日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第18回大会
選択された号の論文の123件中101~123を表示しています
ポスター2
  • 中村 風雲, 入戸野 宏
    セッションID: PT2_27
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    感情状態が認知処理に影響を及ぼすことはよく知られている。特に,ポジティブ感情の下では,注意焦点が拡大することが示されている。Pronin, Jacobs, & Wegner ( 2008 ) は,速読や再生速度の速い映像の聴取などで,参加者の思考速度を加速させると,ポジティブ感情が誘発されると報告した。この結果は,認知処理が感情状態に影響を及ぼすことを示唆している。本研究では,速聴を用いて思考速度を加速させるとポジティブ感情が誘発されるか検討した。感情測定には多面的感情状態尺度短縮版を用いた。また,注意焦点の範囲を大域-局所課題を用いて測定した。その結果,速いスピードで文章を聞いた群では,通常のスピードで同じ内容を聴いた群に比べて, 「驚愕」と「敵意」の得点が有意に高くなり,「非活動的快」の得点が有意に低くなった。思考速度の自己評価や大域-局所課題の成績に有意差はなかった。以上の結果は,速聴は全体的にネガティブ感情を誘発することを示している。

  • 感情ヒューリスティック理論の観点から
    田岡 大樹, 楠見 孝
    セッションID: PT2_28
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    事前に多くの勝ちを経験すると,ギャンブル中のポジティブ感情が喚起され,リスクに対する楽観的な判断がなされ,無謀な賭けが引き起こされると考えられている。すなわち,無謀な賭けの背景には,感情に基づいたリスク・ベネフィット知覚(感情ヒューリスティック)があると考えられる。本研究では,無謀な賭けの発生メカニズムについて検討を行うため,勝敗数の実験操作(24勝/30戦,12勝/30戦, 6勝/30戦の3通り)の前後において感情および知覚されたリスク・ベネフィットを測定し,その変化を調べた。その結果,多くの負けを経験した群において,ポジティブ感情の低下およびネガティブ感情の増大が見られると同時に,知覚されたリスクが増大し知覚されたベネフィットが低下していた。パス解析を行ったところ,感情ヒューリスティック理論に基づいたモデルがデータと比較的良い適合を示したものの,賭けの無謀さを十分に説明しなかった。

    Previous studies considered that prior many winning experiences aroused positive affects during gambling and led optimistic judgments about risks, then reckless betting occurs. Therefore, it is reasonable to assume that risk/benefit perception based on affects (affect heuristic) underlies reckless betting. In the present study, to investigate underlying mechanisms of reckless betting, we measured affects and perceived risk and benefit, before and after experimental manipulation of the number of wins and losses (24 wins, 12 wins, and 6 wins in 30 trials), and examined the changes. As a result, participants who experienced many losses showed a decrease in positive emotion and an increase in negative emotion, and an increase in perceived risk and a decrease in perceived benefit. Path analysis indicated that a model based on affect heuristic theory fitted the data moderately. However, the model accounted for the variance of recklessness insufficiently.

  • 池田 寛香, 楠見 孝
    セッションID: PT2_29
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    人々は,自分自身の過去を想起する時だけでなく,直接経験していない物事や風景に対しても懐かしさを感じることがある。しかし,エピソードを伴わない非自伝的懐かしさに関しては未だ不明な点が多い。よって本研究は,刺激に対する感情の評定値と,懐かしさのトリガーとなるエピソードの有無を記録することにより,自伝的エピソードの存在が懐かしさとその他評定に及ぼす影響を検討した。その結果,懐かしさ,快不快,覚醒度は,自伝的懐かしさ条件において有意に評定値が高かった。また,自伝的懐かしさに対して快さを感じやすい個人は懐かしさポジティブ傾向が高く,非自伝的懐かしさに対して快さを感じやすい個人は懐かしさネガティブ傾向・回想傾向が高いという関連がみられた。これらの結果より,自伝的エピソードの存在は懐かしさ体験に伴う快さと覚醒度を強めるが,個人特性によって自伝的・非自伝的懐かしさ体験に伴う快さが異なることが示された。

    People feel nostalgia that is a bittersweet feeling for the past when not only they recollect their past memories, but they see scenes that they haven’t ever been. However, little has been reported on the non-autobiographical nostalgia. Hence, this study aimed to investigate the effects of autobiographical episodes on the nostalgic experiences by measuring the strength of emotion and testing the presence or absence of autobiographical episodes. In the results, nostalgia, valence, and arousal scores were higher in autobiographical than non-autobiographical nostalgia condition. Besides, nostalgia positive proneness correlated positively with valence in autobiographical nostalgia condition, and nostalgia negative and reminiscence proneness correlated positively with valence in non-autobiographical nostalgia condition. Therefore, we found that autobiographical nostalgia led to perceptions of higher arousal and more comfortable states, and types of nostalgia proneness influenced on the comfortable levels with autobiographical and non-autobiographical nostalgia.

