Covid-19罹患後に起立性調節障害を発症する児童・生徒が増加している.学校現場ではその対応に苦慮している.Covid-19罹患後に起立性調節障害を発症する機序について,デコンディショニングが考えられたことから,治療方針としては起立訓練を行うことが望ましいと考えられた.
養護教諭を対象にしたアンケート調査において,「起立性調節障害の児童・生徒が夜寝られず朝起きられない」という問題があることが明らかとなった.睡眠医学的な起立性調節障害の正体として体内時計が大きく後方へ後退し固定された状態と考えられている.西洋薬を用いた治療ではラメルテオンが用いられてきたが,近年,メラトニンやアリピプラゾールが用いられるようになった.これらの西洋薬は保険診療上,投与が制限される場合がある.動物実験の結果から,漢方薬の抑肝散加陳皮半夏は内因性メラトニンレベルの増加により,概日リズム障害に対して単独で有効な可能性がある.
双極症は重要な精神疾患のひとつであり,患者は躁または軽躁状態とうつ状態を繰り返し経験する.薬物療法が標準的な治療法であるが副作用による継続が困難な場合や,自律神経症状を中心とした多数の身体症状への対処が困難という課題がある.そんな中,鍼治療は非薬物療法として補完的な役割を果たせる可能性がある.本稿では,双極症に対する鍼治療の臨床効果について,国内外の臨床研究を紹介する.鍼治療は薬物治療で十分な効果が得られない,または副作用により薬物が用いにくい双極症患者のオプション治療となり得ることが示唆されており,双極症治療における新たな選択肢として患者の生活の質の向上に貢献する可能性がある.
パーキンソン病(Parkinson’s disease,PD)は運動障害を呈する疾患であり,PD病理が大脳皮質に広がった形であるレヴィー小体型認知症(dementia with Lewy bodies,DLB)は,高齢者での頻度が比較的高いことが知られる.近年PD/DLBの非運動性徴候,とくに膀胱症状を含めた自律神経障害が注目されている.PD/DLBの膀胱症状は,自律神経の病理変化に加え,最近,不安症/うつを介する機序も知られるようになってきた.本稿では,PD/DLBと膀胱症状について,次に不安症/うつと膀胱症状について述べ,最後に,PDとうつの合併例での膀胱症状について,自験例での結果を含めて述べた.PD/DLBの膀胱症状に対して,その病態も考慮しながら治療にあたることが,患者の生活の質の改善のために重要と思われる.