ダイオキシン類が結合する芳香族炭化水素レセプター(AhR)に関してはその作用、アミノ酸配列の解明等が進んでいるが、X線結晶解析等の3次元構造の解析はまだ成されていない。そこで毒性等価指数(WHO-TEF)が与えられているダイオキシン類のPCDD系列4個,PCDF系列6個,PCB系列8個計18個の化合物について
ab initio 分子軌道法ソフトGaussian 98でHF/6-31G*レベルで構造最適化を行うと共にその静電ポテンシャル図を求めた。静電ポテンシャル図はいずれも酸素と塩素の辺りが負で、炭素と水素の辺りは正で構成原子に関して加成的であってCoMFAの成立が予期された。それで毒性値としてAhR結合能 (RBA)、ラット肝サイトソルのEC
50, Mの -logEC
50で立体場及び静電場による比較分子場解析CoMFAを行った。原子電荷としては静電ポテンシャル誘導電荷のCHelpGを使用した。1,2,3,7,8-PeCDDを基準としてそれに他の化合物を置換塩素まで含めた各原子対で重ねる。PCDFはPCDDと平面的に重なるが、PCBはビフェニル環が互いに捩れているのでPCDDの片側から他方へ貫通する。すべてを重ね合わせてから成分数3で部分最小二乗法PLSを行い最終モデルの交差確認相関係数 q²=0.955 と高い値を得た。立体場と静電場の寄与の割合は51%対49%でほぼ等しい。この相関から外挿と内挿による予測を行った。結合能の高い2,3,7,8-TBrDD、2,3-diBr-7,8-diCDD等の臭素誘導体の外挿では実測値よりも低いが、1,3,7,8-TCDD、1,2,4,7,8-PeCDD等の内挿では逆に高いが実測値に大体近い。
抄録全体を表示