  • 小林 麻衣子, 中村 航洋, 渡邊 克巳
    セッションID: PT2_30
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    性的な指向はパートナー選択に大きな影響力を持つが,性的な指向や生物学的な性が性的な刺激に対する動機付けにどのような影響を与えるのかはわかっていない.本研究では,性的な指向と生物学的な性が性的な画像(2種類の性的覚醒度の男性,女性,カップル画像)に対する動機付けの強さを検討するため,実験参加者が画像の提示時間の増減ができるキー押し課題を使用した.実験参加者は,51名の異性愛者と,40名の非異性愛者であった.実験の結果,非異性愛の男性は異性愛の男性よりも男性の画像や性的覚醒度の低いカップルの画像に対し強い動機付けを持っていた.また,異性愛者の女性は非異性愛者の女性よりも覚醒度の低いカップル画像に対して強い動機付けを示した.特に覚醒度の低いカップルの画像に対する動機付けが生物学的な性と性的嗜好により変化することが示唆された.

  • 眞田 和恵, 門地 里絵, 原水 聡史, 中村 純二, 木村 健太
    セッションID: PT2_31
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
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    本研究は、快感情の種類の違いが意思決定に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、高覚醒の快感情である陽気と感動が報酬学習課題における選択のランダム性に及ぼす影響を検討した。実験参加者は陽気映像、感動映像、統制映像のいずれかを視聴し、視聴前後に課題を行った。課題中の選択のランダム性の指標として行動エントロピーを算出するとともに、課題中と映像視聴中の生体データ、および快と覚醒度の評定値を取得した。その結果、陽気条件では映像視聴後の快評定値と行動エントロピーに正の関連がみられた。一方、感動条件と統制条件ではそのような関連性はみられなかった。本研究の結果は、快感情の中でも陽気の喚起が探索的な行動傾向と関連すること、快感情の種類の違いが意思決定に異なる影響を及ぼすことを示唆する。

  • 景山 望
    セッションID: PT2_32
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    心的操作能力は,前庭機能の疾患によって低下するとされている.昨年度,操作対象以外に視覚的手がかりが存在する場合,前庭機能が低下する高気圧環境であっても心的操作能力は低下しないことを報告した.しかし,昨年度では,認知機能の低下がみられる31気圧以下の環境圧下(21気圧)で検討した.このため,視覚的手がかりによる遂行能力の補正が,曝露される環境圧に依存しないかについては不明であった.よって,本実験では,高気圧曝露時の環境圧と心的操作時の視覚的手がかりとの関連について,1気圧と45気圧環境下の平面ディスプレイによるMental body rotation tasks (MBRT)の課題成績と重心動揺検査の前庭機能評価に用いるロンベルグ率によって検討した.本研究において,先行研究と同様にロンベルグ率は高気圧曝露によって増加したものの,MBRTの成績は変化しなかった.これは,視覚的手がかりによる心的操作能力の補正は,曝露される環境圧に依存しないことを示唆する.

  • 木村 貴彦, 岩原 昭彦, 八田 武志
    セッションID: PT2_33
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    本研究の目的は,中高年の認知特性の変化から交通事故に関連する要因を検討することである.住民検診に参加した295名を対象として,質問紙での回答と検診当日に実施した認知機能検査の関係について検討を行った.質問紙から自動車事故に関連した経験を抽出した.また,実施された認知機能検査のうち, 文字抹消検査(D-CAT:1文字条件と3文字条件),抑制機能を評価するStroopテスト(統制のドット条件と文字条件),空間認知検査の結果を抽出した.65歳未満(中年)と65歳以上(高齢)に区別して変化率を算出した.D-CAT(1文字条件)では後進時の事故経験・最近1年間での事故経験がある場合に低下がみられるが,D-CAT(3文字条件)では大きな変化がみられなかった.また,Stroopテストでは後進時の事故経験・最近1年間での事故経験がある場合に遅延の程度が大きくみられた.これらのことから,情報処理速度と抑制機能が交通事故に関連する可能性が示唆された.

