大気汚染学会誌
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24 巻, 2 号
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  • 呼吸器症状・呼吸機能に及ぼす影響
    常俊 義三
    1989 年24 巻2 号 p. 75-89
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気汚染の量・質的な変化および医学的知見・検査手法の進歩により, 大気汚染の人体影響についての疫学的研究の問題点も次第に変化してきた。
    本稿では大気汚染の慢性影響に関する疫学的研究のうち呼吸器症状有症率, 学童の呼吸機能にあたえる影響について概説し, 疫学研究の今後の問題について述べた。
    成人を対象とした持続性せき・たん, 慢性気管支炎の有症率については, 現時点では, 過去の暴露量が均一な集団が得難いこと, 過去のSO2による汚染の影響が残されていることを考慮し新たな調査手法の開発が必要である。
    学童の呼吸機能については影響を把握する有効な手法であるが, 測定値が測定機種により異なるという基本的な問題が残されている。学童のぜん息については, 血清中のIg E濃度で識別したアレルギー素因の無い群でのぜん息有症率が大気汚染濃度の高い地区程高率であることから, これら素因のない群でのぜん息発症機序の解明が必要であること等を指摘した。
  • 小野 雅司, 平野 靖史郎, 村上 正孝, 新田 裕史, 中井 里史, 前田 和甫
    1989 年24 巻2 号 p. 90-99
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    都内幹線道路沿道の一般家庭内における各種汚染物質の環境濃度を測定し, 局所的汚染の実態を明らかにするとともに, 住民の汚染物質への暴露量の推定に資するため, 昭和61年3月に東京都葛飾区内の水戸街道および環状七号線沿道で150世帯を対象に, 小型粉じんサンプラーによる屋内粒子状物質濃度並びにNO2バッヂによる屋内・屋外二酸化窒素濃度測定を実施した。
    各汚染質の平均濃度は, 粒径2.5μm以上の粗大粒子23.6μg/m3 (n=105, s.d.=12.9μg/m3, 以下同様), 粒径2.5μm以下の微小粒子35.4μg/m3 (105, 24.2μg/m3), 屋内NO243.7ppb (125, 26.5ppb), 屋外NO227.7ppb (125, 6.8ppb) であった。屋内における微小粒子濃度とNO2濃度は, それぞれ家庭内喫煙, 開放型ストーブ使用よより濃度の上昇が認められた。また, 屋内における微小粒子濃度とNO2濃度は, 渥内に汚染質発生源 (喫煙あるいは開放型ストーブ) がある場合には鉄筋鉄骨の世帯が高く, 汚染質発生源がない場合には逆に木造の世帯が高く, 家屋構造の影響を強く受けていた。
    家庭内喫煙, 暖房方法の影響を除いた, 屋内の微小粒子濃度, 屋内および屋外のNO2濃度は道路端に近い地域の世帯で高く, 道路からの影響が示唆された。
  • 下原 孝章, 宇都宮 彬, 岩本 眞二
    1989 年24 巻2 号 p. 100-111
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    走査-分析型電子顕微鏡を用い, ボイラー, 土壌等の10種類の発生源粉じんに対し形状, 組成評価を行った。
    形状的特徴としては, 石炭, 灯油, C重油ボイラー粉じんには球形粒子が観察された。組成的には, Ti, Vが各々, 石炭, A-C重油ボイラー粉じんに特徴的な元素であり, またNiは, C重油ボイラー粉じんに特徴的な元素であった。したがってこれらの元素は一般環境粉じん中から発生源由来の粉じんを識別する際の指標になると考えられた。
    さらにこれら粉じん組成の簡易な識別法としてスパイダーズモデルを検討した。この手法により石炭ボイラー粉じん, 土壌粉じんは組成的に, 各々3および4種のタイプに分類できた。それ以外の粉じんは何れの粒子も均一な組成を示し, 各々, 1種のタイプとなった。
    以上の結果をもとに, 一般環境粉じんの観察を行い, これら粒子の中から発生源由来と推定される特徴的な粒子の識別を試みた。さらに, これら粒子の化合物形態の推定を行った。
  • 金子 タカシ, 古澤 貢治, 天野 寿二, 大久保 洋一, 土屋 順一, 吉沢 二千六, 阿久津 好明, 田村 昌三, 吉田 忠雄
    1989 年24 巻2 号 p. 112-118
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    可燃物や燃料の燃焼からの気相ラジカルの発生をESRスピントラッピング法により調べた。その結果, 高反応性であるにもかかわらず見かけ上長寿命の酸素中心ラジカルを, ポリエチレン, ポリプロピレン, ポリスチレン, ポリメタクリ酸メチル, セルロース, 灯油, ベソゼン, アセトン, メタノール, n-ブチルアルコール, sec-ブチルアルコール, tert-ブチルアルコール, メタクリル酸メチルの燃焼ガスから検知した。窒素原子を含まない系においてもラジカルが生成したことから, ラジカルの生成機構はシガレットスモークの場合とは異なることが示唆される。
  • 田中 茂, 尾上 勉, 橋本 芳一, 大歳 恒彦
    1989 年24 巻2 号 p. 119-129
