神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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33 巻, 2 号
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特集
  • 鈴木 利根
    2016 年 33 巻 2 号 p. 109
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/24
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  • 高比良 雅之
    2016 年 33 巻 2 号 p. 110-117
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2016/06/24
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    IgG4関連眼疾患(IgG4-related ophthalmic disease)の概念は,2004年のIgG4関連Mikulicz病の報告に始まった.その病変は涙腺の他に三叉神経周囲,外眼筋にも好発する.IgG4関連眼疾患の最も重要な鑑別疾患はMALTリンパ腫であり,両者はときに併発するので注意すべきである.IgG4関連眼疾患の病変において最も重視すべきは視神経症の併発である.過去の報告や自験例などからは,IgG4関連眼疾患のおよそ1割で視神経症を来すと考えられる.罹患側の光覚消失までに至った重症例も経験した.ステロイド全身投与を導入しない症例でも,血清IgG4が高値の症例では視神経症の発症に留意すべきである.またIgG4関連視神経症の初期では緑内障として加療される可能性もあり,注意を喚起したい.視神経症の視機能はある程度はステロイド治療に反応するが,その回復には限界があるので,早期の治療導入が望ましい.
  • 植木 智志
    2016 年 33 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2016/06/24
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    本稿は「抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎の臨床的特徴」と題して第53回日本神経眼科学会総会のサイエンティフィックレクチャーで講演した内容をまとめたものである.新潟大学の高木らが中心となって行った研究により,抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎の臨床的特徴は,視機能予後不良,再発性,抗アクアポリン4抗体以外の自己抗体も陽性などであることが示された.また,著者らが中心となって行った研究により,抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎ではステロイドパルス療法単独でも約40%の症例で矯正視力(0.5)以上の改善がみられることが示された.これらの結果から抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎の治療は急性期の視力改善のため,また慢性期の再発予防のために,現時点におけるさまざまな治療方法から選択し組み立てる必要がある.しかし,抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎は症例数が少なく視力経過にもバラつきがあるためにその評価は困難であり,今後もこれらの課題に神経眼科医が一丸となって取り組むべきである.
  • 杉谷 邦子, 野川 中, 相馬 睦
    2016 年 33 巻 2 号 p. 125-134
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2016/06/24
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    膜プリズムの導入により複視の光学的治療の適応範囲は大きく広がった.しかし治療後にも周辺に残る複視の解決という課題が残されている.当科では9方向での複視消失を目的に,「両眼開放」,「日常9方向での複視消失」および「周辺視野の確保」という三つの目標を設定し,手順(S-S method)に沿いプリズム治療に遮閉膜による部分遮閉とspot patchを組み合わせる治療を行ってきた.遮閉膜の使用により,プリズム装用となった患者の処方率(斜視角に対するプリズム処方角の割合)を低下させることができた.また複視があった患者の34名(16.0%)が,プリズムを使わず遮閉膜のみで単一視を獲得していた.本稿ではS-S methodの手順と遮閉膜が周辺の複視消失に効果をもたらす原理,およびその治療成績についてまとめた.
原著
  • 奥 英弘, 西川 優子, 戸成 匡宏, 菅澤 淳, 池田 恒彦
    2016 年 33 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2016/06/24
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    高齢者の重症筋無力症(myasthenia gravis, MG)が増加している.大阪医科大学における,過去7.5年間の年齢別発症頻度を検討した.またアセチルコリン受容体(acetylcholine receptor, AchR)抗体価を測定し,65歳以上で発症した眼筋型MG(5症例)に対し,少量ステロイド持続投与(prednisolone 10 mg/日)を施行した.該当期間に23症例がMGと診断され,その内10例(43%)が65歳以上の症例であった.AchR抗体陽性率は65歳未満では61.5%であったが,65歳以上では80%が陽性であった.高齢発症眼筋型MGは,少量ステロイド治療に良く反応し,複視は約2か月で消失した.また全例が薬理学的寛解に至り,約7.5か月を要した.高齢発症のMGがまれでないことが確認された.またステロイド剤に対する反応性は良く,初期量決定に際しては,この点を考慮する必要があると考えられた.
臨床報告
  • 千葉 樹里, 佐々木 環
    2016 年 33 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2016/06/24
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    Noonan症候群に発症したFisher症候群の一例を報告する.症例は既往にNoonan症候群のある17歳男性.突然の羞明を訴え,近医眼科を受診.表層性角膜炎の診断で点眼処方されるも症状改善なく上下肢のしびれも出現し,当院小児科を受診した.運動失調・腱反射消失を認めた.精査目的で当科紹介され,両眼に中等度散瞳・対光反射消失・全方向の眼球運動障害を認めた.発症前に先行感染を認め,外眼筋麻痺・運動失調・腱反射消失よりFisher症候群と診断した.抗GQ1b抗体も後日確認された.症状は無治療にて軽快した.本症例では,精神遅滞に加え羞明のために閉瞼が強く,診察困難であったため,初診医や小児科で所見がとりにくかったと考えられた.Noonan症候群では精神遅滞のため眼科検査が困難なことが多いが,眼球突出・弱視など眼症状の合併も多く,診断のためには確実に開瞼して診察することが重要と考えられた.
