Chem-Bio Informatics Journal
Online ISSN : 1347-0442
Print ISSN : 1347-6297
ISSN-L : 1347-0442
10 巻
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
Original
  • Babu Ajay P, Chitti Sashikanth, Rajesh B, Prasanth Vishnu V, Kishen Ra ...
    2010 年 10 巻 p. 1-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/30
    ジャーナル フリー
    新たなGSK-3β阻害剤をデザインする目的で、thiazolo[5,4-f]quinazolin-9-one 誘導体のドッキングスタディーを実施した。方法として、既存の thiazoloquinaizolin 誘導体12化合物(IC50: 0.56μM ~ 50μM)について AutoDock 3.05 を用いて解析し、得られたDock score -8.32kcal/mol ~ 10.49 kcal/mol は、IC50値との間に良好な相関が見られた。また、これらの化合物とGSK-3βとのドッキングシミュレーションはX線結晶解析における結合様式を類推するものであった。これらの解析を基に、CDK2およびCDK5と比較してGSK-3βに選択的な阻害剤としてthiazoloquinaizolin 誘導体16化合物をデザインし、Dock score として -10.53 kcal/mol ~ -13.14kcal/mol の値を示す化合物をデザインすることができた。これらの化合物のAutoDockシミュレーションによる相互作用様式は従来の化合物とは異なっており、新たなGSK-3β阻害剤のデザインする際に有用であると考えられる。
  • 臺場 昭人, 伊藤 哲, 竹内 勤, 養王田 正文
    専門分野: 分子生物学における情報計算技術
    2010 年 10 巻 p. 13-23
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/20
    ジャーナル フリー
    遺伝子発現解析を難しくしている要因の1つに発現データの不均一性があげられる。遺伝子発現データは特定の集団においても正規分布ではなく多様な分布を示す場合が多く、t検定などの記述統計的手法では対応できない場合が多い。このような問題に対応するためと解析の自動化を目的とした遺伝子発現データの解析手法を開発した。これは、層別化された患者群の遺伝子発現情報のヒストグラムから自動的にデータを評価するためのMembership Functionを形成し、これを用いてFuzzy Logicを行う方法である。この手法を用いて、関節リウマチ患者への抗TNF-α製剤の投与後14週後の効果を薬剤投与前の遺伝子発現データから予測するモデルを構築したところ、モデル生成用のデータ群において89%、トレーニング用のデータ群において94%、バリデーションのデータ群において89%の予測結果を得られた。以上の結果から、遺伝子発現解析において、本研究による自動Membership Function生成機能を適用したFuzzy Logicが極めて有効なツールであることが示唆された。
  • 石川 岳志, 桑田 一夫
    2010 年 10 巻 p. 24-31
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    フラグメント分子軌道法を高速化するため、モノマーSCC計算にダイナミックアップデートの手法を導入した。この手法は、既に、いくつかの量子化学計算で、線形方程式を解く際に利用されている。ポリグリシン(GLY20、GLY40、GLY60)によるテスト計算の後、HIV-1プロテアーゼのロピナビル複合体の計算を行った。結果、モノマーSCC計算の時間が3分の1程度に短縮された。また、モノマーSCC計算のイタレーション数が並列数に依存することを確認し、これについても議論した。
  • 渡邉 博文, 田中 成典, 沖本 憲明, 長谷川 亜樹, 泰地 真弘人, 谷田 義明, 三井 崇志, 勝山 マリコ, 藤谷 秀章
    2010 年 10 巻 p. 32-45
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/20
