消化管内での溶解および膜透過過程は微分方程式で表現されている。本研究の目的は、経口吸収率(
Fa)の近似解析解と数値積分解を比較することである。近似解析解としては、消化管を単一コンパートメントと仮定し、(I) 一次線形近似 (
Fa =1–
Pn/(
Pn –
Dn)exp(–
Dn) +
Dn/(
Pn –
Dn)exp(–
Pn),
Dn: dissolution number,
Do: dose number,
Pn: permeation number はそれぞれ溶解速度、溶解度/薬物用量比および 膜透過速度を表す無次元数)、 (II)律速過程近似 (
Fa = 1–exp(–
Pn),
Fa =
Pn/
Do and
Fa=1–exp(–
Dn)) および (III)定常状態近似(
Fa =1–exp(–1/(1/
Dn +
Do/
Pn)), if
Do < 1,
Do = 1)を検討した。一方、数値解析は、胃、小腸および大腸を、それぞれ1,7,1のコンパートメントで表現し、薬物移動、溶出、膜透過などをすべて動的にシミュレートした。体内への吸収は小腸のみとし、小腸の各コンパートメントは均一と仮定した。これらの仮定は、非解離性化合物でトランスポータなどの基質でない場合には概ね適切であると考えられる。計算は実際の薬物範囲を想定して行った (溶解度:0.001 – 1 mg/mL、 拡散係数:0.1 – 10 ×10⁻⁶ cm²/sec、 薬物用量1 – 1000 mg、 薬物粒子径 : 1 – 300 μm、 有効膜透過係数: 0.03 – 10 ×10⁻⁴cm/sec)。 合計 7056 の条件で計算を行った。一次線形近似および律速過程近似は、
Faを過大評価したのに対し(r² = 0.80 and 0.98, root mean square error (RMSE) = 0.28 and 0.079)、定常状態近似ではほぼ数値解析と一致する結果が得られた(r² = 0.99, RMSE = 0.047)。
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