最近実施されたGPSの世界キャソペーンによる成果は,GPSがVLBIやSLRなどの他の宇宙技術と同じ程度すなわち10
-9の桁の基準点決定精度を達成しつつあることを示している.経済性などを考慮すると,近い将来GPSは地球規模での測地的ならびに地球物理的観測を実施する際の標準的な観測手段となる可能性もある.また,このような世界的な規模でのGPS衛星の追跡は,衛星の精密暦を取得して地域的・局地的な観測を実施する際の支援としても重要である.こうした可能性・要求をふまえ,GPSの世界的な組識であるInternational GPS Geodynamics Service(IGS)の設立の準備がすすめられつつあり,1992年6月~9月に試験的なキャンペーンが実施された.IGSが充分に機能するにはまだいくつかの技術的な課題が残されてはいるものの,これらを解決してGPSデータ及びその成果が高精度かつ迅速に世界中に配布されるようになれば,永年海面変動の研究,地球回転の研究,準拠楕円体の高精度決定と保持などの測地学の基本的な研究は強力に推進されるであろう.一方,プレート境界域のテクトニクス,地震予知や火山噴火予知などといった,より地域的な問題においても,GPSは有効な観測手段である.地域的なGPS観測研究はすでに世界各地で実施されているが,日本においても「GPS JAPAN」と名付けられた全国共同観測が,周辺諸国の協力のもとに1990年より実施されている.このような地域的な観測を有効に実施するには,例えばIGSなどの世界的な観測網との緊密な連携と国際間の協力及び機関間の協力が必要不可欠であり,GPSの大規模な利用によって地域的な測地的ならびに地球物理的な観測研究は飛躍的に進展するであろうと思われる.
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