大気汚染環境の改善と作物生産の維持向上の施策に資するために, これまでに多数報告されている作物の光化学オキシダント (オゾンおよびPAN) 感受性を葉面可視被害および生長・収量被害の面から整理し, 光化学オキシダントに対する作物種間および品種間での相対的な感受性のランクづけを行った。
1) 可視被害から見た作物種間の相対的なオゾン感受性リスト
オゾンの暴露実験で, 可視被害を生じるオゾンのべき乗化ドース ((濃度)
2×暴露時間) により, 作物のオゾン感受性を比較すると, オゾンに感受性の最も高い作物はホウレンソウ, ハツカダィコン, タバコ, アサガオやネギなどであり, ラッカセイ, トマト, エダマメ, 水稲やサントウサイなどがこれに次ぎ, カリフラワー, グラジオラスやキャベツは最も抵抗性であった。
2) 可視被害から見た作物種間の相対的なPAN感受性リスト
PANに最も感受性の高い作物はペチュニアであり-野外では4~5ppb程度の汚染が4~5時間程度継続すると被害が発生する。レタス-サラダナ-イソゲンマメ-トマト, ホウレンソウやフダンソウなども感受性が高く, ハツカダィコンとトウモロコシは抵抗性である。
3) 可視被害から見た作物品種間の相対的なオゾンおよびPANの感受性リスト
オゾンやPANに対する植物の反応は作物種間ばかりでなく, 品種間でも大きく異なっている。オゾンに対する品種間差異はタバコ, インゲンマメ, ダイズや水稲など多くの作物で報告されているが, PANでの品種間差を調べたものは少ない。PANに対するペチュニアの感受性は品種や系統で大きく異なり, 白花系が最も感受性が高い。
4) 生長・収量被害から見た作物種間の相対的なオキシダント (主としてオゾン) 感受性リスト
わが国にはオゾンの長期暴露実験とオープントップチャンバあるいはフィルタードエアチャンバを用いた空気浄化法試験によってオゾンやオキシダントによる作物の生長・収量被害の報告はあるものの, 作物種間の生長・収量被害の感受性を比較できるデータはほとんどない。
アメリカでは大気汚染による主要な作物の収量減少を評価するための国家プロジェクト (NCLAN) において1980年からオープントップチャンバを用いての8年間の調査が行われた。バックグラウソドレベルの0.025ppmと0.06ppm (生育期間中の日中7時間の平均濃度) のオゾン暴露での作種物間の生長・収量低下を比較してみると, 生長・収量低下は, カブ>ダイズ>ホウレンソウ>コムギ>ワタ>トウモロコシの順であった。
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