本稿では,近年,海外で急速に発展してきた持続可能性移行(サステナビリティ・トランジション)という研究分野に着眼し,当該分野における主な理論的枠組みである戦略的ニッチ・マネジメント論(SNM),重層的視座(MLP),トランジション・マネジメント論(TM)とその研究動向をまとめた.関連した概念を明確にしたうえ,日本の研究機関による事例研究への応用例を紹介し,日本の文脈を踏まえた今後の研究課題を提示する.
日本における環境NGOなどの市民団体による活動の形態は,環境問題の構造的変化に従って大きく変容している.本稿は,まず環境NGOの政策提言の活動における戦略的な動きに注目し,それを検証するために環境NGOが実施するアドボカシーを分析するための包括的な分析枠組みを提案した.それを用いて再生可能エネルギー発電の普及促進政策の法制化を目指す環境NGOの活動を,アドボカシーのデザイン及び実施プロセスの側面から系統的に分析した.その結果,「政策提言型戦略的アドボカシー」と呼びうる新しい活動形態の登場が明らかとなった.これらは今後の政策形成における環境NGOの参加拡大につなげるための知見を提供することになる.
市場メカニズムは現代経済を支える重要な柱の1つである.しかし,決して万能ではなく,環境政策という名のもとに,外部性等の是正を目的として市場の外から介入が行われているのが実態である.現実の環境政策においては,さまざまな理由から必ずしも全ての汚染源に一律の課税・規制が課されていない.本稿では,はじめに環境規制にこうしたリーケージがある場合の問題について,代表的な理論研究をレビューする.また,そのアプリケーションとして,レジ袋規制にリーケージがある場合に,どのような隠された影響があったかを分析した一連の実証研究の結果についてもレビューを行う.最後に,2020年7月からレジ袋有料化を開始し,2022年4月にはプラスチック資源循環促進法という新たな法律が施行された我が国における,今後の研究展望について議論する.
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