大気浮遊粉じんなどの環境試料の変異原性を求めるには, 多くのプレート上に出現したコロニーを数える必要がある。この計数には莫大な時間を要し, この難点を解消するために自動コロニーカウンターが開発されている。しかし, 市販の自動コロニーカウンターによるコロニー計数値は肉眼による場合と異なる値を与え, この計数誤差はコロニー数が増加するにつれて大きくなる傾向が認められる。これらの原因としては, 1) 自動コロニーカウンターはプレート上の重なり合ったコロニーを1つと数える, 2) コロニー数が増加するに伴ない, コロニー粒径が小さくなり, 自動コロニーカウンターの感度が低い値に設定されている場合には, 設定された大きさ以下の小さなコロニーを検出することが出来ない, ことが主な原因であることが判った。
第1の問題については, 100から2,000個までのコロニーがそれぞれプレートに一様に分布していると仮定したモンテカルロ法によるシミュレーションから, 単独で存在するコロニーおよび2, 3, 4, n個のコロニーが重なり合って存在する数の出現確率を算出することにより解決した。ここで, シミュレーションに必要なコロニーの粒径はコロニー数の関数として実験値より求めた。算出された確率の関数を用いて, 自動コロニーカウンター計数値を目視コロユー数に換算できる補正式を導いた。
第2の問題は, コロニー数に応じて, 自動コロニーカウンターの感度を変化させて測定することにより解決した。すなわち, コロニー数1,000個までは中程度の感度で, また, 1,000個以上ではより高い感度で計数すると良好な値が得られることが判った。
これらの事から, 作成した補正式とプレート上のコロニーの検出に適した感度の選択とを組み合わせることにより, 自動コロニーカウンターによる計数値を通常の目視コロニー数と同等の値に良好に換算できることが判った。
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