レギュラトリーサイエンス学会誌
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最新号
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巻頭言
原著
  • 鈴木 麻文, 前田 実花, 尾鳥 勝也, 熊谷 雄治
    2025 年15 巻3 号 p. 171-182
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル 認証あり

     バイオ後続品の普及が注目され,開発が望まれているが,どのような情報をもとに国内ですでに新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品との同等性/同質性を示すかを系統的に示した情報は少ない.そこで,今回我々は,バイオ後続品の開発にあたり行われた臨床試験の動向を明らかにすることを目的に,現在承認されているバイオ後続品の臨床試験情報を調査し,分析を行った.2023年3月までに日本で承認されたバイオ後続品31品目を対象とし,審査報告書より相,症例数,国際共同試験における日本人の症例数,実施地域(海外/国内),評価項目,観察期間を収集した.対象品目31品目のいずれも日本人データを用いて承認されていた.海外ですでに承認された後に日本で承認された18品目中14品目は,臨床薬理試験もしくは,有効性の同等性を検証する試験のどちらかの試験で,日本以外の海外の情報を用いて承認されていた.国際共同試験を用いて承認されている品目は2017年度から2022年度では,12品目(50.0%)であった.2024年1月25日に厚生労働省より「バイオ後続品の品質・有効性・安全性確保のための指針に関する質疑応答集(Q & A)について」(令和6年1月25日 事務連絡)」が示されたこともあり,今後は,国際共同試験への参加と日本人データの使用基準の変化によって,製造販売承認までの迅速化が期待される.本研究は,日本におけるバイオ後続品開発の現状と臨床試験の特徴を明らかにし,今後の動向を注視する必要性を示した.

報告
  • 清水目 梢, 中山 能雄, 山内 園子, 小林 正次, 中西 顕伸, 益山 麻貴, 尾崎 恭代, 樽井 行弘, 藤川 誠, 中村 浩士, 柏 ...
    2025 年15 巻3 号 p. 183-194
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル 認証あり

     日本製薬工業協会薬事委員会では,品質に係る承認事項の記載内容,その変更手続きに係るカテゴリ及び審査期間並びにGMP調査の運用状況に関する日米欧間の違いを報告し1),認められた違いの原因を追究するため,各地域の承認事項の差異及び変更手続き制度の違いについて報告した2).本邦において国際整合性のあるリスクベース変更制度の実現に向けた議論が開始されたことから第3回アンケート調査として「リスクベースの変更管理」に関する現時点での捉え方について報告する.

  • 南出 由希, 村田 宰子, 小野田 美代子, 新宅 恭平, 服部 芳幸, 飯山 さやか, 亀屋 美穂, 川畠 和巳, 長尾 晃一, 中津 智 ...
    2025 年15 巻3 号 p. 195-208
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル 認証あり

     日本製薬工業協会薬事委員会(以下,製薬協薬事委員会)では,製薬協薬事委員会加盟会社を対象に,日本における開発プロジェクトの現況についてアンケート調査を実施しており,2024年度は,日本人患者を対象とした臨床試験成績なしに製造販売承認申請(以下,承認申請)を行う際に考慮する要素をふまえ,希少疾病又は小児疾患を対象に開発するグローバル開発品の日本人データ取得の実態に関する調査を行った.2024年3月時点で,日本で開発している医薬品又は再生医療等製品のプロジェクト総数は全1,106件であり,そのうち1,018件(92%)がグローバル開発品であった.グローバル開発品のうち,成人の希少疾病を対象に開発している〔以下,希少疾病(成人)〕プロジェクトは343件(34%),小児を対象に開発している(以下,小児)プロジェクトは103件(10%)であった.これらプロジェクトの日本からの国際共同治験への参加割合は希少疾病(成人)プロジェクト,小児プロジェクトでそれぞれ274件(80%),73件(71%)と高かった.一方で,国内開発時期や開発戦略の理由により,国際共同治験に参加しなかった又は参加予定のない希少疾病(成人)プロジェクトは35件,小児プロジェクトは21件確認され,それらプロジェクトの多くが国内治験の実施を選択していた.また,海外の検証試験のみで承認申請データパッケージを構成することを予定する,希少疾病(成人)又は小児プロジェクトは合計7件確認されている.これまで,日本人患者データが原則必要であるとの認識のもと,国内患者数が少数例であっても国際共同治験への参加,あるいは,国内治験を実施することを前提として国内開発を計画してきた各社の実態が捉えられた.希少疾病等に用いる医薬品にて,海外でのみ検証的治験が実施された場合の日本人データに関する新たな通知の発出をふまえ,今後の国内開発の動向と比較検討するうえで有用な調査結果であると考える.

