大気汚染学会誌
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25 巻, 3 号
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  • データーばらつきの要因分析と一般環境大気中繊維によるリスクの試算
    岩井 和郎, 細田 裕, 横山 邦彦, 富田 真佐子, 前田 厚志
    1990 年 25 巻 3 号 p. 181-191
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    アスベスト暴露と悪性腫瘍発生との間の量反応関係については, この10年間に報告が見られるがその成績にはかなりのばらつきが見られる。その原因を明らかにしてどの報告の相対危険度を用いれば良いのかを知るため, 世界の17の報告についてその背景因子を分析した。
    対象数とともに追跡期間とその間の死亡数/率が重要で, 測定された繊維数の正確さと中皮腫診断の信頼度も有意の因子となる。仕事の種類もアスベスト繊維の物理的化学的性状に関係し, したがってリスクの程度にも関連し得る。
    17の報告をそれぞれの因子で評価採点し, その合計点数で報告の評価を行った。その結果, またEPAの計算も考慮し, 1f・y/ml当たり平均1%の肺癌増加があると考えて良いと思われた
    その値を用いて一般大気中濃度のアスペストによる肺癌の生涯リスクと年間死亡率とを推定計算した。併せて中皮腫のそれも計算したところ, 現在の年間死亡率に近い数字となった。
  • F344ラットを用いた発癌実験における量-反応関係に関する評価
    鈴木 忠男, 中島 徹, 前島 一仁, 加藤 温中, 高木 由紀, 桑原 紀之, 久永 明, 石西 伸
    1990 年 25 巻 3 号 p. 192-205
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
    ディーゼル排気の健康影響を調査する目的で, F344ラットを用いた長期吸入実験を行った。実験は, 呼吸器系の腫瘍の発生を検索する発癌性試験および吸入開始後6か月ごとの病理組織学的変化を評価する長期吸入試験に関して実施した。
    ディーゼルエソジソは小型 (LD), 大型 (HD) を用い, いずれも定常運転とした。実験動物として4週齢のSPFラットを導入し, 予備飼育後, 5週齢より実験に供した。LD, HD系列とも, ディーゼル排気の吸入群は各4群 (LD;2.3, 1.1, 0.4, 0.1mg/m3, HD: 3.7, 1.8, 1.0, 0.5mg/m3) とし, またそれぞれに対照群を設定した。各実験群とも雄120匹, 雌95匹のラットを横層流型の吸入チャンパーに収容し, 1日16時間, 週6日, 最長30か月間吸入させた、結果は以下の通りである。
    (1) 30か月吸入後の各実験群の動物の生存率は, いずれも30%-40%であり, 性差は見られなかった。
    (2) ディーゼル粒子の吸入群での炭粉沈着は, 吸入期間が短期である場合や吸入物質が低濃度である場合には肺胞腔が主であったが, 吸入期間の延長および濃度の上昇とともに, 間質内への沈着も強くなることが認められた。
    (3) 炭粉沈着にともなって, II型肺胞上皮の腫大および呼吸細気管支上皮の末梢への伸展, 増生を認めた。これらの過形成性病変は吸入物質濃度や吸入期間に比例して増生し, 高濃度の長期吸入の実験群では, 多発した個々の病巣が相互に癒合し, 腺腫性過形成巣の形成を認めた。
    (4) 肺の原発性腫瘍はすべてが上皮性腫瘍で, 非上皮性腫瘍の発生はなく, 腺腫, 腺癌, 扁平上皮癌, 腺扁平上皮癌が見られたが, 各実験群における発生腫瘍の組織型に特異性は認められなかった。
    (5) 肺腫瘍の発生率は全体的に低く, HD系列の37mg/m3群でのみ65%に上昇し, 対照群との間に有意差 (P<0.05) を認めた。
    (6) 他臓器の腫瘍として, 白血病, 精巣間細胞腫, 下垂体腺腫, 副腎褐色細胞腫などの発生率が高かったが, 各実験群間での有意差は認められなかった。
  • 兵庫県における水銀汚染度地図の作成
    小林 禧樹, 中川 吉弘
    1990 年 25 巻 3 号 p. 206-211