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    黄砂現象によりアジア大陸から飛来した土壌粒子の我が国の環境大気に及ぼす影響を把握するために, 環境庁による国設大気測定網 (NASN) の札幌, 野幌, 仙台, 新潟, 東京, 川崎, 名古屋, 京都八幡, 大阪, 尼崎, 倉敷, 松江, 宇部, 筑後小郡, 大牟田の全国15地点における昭和52年 (1977) 4月から昭和62年 (1987) 3月までの10年間の浮遊粒子状物質の分析結果を用いて検討を行った。その結果, 大気中のA1およびCa濃度は, 毎年, 黄砂現象が出現する春季 (3月, 4月, 5月) に極めて高い濃度が観測され, 通常期と比較して, Alの場合, 2.2~5.3倍高くなり, また, Caの場合も1.9~6.2倍高い値となった。そして, 大気中のAlとCaの濃度比 (Ca/Al) に注目すると, 大都市および工業都市では, 通常期においてその値は0.71~1.22と高いのに対して, 黄砂期には0.72~0.97と若干減少した。一方, 地方都市では, 通常期において, Ca/Alて濃度比は0.54~0.59と低いのに対して, 黄砂期には0.66-0.78と逆に増加する傾向が認められた。これは, すべての都市において, 黄砂期には飛来してきた土壌粒子の影響を強く受け, 大気中のCa/Al濃度比が, 飛来した土壌粒子の発生源と推定される中国砂漠土壌中のCa/Al濃度比 (0.82~0.85) に近づく事が原因として考えられる。
    各都市における黄砂期に飛来した土壌粒子の大気中の全土壌粒子に占める割合は, 56~80%であり, 平均で68.1%という高い値であった。そして, 黄砂期に飛来した土壌粒子の降下量を算出したところ, 0.4~2.3 (ton/km2・month) と推定できた。また, 地域的には, 西日本-おいて黄砂の影響をより強く受ける事が明らかとなった。
  • 鵜野 伊津志, 植田 洋匡, 若松 伸司
    1989 年24 巻2 号 p. 130-143
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    都市域の夜間の二酸化窒素 (NO2) の高濃度発現のメカニズムを札幌市における野外観測データをもとに検討し次の結論を得た。 夜間の都市域ではNO2/NOx比と03濃度には正の相関がみられ, 上空ほどNO2/NOx比は増大する。また, NO2濃度の鉛直プロファィルは発生源からの鉛直乱流拡散と03との反応の和によって形成され, その鉛直勾配はNOxに比較して極めて小さい。 夜間の実測データの解析から, 発生源から排出されるNO2のNOxに占める割合は8.3%程度であり, 夜間においてNO+03→NO2+02の反応により生成されるNO2がNO2全体の85%に達することが示された。 また, NO2+03の値は夜間の都市域では鉛直方向にほぼ一定値をとった。
    弱風時と地上付近では, NOが03に対して大過剰に存在し, 上空からの03の供給量が実質的にはNO2の生成量になると考えられる。 一方, 強風時には, NOxは低濃度となり, この場合には03がNOに対して供給過剰となり, O3との反応によりNO2の濃度レベルはノミックグランド03の濃度レベルに維持される。これらの結果は, 夜間の都市域のNO2汚染の制御には, 上空までの汚染質濃度の鉛直プロファイルを加味した検討が不可欠であり, バックグランドとしてのO3濃度が都市域の高濃度NO2汚染問題の解明に重要であることを示している。
  • 増原 孝明
    1989 年24 巻2 号 p. 144-151
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本報では, ルーチン観測から容易にデータの入手できる地上風速と気温データとを用いて, 大気拡散を支配する主要な安定度パラメーターである地上付近から百ないし百数十メートル程度の温位勾配を推定する実験式を作成した。
    この推定式は従来環境アセスメントで頻繁に使われているパスキル安定度分類と比較して鉛直温位勾配をより適確に反映していることが判明した。 また, 実際の大気汚染質 (CO) の濃度を日平均値で基準化された各時刻の排出量で割った修正濃度との関連を, 全一般局で地域平均したデーターで調べてみたが, この結果もタワーデーターを用いた場合やパスキル安定度分類法をもちいた場合よりはかなり相関が向上していた。
  • 中西 基晴, 松浦 章良, 渡辺 征夫
    1989 年24 巻2 号 p. 152-159
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    環境大気中に存在する低濃度のPPNをPANと同時にGC (ECD) 法で測定する方法を検討した。 実験およびGCの校正に使用した既知濃度試料ガスは, 酸素ガス中の亜硝酸プロピルを光酸化する方法により調製した。 大気試料の捕集にはドライアイスーエタノールで冷却したテフロン製トラップ [充填剤; Fluoropak 80 (20~40 mesh, 0.39)] を用いた。 本トラップに捕集されたPPNは, 冷却状態では2日間は安定であり, 20~50℃で脱離させれば, トラップによる吸着・分解は無視できた。 また, PPNやPANとガスクロ・マトグラム上で同付近に現れ, 定量を妨害する成分の影響を除くために, 10% KOHを塗布したテフロンビーズを充填したカラムを, 分離カラム→ ECD→ 除去カラム→ ECDのように接続して測定する方法を考えた。 これらの方法を利用することにより, 試料ガスを200 mlとした場合, 10 PPt (10-12 v/v) まで測定できた。 また, 本法により千葉県市原市内で測定した結果, PPNはPANの約11%で, 両者は高い相関関係を有していることが判った。
  • 池浦 太荘
    1989 年24 巻2 号 p. 160-162
    発行日: 1989/04/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気中のオゾン濃度を簡単に高感度で測定出来る蛍光光度法を開発した。 オゾンは・p-アセトアミドフェノール (AAP) 水溶液とpH 8.5の緩衝液を入れたインピンジャーに捕集され, 無蛍光のAAPと反応して強い蛍光を発する2量体を生成する。 蛍光誘導体として4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル酢酸 (HVA) とp-ヒドロキシフェニルプロピオン酸 (HPPA) も有用であったが, 蛍光強度とブランク値でAAPよりも劣っていた。 オゾン濃度は, 励起波長337 nm, 蛍光波長425 nmで蛍光強度を測定することにより求められる。 本測定法の検出下限は大気試料10 L吸引の場合約2 ppbであり, 紫外線吸収法によるオゾン測定値との対応も良かった (r= 0.99)。
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