特集(再生医療等製品の開発動向と課題)
  • 上村 俊雄
    2025 年15 巻3 号 p. 209-216
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル 認証あり

     再生医療等製品が独自のカテゴリーとして認められてから10年以上が経過しており,2025年5月現在で20を超える再生医療等製品が日本で承認されている.2020年以降,その承認数は著しい増加を示している.このうち6製品は,再生医療等製品に特有の課題である製品の不均一性に対応しアンメットメディカルニーズを克服するために2014年の薬機法改正時に設計された条件及び期限付承認を受けている.本承認制度は,追加データの収集を条件に最大で7年間の期間を有し,患者への迅速なアクセスと継続的な安全性及び有効性評価を両立させる.国際的には米国FDAのAccelerated Approvalや欧州EMAのConditional Marketing Authorizationなど類似の制度が存在し,代替エンドポイントによる承認や承認後試験による検証で進められている.ガイドラインの発出により条件及び期限付承認の予測性は向上したが,承認後試験や調査による有効性の確認や保険償還,公的医療保険の持続可能性,承認取り消しに関する課題が残っている.それでも,日本の条件及び期限付承認制度は,再生医療における迅速なイノベーションの必要性と規制の厳格さを両立させる柔軟で革新的なアプローチとして広く評価されている.

  • 上村 鋼平
    2025 年15 巻3 号 p. 217-224
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル 認証あり

     再生医療等製品の開発では,条件及び期限付承認制度における有効性の推定方法が不明確であり,本承認に足る検証的なエビデンスと有効性の推定を行う際のエビデンス・ギャップが大きいことが課題となっている.条件及び期限付承認制度は,本来あくまで本承認を見据えた開発戦略が前提となって機能するものと考えられる.試験のサンプルサイズ,エンドポイント,比較の方法といった試験デザインのギャップが過大であると,有効性を推定する時点で本承認の成功確率を見通すことは非常に困難になる.本稿では,アダプティブ・デザインにおけるPromising Zoneという考え方をヒントに,二重境界アプローチの適用を提案する.本アプローチは,事前にサンプルサイズを決め打ちしておく必要がなく,有効性の検証に対する成功確率を統計学的に評価することにより有効性の推定を行うことが可能である.また,有効性が明確であればサンプルサイズを最小限に抑え,無効な場合もより早期に中止することが可能という特徴を有する.Promising Zoneを早期に達成した場合には,条件及び期限付承認をめざして申請することも可能であるが,本承認をめざし拡大試験として試験を継続することも可能である.比較対照群の設定が難しい場合には,拡大試験のパートにおいて外部対照とランダム化対照とを併せた比較を行うHybrid Control法を適用したり,真のエンドポイントによる検証は困難でも,有効性の推定パートよりは臨床的意義の高いエンドポイントにもとづく検証へシームレスに移行することも一案と考える.本稿での提案は,より合理的な制度の活用方法についての科学的な議論へ貢献するものと期待したい.

  • 丸山 良亮, 浅野 淳一, 岸岡 康博
    2025 年15 巻3 号 p. 225-233
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル 認証あり

     再生医療等製品は細胞や遺伝子を活用した革新的な治療薬であり,日本では早期承認制度を導入して実用化を促進している.2025年5月末時点で,日本で製造販売承認された再生医療等製品は22品目である.条件及び期限付承認制度を活用することで,有効性が推定された製品を早期に患者へ提供することが可能である.ただし,市販後に有効性・安全性を確認する「製造販売後承認条件評価」が求められる.製造販売後承認条件評価の結果,有効性が確認されない場合は,承認の継続は認められない.承認された22品目のうち,6製品は早期承認制度により承認されたが,ハートシート及びコラテジェン筋注用4mgの2製品は販売中止となっている.今後,日本では審査報告書の公開や承認予見性の向上など,制度運用の改善が進められる予定である.本制度を適切に活用し,安全で有効な再生医療等製品を迅速に患者へ届けることが重要な課題となっている.本稿は,日本における再生医療等製品の開発動向と規制の現状について概説する.

シリーズ(医薬品・医療機器評価をめぐる最近の話題)
  • 緒方 映子, 岩田 大祐, 杉田 敏樹, 安藤 友紀, 鈴木 雄也, 西村 次平, 江頭 真宏, 渡部 辰悟
    2025 年15 巻3 号 p. 235-242
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル 認証あり

     独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)は,第5期中期計画において「Early Considerationの発信や最新の科学的知見に基づく臨床評価ガイドラインの策定などイノベーションに的確に対応した相談及び審査の実施」を掲げている.Early Considerationとは,情報等が十分に収集されていない段階ではあるものの,イノベーションの実用化と革新的な医薬品等の開発促進の参考情報として,その時点における開発の方向性に係る審査側の考え方を示したものである.革新的な新医薬品等の創出のためには,製薬企業のみならず,アカデミアやスタートアップ等の研究開発者に対しても,開発に係る予見可能性や実用化推進のための薬事規制面での相談・支援が必要である.PMDAが各種規制要件や留意事項を公表していくことは,医薬品等の開発計画策定において薬事規制の理解と支援に繋がるものであり,Early Considerationの公表はこの一助になると考えている.本稿では,本年5月に本誌にて紹介した令和6年4月から令和7年1月までに公表したEarly Consideration(8件)に続き,令和7年2月から3月までに公表したEarly Consideration(7件)について,その背景と概要を紹介する.

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