    ジャーナル フリー
    先端的な4つの計算法、FMO法、QM/MM法、MM-PB/SA法、MP-CAFEE法を用いてFKBPと10種類のリガンドの結合能を評価し、実験値との相関を比較した。結果として、4つの方法の内、どの方法を用いても実験値と比較的よい相関が得られることを確認した。またこの結果をもとに、どの効果を取り入れることが実験値との高い相関を得るのに重要であるかを議論した。さらに、これらの方法における溶媒効果の取り入れやエントロピーの寄与の重要性について詳しく議論した。計算時間についても検討を行い、最後にタンパク質リガンド結合能計算法の発展について今後の展望を述べた。
  • Babu P Ajay, Narasu Mangamoori L, Kolli Srinivas
    2010 年 10 巻 p. 46-60
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    CDK2(Cyclin Dependent Kinase 2)は癌治療の新たな分子標的であり、より特異的で強力かつ選択的なATP拮抗型CDK2阻害剤を見いだすべく、いくつかの研究が行なわれてきている。この論文では、我々の前回の研究で得られた4化合物から導かれた特徴に基づき、ZINCデータベース中からLipinskiのルールにかなった54,558化合物を選び実施したバーチャルスクリーニングについて報告する。CDK2酵素である2UDO(PDBのID)に対する結合能を調べるために、全化合物についてGOLD(Genetic Optimization for Ligand Docking)ソフトウェアを用いてドッキングとスコアリングを行ない、ドッキングスコアが41.71-82.33 kcal/molとなるヒットを得た。その結果得られた392のヒット化合物はCDK2とGSK-3β(Glycogen Synthase Kinase-3β)との特異性に基づいてふるいにかけ、CDK2により特異的な17化合物を得た。さらに、17個の最も良い結合配置について、GOLD 3.1に組み込まれているGOLDスコア、CHEMスコア、eHiTS_score(electronic High Throughput Screening)、MolegroソフトウェアのMolDockスコアとX-Scoreといった5種類の異なったスコアリング関数を用いて評価するコンセンサススコアリング法により再スコアリングを行なって、上位にランクされるヒット化合物を選び出した。最後に、上位10化合物についてMTTアッセイを用いたヒト肺腺癌上皮細胞株A549に対する抗増殖効果を調べた。
  • 辻 敏之, 赤沢 史嗣, 沢田 隆介, 美宅 成樹
    2010 年 10 巻 p. 61-73
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/30
    ジャーナル フリー
    1回貫通型膜タンパク質(MP1)は膜タンパク質なかで最も多くの割合を占めており、シグナル伝達や免疫機能、細胞接着など重要な機能を担うタンパク質群である。我々は2つのフィルタからなる1回貫通型膜タンパク質予測システムSOSUImp1を開発した。最初のフィルタとして膜タンパク質予測システムSOSUIを用いて1~2つの膜貫通領域を持つタンパク質だけを抽出した。第二段階ではシグナルペプチドの有無の判別を行った。この判別ではシグナルペプチドがあると考えられるアミノ末端付近の疎水性領域における物理化学的性質の分布を判別分析法によって解析した。この結果、SOSUImp1は5つのタイプ(細胞質水溶性タンパク質、分泌型タンパク質、1回貫通型膜タンパク質シグナルペプチドあり、1回貫通型膜タンパク質シグナルペプチドなし、複数回貫通型膜タンパク質)のタンパク質判別を高精度で行うことに成功した。特にシグナルペプチドを持つ1回貫通型膜タンパク質についてはrecall = 90.5%、precision = 86.4%という高い予測精度であった。シグナルペプチドを持つ1回貫通型膜タンパク質は細胞間シグナル伝達において重要な機能を持つタンパク質群である。本研究で開発したSOSUIMP1はインターネット上で公開している。URLはhttp://bp.nuap.nagoya-u.ac.jp/sosui/mp1/ である。
  • Avupati Vasudeva Rao, Kurre Purna Nagasree, Bagadi Santoshi Rupa, Muth ...