  • Chanthavong souphatta, 時津 裕子
    セッションID: PT2_34
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    見る者に不快感や不安感などネガティブな感情を抱かせる"disturbing"画像がインターネット上で人気を博している。本研究の目的は、これらの画像群を構成する意味構造について明らかにすることである。127枚のdisturbing画像における意味要素31種の存否状況を変数として数量化Ⅲ類よる分析を実施した。その結果disturbing画像群は、特定の意味要素だけで構成される画像と、複数の意味要素がまとまって構成される画像に大別されることが確認された。前者の画像群は傷や孔の集合体など生理的嫌悪につながる意味要素で構成され、比較的低次の処理過程からdisturbingnessがもたらされると推測される。一方、後者の画像群には死や儀式を連想させる要素や、文脈との不一致から生じる違和感などの要素によって構成されており、高次の思考・認知過程を経てdisturbingnessが生起すると推察される。

  • 時津 裕子
    セッションID: PT2_35
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    かつては口承で語り継がれた怪談が,Web上のテキストで楽しまれるようになって久しい。そこで描かれる恐怖がどのようなものであるか知ることは,現代日本人の心性や文化的特性を考える上で不可欠だろう。本研究の目的は,現代のネット怪談がもつ意味的構造を解明することである。まとめサイトに掲載されたランキング上位100篇の怪談を収集し,作中に登場する恐怖の喚起につながると考えられる112件の物語要素を抽出した。つづいて,各話におけるこれら要素の存否状況をダミー変数として,数量化理論Ⅲ類による分析を実施した。カテゴリー布置から,1軸が,作中で発生する出来事の原因に明確な説明が成り立つかどうか(「ルール明示/ルール不明瞭」)を,2軸が怪異や霊的存在が目に見える形で登場するかどうか(「恐怖の直接呈示/間接呈示」)を表すと解釈でき,ネット怪談はこれら2軸の組み合わせにより4類型に分類できることがわかった。

  • 小島 隆次, 田中 未来哉, 角所 考
    セッションID: PT2_36
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    オフィス等で放置された物が、意図的に置かれたのか、置き忘れであるのかを防犯カメラ等の映像からヒューリスティックに自動推定するシステムの開発に向け(cf. 田中ら, 2019)、本研究では以下の調査を行った。調査はwebサーベイ形式で、参加者は映像を見た後いくつかの質問に回答した。刺激映像(無音)は、大学生が研究室の自分の机に、ノートPC、スマホ、水筒を持参する場面から始まり、スマホを放置して立ち去るという内容であった。参加者はこの動画を見て、スマホが置き忘れられた程度を評価するとともに、その評価理由を回答した。また、置き忘れ判定の要因として、場所の公共性、持参物の数等を挙げ、それらの重要性も評価した。調査の結果、映像に基づく置き忘れ判定には、物体数や所有者の視野・視線方向のような映像から判断可能なものだけではなく、それら事実に対する認識・評価も考慮する必要があることが示唆された。

  • 高橋 純一, 行場 次朗
    セッションID: PT2_37
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,アファンタジア傾向者の視覚イメージ特性について一事例検討を行った。アファンタジアとは,視知覚に異常は認められないにも関わらず,視覚イメージの形成に困難を示す状態である。本研究の事例(K)について,視覚能力(レーブン・テスト)とイメージ能力(鮮明性,統御性,常用性[認知スタイル])の測定を行った。結果から,Kの視覚能力について問題は見られなかった。イメージ能力では,視覚,触覚や痛覚などに関するイメージは皆無であったが,聴覚イメージのみ弱く保たれていた。また,視覚イメージの欠如から,統御性は判断ができなかった。さらに,認知スタイルについては,視覚処理よりも言語処理の優位性が明らかとなった。以上より,アファンタジア傾向者では,視覚イメージが欠如している一方で,他の感覚モダリティに関するイメージ(e.g., 聴覚イメージ)の残存性と言語処理の優位性について,認知の代償性が存在すると考える。

    We examined a single case of Aphantasia, focusing on mental imagery abilities. Aphantasia is a condition in which individuals have difficulties in forming mental imagery although their visual perception is intact. The subject (K) had never experienced visual imagery. His visual (Raven’s test) and imagery abilities (vividness, controllability, and cognitive style) were assessed. While he displayed no difficulty in his visual abilities of perceiving/discriminating objects, he showed a complete deficit in his imagery abilities of visual, tactile, pain, gustatory, olfactory, and somatic image clarity. There may have also been substantial deficits in auditory image. He could not judge controllability due to his blind imagination. Moreover, his cognitive style seemed to mainly involve verbal strategies. We speculated that individuals with Aphantasia display cognitive compensations for their blind imagination, for their imagery to function in some modality (e.g., auditory imagery) and they show superiority in verbal processing.