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ウメノキゴケParmclia tinctorum Ny1.の水銀濃度は分析した18種の着生地衣植物の中も比較的高く, また分布域も広く, 採集もしやすいところから, 本種が水銀による大気汚染の指標植物として優れていることを示した。次に発生源を特定できない地域においてもウメノキゴケの水銀濃度が大気中の水銀濃度を反映していることを両者の回帰分析の結果から明らかにした。ウメノキゴケの水銀濃度と硫黄含有量との間には正の相関関係がみられた。また着生地衣植物の生育分布状態よりもとめたIAP値 (大気清浄度指数) とウメノキゴケの水銀濃度との間には負の相関関係がみられ, 水銀が複合大気汚染物質の一要素であることが示唆された。そして兵庫県下190地点から採集したウメノキゴケの水銀濃度の分析から, 日本海側を除く県下全域の水銀汚染度地図を作成し, 水銀による大気汚染の態様を広域的に明らかにした。
  • 大久保 洋一, 葛島 知恵子, 金子 タカシ, 土屋 順一, 阿久津 好明, 田村 昌三, 吉田 忠雄
    1990 年 25 巻 3 号 p. 212-220
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    シガレヅトスモーク中には高反応性で見かけ上長寿命の気相ラジラルが存在することが見いだされている。このラジカルの生体への有害性に関する基礎的な知見を得るため, シガレットスモークおよびスモーク中の気相ラジカル生成をモデル化したオレフィン/NO/空気系反応ガスが生体膜の主要構成脂質である高度不飽和脂酸 (PUFA) の自動酸化を開始することを共役ジエン生成法および酸素吸収法を用いて検討した。その結果, シガレットスモークは主としてその気相ラジカルによりPUFAの自動酸化を開始し, 生体に有害な過酸化物を生成することを見いだした。
  • 黒田 大介
    1990 年 25 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    水質分析で使用されているヒドラジン還元-NEDA法を排ガス中の窒素酸化物分析法として利用する目的で, 性能向上のための改良を行った。本法による硝酸イオンの還元率はpH, ヒドラジン濃度, 温度, 還元時間, 触媒量, 容器形状, 反応液量, 攪拌条件などの多くの操作因力が影響する。これらの操作因子の影響を実験計画法 (L16) を用いて検討した結果, 溶液のアルカリ度が最も影響の大きい因子であることが分かった。さらに, 還元率を向上させるには温度とヒドラジン濃度の組合せ効果が最も重要な要因となる。これら硝酸イオンの還元操作因子の最適条件を組合せて新しいヒドラジン還元-NEDA法の分析操作を決定した。提案した改良法の利点は次のようなものである。
    1) 硝酸イオンの亜硝酸イオンへの還元率は93%以上である。
    2) 標準試料による繰り返し測定の再現性精度は0.1%以下である。
    3) 分析操作の改良により窒素酸化物の測定時間が短縮された。
    以上の結果から, 本改良法は公定法 (亜鉛還元-NEDA法) より勝れた窒素酸化物測定法であると考えられる。
  • 藤田 慎一, 高橋 章
    1990 年 25 巻 3 号 p. 227-231
    発行日: 1990/05/10
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    九州の北西海域で実施した連続観測のデータをもとに, 硫酸塩の洗浄比Wとその季節変化について調べた。寒候季のこの海域で, 降水中に観察される高濃度の硫酸塩の取り込み機構についても, 検討を加えた。
    15日毎・1年間にわ1たって採取した降水と粒子の分析データをもとに求めたWは, 100~2500の範囲に広く分布し, その出現頻度はWg~450付近に幾何平均値をもつ対数正規分布にほぼ従った。水平規模が200km以内の各地点ではWgの地域差は比較的小さいが, 季節変化はきわめて大きく, 寒候季のWgは暖候季のそれの2倍以上の値を示した。硫酸塩の起源を海塩と非海塩の二つに分けて変動特性を調べた結果, 寒候季のWgの増加には, 雲より下層での海塩粒子の取り込みと, 雲内における酸化反応の双方が関わっているものと推察された。
  • 1990 年 25 巻 3 号 p. N30
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
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