経口投与を可能とする有効な吸収改善プロドラッグ、すなわち経口化プロドラッグを開発する上で必要となる薬物動態速度論的アプローチ法を提唱した。本報告では、前報の生体膜透過過程に加え、経口投与された薬物の管腔内における分解性/代謝性の因子を考慮し、より実際的な状況をモデル化した。吸収率は、プロドラッグおよび管腔内でプロドラッグから生成したドラッグの吸収への寄与率(fc,dd)、それぞれの吸収クリアランスで表されるが、このような管腔内の分解/代謝の因子を組み込んだ吸収率の予測式は報告例が無い。また、有効な経口プロドラッグの分類と基準(the kinetic classification and criteria of orally effective prodrugs (KCCOEP))には、前報(Chem-Bio Informatics Journal, 8, 25-32 (2008))における膜透過過程における輸送と代謝のパラメーターに加えてfc,ddが加わり、管腔内の分解性/代謝性はプロドラッグの有効性の判断に大きく影響を与える因子であることが示された。本方法に従って現在使用されている経口化成功プロドラッグのレナンピシリンの評価を行ったところ、レナンピシリンの吸収クリアランスはレナンピシリンの活性体(ドラッグ)であるアンピシリンの値より極めて高いものの、吸収率としての改善率はその値に対応しておらず、これは高いfc,ddに起因していることが明らかとなった。これらのことから、現在使用されている経口化プロドラッグは各プロドラッグ間で程度の差はあるものの管腔内では分解/代謝が起こっていることが充分考えられる。したがって、合理的経口プロドラッグの開発にはこのfc,ddの値の評価が、生体膜透過性の評価と同様に極めて重要であることが示された。
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