水平変動ペクトルの新しい推定方法として,最大せん断ひずみを拘束条件として用いる測地網平均法を開発した.この平均法により,物理モデルを用いずに,また,網をゆがめことなく網を自動的に固定することが可能である.さらに,この方法は,回転楕円体上の網に適用でき,拘束される点を自由に選ぶことができる.この方法を,雲仙火山の小規模GPS測量網に適用した結果,普賢岳の点が1990年11月と1991年2月との間に西方向へ12cm動いたことが分かった.また,一等三角測量(1882-1909)及び精密測地網測量(1973-1989)のデータを用いて,この方法を日本の全国的な一等三角網に適用したところ,プレート運動に起因すると考えられる地殼変動が得られ,日本列島の東北部と西南部とでは水平変動ベクトルのペターシが異なることが分かった.さらに,選ばれた固定点に対して水平変動ベクトルを変換することにより,プレート境界や構造線が存在すると考えられる地域の地殼変動が調べられた.この結果,東海地方の駿河トラフ,糸魚川―静岡構造線,男鹿―牡鹿構造線及び九州の別府―島原地溝周辺の特徴的な地殼変動が明らかにされた.
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