  • 山内 裕斗, 髙橋 亨輔, 小野 史典
    セッションID: PT2_38
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,友人などの他者と一緒にいる状況ではなく自分一人でいる状況ですべての座席が空席であることを想定した場面を設定し,出入口の位置と教卓の有無を操作したうえで,座席選択の志向性が,出入口の位置と教卓の有無によって異なるか否か,また,座席選択の志向性とパーソナリティとの関連について,182名の協力者のもと,Web調査を行った。調査の結果,出入口の影響がある群の人数は教室よりも自習室の方が多く,出入口の影響がない群は自習室よりも教室の方が多かった。また,教室においては,出入口の影響なし群よりも出入口の影響あり群の方が,神経症傾向が高く,出入口の影響あり群よりも出入口の影響なし群の方が,勤勉性が高い傾向にあることが示された。座席選択行動が,出入口の位置や教卓の有無といった部屋のつくりや用途の違いによって影響を受けること,その影響の度合いが選択者のパーソナリティによって異なる可能性が示唆された。

  • 原田 佑規, 大山 潤爾, 和田 真
    セッションID: PT2_39
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    他者の気持ちを推定するうえで,表情の変化は重要な手がかりの一つである。しかしなが ら,表情の変化には時間的比率や系列位置などのパラメータがあるものの,これらが表情 認知に及ぼす影響は明らかでない。そこで本研究では,感情表情の出現の系列位置が表情 認知に及ぼす効果を定量的に検証した。実験では,表情写真が 3 秒呈示された。この 3 秒 は 0.6 秒ごとに 5 つの系列に区切られており,そのうち 4 つの位置では中性表情が,1 つ の位置では感情表情(怒り,嫌悪,恐怖,喜び,悲しみ,驚きのいずれか)が呈示され た。その後,表情の感情強度を 7 件法で評定させた(例: 1 まったく怒っていない; 7 とて も怒っている)。実験の結果,感情の種類を問わず,系列位置における親近性効果が観察 された。この結果は,変化する表情を観察すると,感情表情の認知は最近の表情の影響を 受けやすいことを示唆する。

  • 田上 初夏, 今泉 修
    セッションID: PT2_40
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    統合失調型パーソナリティの強い健常者は幻覚様体験を経験しやすいが,そのメカニズムは明らかではない。先行研究により,統合失調型パーソナリティと幻覚様体験の媒介要因としてマインドフルネス特性やストレスが示唆されてきた。また,マインドフルネス特性は,直接的かつストレスを媒介して間接的に幻覚様体験の生起を予測する。本研究は,統合失調型パーソナリティがマインドフルネス特性とストレスを媒介して幻覚様体験を予測するという仮説を立て,事前登録済オンライン調査 (n = 458) を実施した。共分散構造分析の結果,概ね仮説通りの変数間の関連が認められたが,ストレスは媒介要因として認められなかった。また,モデル適合度は十分でなかった。今後は探索的分析によってモデルの修正を行う必要がある。

    Healthy people with high schizotypy often have hallucinatory experiences. Previous studies suggest that trait mindfulness and stress predict frequencies of hallucinatory experiences in schizotypy, and trait mindfulness predicts hallucinatory experiences being mediated by stress. We hypothesized a model in which schizotypy predicts hallucinatory experiences being mediated by trait mindfulness and stress. To test this model, we conducted a preregistered cross-sectional online survey (n = 458). Results of structural equation modeling partially supported our hypothetical model although stress did not mediate between schizotypy and hallucinatory experiences. Moreover, the model fit was insufficient. Further exploratory analyses are needed to modify our model.

  • 樋田 浩一, 齋藤 五大
    セッションID: PT2_41
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    随意運動とそれに付随する感覚情報は,不随意運動とそれに付随する感覚情報と比較して,知覚的に結びつきやすいことが知られている(intentional binding).運動に伴い僅かに遅れて聴覚刺激を呈示すると,運動の知覚時刻は刺激側へ,聴覚刺激の知覚時刻は運動側へとシフトし,結果として,実際よりも両者の知覚間隔が近接する時間知覚バイアスが発現する.この代表的な測定方法として,運動ないしは聴覚刺激が,1周2,560 msで運針する時計(リベット時計)上のどの時刻で生じたかを報告する手法がある.本研究では,このリベット時計と不随意運動を実現するスイッチを物理的に製作し,intentional bindingの再現性について確認した.実験の結果は,先行研究の結果を再現し,我々が開発・構築した実験系がintentional bindingの計測に有用であることを示した.

