日本製薬工業協会薬事委員会(以下,製薬協薬事委員会)では,製薬協薬事委員会加盟会社を対象に,日本における開発プロジェクトの現況についてアンケート調査を実施しており,2024年度は,日本人患者を対象とした臨床試験成績なしに製造販売承認申請(以下,承認申請)を行う際に考慮する要素をふまえ,希少疾病又は小児疾患を対象に開発するグローバル開発品の日本人データ取得の実態に関する調査を行った.2024年3月時点で,日本で開発している医薬品又は再生医療等製品のプロジェクト総数は全1,106件であり,そのうち1,018件(92%)がグローバル開発品であった.グローバル開発品のうち,成人の希少疾病を対象に開発している〔以下,希少疾病(成人)〕プロジェクトは343件(34%),小児を対象に開発している(以下,小児)プロジェクトは103件(10%)であった.これらプロジェクトの日本からの国際共同治験への参加割合は希少疾病(成人)プロジェクト,小児プロジェクトでそれぞれ274件(80%),73件(71%)と高かった.一方で,国内開発時期や開発戦略の理由により,国際共同治験に参加しなかった又は参加予定のない希少疾病(成人)プロジェクトは35件,小児プロジェクトは21件確認され,それらプロジェクトの多くが国内治験の実施を選択していた.また,海外の検証試験のみで承認申請データパッケージを構成することを予定する,希少疾病(成人)又は小児プロジェクトは合計7件確認されている.これまで,日本人患者データが原則必要であるとの認識のもと,国内患者数が少数例であっても国際共同治験への参加,あるいは,国内治験を実施することを前提として国内開発を計画してきた各社の実態が捉えられた.希少疾病等に用いる医薬品にて,海外でのみ検証的治験が実施された場合の日本人データに関する新たな通知の発出をふまえ,今後の国内開発の動向と比較検討するうえで有用な調査結果であると考える.
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