を3回実施し,質問票を用いて市民の政策選好を社会的受容性4要因(技術・制度・市場・地域)から考察した.山田他 (2019) では,一方向形式の会議を分析し,市民の政策選好の変容は限定的であり,その判断は技術的要因だけではなく,制度をはじめ社会的側面も関係する結果を得た.本稿は,3回の会議の比較分析を行い,技術的要因と制度的要因が市民の政策選好に高い相関性があることを示し,要因の特徴を明らかにした.

  • 林 寿和
    2021 年 14 巻 2 号 p. 28-37
    発行日: 2021/09/26
    公開日: 2021/11/02
    ジャーナル フリー

    本研究は,近年,実務主導で急速に発展している投資ポートフォリオのカーボン分析に焦点をあて,関連文献の包括的なレビューを通じて,カーボン分析のこれまでの発展史を,概念形成・任意開示・TCFD対応・新指標開発の4つの段階に分け整理を行った.さらに,カーボン分析の実施目的・指標・実務上の課題についても整理を行った.目的については運用パフォーマンス向上と環境面のインパクト創出という異なる考え方が併存する中,GHG排出量をベースとする指標から金銭価値や温度を単位とする指標まで,指標の多様化が明らかとなった.同時に,機関投資家がカーボン分析を実施する際に実務上の課題が複数存在することも浮かび上がった.

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