  • 宇野 究人, 横澤 一彦
    セッションID: PT2_42
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    視覚刺激と聴覚刺激が一定順序で連続提示されると,2刺激に対する同時性判断が提示順序の方向へシフトする(同時性知覚の再較正)。本研究では,「高音と高い位置の視覚刺激,低音と低い位置の視覚刺激が結びつきやすい」という刺激間の関係性(感覚間協応)が,同時性知覚の再較正に与える影響について検討した。参加者は順応フェーズで交互に提示される視聴覚刺激を観察後,一対の視聴覚刺激に対する同時性判断課題を行った。順応フェーズの刺激系列は,協応関係に整合する視聴覚刺激をグループとみなした時にグループ内で視覚刺激が先行する場合(高音–低位置–低音–高位置–高音…)と,聴覚刺激が先行する場合があった。これら2条件それぞれについて,順応フェーズ後の同時性判断の結果から主観的同時点を算出したところ,条件間で有意な差が見られた。この結果は,感覚間協応に基づくグルーピングに従って,同時性知覚が再較正されることを示している。

  • 齋藤 岳人, 樋口 大樹, 井上 和哉, 小林 哲生
    セッションID: PT2_43
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    文字の物理的な情報量をもとに計算される周囲長複雑度がひらがなとカタカナの主観的複雑度を反映する指標として妥当かどうかを検証した。主観的複雑度は日本語話者と英語話者を対象としたWeb調査により7件法のリッカート法で取得した。話者ごとに各文字の主観的複雑度の平均を求め,(1)周囲長複雑度と主観的複雑度の相関係数を算出し,(2)その相関係数を主観的複雑度と画数の相関係数と比較した。(1)より,両話者で高い正の相関が認められ,周囲長複雑度がひらがなとカタカナの主観的複雑度を表す指標として妥当であることが示された。(2)より,主観的複雑度との相関係数は周囲長複雑度の方が高く,画数よりも周囲長複雑度の方が主観的複雑度を反映する指標として妥当であることが示された。加えて,(1)より得られた傾きは,英語話者よりも日本語話者の方が小さく,日本語話者の評定は言語的知識の影響も受けていることが示唆された。

  • 中島 亮一, 熊田 孝恒
    セッションID: PT2_44
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    自動で動くオブジェクトに対する主体感は、通常低くなる(自分が操作しているとは思えない)。本研究では、自分の操作に対する(操作非関連な)オブジェクト応答が、自動制御オブジェクトの操作に対する主体感を変化させるかを検討した。実験では、画面上を移動する黒円をキー押しによりゴール付近に停止させる課題を行った。その際、キー押しの瞬間に円が白く瞬く条件と、変化しない条件を設定した。また、参加者には、キー押しとは無関係にボールが停止する試行(自動制御試行)が存在することを教示した。その結果、自動制御試行において、瞬き有条件では無条件よりも主体感は高かった。また、キー押しとは独立に瞬きが生じると主体感は低下し、キー押しと同時にオブジェクト以外の位置に瞬きが生じても主体感は変化しないことも示された。つまり、自分の行為に対するオブジェクト応答により、自動制御オブジェクト操作に対する主体感が錯覚的に上昇する。

    Sense of agency

  • 中村 杏奈, 田中 章浩
    セッションID: PT2_45
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    自己主体感は,観察された運動が自分の行動の結果だという感覚であり,その異常は抑うつ状態をはじめとした精神疾患の症状に繋がることが指摘される。Intentional binding(IB) 課題は,意図した行動とその結果の時間間隔が短く知覚される錯覚を利用して,潜在的な自己主体感を測定するものである。抑うつ状態では意図による時間間隔の短縮が見られにくく,自己主体感が低いことが示唆されている。繊細な時間知覚を測定するIB課題をより簡便に使用することを目的としてオンライン化する。36名の一般成人を対象として,二つの音の時間間隔と,自発的なキー押しとそれに続く音の時間間隔を測定した。結果,オンラインでもIB課題での時間知覚の差が検出された一方で,抑うつ状態との相関は予想と逆の結果 (抑うつが強いほどIBが強く,自己主体感が強い) となった。課題で意図の有無を測定できていたか,実験者の不在が課題への取り組みに影響した可能性について検討が求められる。