  • 原 雄時, 鈴木 利根, 小林 俊策
    2016 年 33 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2016/06/24
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    最近当科で経験した胸腺腫合併重症筋無力症の5例について,臨床症状や画像所見,病理所見,および血液中の自己抗体について検討した.患者はいずれも63歳以上の高齢(平均69歳)で,いずれも眼瞼下垂や複視の眼症状が主で,4例は眼筋型,1例は全身型であった.血液検査では全例に抗アセチルコリン受容体抗体が陽性,また抗titin抗体,抗インターフェロンα抗体の陽性例があり,筋特異的チロシンキナーゼ(muscle-specific tyrosine kinase: MuSK)に対する抗体陽性者はみられなかった.胸部CT検査では5例中4例に前縦隔に軟部影,1例で結節影を,PET検査を行った3例すべてで異常蓄積像を認めた.病理検査は手術を行った4例のうち,WHO分類AB型が2例,B3型が1例,嚢胞が1例であった.
症例短報
  • 野田 知子, 毛塚 剛司, 馬詰 朗比古, 沼田 沙織, 後藤 浩
    2016 年 33 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2016/06/24
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    Optical coherence tomography angiography(OCT angiography)は造影剤を使用せず,非侵襲的に網脈絡膜循環を評価する新しい検査法である.今回我々はOCT angiographyの所見を参考に前部虚血性視神経症(AION)と診断した1例を経験したので報告する.
    症例は52歳の女性.左眼の上耳側の視野欠損で発症,初診時より視力低下はなく,視神経乳頭の発赤腫脹があり,蛍光眼底撮影では乳頭下方の蛍光漏出を呈していた.OCT angiographyを施行したところ,放射状乳頭周囲毛細血管層の血流が途絶しており,臨床所見と併せAIONと診断した.視力良好のため自然経過を観察し,10日後に再検したところ,血流の再開通が確認された.OCT angiographyはAIONの診断と経過観察に有用であることが示唆された.
臨床と研究の接点
特別寄稿
  • 千葉 厚郎
    2016 年 33 巻 2 号 p. 161-170
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2016/06/24
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    Fisher症候群は,急性の免疫介在性末梢神経障害であるGuillain-Barré症候群(GBS)の障害神経を異にする亜型−regional variant-であり,外眼筋麻痺・運動失調・腱反射の低下~消失の3症状(Fisher症候群の三徴)により特徴づけられる.1956年のMiller Fisherによる3症例の詳細な報告と病態に対する考察により,一つの病態単位として認識されるようになったが,ユニークな臨床症状の組み合わせの責任病巣と疾患分類上の位置付けについて,多くの議論が行われてきた.1990年代以降,糖脂質に対する自己抗体を中心にGBSの病態解明が進む中で,Fisher症候群に極めて特異性の高い自己抗体としてガングリオシドGQ1bに対すIgG抗体が同定され,この抗体を軸に発症機序の解明と,関連病態との関係の理解が進んだ.現時点において抗GQ1b抗体誘導によるFisher症候群の動物モデルは作製されていないが,①疾患特異性と抗体陽性率の高さ,②発症に先行する抗体価の上昇,③症状を説明しうるヒト末梢神経組織におけるGQ1b抗原の局在,④先行感染因子におけるGQ1b糖鎖類似構造の存在から,IgG抗GQ1b抗体が発症に関わる特異因子であると考えられている.IgG抗GQ1b抗体はFisher症候群典型例のみならず,三徴のうち運動失調などの一部の症状を欠く症例,三徴と共に意識障害など中枢神経症候を伴う非典型例などでも検出され,Fisher症候群関連病態の重要な診断マーカーとなっている.
印象記
神経眼科知識評価プログラム(NOKAP)テスト
印象記
海外文献
Asian Section
  • Yasuo Suzuki, Takatosi Sakaguchi, Manabu Kase
    2016 年 33 巻 2 号 p. 193-198
    発行日: 2016/06/25
    公開日: 2016/06/24
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    We report a 43-year-old man who developed pure acquired downbeat nystagmus with increasing velocity slow phase. This downbeat nystagmus continuously appeared at vertical eye positions of ±20°, while showing nystagmus intensity-vertical eye position relationship contra to Alexander's law. The patient had ischemic lesions at the left caudal paravermis-hemisphere following acute bacterial mengitis that included the paraflocculus. Simulation analysis showed that slow phase position curves of the nystagmus were approximated by both exponential and quadratic curves with a high correlation coefficient. However, differential curves were close to a linear slope rather than an exponential one. There was a linear correlation between vertical eye position and maximum velocity (p<0.01) of slow phase. The neutral point obtained from the regression line was down 32.6°which was extremely shifted from the primary position. GABAergic agonists were applied orally to evaluate their effects on the nystagmus. We found that clonazepam combined with gabapentin significantly reduced maximum slow phase velocity and the neutral point obtained from the regression line was shifted to down 18.6°. Furthermore, increasing velocity slow phase of downbeat nystagmus changed to linear upward drift in waveform during fixation at the primary to down positions. The present study indicates that our acquired downbeat nystagmus with increasing velocity slow phase resulted from the deficit of inhibitory input from the paraflocculus to the vestibular nuclei and would coexist with vestibular upward drift.
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