    2010 年 10 巻 p. 74-86
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/03
    ジャーナル フリー
    PPARδ作用薬として、一連の二アリル置換チアゾール類とオキサゾール類について、分子ドッキングを実施した。Molegro Virtual Docker v4.0.0を用いて、代表的な化合物セットを3D5Fの活性部位領域中に結合させるために、ドッキング手法を適用した。それらの化合物について、結合自由エネルギー(kcal/mol)と対数値(1/EC50)の間には良い相関関係がみられた(r2=0.719)。ドッキングシミュレーションは結晶構造の結合様式とほとんど同じような、つまり、RMSD が0.91Å以内の結合様式を明確に予測できた。Ar1とAr2置換基による検証に基づいて、単純な組み合わせを考慮しながらリガンドの設計を開始した。設計化合物について、ACD/ChemSketch v12.0を用いて、生物薬学的特性、すなわち、疎水性(logP)、溶解性(logS)、イオン化定数(pKa)、分布係数(logD)を計算した。評価のために、水素結合相互作用を調べるとともに、生物活性予測値(log(1/EC50))と生物薬学的特性値との間の2変数による統計的な相関を検討した。こうしてリガンド11(cC)はPPARδに対して高い結合エネルギー(-206.73 kcal/mol)を示すことがわかった。この結果は、設計リガンドとPPARδ結合部位領域との間で起こる相互作用の型を理解し、二アリル置換チアゾール類とオキサゾール類のAr1とAr2置換基の重要性を説明するのに役立つものである。
  • 小野寺 賢司, 上條 俊介
    2010 年 10 巻 p. 85-99
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/10
    ジャーナル フリー
    ドッキングによるバーチャルスクリーニングは近年、創薬の中でますます重要になってきている。数々のドッキングプログラムやスコア関数が開発されてきているが、それらはバーチャルスクリーニングに対する期待に十分応えてはいなく、まだまだ、改良される余地があるといえる。本研究では、いくつかのドッキングスコアを組み合わせ評価するコンセンサススコアリングの考え方を導入・発展させ、DOCK, FRED, GOLDの3つのドッキングプログラムを使って、バーチャルスクリーニング精度向上のためのドッキングスコアの改良を試みた。ドッキングスコアはドッキングプログラムにおいて、通常、いくつかあるスコア成分の単純和として得られるが、本研究では、それぞれのスコア成分に適切な重み付けを行った。重みの最適化を行うにあたって、特定の標的タンパク質に偏らない汎用に使用できるドッキングスコアの開発のために、113の多様な標的タンパク質、及び、2000を超える「おとり」となる低分子化合物との結合予測結果を利用した。結果として、正しく検出できる標的タンパク質はドッキングプログラム単体で最大52.4%(GOLDにおいて36.8%から56.1%へ向上)向上させることができ、また、ドッキングプログラムを組み合わせることで最大、77.2%(GOLDとFREDの組み合わせ)向上し、約70%の標的タンパク質で正答を導き出せることが分かった。
  • 高乗 仁, 土井 淳, 江口 至洋, 宮城島 利一, 瀧 孝雄, 牧野 公子, 寺田 弘
    2010 年 10 巻 p. 100-110
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/15
    ジャーナル フリー
    糖鎖の変化が癌において果たす役割を解明することを目的にして、乳癌の発症および進展に伴う糖鎖遺伝子107種の発現変化をGEO登録データを利用して、in silico解析を行った。GEO登録データGSE15852に基づき、43名の乳癌患者から採取された乳癌組織および対応する正常組織における遺伝子発現を比較したところ糖鎖遺伝子中24種が統計的に有意に発現変化していることが明らかになった。発現変化した遺伝子の分類は、N-アセチルガラクトサミン転移酵素5種、糖ヌクレオチド輸送体3種、アスパラギン結合型糖鎖修飾酵素3種、N-アセチルグルコサミン転移酵素2種、フコース転移酵素2種、硫酸転移酵素2種、スルファターゼ2種、グリコサミノグリカン合成酵素、グリコシル基転移酵素、グルコース転移酵素、シアル酸転移酵素、及びN-アセチルグルコサミニダーゼ各1種であった。更に、癌の進行段階に依存して特定の糖鎖遺伝子の発現が変化するか否かを解明することを目的として、GEO登録データGDS2045に基づく、乳管癌の前浸潤性と浸潤性間の遺伝子発現の比較を行ったところ6種の糖鎖遺伝子に有意な発現変化が認められた。また、注目すべきことに、この中、3種が硫酸基付加関連の遺伝子であった。発現変動が認められた糖鎖遺伝子を糖鎖代謝パスウェイにマッピングし、糖鎖遺伝子の発現変化が発癌に及ぼす効果について、既知実験報告を参照して議論した。
  • 小川 哲司, 中野 達也
    2010 年 10 巻 p. 111-133
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル フリー
    この論文では、ユニバーサル力場(UFF)を修正した新しい力場を提案する。UFFは、分子力場計算や分子動力学計算で広く用いられているが、例えば水素結合を正しく見積もることには不向きである。そこでUFF力場に、静電項の計算に修正電荷平衡(MQEq)法を、van der Waals項の計算にスケール因子を組み合わせた、新しい可変電荷力場である、拡張ユニバーサル力場(XUFF)を提案する。MQEq法のパラメータとスケール因子は最適化を行い、ABINIT-MPプログラムへ実装した。XUFFが、水素結合が関与した分子ペア、リガンド、タンパク質などの分子配置解析に有用であることを示した。
Erratum
feedback
Top