  • 木村 健太, 眞田 和恵, 門地 里絵, 原水 聡史, 中村 純二
    セッションID: PT2_46
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は、快感情が意思決定に及ぼす影響が快感情の種類により異なるかを明らかにすることを目的として、高覚醒の快感情である陽気と感動が報酬学習課題における強化学習パラメータに及ぼす影響を検討した。実験参加者は陽気映像、感動映像、統制映像のいずれかを視聴し、視聴前後に課題を行った。課題中の選択と報酬のデータに対してQ学習による強化学習モデルを用いて学習率αと逆温度βを算出した。加えて、映像視聴中の生理活動、快と覚醒度の評定値を測定した。その結果、感動条件では映像視聴前後の快評定値の変化と映像視聴前から視聴後の逆温度βの変化に正の相関が観察された。一方、陽気条件と統制条件ではそのような関連性はみられなかった。本研究の結果は、感動の誘発が学習された行動価値を重視した意思決定傾向と関連すること、快感情の種類により意思決定への影響が異なることを示唆する。

  • 大屋 里佳, 田中 章浩
    セッションID: PT2_47
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    相手に触れて感情を伝える際,どのように触れれば感情が伝わりやすいだろうか。ある文化の参加者の触覚感情表出を感情別に分類したとき,表出には参加者間で共通性(文化内共通性)と個別性の両面が見られる。そこで本研究では,触覚表出を構成するどの要素に(例:動作),どのような共通性・個別性があるのか検討するため,動作解析を実施した。Oya and Tanaka (2020) で正しく感情が伝わった接触について,①表出者が接触に用いた部位,②解読者が接触された部位,③動作,④動作の継続時間の4つの指標を検討した。その結果,12感情が,正しく伝わる場合に共通している要素(共通性要因)と個別性が高い要素(可変要因)の両方をもつことが示された。さらに,共通性要因は感情ごとに異なることを明らかにした。たとえば怒りでは,動作やその継続時間は問わず(可変要因),指の手のひら側で相手の手の甲に触れた場合に(共通性要因),怒りが伝わりやすいことが示された。

  • 山本 一希, 本多 樹, 中尾 敬
    セッションID: PT2_48
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    離人の主要な特徴として,非現実感がある。非現実感とは,自身の思考や行為が外界の環境や自分 自身と切り離されている感覚であり,離人症者は外的刺激を自己と結び付けることに困難を感じてい ることが先行研究により示唆されている。しかし,先行研究では刺激として参加者の自己顔しか用い られていない。そこで本研究では,離人の程度が高い人々は自己顔以外の刺激に対しても自己関連性 の認識に困難を示すのか検討を行った。離人の程度は質問紙を用いて測定し,自己関連性の認識の困 難さは幾何学図形と自己や他人とのマッチング課題遂行時の反応時間と正確さを用いた。その結果,離人の程度とマッチング課題から得られた両指標とには関連が認められなかった。この ことから,離人症者の自己関連性の認識の困難さは,自己顔といった日常的に自己と関連付けられう る刺激に対して引き起こされる可能性が示された。

  • -摂食動画の視点の違いがもたらす空腹感の変容-
    高木 あい, 佐々木 恭志郎, 中村 航洋, 渡邊 克巳
    セッションID: PT2_49
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2021/03/15
    会議録・要旨集 フリー

    近年、動画投稿サイトで摂食動画が注目を集めている。このような動画が観察者の食欲にもたらす影響については、ばらつきがあるように思える。このばらつきには、観察者の内的特性、特に他者の心的状態の理解に関わる共感性の個人差が関与しているかもしれない。本研究では、摂食動画が観察者の食欲に与える影響について共感性の観点から検討した。参加者は摂食動画視聴前後に食欲を回答した。研究1では、多次元共感性尺度を用いて共感性との関連を探索的に検討したところ、共感性、特に他者指向性が高いほど視聴後に空腹になることが明らかになった。研究2では、摂食動画の視点 (自己視点・他者視点) の影響を検討したところ、自己視点の動画を観察した方が摂食可能量や空腹が増すことが示された。これらの結果は、摂食動画の観察による食欲の変化プロセスには、動画内の人物への共感が関与することを示唆する。

口頭発表1:感情・動機 1
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