ウイルス感染の危険性を音環境の側面から評価する新たな手法の提案を最終的な目標に掲げ,その端緒として,本研究では対人距離と室内の暗騒音が発話レベルに及ぼす影響を定量的に捉えることを試みた。発話者と聴取者を2名一組とし,暗騒音レベル5条件と対人距離4条件の計20条件で被験者による心理音響実験を実施した。その結果,対人距離より暗騒音の方が発話レベルへの影響は大きく,暗騒音レベルの2次式で発話レベルを予測できる可能性があることがわかった。また,暗騒音レベルが50 dB程度であれば,日常会話での発話レベルは60 dB程度となり,発話者はそれほど声を大きくすることなく,聴取者も聴き取りにくい印象にはならないことが示唆された。