半導電性の表面保護層をSeTeやAs
2Se
3などの電子写真感光体の上に設けた時に起こる表面層からの正電荷の注入を防止するための電荷注入阻止層の材料としてチタンとジルコニウムのアルコキシドとアセチルアセトン化合物から形成される皮膜を導入し,その皮膜形成過程と電荷注入阻止能・機構について調べた.これらの有機金属化合物から得られる皮膜はTiO
2やZrO
2と似た構造を持ち均一で耐溶剤性・接着性に優れている.1,1'-Dimethylferroceneを分子分散したPolyarylateあるいはSnO
2/Sb
2O
3透明導電粉を分散したPolyacrylurethane樹脂表面層をSe-Te-Se感光体とAs
2Se
3感光体の上に形成した時に1/10以下に低下したコントラスト電位(暗時の表面電位-残留電位)は 0.2 μmのこれらの皮膜を挿入することによって表面層の無い場合と同じかそれ以上に増加した.これらの皮膜に20 - 30 %のシランカップリング剤を添加した場合には高湿度環境でも解像度低下が無く,これによって半導電性の表面保護層を設けた電子写真感光体を実用化した.電荷注入阻止層の満たすべき条件として界面に電荷を蓄積しないことと抵抗の電場依存性が小さいことが必要であることをモデル解析により明らかにした.
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