山崎断層系の安富断層を跨いで設置された基線網において,1975年以降年1回,精密測定が行なわれてきた.その基線網は有心五辺形を形成し,その大きさは対角線の長さが約300mである.1975年~1989年の測定成果が,山崎断層沿いの地震活動,破砕帯における地質および地形学的な調査,安富観測坑における伸縮計の観測ならびに広域測量の結果などと比較され,安富断層の変動とその特性が調べられた. 断層破砕帯では,ひずみ分布が空間的にも時間的にも均一でなく,ひずみの蓄積と解放が行なわれている.これは,破砕帯の弾性定数が周囲のものより小さいことと破砕帯内の激しく破砕されている部分の塑性流動とにより生じる.塑性流動は,破砕帯内の応力が地震前に降伏応力を越えたときにはじまる.破砕帯の幅は広く,そこはシェアー・ゾーンである.破砕帯の微細な地形は形成され続けており,尾根と谷の屈曲や地塊の高さの差として断層の変動様式をよく反映している,その変動は,破砕帯近傍で発生する中小の地震と関連しており,LENSEN(1971)により導入された地震に関係する変動の繰り返しとして説明できる.なお,変動を示す地形の規模が小さいことから,このような変動が生じるのは,断層の浅い部分に限られる.
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